▽久しぶりに名前を聞きましたが、Seneca社(元Neuralstem社)の同種幹細胞移植であるNSI-566が第3相試験に向けて準備中のようです
▽3月10日に行われたミーティングにおいて、FDAはSeneca社に対して第3相試験に向けてのガイダンスを行いました。現在試験のプロトコル作成中であり、開示前にFDAが審査予定となっています
▽NSI-566は胎児由来幹細胞であり、現在第3相試験が実施中のNurOwn細胞と異なり、同種移植のため、免疫抑制剤が必要であり、NurOwnがくも膜下腔内投与であるのに比べ、脊髄内投与であり、移植手技の侵襲性が大きなものになります
▽これまでに行われた2つの臨床試験のフォローアップでは、2年後にALSFRS-Rの得点はNSI-566移植群において有意に高い結果となっています。一方生存率については有意差がでていません
▽NSI-566はorphan drug指定を受けており、第3相試験の開始が期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/04/13/potential-stem-cell-therapy-nsi-566-moving-into-phase-3-trial-seneca-says/
▽FasudilはROCK阻害薬であり、前臨床試験段階ではALS動物モデルにおいて治療的効果が観察されています。
▽現在ALSに対しては第2a相試験がおこなわれています(NCT03792490)。もともとFasudilは日本においては長らくくも膜下出血後の血管攣縮に対する治療薬として承認されていました。
▽2017年5月から2019年2月までの間で1名の男性、2名の女性のALS患者(probableないしdefinite ALS)に対して
Fasudil 30mg静注、1日2回、20日間平日に連続投与されました。
▽すべての患者において明らかな副作用はなく、1名の患者において静的肺活量の有意な増加がみられました。
(この報告は、ドイツ、University Medical Center GöttingenのKochらにより報告され、2020年3月13日付のFront Neurol誌に掲載されました)
▽AB Science社がチロシンキナーゼ阻害薬であるmasitinibのALSに対する第3相試験の実施に向けて準備中です
▽FDAが同社のIND(新薬臨床試験開始届)を承認したことによるものです。
▽Masitinibはマクロファージや肥満細胞、シュワン細胞など様々な細胞の活動に影響を与え、抗炎症作用や神経新生作用により治療的効果が期待されています。Masitinibは既に394名を対象とした第2/3相試験を終えており、その結果によると、masitinib 4.5mg/kgを投与された群は、48週後においてALSFRS-Rの変化量がプラセボ群よりも27%有意に少なかったことが報告されています。
▽しかしながら、この結果は、通常の進行速度以下(1か月あたりのALSFRS-Rの変化率が1.1点未満)の患者群にしぼった場合の結果であり、より進行が速い群においては有意差が認められませんでした。
▽しかし事後解析では、masitinib投与をより病初期の段階で開始すれば、進行が速い群においても有意な病態進行遅延効果が認められたとのことです。
▽来るべき第3相試験では発症2年以内の495名のALS患者が対象となり、4.5mg/kg投与群、6mg/kg投与群、プラセボ群とで比較される予定です。いずれの群もリルゾール併用となります。
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/04/03/fda-clears-ab-science-to-open-phase-3-trial-of-masitinib-add-on-als-treatment/
▽Frontiers in Bioengineering and Biotechnology誌に掲載された研究結果によると、SOD1変異ALSモデルマウスにadapaleneを含有するナノ粒子を投与したところ、治療的効果がみられたとのことです。
▽レチノイン酸シグナル経路は、中枢神経系の発達と維持に重要な役割を果たしており、シナプス可塑性、学習、記憶、神経新生、再生などに関与しています。レチノイン酸シグナル経路はALSなどの神経変性疾患に関与していることが報告されており、患者脊髄運動神経細胞においてレチノイン酸受容体βが高濃度で発現していることが報告されています。
▽高濃度のレチノイン酸受容体βが発現している運動神経細胞は、より生存に有利な可能性が報告されており、レチノイン酸シグナル経路が神経保護的に作用しているのではないかと考えられています。
▽adapaleneはレチノイン酸受容体β活性化作用を有し、尋常性ざ瘡や子宮頸部腫瘍に対する治療薬として既にFDAに承認されている物質です。研究者らはadapaleneのALSモデルマウスに対する有効性を検証しました。adapaleneは不溶性であり、そのままでは神経細胞への到達が困難であるため、研究者らはadapaleneをポリ乳酸-ポリエチレングリコール(PLA-PEG)からなるナノ粒子に封入し、SOD1変異ALSモデルマウスの静脈内に投与しました。
▽生後61日目のSOD1変異ALSモデルマウスに対して、adapalene含有ナノ粒子を週3回、静注しました。その結果、小脳、大脳皮質、線条体などの中枢神経系においてレチノイン酸シグナル経路が広範囲に活性化されました。また生存期間の中央値は164日から171日に延長し、最大寿命も183日から199日に延長しました。運動神経細胞も対照群と比較して保存されていました。
▽以上の結果はレチノイン酸シグナル経路の活性化がモデルマウスに対してある程度の病態進行抑制作用を発揮することを示唆しており、今後の治療的応用が期待されます。
