▽ProJenX社がALS治療薬候補であるprosetinの臨床試験を開始しました。ProJenX社はコロンビア大学の研究者らが所属するProject ALSと共同で創られた会社です。同社はMedical Excellence Capitalより510万ドルの資金供与を受けています。
▽prosetinは中枢神経に到達可能な経口薬剤であり、MAP4キナーゼを阻害することにより小胞体ストレスを緩和し、治療的効果を発揮することが期待されています
▽モデルマウスにおいて、炎症抑制効果と、運動神経細胞の生存期間延長効果などが確認されています
▽prosetinは2020年にFDAによりorphan drug指定されています。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/03/01/projenx-develop-als-therapy-prosetin-brain-disease/
・ALS NEWS TODAYの3月22日付記事からです
▽Amylux社はアメリカでAMX0035のExpanded Access Program(日本での患者申出療養制度に該当)が開始することを公表しました。このプログラムに参加するためには発症3年以上経過しており、継続的な治療を受けていることが条件となります。
▽このプログラムは現在進行中の第3相試験へのエントリー基準を満たさない患者に対してAMX0035の早期アクセスを可能とするために開始されました
▽このプログラムは現在進行中の第3相試験およびFDAによるAMX0035のALS治療薬としての承認審査と並行して実施される予定です。承認申請に関するオンラインミーティングは3月30日に開催され、6月29日までに決定される予定です。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/03/22/amx0035-expanded-access-program-launched-eligible-us-patients/
▽今回研究者らは、SOD1変異ALSモデルマウスにおいて、症状発現初期に5日間の医療用オゾン投与による効果を評価しました。
▽その結果、モデルマウスの体重、運動能力、疾患期間、生存率に関しては有意な効果を確認することはできませんでした。しかし、進行期のモデルマウスの脳幹では、神経変性が減速することが確認されました。また、脳幹部ではミクログリアの増殖が抑制され、アストロサイトもほとんど影響を受けないことが観察されました。
▽以上の結果は、医療用オゾンが、おそらくは抗炎症作用により神経保護作用を発揮する可能性を示唆するものです
(この研究はドイツ、Philipps-UniversityのBetteらにより報告され、2022年3月21日付のInt J Mol Sci.誌に掲載されました)
▽その結果、補中益気湯とリルゾール投与は、モデルマウスの腓腹筋における炎症、自食作用、ミトコンドリア機能異常を有意に減少させました。また総クレアチン濃度の上昇がみられました。これらの効果は炎症性サイトカインの調節を介していることを示唆する結果が得られました
▽以上の結果は、補中益気湯とリルゾールの併用がALSモデルマウスに対して単剤治療よりも優れた効果を発揮する可能性を示唆するものです。
(この報告は、Korea Institute of Oriental MedicineのCaiらにより報告され2022年3月18日付のAntioxidants誌に掲載されました)
▽FUS蛋白質はDNA/RNA結合蛋白質であり、DNA修復とRNA処理に関与しています。特定のFUS変異はALSの病因となることが知られていますが、FUSによる神経変性のメカニズムはほとんどわかっていません。
▽今回、研究者らはFUS変異ショウジョウバエモデルを用いて、グルタチオントランスフェラーゼ オメガ2(GSTO2)の過剰発現が病態に与える影響を評価しました
▽その結果、GSTO2の過剰発現は、細胞質内のFUS凝集体を減少させ、神経毒性やミトコンドリア機能障害を緩和しました。
▽FUSのグルタチオニル化は、相分離を促進することによりFUSの凝集を誘導することが知られていますが、GSTO2は、脱グルタチオニル化により細胞質FUSの凝集を抑制することがわかりました。
▽さらに、ヒトGSTO1をマウス神経細胞で過剰発現させると、FUSによる神経毒性および細胞質内FUSの凝集が減弱することがわかりました
▽以上の結果はFUSのグルタチオニル化の調節が、FUS関連神経変性疾患の治療戦略として有望な可能性を示唆するものです
(この研究は、韓国、Soonchunhyang UniversityのChaらにより報告され、2022年3月28日付のDev Cell誌に掲載されました)
▽補足運動野と一次運動野に64個の微小電極アレイを2つ埋め込む新規脳内電極インプラントにより、34歳のロックイン状態のALS患者が家族とコミュニケーションすることが可能となりました。
▽この患者は2017年から視線追跡装置による意思表示が困難となりました。1つ1/10インチほどのインプラントを移植された後、週間かけて、電極に拾われるように脳の活動を調節する方法を学びました。
▽患者は自分の体を動かすように指示することで、脳の活動を変化させ、その電気信号を使って、聴覚の音を上下に変化させ、音の高さの上下で「はい」「いいえ」を表現できるようにしました。 さらにこのシステムを文字入力装置と組み合わせ、文字入力装置が文字を読み上げ、「はい」「いいえ」方式で文字を選択することで、言葉を綴り、コミュニケーションをとることができるようにしました。
▽使い始めて3日目には、自分の名前だけでなく、妻の名前と4歳の息子の名前も正しく書けるようになりました。このシステムは平均して1分間に1文字よりわずかに遅い速度で文字を入力可能でした
▽植え込み後4ヶ月で、自分の考えを表現し、自分のケアや快適さに関する決定を伝える作業に移行し、頭や手足の調節を依頼したり、異なる種類の食事を依頼したりすることを表現できるようになりました。また研究者に感謝の言葉を伝えたり、息子とコミュニケーションをとることができるようになりました
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/03/24/brain-implant-lets-fully-paralyzed-man-communicate-family-again/
▽選択的なCx43ヘミチャネル阻害剤であるtonabersatは、片頭痛に対して既に臨床試験が行われている薬剤であり、ALSの治療薬となりうる可能性があります。
(この研究は、アメリカ、The Johns Hopkins University School of MedicineのAlmadらにより報告され、2022年3月29日付のPNAS誌に掲載されました)
