・札幌医科大学において、脊髄損傷に対する自己骨髄間葉系幹細胞移植(STR01)について、7年間の期限で条件付(適応や実施施設、モニタリングなどに厳格な条件あり)で承認されました。
引用元
http://web.sapmed.ac.jp/regeneration/topics.php?id=244
・ALSとの関連では、アメリカなどで実施中のBrainStorm社のNurOwn細胞第3相試験がこの自家骨髄間葉系幹細胞移植になります。
・ただしNurOwnでは移植部位は脊髄クモ膜下腔への注入であるのに対して、STR01は末梢からの静注であるなど投与経路の違いがあります。
・またNurOwnについては、神経栄養因子などを分泌するように分化誘導された後に投与されるとのことですので、性状にも違いがあるようです。
・NurOwn細胞の第3相試験の当初予定された終了期日は2019年7月30日であり(全体の終了は2020年)、良好な結果が期待されます
・かなくん さん、ありがとうございました。
・BIIB100(KPT-350)はBiogen社がKaryopharm社から買収した薬剤で、XPO1阻害薬です。XPO1は核輸送蛋白質であり、XPO1阻害薬は抗癌剤として既にFDAから承認されているものがあります。神経変性疾患においては、TDP-43の異常局在化を防ぐことが期待されていますが、2018年のNature誌などでは、XPO1だけがTDP-43の局在に関与しているのではないことを示唆する報告がなされており、実際の臨床試験でどのような効果がみられるのか注目されます。
・40名のALS患者を対象にプラセボ対照で行われ、安全性や薬物動態などが検証される予定です
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03945279
▽今回、研究者らは、無作為割付試験を行い、2種類の異なる頻度でのリハビリ施行がALS進行に与える影響を調べました。
▽65名のALS患者が2群にわけられ、1群目は高頻度リハビリ群(週5回の運動)、2群目が通常頻度リハビリ群(週2回の運動)とされました。
▽その結果、ALSFRS-Rでの病態進行度は両群ともに有意差はなく、呼吸機能や生存期間、補助具などの必要となるまでの期間、QOL、倦怠感、介護者の負担などいずれにおいても、両群間において統計的有意差はみられませんでした。
▽症例数は充分とはいえませんが、ALSにおいては、高頻度の運動リハビリは通常頻度と比較して、利益がない可能性があります。
(この研究はイタリア、 University of Modena and Reggio Emilia ModenaのZucchiらにより報告され2019年5月18日付のAnnals of clinical and translational neurology誌に掲載されました)
▽Neuropore Therapies社のALSおよびパーキンソン病治療薬候補であるNPT520-34の健常者を対象とした第1相試験が開始となりました
▽NPT520-34は脳内炎症マーカーの減少効果や、毒性蛋白質の減少効果などが基礎実験において観察されています。
▽経口投与が可能で、小分子であり血液脳関門を透過することが可能です。第1相試験では48名の健常者を対象に安全性や薬物動態などが確認される予定です。
引用元
https://alsnewstoday.com/2019/05/13/investigational-npt520-34-being-tested-healthy-volunteers-phase-1-trial/
▽抗癌剤であるimatinib(商品名グリーベック)がALSモデルマウスにおいて治療的効果が観察されました
▽2019年5月のアメリカ神経学会年会において公表された研究結果によるものです。
▽チロシンキナーゼ阻害剤には、FDAから承認された薬剤では、imatinib、dasatinib、bosutinib、nilotinibなどがありますが、SOD1変異ALS細胞モデルにおいて変異SOD1蛋白質量を減少させる効果が観察されたのはimatinibのみでした。
▽さらに研究者らは発症前のSOD1変異ALSモデルマウスにimatinibを投与し治療的効果を検証したところ、発症遅延効果や生存期間の延長効果が観察されました。またマウスに投与された薬剤の体重当たりの用量(2.5mg/kg)はヒトにおいて投与される用量にほぼ相当する量でした。長期投与に伴う副作用には注意が必要ですが、今後の臨床試験実施に向けて良好な結果といえます
引用元
https://alsnewstoday.com/2019/05/07/aanam-leukemia-therapy-may-treat-als/
▽第3相試験が開始されているtofersenですが、2019年5月に開催されたアメリカ神経学会年会において、第1/2 相試験における良好な結果が報告されました
▽TofersenはもともとはIONIS-SOD1RxないしBIIB067として知られていた薬剤で、アンチセンスオリゴヌクレオチド製剤です。
▽変異SOD1遺伝子由来のRNAに結合し、有害蛋白質の発現を阻害します。動物実験では筋肉機能の改善や生存期間の延長効果などが確認されていました。
▽第1/2相試験では、50名の患者が無作為にプラセボないしtofersen 20mg、40mg、60mg,ないし100mgに無作為割付され12週間経過観察されました
