▽この治療技法は網膜色素変性症において、神経細胞死を防ぐ新たな治療戦略を開拓したのみならず、ALSなど神経変性疾患にも適応可能な可能性があります。
▽研究者らは、ロドプシン欠損網膜色素変性症モデルマウスを用いて、桿状細胞変性の始まる4週齢において、ウイルスベクターにより、ヒト毛様体神経栄養因子(CTNF)を導入しました
▽CTNFは、これまでに光受容器細胞や網膜神経節細胞の喪失を防ぐ効果を有することがわかっていましたが、毒性が問題になっていました。しかし今回、研究者らは緑色蛍光色素を導入した錐体光受容体を用いて、経時的に状態を観察することにより、遺伝子導入量の調節を行い、毒性を最小限に抑えました。
▽30週後に、遺伝子を導入した方の網膜においては、遺伝子非導入の対照群と比較して、89倍も疾患に関連した遺伝子の活性が増大し、網膜神経細胞の保護機能が発揮されていることが明らかになりました。
▽CTNFはこれまでALSに対しても臨床試験の実施が考案されてきました。しかし高用量では副作用が強いため、実施が不可能でした。今回の研究により、CTNFにより活性化していた遺伝子群を、なんらかの手法で直接的に活性化することにより、神経細胞の保護作用が発揮され、ALSなどの神経変性疾患についても、治療的効果が期待できるのではないかと考えられています。
引用元
http://scicasts.com/genomics/2015-gene-therapy/9657-scientists-successfully-apply-gene-therapy-against-retinitis-pigmentosa/
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