▽Denali Therapeutics社が開発中の経口ALS治療薬候補であるDNL343の第1b相試験において、投薬が開始されました。
▽この試験ではDNL343の安全性と薬物動態などが検証される予定です。
▽DNL343は蛋白質複合体であるelf2Bを活性化させる作用を有しています。ストレスに反応し、細胞はelf2Bの産生を抑制し、蛋白質の生成を抑制し、ストレス顆粒を形成します。
▽ストレス顆粒は原因となるストレスが解消すると通常は分解されますが、ALSなどの病態ではストレス顆粒が病的に維持されています。このストレス顆粒の存在がTDP-43などの凝集体形成に関連すると考えられています
▽DNL343はelf2Bを活性化し、蛋白質合成を回復させることにより、TDP-43凝集体形成を抑制し、神経細胞の生存を延長させることが期待されています
▽健常者を対象とした第1相試験では安全性が確認されています。この第1b相試験ではプラセボ対照で、30名のALS患者を対象にDNL343の安全性、薬物動態などが評価される予定です。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/09/16/dosing-begins-phase-1b-trial-oral-dnl343-als-patients/
▽QuaAlis社は、同社が開発中の画期的なALS治療薬候補であるQRL-201の臨床試験を2022年中にも開始する見込みであることを公表しました
▽QRL-201はALSにおいて低濃度となっているstathmin-2の産生を増加させるように作用する薬剤です。stathmin-2は神経細胞の成長と修復に不可欠な蛋白質です。
▽動物モデルではstathmin-2をコードするSTMN2遺伝子を欠損させると神経変性が生じることが報告されています。
▽基礎実験ではTDP-43の機能低下が原因となり正常なstathmin-2の発現低下が起こることが報告されています。
▽正常なTDP-43は、STMN2のmRNAにクリプティック・エクソンが含まれることを防ぐ役割を果たしています。クリプティック・エクソンは隠れエクソンとも呼ばれ、成熟したmRNAからは除去される小部分になります。TDP-43が核内に存在しないと、STMN2のmRNAへのクリプティック・エクソンの取り込みが促進され、蛋白質翻訳が早期に停止し、機能しないstathmin-2蛋白質が生成されることがわかりました
▽TDP-43の欠損したヒト運動神経細胞モデルにおいて、stathmin-2の濃度を回復させると、神経細胞の修復障害が回復することが示されています
▽QueAlis社は2022年後半にはQRL-201の臨床試験を開始したいとしています
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/09/20/out-of-stealth-quralis-expects-first-trial-2022-als-therapy-qrl-201/
▽これまでに研究者らは、AREに結合するRNA制御因子であるHuRがグリア細胞の炎症促進性サイトカイン産生の制御に重要な役割を果たすことを明らかにしてきました
▽HuRは主に核内に局在していますが、細胞質に移動しRNAの安定性や翻訳効率を制御しています。翻訳のためにはHuRのホモ二量体化が必要であり、今回、研究者らはこの二量体化を阻害する物質であるSRI-42127を開発しました
▽SRI-42127はin vitroおよびin vivoにおいて、リポポリサッカライド投与により活性化したグリア細胞からのIL-6、IL-1β、TNFーα、CCL2などの炎症促進性サイトカインの産生を抑制しました。抗炎症性サイトカインの発現はほとんど影響を受けませんでした
▽以上の結果は、HuRがグリア細胞の活性化に重要な役割を果たしており、SRI-422127などのHuR阻害剤はグリア細胞の活性化による病態を抑制し、治療的に有用な可能性を示唆するものです。
(この研究はアメリカ、The University of Alabama at Birmingham School of MedicineのChellappanらにより報告され、2021年9月17日付のGlia誌に掲載されました)
▽今回、研究者らはTDP-43が効率よく凝集体を形成し、TDP-43がスプライシング制御機能を喪失した細胞モデルを用いて、TDP-43凝集体を除去しうる物質を探索し、その1つとしてチオリダジンを同定しました。
▽チオリダジンによる凝集体除去は、自食経路とは別に生じましたが、プロテアソーム経路の機能を必要としていました。
▽チオリダジンをTDP-43蛋白症動物モデルであるショウジョウバエモデルに投与したところ、運動機能の改善と、TDP-43凝集体の除去、TDP-43の正常機能の回復が観察されました。
▽以上の結果は、細胞モデルによる治療薬候補物質探索と、モデル動物による効果の検証が薬剤探索に有用であることを示唆しており、今後の治療法開発に応用されることが期待されます
(この研究はイタリア、International Centre for Genetic Engineering and BiotechnologyのCragnazらにより報告され、2021年9月24日付のNeurobiol Dis誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは、ヒト骨髄由来CD34+細胞および内皮前駆細胞を発症後のSOD1変異ALSモデルマウスに静注し、治療的効果を検証しました