▽予備的な結果では、高用量群において、髄液中のSOD1蛋白質の有意な減少が確認されました。また臨床症状についても、ALSFRS-Rにおいて進行遅延を示唆する結果が得られました。
▽参加者は100mgの用量で臨床効果が良好な傾向がみられ、安全性については大きな問題がありませんでした。
▽Biogen社はこれらの結果を受けて、第3相試験を開始しています。
引用元
https://alsnewstoday.com/2019/05/03/biogen-tofersen-reduces-toxic-sod1-protein-levels-familial-als/
・BIIB067(Ionis-SOD1Rx)はアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤であり、変異SOD1遺伝子由来のRNAを阻害し、有害な変異SOD1蛋白質発現を抑制することで、治療的効果が期待されている薬剤です。
・144名を対象にプラセボ対照で行われ、約半年間で有効性や安全性などが検証されます
引用元
https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02623699#contactlocation
▽cytokinetics社のALS治療薬候補であるCK-2127107(reldesemtiv)はALS患者対象の第2相試験において、肺機能の保持に有用であることを示唆する結果が得られました。
▽2019年5月のアメリカ神経学会年会にて公表されました。reldesemtivは骨格筋のトロポニン活性化剤であり、第2相試験では、458名の患者を対象に12週間、プラセボ対照で150mg,300mg,450mgの3つの用量で無作為割付試験が行われました。
▽主尺度は静的肺活量でしたが、12週間投与の結果実薬群とプラセボとの差は統計的に有意ではありませんでした。しかし事後解析では、プラセボ群と比較して、投薬群全体で静的肺活量の変化率が27%減弱し、ALSFRS-Rの変化率も25%減弱していたことから、進行遅延効果を有することを示唆するのではないかと考察されています。
▽以上の結果を受けてcytokinetics社は実用化に向けてさらに努力したいとしています
引用元
https://alsnewstoday.com/2019/05/09/reldesemtiv-reduces-lung-function-decline-als-progression-cytokinetics/
▽変異遺伝子導入細胞モデルに対して、アロマターゼを過剰発現させるためプラスミドを用いてアロマターゼ遺伝子を導入し、その影響を調べました
▽その結果、アロマターゼ過剰発現は、細胞増殖能を高め、細胞損傷を減少させました。この保護的作用は、エストロゲン受容体αの活性化に関連した抗アポトーシス経路と関連すると考えられました。
▽以上の結果は、アロマターゼが変異SOD1発現細胞モデルにおいて細胞保護作用を有する可能性を示唆するものであり、今後の治療法開発のヒントとなりうる可能性があります。
(この研究は中国、 The Second Hospital of Hebei Medical UniversityのYanらにより報告され、2019年5月23日付のNeuroscience誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは可溶性SOD1の減少と凝集体形成による影響を調べました。その結果、末梢血単核球でのSOD1蛋白質凝集体増加はDNA損傷の増加を伴い、一方で通常の可溶性SOD1が存在する単核球においてはDNA損傷が生じていないことがわかりました。
▽DNA損傷経路である、ATM/Chk2(ataxie-talangiextasia-mutated)経路およびATR/Chk1経路の活性化は、SOD1蛋白質のリン酸化を引き起こすことがわかりました。
▽リン酸化したSOD1蛋白質は細胞質から核内に移行し、DNAを酸化的ストレスから保護する役割を果たします。一部のALS患者においては、この経路が機能不全を起こしており、酸化的ストレスからDNAを保護する作用が減弱している可能性があることがわかりました。
▽Chk2経路を通じたSOD1のリン酸化によりDNAを保護することが、治療戦略として有望な可能性があります
(この研究は、イタリア、 IRCCS Mondino FoundationのBordoniらにより報告され、2019年5月22日付のJournal of clinical medicine誌に掲載されました)
▽Stem Cells Translational Medicine誌に掲載された報告によると、ALSに対するヒト神経幹細胞移植第1相試験の結果、移植後2年間の安全性が確認されたとのことです
▽ヒト神経幹細胞は中枢神経の再生促進能を有し、基礎実験段階では神経変性疾患における治療的効果が期待できる結果が得られていました。
▽この第1相試験では、ALS患者18名の脊髄にヒト神経幹細胞が注入されました。ヒト神経幹細胞は、流産後のヒト胎児脳由来です。
▽合計18名のALS患者に移植され、2年間の経過中重大な副作用はありませんでした。また一部の患者において一時的に進行遅延を示唆する結果が得られたとのことです。
▽統計的には呼吸機能や生存期間の延長効果は明らかではなく、至適移植用量など解決すべき課題はありますが、第2相試験の実現に向けて現在準備中となっています。
引用元