▽色素化合物であるviolaceinはこれまでに神経保護作用を有することが報告されています。今回研究者らはSOD1変異ALSモデルラットから得られたアストロサイトを用いて、violaceinの効果を評価しました
▽その結果、violaceinは神経毒性の高い異常なアストロサイトを選択的に死滅させました。またSOD1変異モデルラットにviolaceinを投与すると、体重や筋力の維持効果や神経筋接合部の完全性維持効果などが確認されました。
▽以上の結果はviolaceinがALSモデル動物に対して治療的効果を有する可能性を示唆するものです
(この研究は、ウルグアイ、Instituto de Investigaciones Biológicas Clemente Estable のOlivera-Bravo Sらにより報告され、2022年3月15日付のSci Rep.誌に掲載されました)
▽今回、ALS患者を対象にHALを使用し、HALトレーニングが歩行能力に影響を与えるかどうかが評価されました。
▽患者は1日1回(1回20~40分)のHALトレーニングを合計9~10日間、4週間以上かけて実施しました。歩行能力は2分間歩行試験、10m歩行試験(HAL補助なし)、ADLはBarthel IndexとFunctional Independence Measureを用いて、HALトレーニングの実施前後に評価されました。
▽その結果、2分間歩行テストでは,ベースラインの平均歩行距離は73.87m,HALトレーニング後は89.9mと有意に延長しました。10m歩行テストでは、歩行速度、10m歩行での歩幅には有意な変化はありませんでしたが、歩数が有意に改善しました
▽以上の結果はHALがALSの歩行能力の改善と維持に有効である可能性を示唆するものです。
(この研究は、東邦大学のMoriokaらにより報告され、2022年3月10日付のJ Clin Neurosci. 誌に掲載されました)
▽研究者らはALS患者と健常者とで、各種分析技法を用いて大脳皮質運動野のメタボローム解析を行い、代謝物プロファイルに変化があるかどうかを検討しました
▽その結果、NAD+の減少が主要な問題の1つであることがわかりました。ニコチンアミドモノヌクレオチドはNAD+濃度を回復させることが知られています。TDP-43蛋白症モデルマウスの上位運動神経細胞に対してin vitroでニコチンアミドモノヌクレオチドを投与すると病態改善効果が観察されました。
▽以上の結果はTDP-43蛋白症に対してNAD+バランスを回復させることが治療的に有効な可能性があることを示唆するものです
(この研究は、アメリカ、Northwestern UniversityのGautamらにより報告され、2022年3月11日付のSci Rep.誌に掲載されました)
▽今回研究者らはプロリン-アルギニンポリジペプチドが、運動野に高発現しているNav1.2/β4ナトリウムチャネル複合体を介する持続的ナトリウム電流を増加させることによって、皮質運動神経細胞の過剰興奮を引き起こすことを明らかにしました。
▽これらの知見は、C9orf72遺伝子変異がどのようにして運動神経細胞の過剰興奮を引き起こし、運動神経細胞死につながるのかを理解するための基礎となるものです。
(この研究は韓国、Sungkyunkwan University School of MedicineのJoらにより報告され、2022年3月15日付のPNAS誌に掲載されました)
▽田辺三菱製薬はエダラボンの経口製剤の日本での承認申請を行っています。アメリカでもすでに申請されており、アメリカでの最終決定は5月が予定されています
▽185名の患者を対象としたオープンラベルの第3相試験は既に終了しており、ラジカットと同じ投与方法で105mgが48週間投与されました。 中間解析の結果、経口エダラボン製剤は約6カ月間の投与で、安全かつ良好な忍容性が確認されました。また、探索的な結果では、ラジカットと同程度に、機能低下を遅らせる可能性があることが示唆されました。
▽現在経口エダラボンの2つの投与方法を評価する第3b相試験が進行中で380名のALS患者を対象に有効性などが評価される予定です
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/03/21/mitsubishi-tanabe-seeks-approval-japan-oral-edaravone-formulation/
・ALS NEWS TODAYの3月17日付記事からです
▽現在第3相試験が進行中のClene Nanomedicine社のALS治療薬候補であるCNM-Au8ですが、第2相試験の事後解析の結果、一部サブタイプにおいて有効性を示唆する結果がえられました
▽この第2相試験では、45名のALS患者が対象となりプラセボ対照で36週間、有効性や安全性が評価されました。この第2相試験では運動単位数指数(MUNIX)スコアで測定される運動神経細胞数の減少を、主要評価項目として用いた初めての試験でした。
▽全体としてCNM-Au8はプラセボと比較してMUNIXのスコアを有意に変化させることができませんでした。しかし四肢発症型では、MUNIXスコアがプラセボ投与群で約40%、CNM-Au8投与群で20%強低下したことがわかり、有効性を示唆する結果となりました。
▽また、ALSの進行の指標として、死亡や気管切開、人工換気、胃瘻造設などに至った割合について比較したところ、CNM-Au8は36週間の試験期間中にこれらのリスクを約37%有意に低下させることがわかりました。
▽また臨床試験に参加した80%の患者がその後の非盲検延長試験に参加しましたが、この延長試験において、予想死亡率の統計モデルを構築し、実際の試験結果と比較したところ、CNM-Au8は死亡リスクを約57%低下させることを示唆する結果が得られました。
▽今年後半にはHEALEY ALS Platformによる第3相試験の最初の結果が公表されることが予定されています
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/03/17/mda-2022-cnm-au8-may-slow-als-progression-reduce-mortality-risk/
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04998305
・プラセボ対照で行われ32名のALS患者を対象に42日間で安全性などが評価される予定です
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05279755