▽その結果、移植4週後のモデルマウスにおいて、タイトジャンクション構成蛋白質濃度、毛細血管周皮の被覆率、基底膜ラミニン発現、内皮細胞骨格F-アクチンの発現の大幅な増加が観察されました。この効果は、ヒト骨髄由来CD34+細胞よりも、骨髄内皮前駆細胞の方がより強くみられました。
▽以上の結果は、骨髄内皮前駆細胞移植が、ALSの血液脳関門障害の回復のために有用な治療法となる可能性を示唆するものです
(この研究は、アメリカ、University of South FloridaのGarbuzova-Davisらにより報告され、2021年9月16日付のeNeuro誌に掲載されました)
▽試験は107名のALS患者を対象にプラセボ対照で行われ、リルゾール併用下で、36週間でフマル酸ジメチル(480mg/day)の有効性と安全性が検証されました
▽その結果、ALSFRS-Rで評価された有効性については、36週間の変化においてプラセボとの有意差はみられませんでした。安全性については良好でした。
▽ALSに対するフマル酸ジメチルの有効性を支持する結果は得られませんでした
(この研究は、オーストラリア、University of Sydney,のVucicらにより報告され、2021年9月3日付のAnn Clin Transl Neurol誌に掲載されました)
▽また、変異FUS蛋白質は蛋白質の核への取り込みを阻害し、核細胞質輸送を障害します。変異FUS蛋白質は、神経細胞のゴルジ体の断片化や、小胞体ストレスの誘発、小胞体ーゴルジ輸送の障害などをもたらします。
▽プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)は小胞体シャペロンであり、これまで変異SOD1蛋白質や変異TDP-43蛋白質の折り畳み異常を阻害することが知られています
▽今回、研究者らは、変異FUSを発現する神経細胞モデルを用いてPDIの機能を検討しました。
▽その結果、PDIは核細胞質輸送の障害を回復し、変異FUSの封入体形成を抑制しました。またゴルジ体の断片化、小胞体ーゴルジ輸送の障害なども回復しました
▽以上の結果はPDIが変異FUS由来の病態に対して、治療的に作用する可能性を示唆するものです
(この研究は、オーストラリア、Macquarie UniversityのParakhらにより報告され、2021年9月2日付のSci Rep誌に掲載されました)
▽今回、ALS患者に対する自家骨髄由来間葉系幹細胞の髄腔内および静脈内への同時投与の安全性と有効性を評価することを目的とした非盲検前向き試験の結果が報告されました。
▽15名のALS患者が対象となり、移植(100万細胞/kg)の前に神経学的検査を行い、治療前の疾患進行度が評価されました。安全性と有効性の評価は、移植後1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後に行われました。
▽その結果、重篤な副作用はなく、ALSFRS-RとFVCの平均値は、移植開始から3カ月間は安定していました。 しかし、移植6カ月後には、ALSFRS-RとFVCの値の有意な低下が観察されました。
▽今回の結果は、自家骨髄幹細胞の髄腔内および静脈内への同時投与により、ALSの進行が一時的に遅延する可能性を示唆しており、今後は、繰り返し投与による、有効性や安全性を検討する必要があります。
(この研究はイラン、Mashhad University of Medical SciencesのTavakol-Afshariらにより報告され、2021年8月16日付のRegen Ther誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは脳室内出血ウサギモデルを用いて、PPAR-γの活性化が神経学的な回復促進にどのような影響を及ぼすかを検証しました
▽その結果、PPAR-γ活性化は、髄鞘形成を促進し、炎症性サイトカインが減少し、ミクログリアの貪食作用の増加と、オリゴデンドロサイト前駆細胞の成熟促進などが観察されました。
▽オリゴデンドロサイト前駆細胞のトランスクリプトーム解析では、PPAR-γにより、髄鞘形成を促進するように再プログラミングされていることを示唆する結果が得られました。
▽ミクログリアのRNAシークエンス解析では、ALSなどの病態に関与するいくつかの炎症性遺伝子や転写産物の発現が低下していることがわかりました
▽PPAR-γアゴニストによる治療は、髄鞘形成と神経機能の回復を促進する可能性があります
(この研究は、アメリカ、 Albert Einstein College of MedicineのKrishnaらにより報告され、2021年9月7日付のPNAS誌に掲載されました)
▽45名中22名は平均26.6カ月間(2~64カ月)、エダラボン治療を受け、残りの患者はエダラボン治療を受けませんでした(非エダラボン治療群を対照群として解析)。
▽主要評価項目は気管切開による人工換気導入または死亡としました。
▽Kaplan-Meier解析に基づく生存率は、エダラボン群が対照群よりも有意に良好であり、生存期間の中央値はエダラボン群が49(9~88)カ月、対照群が25(8~41)カ月で、統計的有意差を認めました。試験期間中、エダラボンに関連した重篤な副作用はありませんでした。
▽この単施設後顧的観察研究の結果は、エダラボンが長期的にALS患者の生存期間を延長する可能性を示唆するものです
(この研究は帯広厚生病院のHouzenらにより報告され、2021年7月21日付のPharmaceuticals誌に掲載されました)
