▽今回、研究者らは、チオフラビンT蛍光色素を用いて新規オキシンドール化合物の凝集体形成阻害作用を検討しました。
▽その結果、新規オキシンドール化合物であるGIF-0890-rは遺伝性ALSの原因である変異SOD1蛋白質凝集体形成を効果的に阻害しました。また、GIF-0827-rとGIF-0856-rは、ヒトプリオンタンパク質(hPrP)の凝集体形成も効果的に阻害することがわかりました。
▽以上の結果は、これら新規オキシンドール化合物がアミロイド形成による神経変性疾患の治療薬候補となりうる可能性を示唆するものです
(この研究は、岐阜大学のKimuraらにより報告され、2022年2月22日付の Biochim Biophys Acta Gen Subj誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは変異SOD1蛋白質を過剰発現させた細胞モデルを用いて、酪酸によるミトコンドリア機能への影響を検討しました
▽生細胞共焦点顕微鏡により、酪酸はミトコンドリアの断片化を抑制し、ミトコンドリアネットワークを改善することがわかりました。
▽酪酸処理した細胞は、ミトコンドリアの予備呼吸能が5倍程度増加することがわかりました。またミトコンドリアの生合成に関与する制御因子であるPGC1αのmRNA濃度も転写誘導され、ミトコンドリア機能に関与する主要分子のmRNA濃度も増加しました。
▽以上の結果は、酪酸によるミトコンドリア機能改善効果がPGC1αを介しており、今後治療ターゲットとして有望な可能性を示唆するものです
(この研究は、アメリカ、University of Texas at ArlingtonのLiらにより報告され、2022年2月19日付のBiomolecules誌に掲載されました)
▽Tofacitinibはヤヌスキナーゼ阻害剤であり関節リウマチなどに保険承認されています。炎症性サイトカインのシグナル伝達を阻害し、免疫系細胞の機能を抑制します。このサイトカインにはナチュラルキラー細胞の機能と増殖に関連する主要なサイトカインであるIL-15が含まれます
▽今回、研究者らはTofacitinibがALS患者由来のナチュラルキラー細胞の細胞傷害性やサイトカイン産生を抑制するかどうかを検証しました
▽その結果、TofacitinibはALS患者由来ナチュラルキラー細胞において、細胞傷害性、炎症性遺伝子発現、炎症性サイトカイン分泌で測定したIL-15誘発の活性化を抑制することがわかりました。さらに、tofacitinibは、ナチュラルキラー細胞を介した細胞傷害からALS運動神経細胞を保護することがわかりました
▽以上の結果はtofacitinibがALSの治療薬候補として有望である可能性を示唆するものです
(この研究は、アメリカ、University of MichiganのFigueroa-Romeroらにより報告され、2022年2月7日付のFront Immunol.誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは、TDP-43の欠失が、UNC13Aへの隠れエクソンの強固な組み込みをもたらし、その結果、ナンセンス変異依存mRNA分解をもたらし、UNC13A蛋白質の喪失につながることをみいだしました。
▽ALSと関連したUNC13Aのイントロン多型はTDP-43の結合部位と重複しています。
▽今回の知見は、核内TDP-43の機能喪失と疾患との遺伝的関連性を明らかにしたものであり、UNC13A変異がTDP-43機能低下の影響を悪化させるメカニズムを明らかにするものです。またTDP-43蛋白症の有望な治療ターゲットとなることが期待されます。
(この研究はイギリス、Queen Square Institute of NeurologyのBrownらにより報告され、2022年2月23日付のNature誌に掲載されました)
▽その結果、ヒト脱落乳歯の無血清培養上清である、ヒト脱落乳歯歯髄幹細胞上清が、変異SOD1由来の細胞内凝集体形成と神経毒性を抑制することがわかりました。
▽この神経保護作用は熱ショック蛋白質とインスリン様成長因子1受容体の活性化と部分的に関連することがわかりました。ヒト脱落乳歯歯髄幹細胞上清はiPS細胞由来運動神経細胞に対しても保護作用を発揮しました。
▽この保護作用は孤発性ALSに対しても期待できることがわかりました。以上の結果はヒト脱落乳歯歯髄幹細胞上清がALSの治療薬候補として有望な可能性を示唆するものです