https://alsnewstoday.com/2019/05/23/transplant-human-neural-stem-cells-als-patients-safe-phase-1-trial/
▽研究者らはショウジョウバエモデルを用いて、RNAポリメラーゼIIの転写制御因子であるCDC73/PAF1複合体(PAF1C)が、6塩基繰り返し配列由来の有害物質産生の制御因子であることをみいだしました。
▽PAF1Cをノックダウンすると、6塩基繰り返し配列由来のRNAやGRジペプチド繰り返し蛋白質などの有害転写産物の産生が抑制されました。ショウジョウバエにおいては、PAF1C構成要素のPaf1およびLeo1がより長く有害な転写産物の産生に選択的に寄与していることを示唆する結果が得られました。ヒトにおいては患者由来細胞モデルにおいてPAF1発現の亢進がみられました。
▽以上の結果は、C9orf72遺伝子変異ALSにおいて、PAF1Cが有害な転写産物生成において主要な制御因子であることを示唆するものであり、今後の治療法開発において注目すべき結果といえます
(この研究は、アメリカ、University of PennsylvaniaのGoodmanらにより報告され、2019年6月のNature Neuroscience誌に掲載されました)
▽今回研究者らはmGluR1ないしmGluR5遺伝子を除去したSOD1変異ALSモデルマウスを作成し、病態への影響を調べました。その結果、mGluR1除去モデルマウスでは発症が早まり、病態進展も悪化しました。一方mGluR5除去モデルマウスにおいては、発症遅延効果と生存期間の延長効果がみられました。この効果に性差はみられませんでした。
▽これらの効果は、運動神経細胞保持やアストロサイトやミクログリアの活性化抑制に起因すると考えられました。
▽以上の結果は、mGluR5発現を抑制することが、モデルマウスの病態改善効果をもたらすことを示唆しており、今後の治療ターゲットとして有望なものと思われます。
(この研究はイタリア、University of GenoaのBonifacinoらにより報告され、2019年5月15日付のNeurobiology of Disease誌に掲載されました)
▽今回、研究者らはFDAに承認された薬剤である4-アミノピリジンを投与された4名のFUS関連ALS患者について治療的効果を後方視的に検討しました。うち2名はQOL改善効果を自覚し、一部の運動機能の回復を報告しました。
▽以上の結果はALSの一部サブグループにおいては4-アミノピリジンが有効である可能性を示唆しており、今後の臨床試験による検証が望まれます
(この研究は、ドイツ、Technische Universität DresdenのPelkertらにより報告され、2019年4月30日付のJournal of Clinical Pharmacology誌に掲載されました)
▽今回、研究者らはL3MBTL1(Lethal(3) malignant brain tumor-like protein 1)が蛋白質品質制御の主要な制御因子であることを同定し、この蛋白質の喪失は、変異SOD1蛋白質やC9orf72遺伝子由来ジペプチド繰り返し蛋白質による毒性を緩和することがわかりました
▽L3MBTL1は折り畳み異常蛋白質を分解するp53依存性蛋白質品質制御システムにより制御されています。L3MBTL1関連p53結合蛋白質である、SET domain-containing protein 8も、折り畳み異常蛋白質の排除を制御しており、哺乳類細胞での蛋白毒性関連ストレスにおいて発現亢進しています。
▽L3MBTL1およびSET domain-containing protein 8はALSモデルマウスの中枢神経およびALS患者において発現亢進しています。
▽以上の結果は、蛋白質品質制御経路が正常のストレス反応のみならず神経変性疾患における蛋白毒性に対しても機能していることを示唆するものです
(この研究は、アメリカ、 Johns Hopkins UniversityのLuらにより報告され、2019年6月のNature Neuroscience誌に掲載されました)
▽今回研究者らは脳皮質興奮性神経細胞にGRジペプチドの80回繰り返し蛋白質が徐々に蓄積する、poly(GR)毒性を誘発しうるモデルマウスを作成しました。
▽低用量のpoly(GR)蛋白質発現においても、シナプス機能不全や行動異常、年齢依存性の神経細胞喪失、ミクログリオーシス、DNA損傷が観察され、ミトコンドリア機能の早期からの障害を認めました。
▽poly(GR)は主としてミトコンドリア酵素複合体Vの構成要素であるATP5A1に結合し、そのユビキチン化と分解を促進しました。この現象は患者由来脳組織においてみられるATP5A1の減少と一致するものでした。
▽さらにpoly(GR)発現神経細胞においてATP5A1発現を亢進させるか、もしくはpoly(GR)濃度を発症後のモデルマウスにおいて減少させると、poly(GR)由来の神経毒性が減弱しました。
▽以上の結果は、poly(GR)に起因したミトコンドリアの機能異常がC9orf72遺伝子変異ALS発症の主要な誘発因子であることを示唆するものです
(この研究は、アメリカ、University of Massachusetts Medical SchoolのChoiらにより報告され、2019年6月のNature Neuroscience誌に掲載されました)