▽今回、研究者らは、ミクログリアからのTDP-43除去が、MAPK/ERK経路を介してシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)とプロスタグランジンE2(PGE2)の発現を促進し、神経毒性を発揮することを示しました。
▽ミクログリアからのTDP-43除去は、正常な機能を果たすTDP-43が存在しなくなるということで、ALSの病態を部分的に再現するものと考えられています。アストロサイトからのTDP-43除去では神経毒性は観察されませんでした。
▽さらに、COX-2阻害薬であるセレコキシブ(商品名:セレコックス、NSAIDの一種)投与により、TDP-43除去ミクログリアによる神経毒性が大幅に緩和されることがわかりました
▽以上の結果は、ミクログリアによる神経毒性は、COX2-PGE2を介した分子経路により発揮され、セレコキシブがTDP-43に関連したALSに対して治療的効果を有する可能性を示唆するものです
管理人注:ALSに対するセレコキシブの有効性の有無については、既に臨床試験が行われており、結果は残念ながら有意な有効性がみられないものでした。しかし、臨床試験において髄液中のプロスタグランジンE2量の減少は観察されておらず、用量が不足していた可能性や、中枢神経において充分な作用が発揮されていなかった可能性があります。このような問題点が解消した場合や、TDP-43に関連した病態のサブグループにおいては、異なる結果が期待できるかもしれません。今後の検証が待たれます。
(この研究は、中国、 Soochow UniversityのXiaらにより報告され、平成27年3月26日付のCell death & disease誌に掲載されました)
引用元
http://www.nature.com/cddis/journal/v6/n3/abs/cddis201569a.html
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