▽QurAlis社のALS治療薬候補であり、アンチセンス・オリゴヌクレオチド製剤であるQRL-201が基礎実験で良好な結果が観察されたことが公表されました
▽QRL-201はStathmin-2とよばれる分子の産生を増加させ、神経保護作用を発揮することが期待されています。
▽Stathmin-2は神経の修復と軸索の安定性保持に重要な蛋白質であり、ALSでは発現が低下していることが報告されています。Stathmin-2が低下すると、蛋白質産生に重要な役割を果たすゴルジ体が断片化し、神経細胞死につながることと考えられています。
▽TDP-43が核内に存在しなくなると、Stathmin-2のmRNAに含まれる隠れエクソン(cryptic exon)にTDP-43が作用せず、stathmin-2蛋白質の発現が停止し、短く機能しないStathmin-2が生成します。研究者らはStathmin-2のmRNAに隠れエクソンが保持されないように機能するアンチセンス・オリゴヌクレオチドを開発し、正常なStathmin-2蛋白質の発現を増加させることに成功しました。
▽細胞実験では、TDP-43の喪失にも関わらず、Stathmin-2濃度の増加と、神経保護作用を示唆する結果が得られました
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/01/05/antisense-oligonucleotide-stathmin-2-levels-lab-grown-motor-neurons-qrl-201-als-quralis/
・ALS NEWS TODAYの1月6日付記事からです
▽62歳のオーストラリアのALS患者であるO’Keefe氏がStentrodeと呼ばれるブレイン・コンピュータ・インターフェースにより世界で初めてツイートを行うことに成功しました
▽このインターフェースは頸静脈から挿入したカテーテルにより運動野に隣接する静脈内に電極を配置し、ワイヤーを通じて胸の皮下に埋め込まれたセンサーに脳活動の信号が送られるものです
▽脳の活動は機械学習により解析され、患者の思考を言葉に変換します。O’Keefe氏は、30分間に7回の投稿を行うことに成功しました。重度の麻痺を有する患者でもStentrodeを通じたコミュニケーションが可能となることが期待されます。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/01/06/als-patient-posts-1st-tweet-using-stentrode-brain-computer-interface/
▽Prilenia Therapeutics社のALS治療薬候補であり、HEALEY ALSプラットフォームによる臨床試験が実施中のpridopidine試験について、163名の患者エントリーが完了したことが公表されました
▽HEALEY ALSプラットフォームで試験される5つの薬剤のうち、既に3つの薬剤であるClene NanomedicineのCNM-Au8、Biohaven Pharmaceuticalsのverdiperstat、UCBのzilucoplanについて全ての患者エントリーが完了しています。pridopidineについては本年中に最初の結果が公表されることが予定されています
▽HEALEY ALSプラットフォーム試験の各群では、約160名のALS患者が治験薬(120名)またはプラセボ(40名)を24週間(約6ヶ月)投与する群に無作為に割り付けられます。
▽Pridopidineは、シグマ1受容体を活性化することにより、神経細胞を保護するように設計された経口投与可能な低分子化合物です。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/01/10/pridopidine-arm-healey-als-platform-trial-fully-enrolled/
▽AcuraStem社のALS治療薬候補であるAS-202がTDP-43蛋白症モデルマウスにおいて、運動機能の低下を抑制し、生存期間を延長したことが第32回国際ALS/MNDシンポジウムにおいて公表されました
▽AS-202は、PIKfyveと呼ばれる酵素の産生を抑制することにより、リソソームの数を増やし、折り畳み異常TDP-43蛋白質の除去を促進するように設計されたアンチセンス・オリゴヌクレオチド製剤です
▽AS-202は他の蛋白質の産生に影響を与えることなく、PIKfyveの濃度を有効に低下させました。 また良好な忍容性を示すことも示されました。AcuraStem社は今後FDAに対して臨床試験の申請をするために必要な毒性試験を実施するための資金を米国国防総省から獲得しています
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/01/14/acurastems-as-202-als-shows-promise-preclinical-studies/
▽FDAはPharmaTher社のALS治療薬候補であるケタミンの第2相試験実施を承認しました。この第2相試験では36名のALS患者を対象に安全性と有効性が評価される予定です。ケタミンは麻酔薬として使用される催幻覚作用のある規制薬物ですが、グルタミン酸NMDA受容体を間接的に遮断することにより、ALSの病態に関与していると考えられているグルタミン酸の細胞毒性を緩和し治療的効果を発揮することが期待されています。
▽第2相試験では6か月間で安全性などが評価され、ALSの重症度と進行度のマーカーとして用いられるニューロフィラメント軽鎖の濃度も測定されます。また、ケタミン投与後の筋力と肺機能なども評価される予定です。
