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ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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マイトファジー阻害剤の可能性
▽マイトファジーは自食によるミトコンドリアの選択的な分解です。マイトファジーによりミトコンドリアのターンオーバーを促進し、機能不全を起こしたミトコンドリアの蓄積を防ぐことができます

▽ALSにおいてはマイトファジーが変化していることが報告されています。研究者らは最近、SOD1変異ALS患者由来のリンパ芽球において自食経路が亢進していることをみいだしました

▽そのため、マイトファジーを抑制することが、ミトコンドリアの恒常性を回復するための治療選択肢となる可能性があります

▽今回、研究者らは、試験管モデルにおいて新たなマイトファジー阻害剤IGS2.7を同定しました。IGS2.7をSOD1変異もしくはTDP-43変異ALS細胞モデルに投与すると、自食作用の正常化がみられました。

▽以上の結果はIGS2.7がALSに対して治療的に有望な可能性を示唆するものです

(この研究はスペイン、Centro de Investigaciones Biológicas Margarita Salas-CSICのMaestroらにより報告され、2022年10月21日付のInt J Mol Sci誌に掲載されました)
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RTN4/NoGo受容体によるataxin-2濃度の低下
▽ALSに対する治療戦略の1つとしてataxin-2濃度を低下させる遺伝子治療が進行中です。さらにその他のataxin-2濃度を低下させる戦略も治療的に有望な可能性があります

▽今回、研究者らはsiRNAスクリーニングを行い、RTN4/NoGo-Receptorをコードする遺伝子であるRTN4Rが、ataxin-2濃度の強力な調節因子であることを見いだしました

▽RTN4Rをノックダウンするか、ペプチド阻害剤で処理すると、in vitroでマウスとヒトの神経細胞のataxin-2タンパク質濃度が低下しました。またRtn4rノックアウトマウスではataxin-2濃度が低下しました

▽以上の結果は、ataxin-2とRTN4/NoGo受容体とが、軸索変性を防ぐ共通の役割を有していることを示唆するものであり、RTN4/NoGo受容体がALSの新たな治療ターゲットとなりうる可能性を示唆するものです。

(この研究は、アメリカ、Stanford universityのRodriguezらにより2022年10月25日付のCell Rep誌に掲載されました)
v-ATPaseによるataxin-2濃度の低下
▽ataxin-2遺伝子の変異はALSの病因となりえます。ataxin-2遺伝子を標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤による治療が、ヒトでの臨床試験に入っています。さらにataxin-2濃度を低下させる手法を見出すことは治療法開発につながる可能性があります。

▽今回、研究者らは、ゲノムワイド蛍光活性化セルソーティング(FACS)を基にしたCRISPR-Cas9スクリーニングにより,ataxin-2濃度を変化させる要因としてリソソーム液胞型ATPase(v-ATPase)をコードする遺伝子を同定しました。

▽その結果、FDAから承認されている複数の低分子v-ATPase阻害剤は、マウスとヒトの神経細胞でataxin-2タンパク質濃度を低下させることがわかりました。

▽これらの薬剤の1つであるetidronateは、マウスの脳でataxin-2濃度を十分に減少させました。

▽以上の結果は、v-ATPaseがALSの治療ターゲットになりうることを示唆しており、v-ATPase阻害薬が治療薬候補となりうることを示唆するものです。

(この研究は、アメリカ、Stanford universityのKimらにより2022年10月25日付のCell Rep誌に掲載されました)
Astaxathinの神経保護作用
▽Astaxathinは抗酸化作用を示すカロテノイドの1種です。興奮毒性はALSの病態進展に関与していると考えられています。グルタミン酸の過剰放出、グルタミン酸受容体の過剰活性化、カルシウムの過剰負荷、ミトコンドリア機能不全、活性酸素の過剰生成などが興奮毒性のメカニズムと考えられています

▽astaxathinは抗酸化物質として作用し、興奮毒性から神経細胞を保護することが知られていますが、神経保護作用の正確なメカニズムはよくわかっていません。そこで、研究者らは、ライブセル蛍光イメージングなどを用いてastaxathinの神経保護作用について調べました。

