・ALSに対するボスチニブ投与の安全性および忍容性に関する第1相試験が実施予定となっています
・試験はオープン試験で行われ、12週間の観察期間を経て、1週間の移行期間の後12週間ボスチニブが投与されます。 ボスチニブは4つの用量、100 mg/日、200 mg/日、300 mg/日、400 mg/日が設定され、各群3~6名が割り当てられる予定です。
・詳細は以下をご参照ください
https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000041294
・主な選択基準/除外基準は以下となっています
■選択基準(観察期開始時)
(1)Updated Awaji基準のdefinite(確実)、probable(可能性大)又はprobable-laboratory supported(可能性大であり検査所見で裏づけられる)に該当する孤発性又は家族性ALSと診断された患者
(2)観察期開始時において発症後1年以内の患者
(3)ALSの重症度基準で重症度1度又は2度の患者
(4)外来通院が可能な患者
■除外基準(観察期開始時)
(1) 気管切開を施行している患者
(2)非侵襲的呼吸補助装置を装着したことのある患者
(3)%FVC(努力性肺活量)が60%以下の患者
(4)観察期登録前4週以内にエダラボンを使用している患者
・詳細は以下をご参照ください
https://als-mecobalamin.org/
▽Amylyx社の第2相試験であるCENTAUR試験において、132名の予定された登録患者数のエントリーが終了したことが公表されました
▽AMX0035はタウロデオキシコール酸とフェニル酪酸ナトリウムの混合物です。前臨床試験段階において、ミトコンドリア機能改善などを示唆する結果がえられている他、いくつかの動物モデルにおいても治療的効果が得られています。
▽CENTAUR試験では24週間プラセボないしAMX0035が投与され、有効性と安全性が検証されます。良好な結果が期待されます。
引用元
https://alsnewstoday.com/2019/03/21/patient-recruitment-completed-phase-2-als-study-testing-amx0035/
▽SOD1蛋白質はジスルフィド結合を含んでおり、これが安定化において重要な役割を果たしています。この結合の形成には酸素が不可欠であり、研究者らは低酸素ストレスがALSの病態に影響を及ぼしうる可能性を考えました。
▽患者由来線維芽細胞、アストロサイト、iPS細胞由来運動神経細胞などを用いて、低酸素下の影響を調べました。その結果、低酸素はSOD1蛋白質の機能異常を増加させました。患者由来運動神経細胞とアストロサイトの共培養下において低酸素の影響が最も大きく変異SOD1蛋白質の凝集体形成が観察されました。
▽以上の結果は、酸素環境が変異SOD1蛋白質の神経毒性に影響を与える可能性を示唆するものです
(この研究はスウェーデン、Umeå UniversityのKeskinらにより報告され、平成31年3月12日付のActa Neuropathol誌に掲載されました)
▽ALSは酸化的ストレス、アポトーシス、神経炎症、グルタミン酸毒性などの病態により特徴付けられます。
▽脊髄における低酸素および虚血がALSの病態において重要な役割を果たすことが報告されていますが、低酸素が病態進行に及ぼす影響はよくわかっていません。
▽今回、研究者らは低酸素ストレス下における主要な制御因子であるHIF-1α(Hypoxia-inducible factor 1-alpha)がALS患者脊髄およびSOD1変異ALSモデルマウスの脊髄において発現亢進していることをみいだしました。
▽プロスタサイリン類似物徐放剤であるONO-1301-MSの単回皮下投与により、HIF-1α発現が減少しました。またモデルマウスの脊髄におけるBDNF濃度やATP産生の増加が確認されました。また、進行期における運動機能の有意な改善効果がみられました。
▽以上の結果は、脊髄における局所血流を改善させる治療的介入がALS治療法開発において有望な戦略となる可能性を示唆するものです
(この研究は大阪大学のTadaらにより報告され、平成31年3月27日付のScientific Reports誌に掲載されました)