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/04/22/researchers-like-results-of-using-nanoparticles-to-carry-adapalene-in-als-mice/
▽SOD1変異ALSモデルマウスにおいて、研究者らは運動野と脊髄にナチュラルキラー細胞が集簇していることをみいだしました。ナチュラルキラー細胞を除去すると、運動神経変性速度が減弱し、運動機能の低下速度が遅延し、生存期間が延長しました。
▽この現象は、その他のALSモデルマウス(TDP43変異モデルマウス)でも確認されました。
▽ナチュラルキラー細胞は、NKG2Dリガンドを発現するSOD1変異ALSモデルマウスの運動神経細胞に対しては有害であり、ナチュラルキラー細胞の産生するIFNγにより、ミクログリアが炎症促進性に変化し、脊髄への制御性T細胞の浸潤を傷害することがわかりました。
▽以上の結果は、ALSモデルマウスの発症と病態進展においてナチュラルキラー細胞が重要な役割を果たしていることを示唆するものです
(この研究は、イタリア、Sapienza University of RomeのGarofaloらにより報告され、2020年4月14日付のNature Communications誌に掲載されました)
▽ibudilastはALS細胞モデルにおいて、TDP-43蛋白質とSOD1蛋白質凝集体の除去を促進することがわかりました。
▽ibudilastはmTORC1活性を阻害することで、TFEBの核内転座を促進し、オートリゾソームを増加させることが明らかになりました。また、ibudilastはNSC-34細胞のTDP-43由来細胞毒性を緩和することも明らかにしました。
▽以上の結果は、ibudilastが自食作用賦活剤であることを示唆するものです
(この研究は中国、Tianjin UniversityのChenらにより報告され、2020年5月21日付のBiochem Biophys Res Commun誌に掲載されます)
▽今回研究者らは、SOD1変異ALSモデルマウスの海馬シナプスにおいて、シナプス伝達と可塑性における時間依存性の二相性変化が起こるかどうかを検証しました。
▽発症前および発症後のSOD1変異ALSモデルマウスと対象WTマウスの海馬スライスによる記録が行われました。その結果、シナプス前機能の亢進と、アデノシンA2A受容体の発現亢進が発症前モデルマウスの海馬において観察されました。
▽一方で発症後においては長期増強(LTP)の障害とNMDA受容体を介したシナプス電流の減少、アデノシンA2A受容体発現亢進が認められました
▽アデノシンA2A受容体阻害薬であるKW-6002投与により、LTPの障害が回復しました。
▽以上の結果はSOD1変異ALSモデルマウスでは、発症前においてシナプス機能が亢進しており、発症後にシナプス可塑性の障害とアデノシンA2A受容体の発現亢進を伴っており、アデノシンA2A受容体阻害薬が治療的に有用な可能性を示唆するものです。
(この研究は、ポルトガル、Universidade de LisboaのN Rらにより報告され、2020年4月17日付のNeuropharmacology誌に掲載されました)
▽今回、研究者らはSOD1変異ALS細胞モデルにおいて、miRNA代謝に関与する構成要素の構成量が変化しており、miRNA新生の異常が存在することを示しました。
▽小分子RNAのハイスループット塩基配列決定を行ったところ、発現量の変化していたmiRNAのうち、miR-129-5pは様々なSOD1変異ALSモデルや孤発性ALS患者の末梢血細胞中において増加していることがわかりました。
▽miR-129-5pの発現亢進は、miR-129-5pの作用ターゲットの発現低下をもたらし、そのようなターゲットにはRNA結合タンパク質ELAVL4/HuDが含まれます。ELAV4/HuDは主に神経細胞で発現しており、いくつかのmRNA発現を制御しています。
▽pre-miR-129-1の過剰発現はHuDの抑制を通じて神経突起の成長を抑制し、pre-miR-129-1発現を抑制するとそのような異常は是正されました。
▽SOD1変異ALSモデルマウスに対してmiR-129-5pに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与し、miR-129-5pの機能を抑制したところ、病態改善がみられました。以上の結果はmiR-129-5pがALSの治療ターゲットとなりうる可能性を示唆するものです
(この研究はイタリア、University of Milano-BicoccaのLoffredaらにより報告され、2020年4月23日付のProg Neurobiol誌に掲載されました)
▽細胞質内にTDP-43封入体を有するアストロサイトは、運動神経細胞死を惹起しえます。しかしアストロサイトによる神経細胞の支持機能や代謝経路が変化しているのかどうかはよくわかっていません。
▽研究者らは封入体を形成するTDP-43C末端断片を発現するアストロサイトと、野生型TDP-43を発現するアストロサイトを用いて、脂肪滴と糖の代謝を測定しました。
▽TDP-43封入体を有するアストロサイトにおいては、野生型TDP-43発現アストロサイトと比較して、脂肪滴の蓄積が3倍に増加しており、脂質代謝の異常が存在することがわかりました。TDP-43封入体を有するアストロサイトでは、ノルアドレナリンによる細胞内cAMPおよびカルシウム濃度の増加がそれぞれ35%、31%減少し、β2アドレナリン受容体の発現減少に起因することが推測されました
