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ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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孤発性ALSに対するION541の臨床試験で投薬開始
・ALS NEWS TODAYの10月27日付記事からです

▽Ionis社のALS治療薬候補であるION541の第1/2相試験において、最初の患者に対して投薬開始されたことが公表されました。

▽この試験は70名の孤発性ALS患者を対象となりプラセボ対照で行われます。ION541はataxin-2と呼ばれる蛋白質に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドです。ALSにおいては細胞質内にTDP-43凝集体が形成されることが知られていますが、ataxin-2を除去すると、TDP-43の凝集体形成が顕著に抑制されたとの基礎実験での報告に基づく創薬となります

▽ION541はataxin-2 mRNAに結合し、ataxin-2の発現を阻害する核酸医薬品です。IONIS社は既に家族性ALSを対象とした2つの治療薬候補(tofersenとIONIS-C9Rx)の臨床試験を行っています。

▽この臨床試験はBiogen社と共同で行われており、2023年に結果が判明する予定です

引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2020/10/27/dosing-phase-1-2-trial-ion541-antisense-treatment-for-sporadic-als/


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Muse細胞の治療的有用性
▽Muse細胞は、様々な組織に分布する内因性の再生多能性幹細胞です。Muse細胞は、損傷した細胞が産生するスフィンゴシン-1-リン酸を感知して損傷部位に選択的に遊走し、組織保護や組織構成細胞への分化などの多能性を発揮します。

▽SOD1変異ALSマウスに対して5万個のMuse細胞を静注することにより、腰髄へのヒトMuse細胞の遊走に成功し、グリア細胞様の形態への分化とGFAP発現がみられました。一方で、ヒト間葉系幹細胞では、このような遊走や分化は認められず、肺に分布しました。

▽Muse細胞移植モデルマウスでは対照群と比較して運動機能の改善効果がみられました。このことは運動神経細胞の保護作用を有することを示唆しています。Muse細胞移植は今後ALSの治療法として有望な可能性があります

(この研究は岡山大学のYamashitaらにより報告され、2020年10月13日付のScientific Reports誌に掲載されました)

末梢マクロファージ活性の変化によりミクログリアの反応性を変化させうる
▽ミクログリアと末梢マクロファージはALSの病態に関与していることが報告されているが、その役割はよくわかっていません。

▽今回、研究者らはALSモデルマウスとALS患者の運動神経軸索に沿ったマクロファージが神経変性に反応していることを明らかにしました。

▽ALSモデルマウスにおいては末梢骨髄系細胞の脊髄への浸潤は限局的であり、罹病期間に依存していました。活性酸素経路を遺伝子的に修飾した末梢骨髄系細胞を細胞移植すると、末梢マクロファージとミクログリアの活性が減少し、発症遅延効果と生存期間の延長効果がみられました

▽トランスクリプトミクスの結果、マクロファージとミクログリアは神経変性に対して異なる反応を示し、マクロファージは急速に反応し、ミクログリアは進行性の活性化を示すことがわかりました。

▽末梢マクロファージを修飾することで、炎症促進性のミクログリアの反応を抑制し、神経細胞を保護する形態に変化させることができました。

▽以上の結果は、末梢のマクロファージを修飾することにより、疾患進行に影響を与えうることを示唆しており、ALSに対して治療的に応用できる可能性があります

(この研究は、フランス、Sorbonne UniversitéのChiotらにより報告され、2020年11月号のNature Neuroscience誌に掲載されました)

TDP-43のN末端領域を標的としたRNA結合部位のアロステリック調節剤は神経保護効果を発揮する
▽研究者らはTDP-43蛋白質のN末端領域に結合する低分子(nTRD22)を同定しました。興味深いことに、nTRD22はTDP-43のRNA結合部位のアロステリックな変調を引き起こし、in vitroでのRNA結合を減少させました。

▽さらに運動神経細胞にnTRD22を投与すると、TDP-43蛋白質の産生が減少し、この効果はTDP-43 RNA結合部位欠損変異を有する場合と同様の結果となり、TDP-43蛋白質のRNAへの結合の障害を示唆する結果となりました。

▽ショウジョウバエALSモデルに対してnTRD22を投与したところ、運動機能障害が改善しました。以上の結果はnTRD22によるRNA結合部位のアロステリック調節作用が神経保護作用を有する可能性を示唆するものです

(この研究はアメリカ、University of ArizonaのMollasalehiらにより報告され、2020年10月12日付のACS Chem Biol.誌に掲載されました)


TDP-43はミトコンドリア透過性遷移孔を介したDNA放出を誘発し、ALSにおいてcGAS/STING経路を活性化する
▽TDP-43の細胞質内での凝集体形成はALSの病態の特徴であり、NF-κBやI型IFNの発現亢進など神経炎症性サイトカインの増加を伴います。

▽今回、研究者らはTDP-43がミトコンドリアに侵入し、透過性遷移孔を介したDNA放出を引き起こし、細胞質のDNAセンサーであるcGAS(cyclic guanosine monophosphate -AMP synthase)がそれを探知し、炎症反応を誘発することを明らかにしました。