▽損傷を受けた内皮細胞を細胞移植により置換することは関門を修復するための治療戦略となりえます。
▽最近、研究者らはヒト骨髄CD34+細胞を経静脈的に発症後のALSモデルマウスに投与することにより、血液脊髄関門の障害が修復され、病態進行遅延効果をもたらすことを報告しました。しかしながらその治療的効果は限定的でした
▽今回、研究者らは特定の系統の造血細胞がより有効に作用するのではないかとの仮説の下で、ヒト骨髄由来内皮前駆細胞移植の有効性を検証しました
▽SOD1変異ALSモデルマウスにヒト内皮前駆細胞を移植したところ、脊髄および脳皮質の白質/灰白質の毛細血管の広い範囲に生着し、毛細血管微細構造を回復し、脊髄実質へのエバンスブルー漏出を減少させました。また血管壁を取り巻くアストロサイトのエンドフィート構造を回復し、脊髄運動神経細胞の生存期間延長をもたらしました。
▽以上の結果は、ヒト内皮前駆細胞移植が血液脊髄関門を回復し、異常な免疫系細胞の侵入を阻害し、運動神経細胞の保持に寄与する可能性を示唆するものです。
(この研究は、アメリカ、University of South FloridaのGarbuzova-Davisらにより報告され、平成31年3月27日付のScientific Reports誌に掲載されました)
▽ROCK阻害剤であるY-27632は、神経保護作用とは別に運動神経軸索の再生を促進することが示されています。
▽今回、研究者らはSOD1変異ALSモデルマウスを用いて、Y-27632を投与し、軸索再生能を調べました。
▽症状発現後のモデルマウスにおいては、軸索再生能は発現前と比較して顕著に減弱していました。T-27632投与は神経圧挫損傷後の運動神経軸索の機能的および形態的回復を改善しました。症状発現後の投与では生存期間延長効果はみられませんでしたが、神経筋接合部における神経再支配を改善しました。
▽以上の結果はSOD1変異ALSモデルマウスでは軸索再生の障害があり、軸索再生を促進させる薬物療法的介入により改善しうる可能性があることを示唆するものです
(この研究はドイツ、 University Hospital of CologneのJoshiらにより報告され、平成31年3月12日付の J Comp Neurol.誌に掲載されました)
▽神経栄養因子は運動神経細胞変性に対して防御的に働くことができますが、その機能は神経栄養因子受容体の細胞膜脂質ラフトと呼ばれる細胞膜小領域における正常な局在化を必要とします。
▽研究者らは、これまでにシナプシン誘導カベオリンー1の過剰発現が神経栄養因子受容体の細胞膜脂質ラフトへの局在化を増加させ、海馬のシナプスと神経の可塑性を促進し、マウスの学習記憶機能を改善することを報告しています。
▽今回、研究者らはSOD1変異ALSモデルマウスに対して異種カルベオリン-1遺伝子を導入し、その影響を検討しました。
▽その結果、SOD1変異ALSモデルマウスに比較して、体重増加や運動機能の改善、生存期間の延長効果が確認されました。
▽カルベオリン-1遺伝子導入マウスにおいては、脊髄運動神経の保持やミトコンドリア形態の保持が観察されました。
▽以上の結果は、カルベオリン-1が神経栄養因子受容体発現と細胞膜脂質ラフトへの局在化を通じて、ALSモデルマウスの病態改善効果を発揮する可能性を示唆するものです
(この研究は、アメリカ、Veterans Affairs San Diego Healthcare SystemのSawadaらにより報告され、平成31年3月20日付のFASEB J誌に掲載されました)
▽TDP-43が凝集するメカニズムはよくわかっていません。
▽今回、研究者らは光遺伝学的アプローチにより、時空間的にコントロール可能なTDP-43蛋白症を誘発させることで病態を調べました。
▽その結果、封入体形成は、RNA結合により拮抗可能な、TDP-43のLC(low-complexity)領域間の異常な相互作用により生じることがわかりました。
▽ストレス顆粒がTDP-43蛋白症における主要な誘導因子と考えられてきましたが、今回の研究によりこれらRNAが豊富な構造物の外においても封入体形成が生じることがわかりました。
▽さらに、細胞質におけるTDP-43の異常な相転移が神経毒性をもたらし、TDP-43をターゲットとするオリゴヌクレオチドにより封入体形成が阻害され、神経毒性が減弱することがわかりました。
