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ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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AstroRxは使用されたすべての用量で進行遅延効果
・ALS NEWS TODAYの8月5日付記事からです

▽Kadimastem社のALS治療薬候補のAstroRxの第1/2相試験の一部結果が報告されました。それによると、投与3か月目の時点において、臨床試験で使用されたすべての用量において、有意な進行遅延効果を示唆する結果が得られたとのことです

▽AstroRxについては既に低用量治療群において有効性を示唆する結果を報告していましたが、さらに最近の結果では、最高用量投与群の結果も報告され、両群ともに病態進行を50%以上遅延させる効果がみられ、特に進行が速い群において有効性がより大きかったということです

▽AstroRxはヒト胎児幹細胞由来の成熟アストロサイトを髄液中に移植するものです。

▽最初の5名の患者に対しては1億個の細胞が移植されました。移植前3か月間のALSFRS-Rの得点変化率は0.87点/月の増悪でしたが、投与後3か月間は0.26点/月の改善がみられました。運動機能が改善したことを意味しています。しかしその後は効果の減弱がみられ、反復投与が治療の有効性を増強する可能性が示唆されました。

▽別の5名の患者については、投与前3か月間のALSFRS-Rの変化率は1.43点/月でしたが、2億5千万個の細胞が移植され、移植後3か月間のALSFRS-Rの変化率は0.78点/月の悪化と悪化率が45%減弱しました。特に投与後1カ月間はALSFRS-Rの変化量は0.41点であり、71%の改善がみられました

▽全体の結果をまとめると、治療前のALSFRS-Rの変化率が平均1.15点であったのが、治療後は平均0.54点と53%の改善がみられました。また少なくとも25%以上の進行度の改善がみられた群を反応群とすると70%の患者が反応群となりました。

▽有効性については今後さらに臨床試験で検証する必要がありますが、COVID-19の影響でさらに追加の10名のエントリー(繰り返し投与群)は見送られることとなりました。

▽さらなる臨床試験の実施に向けて準備が進んでいます

引用元
https://alsnewstoday.com/2020/08/05/astrorx-slows-als-progression-at-all-doses-tested-trial-shows/

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アカンプロサートとバクロフェン併用療法について
▽PXT864は低用量アカンプロサートとバクロフェンの合剤であり、これまでに神経変性疾患における細胞活性を回復させることが基礎実験で示されています

▽ALSにおいてもその有効性が期待されており、グルタミン酸により傷害された神経筋接合部に対してPXT864を投与すると神経筋接合部の保護作用が確認されました。

▽SOD1変異ALSモデルラットの胎児より採取された運動神経細胞を培養し、PXT864を加えると、運動神経細胞の成熟障害が有意に改善しました。この細胞にグルタミン酸を加えるとTDP-43凝集が生じますが、PXT864はTDP-43凝集を阻害することがわかりました

▽以上の結果は、PXT864がALSに対して治療的に有望な可能性を示唆するもので、今後の臨床試験での検証が期待されます

(この報告は、フランス、PHARNEXTのBoussicaultらにより報告され、2020年8月19日付のJ Neurosci Res.誌に掲載されました)

ウルソデオキシコール酸の神経保護作用
▽前頭側頭型認知症(FTD)はALSと遺伝的にも病理学的にもつながりのある疾患と考えられています。FTDの病因となりうるCHMP2B遺伝子(ESCRT-III異種複合体の中核的構成要素をエンコードする遺伝子)変異はエンドソームーリソソーム相互作用を障害し、自食経路を障害することにより、蛋白質恒常性保持機構を障害します。

▽CHMP2B遺伝子変異はまれですが、FTD-ALSにおいてエンドソームーリソソーム相互作用の障害は共通した病態と考えられています

▽研究者らはショウジョウバエおよび哺乳類のFTD関連CHMP2B変異モデル動物を用いて、ウルソデオキシコール酸が神経保護作用を有することを示しました。

▽ウルソデオキシコール酸は用量依存性にショウジョウバエモデルの神経構造と機能の保持作用を発揮しました。同時にラットモデルにおける神経細胞の樹状突起変性とアポトーシスも防ぐ効果がみられました。細胞質内の異常封入体形成については防ぐことはできませんでした。