▽モデルマウスではケタミンによる神経保護作用や生存期間延長効果などが確認されています。ケタミンはFDAにより治療抵抗性うつ病に対する承認を得ています。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/01/18/fda-approves-phase-2-trial-psychedelic-ketamine-als/
▽Eikonoklastes Therapeutics社はカリフォルニア大学とALSの遺伝子治療薬開発についてのライセンス契約を完了したことを公表しました。
▽この遺伝子治療はアデノ随伴ウイルスベクターにより、synapsin-Caveolin-1 cDNA(SynCav1)と呼ばれる遺伝子を中枢神経に注入する方法であり、神経変性疾患に対する治療的効果が期待されています。すでにアルツハイマー型認知症においては動物実験が進められています。
▽今後、家族性ないし孤発性ALSをターゲットとして、この治療法が有用かどうかの評価が基礎実験により行われる予定です。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/01/28/potential-als-gene-therapy-university-california-license-eikonoklastes-therapeutics/
▽AITherapeutics社は同社のALS治療薬候補であるAIT-101の第2相試験において患者エントリーが開始されたことを公表しました。
▽AIT-101はC9orf72遺伝子変異ALSを対象としており、第2相試験では12名の患者を対象に、3か月間投与されプラセボ対照で安全性などが評価される予定です。
▽AIT-101は選択的PIKfyveキナーゼ阻害剤で、リソソームの数を増やし、それによって有害蛋白質の凝集塊を除去し、治療的効果を発揮することが期待されています。 AIT-101は、転写因子TFEBを活性化することにより、リソソームの数を増加させることができます。TFEBはALS患者の脳内で濃度が低下していることが報告されています。
▽ AIT-101はAI Therapeutics社の人工知能プラットフォームである「Guarian Angel」によってALS治療薬候補として同定されました
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/01/27/phase-2-trial-oral-ait-101-enrolling-adults-c9orf72-mutations-us/
▽フランスANSMはInFlextis Bioscience社の球麻痺発症型ALSに対する治療薬候補であるIFB-088の第2相試験の開始を承認しました。
▽IFB-088はSephin 1としても知られており、ストレス状況下においてPPP1R15A/PPP1c酵素複合体を抑制し、細胞の統合ストレス応答活性を維持することにより細胞保護効果を発揮することが期待されています
▽すでに同様の作用機序を有するguanabenzにおいて、球麻痺発症型ALSにおける有効性を示唆する結果がえられていますが、guanabenzは第2相試験において低血圧などの有害事象のため、開発が見送られた経緯があります。Sephrin 1は低血圧などの有害事象を伴わないことが期待されており、72名の健常者を対象とした第1相試験では安全性が確認されました
▽第2相試験では42名の球麻痺発症型ALS患者を対象に、リルゾール併用下においてプラセボ対照で6カ月間、安全性と有効性が評価される予定です
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/01/20/inflectis-okd-to-start-phase-2-trial-of-ifb-088-for-bulbar-onset-als/
・プラセボ対照で300名のALS患者を対象に48週間で行われる予定です
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05178810
・20名のALS患者を対象にオープン試験で2か月ごとに3回髄腔内投与され、4年間経過観察されます。
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05003921
▽このモデルマウスに対して、FUSアンチセンス・オリゴヌクレオチドであるION363を投与したところ、効率的にFUS発現を減少させ、脳と脊髄のFUS蛋白質量が減少し、運動神経細胞の変性が遅延することがわかりました
▽またFUS変異ALS患者において、ION363を反復髄腔内投与し、中枢神経における変異FUS蛋白質濃度が低下する予備的結果が得られました。
▽今後臨床試験での安全性、有効性の検証が期待されます
(この研究は、アメリカ、Columbia UniversityのKorobeynikovらにより報告され、2022年1月28日付のNature Medicine誌に公表されました)
・ baricitinibは関節リウマチ治療薬であり、抗炎症作用により神経保護的に作用し治療的効果を発揮することが期待されています
・20名の患者を対象に16週間で髄液中濃度やバイオマーカーなどが測定される予定です
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05189106
▽CuATSMはミトコンドリア障害を有する細胞に特異的に銅イオンを分配する薬剤であり、ebselenと同時投与することにより、金属運搬作用およびジスルフィド結合促進活性を促進することが期待されます。