▽iPS細胞由来運動神経細胞ないしTDP-43変異マウスにおいて、cGASおよびその下流経路に位置するSTINGを薬理学的に阻害もしくは遺伝子的に除去すると、NF-κBおよびI型IFNの発現亢進は阻害されました。

▽さらに、ALS患者脊髄におけるcGAS経路代謝物であるcGAMP濃度の上昇が観察され、このことはALSにおけるミトコンドリアDNA放出ちcGAS/STING経路活性化のバイオマーカーとなる可能性を示唆するものです。

▽以上の結果は、TDP-43によるミトコンドリアDNA放出とcGAS/STING経路の活性化がTDP-43蛋白症の病態の重要な決定因子であり、治療対象としても有望な可能性があることを示唆するものです

(この研究は、オーストラリア、University of MelbourneのYu CHらにより報告され、2020年10月3日付のCell誌に掲載されました)
pegcetacoplanの第2相試験
・ALS NEWS TODAYの10月13日付記事からです

▽Apellis社のALS治療薬候補であるpegcetacoplan(APL-2)の第2相試験が患者募集中です

▽この試験では、228名の孤発性ALS患者を対象となる予定です。pegcetacoplanは免疫系の構成要素である補体C3を阻害します。補体系は感染防御機能や異物除去などの機能を果たしています。

▽ALSにおいては補体系の機能異常による過剰な炎症反応などが報告されています。ALSではC3が神経筋接合部において高濃度であることがわかっています。このような神経筋接合部における慢性の炎症が運動神経細胞変性につながることが指摘されています。

▽この第2相試験は1年間の予定で実施され、安全性と有効性が評価される予定です。

引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2020/10/13/phase-2-study-pegcetacoplan-apellis-pharmaceuticals-in-recently-diagnosed-als-patients-opens/
新規臨床試験情報(ANX005)
・アメリカでの新規臨床試験情報です。Annexon社のALS治療薬候補であるANX005の第2相試験が開始予定となっています

・24名の患者を対象に、オープン試験で行われ、12週間で安全性や薬物動態などが検証される予定です。

・ANX005は(おそらく)補体系の構成要素に対するモノクローナル抗体であり、免疫系を修飾することにより治療的効果が期待されています

引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04569435
I型PRMT阻害剤はジペプチド繰り返し蛋白質毒性からの保護的作用を有する
C9orf72遺伝子の繰り返し配列の過剰伸長は、ALSおよび前頭側頭型認知症の最も多いな遺伝的要因です。

▽この過剰伸長配列由来の開始コドン非依存性のリピート関連翻訳は、ジペプチド繰り返し蛋白質を産生します

▽アルギニンを含むpoly GRおよびpoly PRは、最もも毒性が高いことが報告されています。今回研究者らはI型蛋白質アルギニンメチルトランスフェラーゼ(PRMT)の阻害がpoly GRおよびpoly PRの毒性を緩和することを示しました

▽この知見は、I型PRMTによるpoly GRとpoly PRの非対称ジメチル化が、それらの毒性発揮に重要な役割を果たしていることを示唆しており、I型PRMT阻害剤の今後の治療的応用が期待されます

(この研究はアメリカ、ALS Therapy Development InstituteのPremasiriらにより報告され、2020年9月8日付のFront Pharmacol誌に掲載されました)
イギリスでのMND-SMART試験が患者募集中
・ALS NEWS TODAYの10月22日付記事からです

▽イギリスで行われているMND-SMART試験で患者募集中となっています。この試験はALSを含む運動神経病患者750名が対象となり、同時に複数の試験薬についての介入試験を同時に進行するプラットフォームとなります。

▽最初に、メマンチンとトラゾドンのプラセボ対照試験が開始予定です。試験期間は18か月間で有効性や安全性などが評価予定です。

▽既にいずれも承認されている薬剤となります。今後さらに多くの患者が募集され、さらに新たな薬剤が試験薬として追加される予定です

引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2020/10/22/pivotal-trial-testing-multiple-therapies-in-als-now-enrolling-scotland/
ALSを対象としたフェニル酪酸ナトリウム-TaurursodiolのCENTAUR試験参加者の長期生存率
▽Amylyx社のALS治療薬候補であるAMX0035(フェニル酪酸ナトリウム-Taurursodiol合剤)の第2相試験において、長期経過が公表されました。

▽この第2相試験は137名のALS患者を対象にプラセボ対照で24週間試験が行われ(AMX0035群89名、プラセボ群48名)、その後オープン期間においては最大30カ月間AMX0035投与が希望者に継続されました(90名が継続:うち56名がAMX0035群、34名がプラセボ群からの置換)。

▽今回は生存期間が解析され、AMX0035投与群の生存期間中央値25カ月と比較して、プラセボ群18.5カ月であり、ハザード比0.56と44%有意にAMX0035は生存期間を延長するとの結果になりました

