▽C9orf72遺伝子変異によって生じる蛋白質に対する抗体が、ALSモデルマウスの生存期間を延長させうることが実験で明らかになりました。Neuron誌に公表された研究結果によるものです
▽C9orf72遺伝子変異は孤発性ALSの約7%、家族性ALSの40%程度にみられます。過剰伸長した6塩基繰り返し配列由来の、リピート関連非ATG翻訳により生じる異常蛋白質が蓄積し細胞毒性をもたらすことがわかっています。
▽これらのジペプチド繰り返し蛋白質は6種類が知られていますが、こららのうち2種類(poly-GA、poly-GP)に対する抗体が、健常者ドナー由来のB細胞を用いて作成されました。抗体が特異的にターゲットに結合することを確認した後に、細胞モデルにおいて異常蛋白質の蓄積を減少しうるかどうかが確認されました。その結果、細胞モデルにおけるジペプチド繰り返し蛋白質の凝集が減少することがわかりました。
▽さらに研究者らはモデルマウスを用いて抗体投与の効果を検証しました。その結果抗体は血液脳関門を透過し、神経細胞における異常蛋白質凝集を減少させることがわかりました。週に1回、10週間にわたり抗GA抗体を投与することで、凝集体の量が52%減少しました。さらに興味深いことに、抗GA抗体投与により、GP蛋白質の凝集量も10週間で61%減少することがわかりました。
▽これはGA凝集体そのものが、プロテオソーム作用に干渉しうるため、GA凝集体が減少することでプロテオソームの活動が活性化し、GP凝集体の減少にもつながったのではないかと考察されています。抗体投与は同時にモデルマウスの生存率も37週後に未治療の場合の40%から治療後は80%にまで改善しました。
▽以上の結果は、C9orf72遺伝子変異ALSに対する抗体療法の可能性について希望がもてる結果と言えます。
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/02/17/potential-protein-target-for-antibody-therapy-in-als-identified-early-study/
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