▽以上の結果は、TDP-43蛋白症における病態機序に新たな視点を与えるものであり、今後の治療法開発において有用な可能性があります。
(この研究は、アメリカ、 University of PittsburgのMannらにより報告され、平成31年2月27日付のNeuron誌に掲載されました)
▽動物実験において、シュワン細胞がトロンビンによる有害作用から神経筋接合部を保護する作用を発揮することが判明しました。この研究結果はPLoS Genetics誌に掲載されました。
▽神経筋接合部は神経細胞と骨格筋、および神経細胞を保護する髄鞘を形成するシュワン細胞から形成されます。しかしシュワン細胞が神経筋接合部を維持するメカニズムは不明でした
▽研究者らはerbb3遺伝子を除去し、シュワン細胞を除去したモデルマウスを作成し、神経筋接合部を観察しました。
▽その結果、シュワン細胞が欠如すると、神経筋接合部が未成熟な状態で形成開始し、神経伝達物質であるアセチルコリンがシナプス変性に関与することを見出しました。アセチルコリンが放出されないか、受容体が欠如すると、シナプス変性は阻害されました。
▽遺伝子発現を解析することにより、シュワン細胞の欠如した横隔膜においては、セリンプロテアーゼを阻害する役割を有する2つの蛋白質の濃度が減少していることがわかりました。その蛋白質はserpin C1およびserpin D1であり、トロンビンの機能を阻害する機能を有します。
▽トロンビンの前駆体であるプロトロンビンを欠如させると、神経細胞変性が停止しました。またシュワン細胞の欠如した横隔膜ではプロトロンビンのトロンビンへの転換を促進する凝固因子の第X因子が増加していることがわかりました。
▽シュワン細胞は、筋肉から放出される有害因子を阻害することにより、神経筋接合部シナプスの発達を間接的に支持していることがわかりました。その有害因子の1つがトロンビンであり、トロンビンが凝固系以外で役割を有することの最初の発見であり、同時にシュワン細胞が筋肉からの有害物質を阻害することで神経筋接合部を保持していることを示すものです
引用元
https://alsnewstoday.com/2019/03/19/nerve-protecting-cells-hold-potential-in-development-of-als-therapies/
▽骨格筋におけるイオンチャネルの障害がALS症状の悪化に関与する可能性があることがScientific Reports誌に掲載された報告により明らかになりました
▽ALSの最初期の症状として、神経筋接合部におけるシグナル伝達の障害があげられます。このことから、運動神経細胞死に先立って、筋肉機能の変化が生じていることが指摘されています。
▽筋肉機能はナトリウム、カリウム、塩素、カルシウムなど各種イオンに関連するイオンチャネルにより維持されています。ALSにおいては、運動神経細胞の過剰興奮が興奮毒性を発揮しますが、ナトリウムイオンの交換を遮断することがALSにおいて治療的に作用することが報告されています。しかし塩素イオンチャネルであり、骨格筋において特異的に発現がみられるCIC-1の病態に果たす役割についてはよくわかっていません。
▽研究者らは、SOD1変異ALSモデルマウスと、骨格筋のみ変異SOD1を発現するモデルマウスを作成し、CIC-1と病態との関連を調べました
▽その結果、モデルマウスの骨格筋においてはCIC-1蛋白質の発現低下がみられ、CIC-1活性を阻害するprotein kinase-Cの発現増加がみられました。
▽また骨格筋における塩素イオン動態も障害されていることがわかりました。protein kinase Cの阻害剤であるchelerythrineを投与すると、塩素イオン動態が回復しました。同様の効果はアセタゾラミド投与によっても観察されました。
▽以上の結果は、骨格筋における塩素イオン動態の障害が病態に関与していることを示唆しており、これを回復させることが治療戦略となりうる可能性を示唆するものです
引用元
https://alsnewstoday.com/2019/03/05/rescuing-impaired-skeletal-muscle-function-may-help-relieve-some-als-symptoms/