(この研究は、岐阜薬科大学のUedaらにより報告され、2022年2月3日付のFront Pharmacol.誌に掲載されました)
▽今回、研究者らはTRAP1の過剰発現が、酸化的ストレス下において、運動神経細胞のミトコンドリア機能不全と細胞死から神経細胞を保護する作用を有することをみいだしました
▽齧歯類の運動神経細胞においては、shRNAによるTRAP1発現のノックダウンはミトコンドリア機能不全をもたらしますが、酸化的ストレスによる傷害をさらに悪化させることはありません。
▽以上の結果は、TRAP1がALSなどのミトコンドリア機能不全が病初期のマーカーとなりうる神経変性疾患において、治療ターゲットとなりうる可能性を示唆するものです
(この研究は、イギリス、University College LondonのClarkeらにより報告され、2022年2月4日付のInt J Mol Sci.誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは、骨格筋特異的ミオシン調節軽鎖キナーゼの過剰発現が筋機能改善につながると考えられていることから、筋収縮力を改善させる可能性がある骨格筋特異的ミオシン調節軽鎖キナーゼ(skMLCK)に着目しました
▽SOD1変異ALSモデルマウスの下肢筋に対してskMLCKをエンコードするアデノ随伴ウイルスベクター6型が筋注され、対照群と比較されました
▽その結果、アデノ随伴ウイルスベクターにより注入されたskMLCK遺伝子は、骨格筋でskMLCK蛋白質を発現しました。skMLCKが注入された骨格筋では単収縮力および持続的収縮力の増大が観察されました。
▽以上の結果は、skMLCKの過剰発現は衰えた筋機能を回復させることができる可能性を示唆するもので、今後のALSの治療法となりうる可能性があります。
(この研究は大阪大学のOyaらにより報告され、2022年2月3日付のInt J Mol Sci.誌に掲載されました)
▽今回、研究者らはSOD1変異ALSモデルマウスにおいて、バルプロ酸とレスベラトロールの併用が、RelAの正常なアセチル化状態を回復し、NF-κBの神経保護型への変化を回復させることができることを示しました
▽雄マウスに対して両者を投与すると22日間の発症遅延効果がみられました。一方雌マウスではこのような効果はみられませんでした。しかし雌マウスでは進行期における重症度の軽減効果が観察され、生存期間の延長効果がみられました。雄マウスでは進行期における効果はあまりありませんでした
▽以上の結果は性別依存性に、バルプロ酸とレスベラトロールの併用投与はマウスに対して治療的効果を発揮することを示唆するものです
(この研究は、イタリア、 University of VeronaのBankoleらにより報告され、2022年1月19日付のInt J Mol Sci.誌に掲載されました)
▽NLRP3が関与する炎症経路を阻害することで、ミクログリアによる炎症が抑制され、治療的有用性を発揮することが期待されています。
▽今回、研究者らは、ミクログリアの炎症抑制を目的として3級スルホニルウレア化合物であるAMS-17を開発しました。
▽ AMS-17は、NLRP3 およびその下流成分、ならびに caspase-1、TNF-α、IL-1β、iNOSなどのサイトカイン発現を阻害しました。同時にマウスの脳内でのミクログリアの活性化を阻害しました。
▽以上の結果は、AMS-17が炎症抑制効果を有しており、神経変性疾患に治療においても有用な可能性を示唆するものです
(この研究は、アメリカ、 University of CincinnatiのZhangらにより報告され、2022年3月15日付のBioorg Med Chem.誌に掲載されました)
▽その結果、メトホルミンはモデル線虫の寿命を有意に延長し、運動能力を向上させ、抗酸化活性を高めることがわかりました。さらに、メトホルミンはモデル線虫における自食機能、生存期間、酸化ストレスなどを制御することが知られているlgg-1、daf-16、skn-1などの遺伝子の発現を亢進させることがわかりました。
▽SOD1変異ALSモデル線虫においてlgg-1やdaf-16を過剰発現させると、病態緩和効果がみられました。一方でlgg-1ないしdaf-16を遺伝子的に除去するとメトホルミンの効果は消失しました
▽以上の結果は、メトホルミンは部分的に自食作用の亢進作用を介して変異SOD1蛋白質による細胞毒性から保護的作用を発揮し、daf-16経路を介して生存期間を延長させる効果を有することを示唆するものです。メトホルミンはALSに対して治療的効果を有する可能性があり、今後の検証を要します
