▽Stealth Bio Therapeutics社は同社のALS治療薬候補であるSBT-272の第1相試験を開始することを公表しました
▽SBT-272はカルジオリピンと呼ばれる特定の脂質をターゲットとしておりミトコンドリア機能を改善することにより治療的効果を発揮することが期待されています
▽SBT-272は細胞のエネルギー産生を増加し、ミトコンドリアにおける酸化的ストレスを減少させることが示されています。ALSモデル動物を用いた実験では、発症遅延効果や生存期間延長効果がみられました。さらにALSにおける神経細胞損傷のバイオマーカーと言われている血中ニューロフィラメント軽鎖(NfL)を減少させました。
▽この第1相試験では、健常者40名が対象となり、安全性などが評価される予定です
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/01/28/potential-stealth-bio-therapy-for-cell-energy-sbt-272-to-enter-phase-1-trial-in-healthy-volunteers/
▽FDAはHEALEY ALS プラットフォームにおける最初の3つの治療薬候補の臨床試験開始を承認しました
▽HEALEY ALS プラットフォームは複数の治療薬候補を同時に評価するプラットフォームであり、まずRa Pharma社のzilucoplan、Clene Nanomedicine社のCNM-Au8、Biohaven社のverdiperstatが評価されます
▽この試験はアメリカの54か所の施設で行われ、9月にマサチューセッツ総合病院内のALSセンターで立ち上げられたものです
▽Zilucoplanは経皮的に投与される小分子であり、補体系をなすC5蛋白質を阻害することで免疫系を修飾し、治療的効果を期待するものです。C5蛋白質はALSにおいて異常に増加していることが報告されています。
▽CNM-Au8は経口投与の金ナノ結晶であり、神経細胞のエネルギー産生を改善し、有害物質の代謝を促進し、神経細胞の生存を促進することにより治療的効果を期待するものです。現在42名の患者を対象とした第2相試験も進行中であり、既に最初の患者への投与が終わっています。
▽verdiperstatは経口投与され、ミエロペルオキシダーゼを選択的に阻害します。ミエロペルオキシダーゼは酸化的ストレスを増加させるといわれており、ALSなどにおける神経炎症に関与しているといわれています。
▽HEALEY ALSプラットフォームはALS治療薬開発を効率的に行うためのプラットフォームです。患者は3つの薬剤のうちのいずれかに無作為に割付される予定です。
▽近日中にPrilenia社のpridopidineとImplicit Bioscience社のIC14もこのプラットフォームに参加予定となっています。
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/01/27/fda-gives-ok-healey-als-platform-trial-testing-first-three-therapies-zilucoplan-cnm-au8-verdiperstat/
▽Clene Nanomedicine社のALS治療薬候補であるCNM-Au8の第2相試験において最初の患者への投薬が開始されました。
▽この試験は2021年4月に終了予定であり、安全性と有効性が検証される予定です。CNM-Au8は経口投与可能な金ナノ結晶懸濁液であり、細胞のエネルギー産生を補助し、細胞内有害物質の除去を助け、神経細胞死を防ぐことが期待されています
▽前臨床試験段階においては、神経細胞の生存期間を延長し、有害な活性酸素産生量を減少させることが確認されました
▽CNM-Au8は健常者を対象とした第1相試験において安全性が確認されています
▽第2相試験では42名のALS患者が対象となり、オーストラリアの2つの施設で行われます。36週間で行われ、主尺度は Motor Unit Number Index (MUNIX)得点となります。
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/01/23/dosing-begins-with-cnm-au8-nanomedicine-phase-2-rescue-als-study/
・ALS NEWS TODAYの1月21日付記事からです
▽神経細胞の髄鞘を形成するシュワン細胞が誘発する炎症反応を、masitinibが緩和する可能性があることがALSラットモデルを用いた実験により明らかになりました。
▽Glia誌に掲載された報告によるものです。ALSにおいては軸索変性はよく知られた病態の一部です。ALS患者の末梢神経細胞における運動神経軸索の変性過程においては、免疫系細胞の浸潤と同時にシュワン細胞の喪失が生じることが知られていました。
▽しかしながら、シュワン細胞変性と免疫細胞浸潤の関連性はよくわかっていませんでした。今回研究者らはSOD1変異ALSラットモデルを用いて、シュワン細胞の働きを調べました。
