▽今回、研究者らはRNAヘリカーゼであるDHX36(DEAH-Box Helicase 36)に着目し、RAN翻訳に与える影響を調べました
▽DHX36は細胞内においてDNAおよびRNAのG4重鎖構造(G4)の解除を行うことが知られています
▽細胞モデルにおいて、DHX36の発現を抑制したところ、RAN翻訳が抑制されました。一方DHX36を過剰発現させたところ、RAN翻訳の亢進がみられました
▽ストレス応答により活性化されるRAN翻訳はDHX36の喪失により抑制されることがわかりました。
▽以上の結果は、C9orf72遺伝子由来の有害産物の産生がDHX36により制御されていることを示唆するものであり、治療ターゲットとなりうる可能性があります
(この研究は、アメリカ、University of MichiganのTsengらにより報告され、2021年6月23日付のJ Biol Chem.誌に掲載されました)
▽その結果、R13投与はモデルマウスの運動機能障害を減少させ、脊髄運動神経細胞の病態を緩和し、ミクログリアとアストロサイトの増殖を抑制しました。
▽また、R13はモデルマウスの延髄および脊髄におけるミトコンドリア蛋白質の遺伝子発現を変化させ、特に酸化的リン酸化に関連する蛋白質の発現を促進することがわかりました。さらに、R13はミトコンドリアの生合成を促進し、ミトコンドリアの機能障害を改善することがわかりました
▽以上の結果は、R13がSOD1変異ALSモデルマウスに対して治療的に作用することを示唆しており、治療的応用が期待されます
(この研究は、中国、Shenzhen Center for Disease Control and PreventionのLi Xらにより報告され、2021年5月24日付のTheranostics誌に掲載されました)
▽グルタチオンペルオキシダーゼ4(Gpx4)は、膜中のリン脂質ヒドロペルオキシドを還元することでフェロトーシスを抑制する酵素です。
▽今回、研究者らは、GPX4トランスジェニックマウスと、SOD1変異ALSモデルマウスを交配して、ダブルトランスジェニックマウスを作製しGpx4の病態に与える影響を調べました
▽その結果、Gpx4を過剰発現させたダブルトランスジェニックマウスにおいては生存期間の延長と運動機能の改善がみられました。この効果は過酸化脂質の減少と相関していました
▽以上の結果は、ALSの病態においてフェロトーシスが関与していることを示唆するものであり、今後の治療対象となりうることが期待されます
(この研究は、アメリカ、University of TexasのChen Lらにより報告され、2021年6月18日付のSci. Rep.誌に掲載されました)
▽今回研究者らはこの骨髄由来細胞の病変部への集積性を利用して、細胞を用いた遺伝子治療の遺伝子キャリアとして応用できるかどうかを検討しました
▽骨髄由来細胞に、グルタミン酸の毒性から神経細胞を保護し、CD68プロモーターで駆動するグルタミン酸トランスポーター(GLT)1を発現するレンチウイルスベクターを感染させ、ALSマウスに移植しました
▽その結果、移植を受けたモデルマウスは、運動機能の改善と生存期間の延長を示しました。さらに、インターロイキン-1βが有意に抑制され、IL-4、アルギナーゼ1、FIZZが有意に増加していました。
▽以上の結果は、骨髄由来細胞移植によるGLT1の発現が、治療的効果を有することを示唆しており、今後の治療的応用が期待されます
(この研究は、滋賀大学のOhashiらにより報告され、2021年6月17日付のScientific Reports誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは神経毒性モデルマウスを用いて、clobetasolの機能的、細胞的、代謝的効果を検討しました。
▽その結果、clobetasolは、ソニック・ヘッジホッグシグナル経路を回復させ、脊髄の可塑性をサポートすることで、筋肉の除神経と運動障害を軽減することがわかりました。同時に炎症性ミクログリアと反応性アストログリアの減少、筋萎縮の減少、ミトコンドリア機能の改善も観察されました。
▽以上の結果は、clobetasolが神経筋可塑性を改善することを示唆しており、神経変性疾患における治療効果が期待されます
(この研究は、イタリア、University of CataniaのVicarioらにより報告され、2021年6月16日付のCell Death Dis.誌に掲載されました)
▽今回、研究者らはC9orf72遺伝子変異ALS患者由来の線維芽細胞や、FUS変異ALSモデルマウスを用いて、S100A4転写阻害剤であるニクロサミドを用いて、その効果を調べました
▽その結果、細胞モデルにおいてmTOR、SQSTM1/p62、STAT3、α-SMA、NF-κBなど、ALSの病因として知られているさまざまなマーカーの減少が観察されました。