(この研究は、中国、Dalian Medical UniversityのXuらにより報告され、2022年2月1日付のFree Radic Biol Med.誌に掲載されました)
▽ 翻訳後修飾は蛋白質の相分離の重要な調節因子であり、神経変性疾患における蛋白質凝集との関連が指摘されています。ALSにおける主要な凝集蛋白質であるTDP-43は、ALSにおいてはC末端のいくつかのセリン残基で過剰リン酸化されており、この過程は一般にTDP-43の凝集を促進すると信じられてきました。
▽今回、研究者らは、カゼインキナーゼ1δを介したTDP-43の過剰リン酸化やC末端のリン酸化修飾は、TDP-43の相分離や凝集を抑制し、代わりにTDP-43の凝縮体をより液体的で動的な状態にすることを見いだしました。
▽細胞実験では、リン酸化残基への置換はTDP-43の核内移行やRNA制御機能には影響しませんが、膜をもたない小器官への蓄積を抑制し、溶解性を促進することが示されました。
▽以上の結果は、TDP-43の過剰リン酸化はTDP-43の凝集に対抗するための細胞保護反応であると推測することも可能です
(この研究は、ドイツ、Johannes Gutenberg-UniversitätのGruijsらにより報告され、2022年2月3日付のEMBO J誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは、ジペプチド繰り返し蛋白質のうち、HDAC6がpoly-GAと特異的に相互作用し、患者組織の封入体や、モデルマウスの封入体において同時局在化していることをみいだしました
▽HDAC6の過剰発現は、HDAC6の脱アセチル化酵素活性とは無関係に培養細胞中のpoly-GA濃度の上昇をもたらしました。
▽さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドの注入によりHDAC6の発現を低下させると、C9orf72遺伝子変異モデルマウスのpoly-GA封入体の数が有意に減少しました。
▽以上の結果は、HDAC6の発現を薬理学的に低下させることが、C9orf72遺伝子変異ALSの治療に有用である可能性を示唆するものです。
(この研究は、アメリカ、Mayo ClinicのDel Rossoらにより報告され、2022年1月12日付のFront Cell Dev Biol.誌に掲載されました)
・261名のALS患者を対象にプラセボ対照で行われ、24週間で有効性や安全性などが評価される予定です
・SAR443820は神経細胞シグナル経路やサイトカイン放出、炎症経路に関与するRIPK1阻害剤であり、神経保護作用による治療的効果が期待されています
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05237284
・この試験では20名を対象にオープンラベルで25週間、安全性などが評価される予定です
・fasudilは経口投与可能なRho kinase阻害剤であり、ALSに対する治療的効果が期待されています
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05218668
▽NP001の第2b相試験では、発症3年以内でベースラインの高感度CRP値が1.13mg/L以上の138名がエントリーされ、プラセボ対照で6か月間NP001の有効性などが評価されました。全体としてはALSFRS-R得点の変化量はプラセボ群と有意差はありませんでした。
▽しかしNP001の第2a相試験と第2b相試験の事後解析により、40-65歳でCRP値が高い群(117名)では、プラセボ投与群と比べ、ALSFRS-Rスコアの低下率が全体で36%遅いことがわかりました。
▽また試験開始時のCRP値が高いほど、治療効果が得られやすいことを示唆する結果が得られました。ベースライン時のCRP値が3mg/L以上の場合、NP001はプラセボ群に比べ10倍以上、有意に疾患の進行を認めない割合が多くなりました。
▽これらの結果を裏付けるため今後さらに臨床試験での検証が期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/02/10/np001-may-slow-als-progression-in-40-65-year-olds-with-inflammation/