▽細胞モデルに対する両薬剤の同時投与は、封入体形成を阻害し、細胞死を減少させることがわかりました。この効果は各々単剤で投与した場合よりも併用した場合の方が顕著でした。
▽以上の結果は、CuATSMとebselenの併用療法がSOD1変異ALSに対して有望な治療戦略である可能性を示唆するものです
(この研究は、オーストラリア、University of WollongongのMcAlaryらにより報告され、2022年1月20日付のJ Biol Chem.誌に掲載されました)
▽49名のALS患者が登録され、GDC-0134の1日1200 mgまでの投与量では、48週までの投与により血小板減少症、知覚異常、視神経虚血性障害の3つの重篤な有害事象が発生しました。またGDC-0134の暴露量に比例した血漿神経フィラメント軽鎖濃度の上昇が観察されました。これは減少するとの予想に反するものでした。
▽以上の結果よりGDC-0134の安全性は容認できないと判断され、今後の薬剤開発は中止となりました。
(この研究は、アメリカ、Forbes Norris MDA/ALS Research CenterのKatzらにより報告され、2022年1月9日付のAnn Clin Transl Neurol.誌に掲載されました)
・ALS NEWS TODAYの1月3日付記事からです
▽ALS NEWS TODAYの2021年で最も読まれた記事トップ10が公表されました
・第10位:急速進行型ALSに対するAMX0035の長期投与成績
▽3月にAmylyx社がAMX0035の第2/3相試験とその延長試験において、急速進行型ALSに対する投与成績を公表しました
▽AMX0035は恒久的人工換気や入院、死亡などのリスクを44%減少させ、ALSFRS-Rで測定された機能低下を有意に軽減するとの結果でした。現在別の第3相試験が実施中で、同時にFDAに承認申請中です。
・第9位:Amylyx社がアメリカでAMX0035承認を計画
▽9月の記事ですが。Amylyx社がFDAに対してAMX0035の承認申請を行うことを決定した記事が9位になりました。11月に既に申請がなされており審査中となっています。これとは別にAMX0035は大規模第3相試験が進行中になっています
・第8位:Arimoclomolが第3相試験で主要評価項目を達成できず
▽Arimoclomolの第3相試験の結果を報じた5月の記事が第8位になりました
・第7位:韓国での幹細胞治療であるNeuroNata-Rの第3相試験開始
▽3月に記事となった韓国での自家間葉系幹細胞移植であるNeuroNata-Rの第3相試験開始のニュースが第7位となりました。NeuroNata-Rは韓国では条件付き承認を得ています
▽当ブログでもこちら(https://alexkazu.blog.fc2.com/blog-entry-2040.html)で記事にしています。
・第6位:BrainStorm社がNurOwn細胞製造工程についてFDAと協議
▽2月に記事となったものです。BrainStorm社がNurOwn細胞の製造工程についてFDAと協議した記事が6位となりました。
・第5位:NurOwn細胞が第3相試験でプラセボに対する優位性を示せず
▽3月に記事となったものです。BrainStorm社のALS治療薬候補の自家骨髄間葉系幹細胞移植であるNurOwn細胞の第3相試験の結果が公表され、残念ながら有効性に関する指標でプラセボとの有意差がみられない結果となりました。発症初期の患者を対象とした事後解析では有効性を示唆する結果が得られたことから、現在Expanded Access ProgramによりNurOwn細胞の投与が継続されています。
・第4位:CNM-Au8が第2相試験で良好な結果
▽1月に記事となったものです。Clene Nanomedicine社がCNM-Au8の第2相試験(RESCUE-ALS試験)において、約40%の患者で運動神経細胞への良好な効果がみられる可能性が報告されました。残念ながらその後の報告において、有効性に関する指標についてはプラセボと比較して有意な効果を認めない結果となりました。
・第3位:ALSモデルマウスにおいて運動神経細胞保護に有効な化合物を同定
▽3月に記事となったものです。ノースウエスタン大学の研究者らがNU-9とよばれる化合物が上位運動神経細胞の損傷を減少させることを報告しました。
▽これらの結果は2つの遺伝子変異を有するモデルマウス(SOD1変異およびTDO-43変異)において確認されました。
▽当ブログでもこちら(https://alexkazu.blog.fc2.com/blog-entry-2014.html)で記事にしています。
・第2位:良質なコレステロール濃度が高いことがALSリスク低減と関連する
▽10月に記事となったものです。イギリスの研究者らは、50万人のデータを解析した結果、HDLコレステロールが高い一群においては、ALS発症リスクが低い可能性を報告しました。一方でLDLコレステロールが高いと、リスクの上昇につながることを示唆する結果が得られました
・第1位:AMX0035の国際第3相試験が開始
▽5月に記事となったAMX0035の第3相試験開始についてのニュースが1位となりました。AMX0035に対する期待の高さを示すものと思われます。
▽AMX0035の国際第三相試験(PHOENIX試験)が最大600名の患者を対象に開始されています。この第3相試験は48週間の予定で行われ、11月から投与が開始されています。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/01/03/top-10-als-stories-2021/