▽その結果、シュワン細胞は大量のCSF1やIL-34などの免疫応答を惹起する物質を放出することが明らかになりました。同時にシュワン細胞はSCF(stem cell factor)と呼ばれる栄養因子を大量に放出し、肥満細胞の活性化をもたらすことがわかりました。
▽masitinibをモデルラットに投与して肥満細胞活性化を阻害したところ、シュワン細胞に起因する免疫応答が減弱し、免疫細胞浸潤も減少しました。このことはmasitinibの神経保護作用を裏付けるものと考えられます。
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/01/21/masitinib-schwann-cells-inflammation-alleviated-als-rats/
▽Neuropore社のALS治療薬候補であるNPT520-34の健常者を対象とした第1相試験が終了し、安全性が確認されました
▽この試験ではNPT520-34の用量に応じた薬物動態や有害事象などが調べられました。NPT520-34は血液脳関門を透過可能な小分子であり、中枢神経における炎症反応を抑制し治療的効果が期待されています。
▽動物実験では、NPT520-34はSOD1やαーシヌクレイン、βアミロイドなどの有害物質の産生を減少させることがわかりました。現在第2相試験の実施に向けて準備が進められています
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/01/17/neuropores-potential-als-oral-treatment-found-to-be-safe-and-well-tolerated-in-healthy-volunteers-phase-1-trial-shows/
▽ALS治療薬開発を促進するため、アメリカALS協会はHEALEY ALSプラットフォームに対して300万ドルの資金供与を行いました。
▽資金供与のみならず、アメリカALS協会は、臨床試験に対するアドバイスや情報共有、資金獲得や患者募集などに関わる委員会に参画する予定です。これらの協力関係を通じて臨床試験を迅速に進め、より早く新規治療法をALS患者に届ることを目指します。2010年以降アメリカALS協会はマサチューセッツ総合病院でのALS研究に対して900万ドル以上の資金供与を行ってきています。
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/01/20/als-association-invests-3m-in-platform-trial-to-accelerate-development-of-treatments/
▽ALS患者にしばしば合併する唾液分泌過多に対する治療薬候補であるNeos Therapuetics社のNT0502の第1相試験が終了しました。
▽第1相試験では30名の健常者が対象となり、NT0502の安全性が検証されました。NT0502は過活動膀胱治療薬のoxybutyninの活性代謝物です。
▽現在唾液分泌過多に対する治療法としては、A型ボツリヌス毒素ないし抗コリン薬が使用されます。しかし、これらの有効性は十分ではなく、副作用が問題となります
▽NT0502は1日1回ないし2回投与の薬剤で、唾液腺のムスカリン受容体に対する選択性が高いため、副作用が少ないことが期待されます。近日中に第1相試験の結果が公表される予定です。
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/01/16/neos-completes-dosing-in-phase-1-trial-of-anti-drooling-treatment-nt0502-in-healthy-volunteers/
▽AI Therapeutics社の人工知能による薬剤探索プラットフォームであるGuardian Angelを用いたALSに対する治療薬候補探索により、リンパ腫治療薬のLAM-002がALS治療薬候補として同定されました
▽LAM-002はPIKfyve kinase阻害剤です。PIKfyve kinaseはリソソーム内で有害蛋白質凝集体除去に関与しています。ALSではリソソーム機能の異常が報告されています。
▽さらにLAM-002は転写因子EBを活性化し、新たなリソソーム形成を促進します。
▽AI Therapeutics社の深層学習プラットフォームであるGuardian Angelにより非ホジキンリンパ腫に対する治療薬であるLAM-002がALS治療薬候補として同定されました。
▽研究者らはC9orf72遺伝子変異を有する神経細胞モデルを用いて、LAM-002の効果を調べました。C9orf72蛋白質は正常では運動神経細胞内におけるリソソーム形成のために必要であり、C9orf72遺伝子変異はリソソーム機能の障害により有害蛋白質の蓄積を生じます。
▽PIKfyve kinaseを阻害したところ、リソソーム活性が増加し、C9orf72蛋白質の機能障害を補う作用がみられました。AI Therapeutics社は現在LAM-002の第2相試験実施に向けて準備をしています
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/01/30/ai-based-platform-indicates-candidate-cancer-therapy-lam-002-possible-treatment-als-ai-therapeutics-announces/