▽その結果、astaxathinは活性酸素の生成を抑制し、興奮性グルタミン酸によるミトコンドリア膜の異常な脱分極を減少させ、神経細胞死を防ぐことを示唆する結果が得られました。この効果は細胞内カルシウム濃度、ミトコンドリアカルシウムの調節などによってもたらされる可能性がわかりました

▽以上の結果は、astaxathinがALS治療薬候補となりうることを示唆するものです

(この研究は、インド、National Institute of Mental Health and NeuroscienceのKandyらにより報告され、2022年10月18日付のMar Drugs誌に掲載されました)
CRISPR/Cas9によるC9orf72遺伝子変異ALS治療戦略
▽C9orf72遺伝子の6塩基繰り返し配列の過剰伸長は家族性ALSの最も一般的な病因です。その神経細胞死については、C9orf72のハプロ不全、RNA結合タンパク質の核内封鎖、ジペプチド繰り返しタンパク質の生成などによるものが考えられています

▽今回、研究者らは、アデノ随伴ウイルスベクターを用いて、CRISPR/Cas9ゲノム編集機構を導入し、C9orf72遺伝子から6塩基繰り返し配列を除去することに成功しました。

▽C9orf72遺伝子変異モデルマウス由来の大脳皮質神経細胞、患者iPS細胞由来運動神経細胞などにおいても6塩基繰り返し配列の除去に成功しました。またその結果、ジペプチド繰り返しタンパク質やハプロ不全などのC9orf72遺伝子変異ALSの病態に特徴的な異常も減少しました。

▽以上の結果は、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術がC9orf72遺伝子変異ALSに対して有望な治療法である可能性を示唆するものです。

(この研究は、アメリカ、University of Massachusetts Medical SchoolのMeijiboomらにより報告され、2022年10月21日付のNature Communications誌に掲載されました)
DX2がALSモデルマウスの病態を改善
▽ALSの病因となる変異SOD1タンパク質はKARS1(lysyl-tRNA synthetase)と機能獲得的に相互作用し、神経細胞死をもたらしますが、そのメカニズムはよくわかっていません。

▽今回研究者らは変異SOD1とKARS1が相互作用することによりAIMP2を介した細胞死がもたらされることを明らかにしました

▽変異SOD1とKARS1が結合することにより、AIMP2(aminoacyl-tRNA synthetase-interacting multi-functional protein 2)は本来の結合パートナーであるKARS1から遊離し、遊離型のAIMP2がTRAF2の分解を誘導し、TNF-αによる細胞死を誘発することがわかりました

▽AIMP2のエクソン2欠損拮抗的スプライシング変異体であるDX2の過剰発現は神経細胞死を防ぎました。DX2はAIMP2の作用に拮抗し、TRAF2の分解を抑制することがわかりました。

▽患者iPS細胞由来運動神経細胞にDX2を投与すると神経細胞死が抑制されました

▽以上の結果は、DX2がSOD1変異ALSに対して治療的な効果を発揮することを示唆するものです

(この研究は、韓国、Seoul National UniversityのKookらにより報告され、2022年10月15日付のMol Neurobiol誌に掲載されました)
メソポーラスシリカナノ粒子を用いたレプチンおよびpioglitazone併用治療カクテルの開発

▽ALS治療薬は現在のところ限られていますが、複合的な治療法がより高い治療効果をもたらす可能性があります

▽今回研究者らはメソポーラスシリカナノ粒子(MSN)を用いた薬剤運搬システムを開発し、レプチンとpioglitazoneの薬剤カクテルをMSNを用いて投与する方法の実現性を検証しました

▽レプチンは神経保護作用を、pioglitazoneは抗炎症作用を有することが基礎実験で報告されています。この両薬剤をMSNに取り込み、TDP-43蛋白症モデルマウスに投与しました。

▽その結果、病態進行の遅延効果や運動機能の改善効果などがみられました。これら薬剤を投与したモデルマウスでは進行期におけるエネルギー需要が減少していることを示唆する結果がえられました