▽これまでポルフィリンであるTMPyP4がG4C2繰り返し配列由来RNAと結合することは知られていました。しかしこの相互作用の影響はよくわかっていませんでした
▽今回、研究者らはTMPyP4がG4C2繰り返し配列由来RNAの翻訳を阻害することを、細胞モデルなどで確認しました
▽AUGコドンを人工的に挿入しても翻訳の阻害が抑制されなかったことから、TMPyP4の翻訳阻害作用は、開始コドン非依存性翻訳の下流で生じていることが示唆されました
▽ポリソームプロファイリングの分析結果により、G4C2繰り返し配列由来RNA上にポリソームが保持された状態のままで翻訳が阻害されていることがわかりました。このことは、リボソームがRNA上で機能停止していることを示唆するものです
▽以上の結果は、TMPyP4がG4C2繰り返し配列由来RNA上のリボソームの機能停止をもたらし、翻訳を選択的に阻害することを示唆しており、今後の治療法開発において新たな視点を提供するものです
(この研究は大阪大学のMoriらにより報告され、2021年8月25日付のJ Biol Chem誌に掲載されました)
▽AB Science社は、フランス国立医薬品・健康製品安全庁が、同社のALS治療薬候補であるmatitinibの第3相試験において、安全性確保のための措置を承認し、患者登録再開の許可を得たことを公表しました
▽この臨床試験においてはことし6月に、虚血性心疾患のリスクが報告され、自主的に試験が停止されていました。ノルウェーでも同様の決定がなされました
▽masitinibはチロシンキナーゼを阻害することにより、神経炎症などを抑制することにより治療的効果が期待されています。
▽既に終了した、成人ALS患者394名を対象とした第2/3相臨床試験では、リルゾール併用下において機能低下を27%抑制することができることが示されました。 また、全体では生存期間の差は認められませんでしたが、軽度または中等症の患者では、masitinib投与により生存期間が約25カ月間延長し、死亡リスクが44%減少することがわかりました。
▽今回の第3相試験では、軽度から中等症の患者を495名対象に48週間、プラセボ対照で有効性や安全性が検証される予定です
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/09/21/als-patient-enrollment-resumes-masitinib-trials-european-sites/
▽ProMIS Neuroscience社はALS治療薬候補としてTDP-43凝集体に対する抗体を開発中であることを公表しました。現在開発中の抗体には、静注投与する細胞外抗体と、ウイルスベクターで投与する細胞内抗体があります
▽同時にTDP-43蛋白症の病態に関与しているRACK1蛋白質の阻害剤の開発も進行中とのことです。
▽TDP-43蛋白症はALS患者の約97%にみられるといわれています。ProMIS社は同社の開発した計算機プラットフォームを用いて異常TDP-43蛋白質凝集体の拡散に関与する蛋白質の領域に対する抗体を開発しました。この抗体は静注投与されます
▽同時に細胞内で作用する抗体である、イントラボディが開発されています。イントラボディは細胞内に投与することはできないため、ウイルスベクターを用いて細胞内で産生するように投与されます。このイントラボディを投与することにより、蛋白質凝集体が除去され、細胞から別の細胞への異常蛋白質の拡散が抑制されました。
▽同時に、ALSにおいてはRACK1蛋白質がTDP-43凝集体形成に関与していることがわかっており、RACK1を欠損させるとTDP-43凝集体が減少することが細胞モデルで示されたことから、RACK1アンタゴニストも開発中です。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/09/09/promis-neurosciences-validate-tdp-43-antibodies-als-treatment/
・プラセボ対照で行われ45名のALS患者を対象に32週間で安全性、薬物動態などが検証されます。
・AL001はprogranulin蛋白質の産生を促進するためのモノクローナル抗体です。progranulinを分解する受容体蛋白質であるsortilinの活性を阻害することのできる抗体となります。
・progranulin蛋白質の変異がTDP-43凝集体形成につながることから、progranulin蛋白質を増加させると、TDP-43凝集体を減少させることができるのではないかと考えられています、
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05053035
・AP-101は変異SOD1蛋白質に対するヒトモノクローナル抗体です。63名のALS患者を対象にプラセボ対照で行われ、48週間で安全性や薬物動態などが検証される予定です。
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05039099
・以下のページにて治験参加者が募集されています。おそらくエダラボンの経口製剤の第3相試験と思われます。
https://raresnet.com/ad/als02/?gclid=EAIaIQobChMI5cvVvZCA8wIVDnkqCh0z5g95EAMYASAAEgKRsvD_BwE
・AlexKazさん、ありがとうございました!