▽プリドピジンはハンチントン舞踏病治療薬として開発された小分子です。今回、研究者らはプリドピジンをALSモデルに投与し有効性を検証しました
▽プリドピジンはSOD1変異ALSモデルマウスにおいて軸索輸送障害を改善し、神経筋接合部異常を減少させ、運動神経細胞死を減少させました。
▽さらにプリドピジンはERK経路を活性化し、シグマ1受容体経路を通じて治療的効果がもたらされることがわかりました。
▽プリドピジンは脊髄における変異SOD1凝集体形成を減少させ、神経筋接合部異常を減少させるなど、SOD1変異ALSモデルマウスにおいて治療的効果を発揮することがわかりました
(この研究は、イスラエル、Tel Aviv UniversityのIonescuらにより報告され、平成31年3月1日付のCell Death Dis.誌に掲載されました)
▽反復配列を有するセンスおよびアンチセンス転写物の核内凝集およびジペプチド繰り返し蛋白質の細胞質内への凝集が細胞毒性をもたらします。
▽研究者らはこれまでに、人工的なmiRNAにより有害な転写産物生成を阻害する方法を報告しました。
▽今回、研究者らは、アデノ随伴ウイルスベクターにより転写物をターゲットとするマイクロRNAを注入し、患者iPS細胞由来神経細胞およびALSモデルマウスにおいて治療的効果を検証しました
▽その結果、様々な神経細胞モデルにおいて、マイクロRNA注入は核内および細胞質において繰り返し配列転写産物を減少させ、RNA凝集体の減少が確認されました
▽以上の結果は、RNA干渉を用いた遺伝子治療が、異常転写産物の生成阻害により治療的効果をもたらす可能性を示唆するものです
(この研究は、オランダ、Leiden UniversityのMartierらにより報告され、平成31年2月11日付のMol Ther Nucleic Acids.誌に掲載されました)
▽NAD+増加は内因性SIRT活性を亢進させ、酸化的ストレス抵抗性を高め、ミトコンドリアでの活性酸素産生減少につながります。
▽この保護的作用は、部分的には抗酸化作用のあるミトコンドリア蛋白質の活性化に依存します。
▽今回、研究者らは、アストロサイトにおけるNAD+濃度上昇が、核転写因子、Nrf2の活性化をもたらし、抗酸化蛋白質であるHO-1やSRXN1の発現亢進をもたらすことをみいだしました。
▽Nrf1の活性化は同時にSIRT6の発現亢進をもたらします。SOD1変異ALSモデルマウスより抽出されたアストロサイトは運動神経細胞との共培養により運動神経細胞死をもたらすことがしられています
▽ニコチンアミドモノヌクレオチドないしニコチンアミドリボシド投与はアストロサイトにおけるNAD+増加をもたらし、細胞毒性を減弱させます。この神経保護作用はアストロサイトでのSIRT6発現に依存することがわかりました。
▽さらにアストロサイトにおいてSIRT6を過剰発現させたところ、細胞毒性が減弱しました。以上の結果はSIRT6がALSにおけるアストロサイト依存性の神経細胞死において治療的に作用する可能性を示唆するものです
(この研究は、アメリカ、Medical University of South CarolinaのHarlanらにより報告され、平成31年3月6日付の FASEB J誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは、生後8週齢のSOD1変異ALSモデルマウスに対して体重1gあたり1mgの滋陰降下湯を6週間投与しその影響を調べました。
▽6週後の脊髄組織において、炎症性蛋白質(Iba-1、TLR4、TNF-α)や酸化的ストレス関連蛋白質(トランスフェリン、フェリチン、HO1、NQO1)がウエスタンブロット法により解析されました。
▽滋陰降下湯投与は非投与モデルマウスと比較して運動機能障害を有意に改善し、酸化的ストレス物質を減少させました。
▽またTLR-4関連シグナル蛋白質発現低下や鉄恒常性機能改善を通じて、神経炎症を改善することを示唆する結果がえられました
▽以上の結果は、滋陰降下湯がALSモデルマウスの神経炎症に作用する可能性を示唆するものです
(この研究は、韓国、Korea Institute of Oriental MedicineのLeeらにより報告され、平成31年2月12日付の Evid Based Complement Alternat Med.誌に掲載されました)