▽以上の結果はMSNを用いた薬剤運搬システムがALSなどの神経変性疾患の治療に有用である可能性を示唆するものです

(この研究はスペイン、Universidad Rey Juan CarlosのDíaz-García らにより報告され、2022年10月14日付のACS Biomater Sci Eng誌に掲載されました)
酸性スフィンゴミエリナーゼ阻害はモデルマウスの病態改善効果を有する
▽ALSにおいては、スフィンゴ糖脂質代謝の変化が病態に関与していることが報告されています

▽スフィンゴ糖脂質代謝酵素である酸性スフィンゴミエリナーゼは神経変性疾患において重要な役割を果たすと考えられています。

▽今回、研究者らはALS患者およびモデルマウスにおいて酸性スフィンゴミエリナーゼ活性が上昇していることをみいだしました。

▽さらに酸性スフィンゴミエリナーゼを遺伝子的に阻害するとモデルマウスの運動機能障害や神経細胞減少が改善することがわかりました

▽以上の結果は酸性スフィンゴミエリナーゼが治療対象として有望なことを示唆するものです。

(この研究は韓国、Kyungpook National UniversityのChoiらにより報告され、2022年10月14日付のBMB Rep.誌に掲載されました)
選択的グアニン四重鎖結合性低分子はモデルマウスの病態を改善する
▽グアニン四重鎖を形成するC9orf72遺伝子変異の6塩基繰り返し配列の過剰伸長は家族性ALSの主な病因です。

▽グアニン四重差に特異的に結合する物質を開発することはその構造の多型性や構造的類似性などから困難でした

▽今回、研究者らは6塩基繰り返し配列のグアニン四重鎖に特異的に結合する3種類の新規海洋天然産物である、chrexanthomycin A (cA), chrexanthomycin B (cB), chrexanthomycin C (cC)を同定しました。

▽cAが最も細胞毒性が低いことがわかりました。細胞モデルではcAとcCは細胞死を劇的に減少させ、活性酸素の減少効果などがみられることがわかりました。

▽C9orf72遺伝子変異ショウジョウバエモデルでは、cAないしcC投与は運動障害を改善し、眼の神経変性を有意に減少させました。

▽以上の結果はcAないしcCがC9orf72遺伝子変異ALSに対して治療的に有望な可能性を示唆するものです

(この研究は、中国、The Hong Kong University of Science and TechnologyのChengらにより報告され、2022年10月13日付のJ Med Chem誌に掲載されました)
CuATSMはアストロサイト介在性の神経毒性を緩和する
▽今回、研究者らは患者の線維芽細胞を神経前駆細胞に直接再プログラミングし、その後アストロサイトに分化誘導し、治療法評価に有用な細胞モデルを構築しました。

▽患者由来運動神経細胞と患者皮膚由来アストロサイトの共培養アッセイを用いてCuATSMの有効性を評価しました

▽孤発性および家族性ALS患者由来細胞モデルを用いて有効性を評価したところ、CuATSM反応群においては、ミトコンドリア呼吸の増加が共通してみられました。一方で非反応群ではミトコンドリア呼吸の増加はみられませんでした

▽患者皮膚細胞由来アストロサイトをCuATSMで前処置するとミトコンドリア活性の正常化がみられました。

▽以上の結果はCuATSMに対して最適な患者群を同定するための手がかりとなる可能性があります


(この研究は、アメリカ、The Abigail Wexner Research Institute at Nationwide Children's Hospital, ColumbusのDennysらにより報告され、2022年10月10日付Glia誌に掲載されました)
Dazucorilantの第2相試験
・ALS NEWS TODAYの10月21日付記事からです

▽Corcept Therapeutics社のALS治療薬候補であるDazucorilantの第2相試験が開始予定となっています。

▽Dazucorilantはグルココルチコイド受容体を阻害する作用を有する経口小分子です。ALSモデルマウスにおいて炎症抑制効果や神経細胞死抑制効果などが確認され、病態進行遅延効果が報告されています