▽以上の結果はウルソデオキシコール酸が、エンドソームーリソソーム相互作用や自食機能の異常を改善することにより、神経保護作用を発揮することを示唆しており、ALSにおける治療薬候補となりうる可能性を示唆するものです

(この研究はイギリス、 University of SheffieldのWestらにより報告され、2020年8月13日付のNeurobiol Dis.誌に掲載されました)
ALS患者に対するLin-細胞の移植による構音機能の回復
▽研究者らは、ALS患者に対する自家骨髄由来前駆細胞ないし幹細胞(Lin-細胞)の移植により、炎症促進性因子や構音障害の回復がみられるかどうかを検証しました

▽12名の孤発性ALS患者が対象となり、髄液中に自家骨髄由来Lin-細胞の移植が行われました。移植日と移植後28日目の構音機能の比較などが行われました

▽その結果、12名中8名は移植後短期的に構音機能の回復がみられました。4名は明らかな改善効果がみられませんでした。

▽神経栄養因子の血中濃度は投与後3日目にピークとなり、その後減少しました。以上の結果は、ALS患者に対するLin-細胞の移植が治療法として有望であることを示唆しており、効果維持のために繰り返し投与が必要である可能性を示唆するものです

(この結果はポーランド、Pomeranian Medical UniversityのPawlukowskaらにより報告され、2020年7月19日付のInt J Med Sci.誌に掲載されました)

モデルマウスにおけるRAGE阻害の効果
▽アストロサイトは運動神経変性をもたらすことによりALSの病態に関与していることが報告されています。RAGE(receptor for advanced glycation end products)ノックアウトマウス由来の運動神経細胞は、ALS患者由来アストロサイトの細胞毒性に抵抗性であることが報告されています

▽今回、研究者らは、共培養モデルにおいて、ALS関連のSOD1変異を有するアストロサイトにRAGE阻害薬であるFPS-ZM1ないしRAPを加えることにより、神経細胞変性が阻害されることを示しました。

▽また発症後のSOD1変異ALSモデルマウスにおいても、これらRAGE阻害薬を投与することにより、運動神経変性が保護されることがわかりました。

▽FPS-ZM1投与により、モデルマウスの後肢筋力が保持され、運動神経細胞の生存期間が延長し、脊髄後角におけるグリオーシスの減少が観察されました。しかし生存期間については統計的な有意差をみいだすことはできませんでした。またモデルマウスから完全にRAGE遺伝子を除去した場合、生存期間は短縮しました

▽以上の結果は、RAGEに関連した治療法開発においてさらに生理学的機能の理解を深める必要があることを示唆しています。

(この研究はアメリカ、Medical University of South CarolinaのLiuらにより報告され、2020年8月のPharmacol Res Perspect.誌に掲載されました)
DOK7遺伝子治療による神経筋接合部形成増強
▽神経筋接合部における脱神経支配は加齢による運動機能低下に関連します。

▽研究者らはこれまでに、筋肉蛋白質であるDok-7が神経筋接合部形成に重要な役割を果たしていることを報告し、Dok-7を筋肉に強制的に発現させることで神経筋接合部の増大がみられることを報告してきました。

▽また、アデノ随伴ウイルスベクターによりDok-7遺伝子を注入したところ、ALSモデルマウスにおいて、筋肉の脱神経支配を抑制し、運動機能が改善しました。

▽今回、研究者らは加齢マウスにおいてDok-7遺伝子を注入し、その効果を調べました。その結果、Dok-7遺伝子治療はマウスの有意な運動機能改善と筋力増強、神経筋接合部形成増強効果などをもたらすことがわかりました。