▽またFUS変異ALSモデルマウスに対するニクロサミド投与により、モデルマウスの脊髄におけるS100A4、α-SMA、PDGFRβの発現減少、中枢および末梢神経組織におけるグリオーシスの減少、線維化の減少、筋再生の促進などが観察されました
▽以上の結果は、S100A4がALSの病態に関与していることを示唆するものであり、ニクロサミドが治療的に作用する可能性を示唆するものです
(この研究はイタリア、University of RomeのMilaniらにより報告され、2021年6月12日付のJ Neuroinflammation誌に掲載されました)
▽PANTHERx Rare Pharmacy社は発売元の田辺三菱製薬アメリカとの合意により、ALS治療薬であるリルゾールの口腔内溶解フィルム製剤であるExservanをアメリカ国内で独占的に販売することを公表しました
▽Exservanは、リルゾール50mgを水なしで口の中で溶かす1日2回投与の経口フィルム製剤で、飲み込む必要がなく、嚥下障害のある進行期の患者においても投与可能となります。
▽リルゾールは進行期においても効果的であるといわれており、投与可能な対象が拡大することが期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/06/29/exservan-mtpa-oral-film-riluzole-us-specialty-pharmacy-pantherx/
▽カリフォルニア州のCedars-Sinai medicalセンターは、約1200万ドルの助成金を得て、ALSに対する神経前駆細胞移植の臨床試験を開始予定となっています
▽この臨床試験では、16名のALS患者が参加予定で、脳の特定の部位に神経前駆細胞が移植されます。神経前駆細胞は、神経細胞やアストロサイトなどの神経系細胞に分化することができます
▽神経前駆細胞は、アストロサイトの生存を促進させる、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)を分泌するように設計される予定です。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/06/25/cirm-funds-als-cell-therapy-trial-cedars-sinai-12m-dollars/
▽Clene社とClene Nanomedicine社は、現在進行中のHEALEY ALSプラットフォームにおいて進行中のALS治療薬候補CNM-Au8の第3相試験の結果公表に向けて準備を行っています
▽結果は来年初めに公表予定となっており、同社は製品化に向けて、製造能力を高めるための設備投資資金を調達予定としています。
▽CNM-Au8は、金ナノ結晶の経口液体懸濁液で、神経細胞のエネルギー需要をサポートすることで、神経細胞の生存、機能を改善するとともに、酸化ストレスを低減することにより治療的効果を発揮することが期待されています。
▽オーストラリアで行われた45名を対象とした第2相試験(RESCUE-ALS)については結果を解析中で7月中にデータ収集が完了予定となっています。中間解析結果では有望な結果が報告されました。
▽またCNM-Au8はHEALEY ALSプラットフォームの最初の3つの試験薬の1つです。この試験では、3月に目標登録数の50%に達し、最終的にはALS患者160名を対象に、CNM-Au8を1日30mgまたは60mg投与する群と、プラセボを24週間投与する群に無作為割付されます。良好な結果が期待されています
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/06/16/clene-raising-funds-manufacturing-capacity-preparing-cnm-au8-healey-trial-results-2022/
▽Amylyx Pharmaceuticals社は、同社のALS治療薬候補であるAMX0035の承認をカナダで申請しています。
▽同社はカナダALS研究ネットワークと共同で実施する特別なアクセスプログラムを通じて、承認決定前にカナダ国内でAMX0035を使用できるようにしたいと考えています。これらの計画は、6月末までに最終決定される予定です。
▽同様の申請は、年内に欧州医薬品庁(EMA)にも提出される予定です。
▽一方、FDAはAMX0035の承認を検討する前に、追加のプラセボ対照臨床試験の実施を要求しています。 そのため、Amylyx社は、数ヶ月以内に国際第3相試験を開始し、最大600人のALS患者を対象に臨床試験を開始する予定です
▽今回のカナダにおける承認申請は、第2/3相試験(CENTAUR試験)の良好な結果に基づくものです。CENTAUR試験では、ALS患者137名が対象となり24週間でAMX0035の有効性などが評価されました。その結果AMX0035はALSFRS-Rで評価した機能低下を有意に抑制し、主要評価項目を達成しました。 さらに、CENTAUR試験とその延長試験を合わせた約3年間の追跡調査では、AMX0035を最初に投与した患者群は、プラセボを投与群と比較して、死亡、気管切開または永続的人工換気、初回入院のリスクが44%低下することがわかりました