▽第2相試験はプラセボ対照試験であり安全性や有効性が評価されます。ヨーロッパで行われ、198名のALS患者が対象となり24週間で行われる予定です。

引用元
https://alsnewstoday.com/news/corcept-therapeutics-phase-2-trial-dazucorilant-als/
FDAがTofersenの審査を2023年4月に延長
・ALS NEWS TODAYの10月19日付記事からです

▽Biogen社のSOD1変異ALS治療薬候補であるTofersenについてFDAが審査期間を3か月延長することを決定しました。

▽この判断はBiogen社が追加情報を提出したためであり、審査にさらに時間が必要となったためです

▽第1から第3相までの試験結果において急速進行群60名について、6か月間の病態進行遅延効果は確認されませんでした。しかしその後の延長試験のデータも加えると、継続的に治療を受けている群は6か月時点でtofersenに切り替えた群よりも機能低下が緩やかで、かつ死亡または永続的人工換気のリスクは60%以上低下していることがわかりました。また筋力なども有意に保持される結果でした。

▽現在ATLAS試験とよばれる第3相試験が進行中であり、未発症でニューロフィラメント軽鎖が高値であるSOD1変異ALS患者が対象となっています。150名の患者が対象となり、1年間投与される予定です。

引用元
https://alsnewstoday.com/news/decision-delayed-proposed-als-therapy-tofersen-until-april-2023/
Verdiperstatは主要評価項目達成できず
・ALS NEWS TODAYの10月6日付記事からです

▽ Biohaven社のALS治療薬候補でありHEALEY ALSプラットフォームで試験中のverdiperstatは主要評価項目を達成できませんでした

▽副次的評価項目である生存期間や肺機能、筋力なども6か月間の治療後に有意な効果はみられませんでした。

▽HEALEY ALSプラットフォームではverdiperstatに加え、Prilena Therapeutic社のpridopidine、Clene Nanomedicine社のCNM-Au8、Seelos Therapeutics社のSLS-005が評価されています。、5番目でレジメンであったzilucoplanは中間解析で有効性が確認できず中止となっています。

▽verdiperstatは経口投与可能なミエロペルオキシダーゼ阻害剤であり、脳内で抗酸化作用や抗炎症作用を発揮することにより治療的効果が期待されていました

▽同じくHEALEY ALSプラットフームで評価されているCNM-Au8も主要評価項目および副次的評価項目を達成することができませんでした。しかし、トップラインデータでは、CNM-Au8により死亡と永続的な人工換気のリスクを90%以上有意に減少させることが示されました。

▽HEALEYは、ALSの治療法が発見されるまで、新しい実験的治療法を追加し続けるように設計されています。

引用元
https://alsnewstoday.com/news/als-therapy-verdiperstat-fails-healey-trial-efficacy-goals/
CNM-Au8の生存期間延長効果
・ALS NEWS TODAYの10月4日付記事からです

▽Clene Nanomedicine社のALS治療薬候補であるCNM-Au8は、死亡リスクないし永続的人工換気リスクを90%以上減少させる可能性があることが報告されました。

▽CNM-Au8は細胞のエネルギー産生を補助し、細胞を酸化的ストレスから保護することにより治療的効果を発揮することが期待されています

▽主要評価項目は達成できませんでしたが、追加の探索的解析により、CNM-Au8の30mg投与により、24週後の死亡リスク、死亡と永久的補助換気の必要性の複合リスクの両方が90%以上低下することが明らかになりました。

▽HEALEY ALSプラットフォームには今後Calico Life Sciences社とAbbvie社のALS治療薬候補であるABBV-CLS-7262がエントリーされる予定です

引用元
https://alsnewstoday.com/news/cnm-au8-found-lower-risk-death-als-healey-platform-trial/
新規臨床試験情報(血漿浄化療法)
・台湾での新規臨床試験情報です。NRIPに対する自己抗体が陽性のALSに対する血漿浄化療法の有効性に関する臨床試験が開始予定です

・試験は20名の患者を対象に血漿浄化療法前3か月間と後3か月間の病態進行度の変化などが確認される予定です

引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05562960
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