(この研究はアメリカ、Harvard Medical SchoolのPaganoniらにより報告され、2020年10月16日付のMuscle Nerve誌に掲載されました)
Withaferin-A投与はTDP-43蛋白症の病態を緩和する
▽Withania somnifera由来の活性型ウタノリドであるWithaferin-Aは、前頭側頭型認知症モデルマウスにおいて自食作用を誘導し、TDP-43蛋白症の病態を軽減し、認知機能を向上させることが報告されています。

▽TDP-43の細胞質内での異常局在化と凝集体形成がALSなどのいくつかの神経変性疾患において報告されています。

▽今回、研究者らは変異TDP-43蛋白質を発現するモデルマウスに対してwithaferin-Aを投与し、その効果を調べました

▽その結果、認知機能の改善がみられ、NF-κB活性を減弱させ、中枢神経での神経炎症の軽減効果がみられました。withaferin-Aは脳内の自食マーカーであるLC3BII濃度を上昇させました。

▽以上の結果はwithaferin-AがTDP-43蛋白症の病態改善に有用である可能性を示唆するものです

(この研究は、カナダ、Laval UniversityのKumarらにより報告され、2020年10月19日付のNeurotherapeutics誌に掲載されました)
BDNF過剰発現ヒト臍帯間葉系幹細胞由来運動神経は運動機能を改善し、モデルマウスの生存期間を延長する。
▽研究者らはBDNFを過剰発現させるように遺伝子的に操作したヒト臍帯血間葉系幹細胞由来神経細胞(hUC-MSC)を、SOD1変異ALSモデルマウスのくも膜下腔内に移植し、その治療的効果を調べました。

▽移植1か月後にモデルマウスの腰椎におけるBDNF発現などは対照群と比較して有意な増加を示しました。発症遅延効果はみられませんでしたが、運動機能の改善と生存期間の延長効果がみられました

▽以上の結果は、BDNF過剰発現ヒト臍帯間葉系幹細胞由来運動神経移植がALSの治療法として有用な可能性を示唆するものです

(この研究は中国、Nanjing Medical UniversityのWangらにより報告され2020年10月19日付のNeurol Res.誌に掲載されました)
PP1阻害によりミトコンドリア機能障害を防ぐ
▽ALSにおいてはミトコンドリア機能の異常が病態の一部として報告されています。しかしながらミトコンドリア機能異常をきたす病態機序はよくわかっていません。

▽今回、研究者らはSOD1変異モデルやTDP-43変異モデルなどのいくつかのALSモデルにおいてDrp1(Dynamin-related protein 1)が脱リン酸化していることをみいだしました

▽Drp1の脱リン酸化はPP1(protein phosphatase 1)の病的な活性化によりもたらされることがわかりました。

▽PP1-Drp1シグナル経路を阻害することにより、ヒトiPS細胞由来運動神経細胞モデルなどにおいてミトコンドリア機能異常の回復を含むALS関連症状の緩和がみられました。

▽以上の結果はALSにおいてPP1-Drp1経路への介入が治療的効果をもたらす可能性があることを示唆するものです

(この研究は韓国、Korea University College of MedicineのChoi SYらにより報告され、2020年10月21日付のCell Death Dis.誌に掲載されました)
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社が新たなALS治療薬開発のためInsitro社と提携
・ALS NEWS TODAYの10月29日付記事からです

▽ブリストル・マイヤーズ スクイブ社がALS治療薬探索のためInsitro社と5年間の提携を結ぶことを公表しました。Insitro社の機械学習技術により新薬探索を目指すこととなります

▽両社は、Insitro社のHuman Platformを活用し、機械学習、遺伝学、機能的ゲノミクスを応用し、疾患の細胞モデルを開発し、治療法の探索を行う予定です。

▽このPlatformはまず、iPS細胞由来のALS細胞モデルを構築することに活用される予定です。Human Platformにより、この細胞モデルが実際の臨床転帰を最大限に予測できるように構築されます。

▽その後、機械学習モデルを適用して、これらの細胞モデルから大量のデータを分析し、潜在的な治療ターゲットや治療法を同定することが期待されています。

▽今回の提携によりInsitro社はブリストル・マイヤーズ スクイブ社から一時金として5,000万ドル、目標達成時には2,000万ドルが供与される予定です。

引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2020/10/29/bristol-myers-squibb-partners-with-insitro-to-develop-new-als-therapies/
イーライリリー社がDisarm社を買収
・ALS NEWS TODAYの10月30日付け記事からです

▽イーライリリー社は軸索変性を阻害する神経変性疾患治療薬を開発中のDisarm社を買収しました。Disarm社はSARM1阻害剤とよばれる軸索変性を防ぐ薬剤を開発しています

▽SARM1阻害剤は前臨床段階の研究においてモデルマウスにおいて軸索変性を阻害し、神経変性疾患における治療薬候補となりうることを示唆する結果が得られています。さらにはヒト由来神経細胞においてもSARM1阻害剤が機械的ないし化学的侵襲による軸索障害から軸索を保護しうることが示されています

▽今回の買収がSARM1阻害剤の臨床試験実施に向けての追い風になることが期待されます。

引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2020/10/30/eli-lilly-acquires-disarm-and-its-sarm1-inhibitors-for-preventing-axonal-degeneration/
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