▽近日中にAlexion Pharmaceuticals社が同社のALS治療薬候補であるUltomiris(ravulizumab)の第3相試験が開始予定となっています。Ultomirisはモノクローナル抗体であり、補体系構成要素であるC5蛋白質を阻害し、補体系の過剰活性化を抑制することによる治療的効果が期待されています。
▽第3相試験では350名のALS患者が登録予定であり、2020年第1四半期に開始予定です。
▽Ultomirisはいずれも血液疾患であり補体系の異常が関与している発作性夜間ヘモグロビン尿症と非典型溶血性尿毒症症候群に対する治療薬として承認されています。ALSに対する臨床試験では発症3年以内であり%SVCが65%以上などの条件を満たす患者がエントリーされます。
▽Ultomiris投与は経静脈的に行われ、8週毎、合計50週間のプラセボ対照二重盲検試験期間で行われ、さらに2年間のオープン延長試験期間が設けられています。
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/01/15/alexion-to-initiate-phase-3-trial-of-ultomiris-for-familiar-sporadic-als-patients/
▽Kadimastem社は同社のALS治療薬候補であるAstroRx細胞移植の第1/2a相試験において、第2グループへの治療を終了したことを報告しました。
▽AstroRxはヒト胎児由来幹細胞より分化誘導した成熟アストロサイトを脊髄くも膜下腔に移植するものです。アストロサイトは脳内環境を保持する役割を有しており、ALSではその機能の障害が推定されています。AstroRx細胞は異常アストロサイトの機能を補い、運動神経細胞死を防ぐことにより治療的効果が期待されています
▽前臨床試験段階において、ALSモデルマウスおよびラットにおいてAstroRxは発症遅延効果、生存期間延長効果が確認され、有害性はみられませんでした。現在の第1相試験はイスラエルで行われており、ALS患者21名に対してAstroRxの安全性ならびに予備的な有効性に関するデータを集めることが目的となっています。
▽当初試験は患者を3つのグループに分け、A群に対しては低用量(1億細胞)、B群には中用量(2億5千万細胞)、C群には高用量(2億5千万を2回投与)の移植が行われる予定でした。しかしA群の結果が良好であったことから、プロトコルが改変され、C群には1億細胞を2-3か月間隔で2回投与し、D群に対して2億5千万細胞が2回投与されることとなりました。
▽A群への投与では、安全性が確認され、投与3か月後においてALSFRS-R得点の改善が認められました。現在B群5名への投与が終了し、6か月間観察されます。B群の結果は2020年8月頃に判明予定です。C群の患者募集が始まっており、C群の結果は2021年前半には判明する予定です。
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/01/10/kadimastem-finishes-treating-second-group-als-patients-astrorx-phase-1-2a-trial/
▽クレンブテロールは気管支拡張剤としていくつかの国で保険承認されています。一方で筋肉増強作用があるとしてドーピング検査対象薬物ともなっています。
▽この第2相試験では25名の患者が対象となりオープン試験で投与され、24週間、安全性と有効性などが検証される予定です。
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04245709
▽抗酸化物質は CoQ10, vitamin E, NAc cysteine, およびL-cystineの合剤となっています。60名のALS患者を対象に、オープン試験で12か月間投与される予定です。
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04244630
▽この第2相試験は16名のC9orf72遺伝子変異ALS患者を対象に、オープン試験で24週間メトフォルミンが投与され、安全性、髄液中RAN翻訳産生物質の量などが評価される予定です。
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04220021
▽RAPA-501の詳細は現段階で不明(おそらく制御性T細胞移植?)ですが、18名の患者を対象にオープン試験で6か月間、安全性や有効性などが評価される予定です。
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04220190
▽24名のALS患者を対象に、バイオマーカーとして投与4時間後の経頭蓋的磁気刺激による運動神経細胞の興奮閾値を用い、用量などについての情報を得て、第2相試験実施のためのデータを得ることが目的となっています。
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03793868