▽ノルアドレナリンはいずれのアストロサイトでも細胞内乳酸濃度の増加をもたらしましたが、TDP-43封入体を有するアストロサイトでは好気性解糖系が1.6倍活性化し、乳酸MCT1トランスポータの発現が減少していました。
▽TDP-43封入体を有するアストロサイトではノルアドレナリン系シグナルが減弱する一方で、好気性解糖系と脂質滴蓄積は亢進しており、アストログリアの代謝経路異常と神経細胞を代謝的に支持する機能の障害が存在することが明らかになりました。
(この研究は、スロベニア、 Celica BiomedicalのVelebitらにより報告され、2020年4月7日付のScientific Reports誌に掲載されました)
▽繰り返し配列由来の産物自体毒性を有しますが、C9orf72蛋白質をエンコードするmRNAも減少していることがC9orf72遺伝子変異ALS患者において報告されています。
▽今回、研究者らはC9orf72蛋白質濃度が、繰り返し配列由来産物の毒性にどのような影響を与えるかを調べました。
▽66回の繰り返し配列数を有する遺伝子導入モデルマウスにおいて、C9orf72対立遺伝子の片方ないし両方を不活性化すると病態進行が促進しました。
▽C9ORF72蛋白質の減少は、繰り返し配列産物による自食作用の活性化を抑制することがわかりました。
▽以上の結果は、C9orf72遺伝子変異ALSにおいては、内因性のC9orf72蛋白質減少による自食作用の減弱により、繰り返し配列由来産物の細胞毒性が増悪することを示唆するものです。
(この研究は、アメリカ、 University of California at San DiegoのZhu Qらにより報告され、2020年4月13日付のNature Neuroscience誌に掲載されました)
・アメリカでの新規臨床試験情報です。CD40LGに対するヒトモノクローナル抗体であるAT-1501の第2a相試験が開始予定です。
・オープン試験で行われ、54名のALS患者が対象となり、2週間に1回AT-1501が静注され、11週間にわたり投与され、主に安全性が検証される予定です
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04322149
・MAPK/ERK経路を抑制するMEK阻害剤であるtrametinib(SNR1611)の第1/2相臨床試験が開始予定となっています
・この試験では30名のALS患者を対象に、リルゾール100mgをactive comparatorとして3種類の用量のtrametinib(0.5mg ,1mg ,2mg)に無作為割付され、24週間、有効性、安全性が確認される予定です
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04326283
▽今回、幹細胞の局所移植によりALSの運動機能喪失が緩和できるのではないかとの仮説の下、自家骨髄単核球移植の第I、II相試験が行われ、安全性が検証されました。
▽22名のALS患者がエントリーされ、プラセボ対照で行われました。前脛骨筋に自家骨髄単核球細胞の単回移植が行なわれ、移植後30、90、180、360日後に評価されました。
▽その結果、単回移植は安全であり、プラセボと比較した場合、移植後の前脛骨筋においては、1つのみの指標(複合筋活動電位:CMAPを定量化する指標であるD50 index)において有意差を認めました。
▽そのほかの指標では有意な差を認めませんでしたが、患者数が少ないことやD50 indexが変化に鋭敏な指標であったためかもしれません。今後さらに大規模な臨床試験での検証が期待されます
(この研究は、スペイン、Universidad Miguel Hernández-CSICのGeijo-Barrientosらにより報告され、2020年3月24日付のFront Neurosci誌に掲載されました)
▽これまでに、研究者らはアスパルチルプロテアーゼであるBACE1が末梢神経再生において負の影響を与えていることを報告してきました。
▽今回研究者らは、BACEを薬理学的に阻害し、外傷性神経損傷ないし神経変性疾患において、末梢神経損傷の回復が促進するかどうかを検証しました
▽その結果、BACE阻害薬を投与された神経損傷モデルマウスにおいては、修復軸索数の増加や機能的回復の促進効果がみられました
▽SOD1変異ALSモデルマウスにおいてBACE阻害薬を投与したところ、軸索再生の促進がみられました。
▽以上の結果は、BACE阻害薬が末梢神経の再生を促進し、治療的効果をもたらす可能性があることを示唆するものです
(この研究は、 Johns Hopkins UniversityのTallonらにより報告され、2020年3月31日付のNeurotherapeutics誌に掲載されました)
▽ALS患者を支援するためのIonis社の二万五千ドルの奨学金制度が、Adapt Functional Movement Centerを通じて包括的な心身の健康プログラムを提供することとなりますた。
▽COVID-19パンデミック期間中はオンラインにより、個別化されたセッションが提供されます。患者のみならず介護者にも提供され、グループクラスやマッサージ療法、瞑想、機能的運動療法などが含まれます
▽メンタルヘルスプログラムではZoomを用いた1対1のセッションが提供されます。Ionis社はALSに対する核酸医薬品において第3相試験を実施中など先進的な企業であり、患者家族に対する包括的なサービスも提供したいとしています
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/04/14/ionis-scholarship-will-provide-physical-and-mental-wellness-programs-to-als-patients/