▽承認申請の行方が注目されます
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/06/15/amylyx-seeks-approval-canada-als-therapy-amx0035/
▽アルバニー大学RNA研究所からの公表によると、ALSモデルマウスにおいて、RNAアプタマー(特定の標的分子と特異的に結合するRNA分子)と呼ばれるRNA分子が運動神経細胞死を阻止し、運動機能の維持効果を発揮することが確認され、ALS治療薬候補として期待できることがわかりました
▽東京大学と共同で行われているこの研究において研究チームは、グルタミン酸受容体に結合して運動ニューロン内のカルシウム過多を防ぎ、ALSの進行を遅らせる可能性のあるRNAアプタマーを開発しました。これによりALSの病態に関与すると考えられているグルタミン酸による細胞毒性を防ぎ、治療的効果が期待されます。
▽ALSモデルマウスを用いた実験において、RNAアプタマーを脊髄に注入したところ、運動神経細胞死の抑制効果と運動機能の改善効果が認められました。今後さらに研究を重ね臨床試験に結び付けたいとしています
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/06/11/investigational-rna-molecule-may-slow-als-progression/
▽FDAはSpinogenix社のALS治療薬候補であるSPG302に対してorphan drug指定を与えました。 orphan drug指定は、アメリカ国内の患者数が20万人未満の疾患に対する治療法の開発を奨励するためにFDAから与えられるもので、Spinogenix社には臨床試験の支援、税控除、手数料免除などの特典が与えられるほか、承認が得られた場合には7年間の独占販売権が与えられます
▽ SPG302は経口投与可能な低分子化合物で、シナプス機能を回復させることにより治療的効果が期待されている薬剤です。血液脳関門を透過する特性を有しています。
▽SPG302については第1/2相試験の開始が承認されており、さらに大規模な臨床試験での有効性の検証が期待されています
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/06/09/spinogenix-oral-therapy-spg302-als-awarded-fda-orphan-drug-designation
・C9orf72遺伝子変異ALS患者42名を対象に、プラセボ対照で行われ24週間で安全性や薬物動態などが観察されます
・WVE-004はアンチセンス・オリゴヌクレオチド製剤であり、髄腔内投与され、有害なジペプチド繰り返し蛋白質の産生を阻害することにより治療的効果が期待されています
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04931862
▽AB Science社は、ALSに対するmasitinibに関するすべての臨床試験を停止することを公表しました。
▽今回の自主的な中止は、masitinibの使用に関連して、虚血性心疾患のリスクがあることが判明したためです
▽現在第3相試験が進行中ですが、安全性が確認されるまで試験は一時停止となるとのことです
▽既に行われた第2/3相試験において、試験開始前のALSFRS-Rの1ヵ月あたり1.1ポイント未満の進行が比較的緩やかなサブグループにおいては、4.5mg/kgを投与した場合、プラセボを投与した場合と比較して、48週時点でのALSFRS-Rの変化率が27%有意に抑制されたことがわかりました。一方で進行が速い群においてはそのような有意な効果は認められませんでしたが、事後解析では、進行が速い群においても重症度の低い段階から治療を開始すれば、進行を遅らせることができること可能性を示唆する結果が得られていました。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/06/03/ab-science-clinical-studies-masitinib-als-therapy-suspended/
・慶応義塾大学の研究グループからの報告によると、ロピニロールの医師主導治験において有望な結果が得られました
・ロピニロールはiPS細胞を用いた研究により、治療薬候補として同定された薬剤になります
・詳細は以下をご参照ください
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2021/5/20/28-80089/
・今後、承認に向けた大規模臨床試験の実施が期待されます
・ハマジさん、ありがとうございました