▽以上の結果は、Dok-7遺伝子治療が加齢による筋力低下に対する治療法として有望な可能性を示唆するものです

(この研究は東京大学のUetaらにより報告され、2020年8月21日付のiScience誌に掲載されました)
Seelos社のSLS-005が第2b/3相試験開始へ
・ALS NEWS TODAYの8月12日付記事からです

▽Seelos社はFDAから同社のALS治療薬候補であるSLS-005(トレハロース)の第2b/3相試験の開始について承認を得たことを公表しました

▽家族性ないし孤発性ALS患者160名がエントリーされプラセボ対照で24週間、有効性などが評価される予定です。トレハロースはある種のバクテリアなどにより産生される天然分子ですが、哺乳類の細胞内には存在しません。

▽トレハロースは血液脳関門を通過し、蛋白質構造を安定化させ、自食作用を活性化させると言われています。前臨床試験ではSLS-005はTDP-43の排泄を促進し、凝集体形成を阻害することが観察されています。このような作用により運動神経細胞を保護し、ALSの病態進行を抑制することが期待されています。

引用元
https://alsnewstoday.com/2020/08/12/seelos-to-proceed-with-phase-2b-3-trial-investigating-sls-005-for-als/
新規臨床試験情報(BIIB105)
・Biogen社のALS治療薬候補のBIIB105の第1相試験が開始予定です。70名のALS患者を対象にプラセボ対照で様々な用量で安全性などが検証される予定です。

・BIIB105はアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤であり、ataxin 2 RNAをターゲットにしています。孤発性ALSを対象にしており、ALSにおいてはataxin 2発現量を減少させるとTDP-43蛋白症に関連した病態の改善効果が期待できることが基礎実験で報告されています。

引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04494256
新規臨床試験情報(PU-AD)
・アメリカでの新規臨床試験情報です。PU-ADの第2a相試験が行われる予定です。プラセボ対照で30名を対象に24週間投薬され安全性と薬効動態が調べられる予定です。

・PU-ADはエピシャペロームを選択的に阻害し、異常蛋白質の凝集体形成を阻害することにより治療的効果が期待されています。

引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04505358
新規臨床試験情報(セラクルミン)
・アメリカでの新規臨床試験情報です。クルクミンのALSに対する有効性、安全性についての第2相試験が開始予定です。

・クルクミンは抗炎症作用、抗酸化作用によりALSに対する有効性が期待されています。

・試験はオープン試験で行われ、100名のALS患者を対象に6か月間で行われる予定です。

引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04499963
新規臨床試験情報(リポ酸)
・中国での新規臨床試験情報です。リポ酸のALSに対する有効性、安全性についての臨床試験が開始予定です。

・リポ酸は前臨床試験において酸化的ストレスを減弱させ、SOD1変異ALSモデル動物において神経保護作用を有することが報告されています。

・150名のALS患者を対象に、プラセボ対照でsingle blindで行われ、21週間で安全性と有効性が評価される予定です。

引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04518540
第2相試験中のALS治療薬候補ILBがヨーロッパでorphan drug指定
・ALS NEWS TODAYの8月31日付記事からです

▽Tikomed社のALS治療薬候補であるILBがヨーロッパでorphan drug指定を受けました。同指定を受けるには、希少疾患であること、前臨床試験段階で十分な有効性に関するデータが得られていること、欧州医薬品庁の組織であるCommittee for Orphan Medicinal Products(COMP)の承認があることなどが必要となります。

▽orphan drug指定をうけることにより、税制上の優遇措置や、承認後の独占的販売権などが与えられます。ILBは多様な作用を有する分子であり、活性成分である硫酸デキストランは、神経細胞死に関連する様々な経路に影響を与えると考えられています。皮下注経路で投与されます。

