▽一方でERp57の点変異がALS発症のリスクとなりうることが報告されています。ERp57は小胞体内でジスルフィド結合の形成や異性化を触媒し、蛋白質の品質管理機構の中心的な役割を果たしていますが、ALSの病態にどのような影響を与えているのかは明らかにされていませんでした
▽今回、研究者らは、SDO1変異ALSモデルマウスを用いて、ERp57を過剰発現させ、病態に与える影響を調べました。
▽変異SOD1/ERp57二重トランスジェニックマウスは、変異SOD1ALSモデルマウスと比較して、発症早期において電気生理学的活動の悪化が遅延し、筋の神経支配が保持されていました。
▽ERp57の過剰発現は進行期においてのみSOD1蛋白質の凝集を減少させ、病初期における神経筋接合部保護作用は、この凝集抑制作用とは異なる作用であることを示唆するものでした
▽プロテオミクス解析により、ERp57過剰発現による神経保護効果は、脊髄におけるシナプスおよびアクチン細胞骨格蛋白質濃度の増加と相関していることが明らかになりました。以上の結果は、ERp57が運動神経の接続性を維持することで、病初期の疾患修飾因子として機能していることを示唆するものです。
(この研究は、チリ、University of ChileのRozasらにより報告され、2021年2月4日付のActa Neuropathol Commun.誌に掲載されました)
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