▽ILBは現在イギリスでの第2相試験が進行中であり、48週間で安全性などが評価される予定です。

引用元
https://alsnewstoday.com/2020/08/31/potential-als-therapy-ilb-in-uk-trial-named-orphan-drug-by-european-commission/
臨床試験参加者とビタミン使用
▽ALS臨床試験参加者について、ビタミン使用の割合がどの程度あるのかについて後方視的に検討されました。またビタミン使用と病態進行との関連などについても検討されました

▽ALSに関連した23の第2/3相試験に参加した6000名以上のALS患者について、データベース(ALS Clinical Trials Database)から情報が抽出され、ビタミン使用者と非使用者とで比較されました

▽その結果、1種類以上のビタミンを使用していたのは53.1%でした。最も多かったのはビタミンE、ビタミンC、マルチビタミンでした。

▽ビタミンを使用していた群と、使用していなかった群とで疾患の進行度などの違いはありませんでした。ビタミン使用者はより若く、発症から診断までが短く、四肢発症型の割合が多い結果となりました。

▽病態進行の割合とビタミン使用との関連性は明らかではありませんでした。少なくとも急速な進行と関連することはなさそうとの結果が得られました。

(この研究は、ドイツ、Jena University HospitalのPrellらにより報告され、2020年8月13日付のPLoS One誌に掲載されました)
ALSのバイオマーカーとしてのキトトリオシダーゼは神経炎症により病態進行をもたらす
▽ALS患者の髄液中には細胞毒性をもたらす物質が含まれていると考えられています。そのような物質の1つとしてキトトリオシダーゼ1(CHIT-1)活性の増大が報告されています

▽今回、研究者らはALS患者らにおけるCHIT-1酵素活性を調べ、ラットにCHIT-1を投与しその後の変化を観察しました。

▽その結果、ALS患者の髄液中CHIT-1濃度は対照群と比較して20倍の増加を示し、CHIT-1活性も15倍以上であり、診断上の感度、特異度共に80%以上とバイオマーカーとして有用であることがわかりました。

▽ラットにCHIT-1を髄腔内投与したところ、ミクログリアの増殖とアストログリオーシス、炎症促進性サイトカインの増加などが観察され、運動神経細胞の減少がもたらされました

▽以上の結果は、CHIT-1が孤発性ALSの早期診断マーカーとして有用な可能性を示唆しており、治療対象としても有用な可能性を示唆するものです

(この研究は、インド、National Institute of Mental Health and Neuro SciencesのVargheseらにより報告され、2020年8月6日付のJ Neuroinflammation.誌に掲載されました)
HEALEY ALS Platformに最初の患者がエントリー
・ALS NEWS TODAYの8月6日付記事からです

▽複数のALS治療薬候補に対する臨床試験による評価を同時に行い、治療薬開発を効率化しようとする試みであるHEALEY ALS Platformにおいて最初の患者がエントリーされました。

▽HEALEY ALS Platformでは、UCB社のzilucoplan、Biohaven Pharmaceutical社のverdiperstat、Clene Nanomedicine社のCNM-Au8の3種類の治療薬候補の有効性などが調べられます。

▽Zilucoplanは免疫系に関与する補体系のC5蛋白質を阻害する小分子です。ALSではC5蛋白質が異常活性化していると言われています。zilucoplanは皮下注で投与されます

▽verdiperstatはミエロペルオキシダーゼを選択的に阻害する経口投与可能な分子であり、ミエロペルオキシダーゼは酸化的ストレスを増大させ、中枢神経の炎症を増大させると言われています。

▽CNM-Au8は経口投与可能な金ナノクリスタルの懸濁液であり、神経細胞の代謝を改善することにより神経細胞の生存、機能などを改善すると言われています。HEALEY ALS Platformとは別にオーストラリアでの第2相試験も進行中です

▽HEALEY ALS Platformでは合計160名のALS患者が3つの薬剤ないしプラセボに3:1の割合で無作為割付され24週間で評価されます。

引用元
https://alsnewstoday.com/2020/08/06/first-patients-enrolled-pivotal-healey-als-platform-trial/
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