・Masitinibなど第3相試験が終了した薬剤は、現在のところ期待通りとはいかない状況になっています。しかし今年は慶應義塾大学で患者由来iPS細胞を用いてスクリーニングされた薬剤の試験が開始となるなど、これまでにない新たな動きも始まっています。
・またBrainStorm社のNurOwn細胞の第3相試験についても順調にいけば2019年中に終了予定となっています。来年は明るいニュースが多くあることを期待します
・管理人個人としては本業に圧迫されて更新ペースが落ちてしまいました。来年も更新はマイペースになるかと思いますが、宜しくお願いいたします。
・皆様にとって2019年がより良い一年となりますことを祈念致します。
管理人 HIDE
▽この試験は12週間、オープンでイノシンが経口投与され、血漿尿酸値が7-8mg/dlを維持するようにイノシン投与量が設定されました
▽12週後に96%が試験を完遂し、目標尿酸値は6週後に達成されました。重大な副作用はなく、酸化的ストレスに関連するバイオマーカーについては有意な上昇を認めました。ALSFRS-Rについては、ベースラインからの予測値からの有意な変化はみられませんでした。
▽今後さらに大規模な臨床試験での有効性の検証が期待されます
(この研究は、Massachusetts General HospitalのNicholsonらにより報告され、平成30年10月22日付のAnnals of Clinical and Translational Neurology誌に掲載されました)
▽肝細胞増殖因子(HGF)はALSなどの神経変性疾患動物モデルにおいて多様な神経栄養因子としての作用を発揮することが報告されています
▽5番目の残基を除去した遺伝子組み換えHGF(KP-100)の安全性と忍容性、薬物動態を明らかにする第1相試験が15名のALS患者に対して行われました
▽この試験では、クモ膜下腔に留置したカテーテルより薬剤が注入され、9名に対しては単回注入され、6名については、合計6回、1週間毎に注入されました。
▽その結果重大な副作用はなく、複数回投与群では髄液中のKP-100は一定濃度に保持され、抗KP-100抗体も髄液中および血漿中に観察されることはありませんでした。
▽安全性および忍容性が確認されたことから、今後第2相試験への進展が期待されます
(この研究は、東北大学のWaritaらにより報告され、平成30年12月11日付のJournal of Clinical Pharmacology誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは健常高齢者から採取したメモリーB細胞をスクリーニングし、折り畳み異常SOD1蛋白質に特異的に結合する、遺伝子組み換えヒトモノクローナル抗体(α-miSOD1)を作成しました。
▽SOD1変異ALSモデルマウスにα-miSOD1を投与したところ、発症遅延効果や、生存期間延長効果が確認されました。またSOD1蛋白質の凝集も減少しました。これらの効果は末梢からの投与によっても得られました。
▽以上の結果は、SOD1変異ALSに対してα-miSOD1が治療的に有望な可能性を示唆するものです
(この研究は、スイス、Neurimmune AGのMaierらにより報告され、平成30年12月5日付のScience Translational Medicine誌に掲載されました)
▽粘液細菌は様々な活性代謝物を産生し、天然物質の生産者として知られています。
▽今回、研究者らは、粘液細菌抽出物が、ヒトアストロサイトへの酸化的ストレス暴露にどのような影響を与えるかを調べました。
▽その結果、粘液細菌抽出物は、過酸化水素暴露アストロサイトによる活性酸素産生を抑制し、細胞死を減少させました。
▽この作用はNAD+濃度を回復させることによるものであることがわかりました。さらに細胞内グルタチオン濃度を上昇させることによる細胞保護作用を有することもわかりました。アルカンジウム属やシストバクター属などの粘液細菌が特に有用でした。
▽以上の結果は、粘液細菌抽出物が酸化的ストレスからアストロサイトを保護する作用を有する可能性を示唆するものです。
(この研究は、オーストラリア、Macquarie UniversityのDehhaghiらにより報告され、平成30年11月26日付のNeuroscience誌に掲載されました)
▽L-セリンはL-BMAAの細胞毒性を抑制することが報告されています。今回研究者らは血管新生に重要な内皮増殖因子であるangiopoietin-1と炎症抑制作用を有しintegrin αvβ3結合蛋白質であるC16投与による、L-BMAA毒性への効果を調べました
▽その結果、angiopoietin-1とC16のみを投与した場合に比較して、L-セリンを同時に投与した方がアポトーシスや認知機能への影響が緩和されることがわかりました
▽以上の結果は、angiopoietin-1とC16がL-セリンの治療的効果を高める可能性を示唆するものです
(この研究は中国、Zhejiang UniversityのCaiらにより報告され、平成30年11月25日付のAging誌に掲載されました)
▽ALSと前頭側頭型認知症の最も頻度の高い遺伝子異常は第9染色体におけるC9orf72遺伝子の6塩基繰り返し配列の過剰伸長です。
▽この繰り返し配列の過剰伸長により繰り返し配列を含むRNAが産生され、これが細胞毒性をもたらすと考えられています。
▽このRNAはヘアピン構造やG四量体構造などをとりうることがしられています。さらにC9RANと呼ばれるアミノ酸繰り返し配列を有する蛋白質も産生され、これも細胞毒性を有することが報告されています。
▽今回、研究者らはヘアピン構造を有するRNAをターゲットとする小分子を開発しました。これまではG四量体をターゲットとする研究が主になされてきましたが、ヘアピン構造も病態に関与することが明らかになりました。
▽RNAのヘアピン構造をターゲットとすることによりC9RANの産生を阻害することが可能となりました。G四量体をターゲットとした場合には阻害できませんでした。
▽この小分子は”4”と呼ばれており、C9orf72遺伝子変異ALSに対する治療薬候補として今後の実用化が期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/12/20/small-molecule-targets-als-frontotemporal-dementia-root-cause/
▽2種類の大麻草由来化合物を含む薬剤であるSativexがALSの痙性に有効な可能性があることが、第2相試験の結果から明らかになりました
▽この試験では、カンナビジオールおよびテトラヒドロカンナビノールの合剤であるSativexが用いられました。イタリアで59名のALSないし原発性側索硬化症患者が対象となり、6週間、プラセボ対照で痙性に対する効果が検証されました
▽その結果、痙性尺度(Modified Ashworth Scale)において有意な改善効果がみられました。Sativexの投与された患者のうち55%において良好な反応性が得られたとのことです
▽今後更に大規模な臨床試験での検証が期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/12/19/cannabis-extract-therapy-sativex-may-help-control-spasticity-als-primary-lateral-sclerosis-phase-2-trial/
・ロピニロールは患者由来iPS細胞での基礎実験において有効性の期待される薬剤として抽出されたものです。
・プラセボ対照で行われ、20名を対象に24週間経過観察される予定です
引用元
https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000039856
・ALSに対する腸内細菌叢移植の有効性や安全性に関する臨床試験が開始予定です
・42名のALS患者を対象に6ヶ月の間隔で2回移植が行われ、プラセボ対照で12ヶ月間経過観察される予定です。
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03766321
・IPL344はPi3k/Akt経路の活性化剤であり、抗アポトーシス効果や抗炎症作用を通じて治療的有効性が期待されている新規物質であり、中心静脈カテーテルより経静脈的に投与されます。
・15名を対象に安全性や忍容性が検討され、最大36ヶ月間経過観察される予定です
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03755167
▽Affiliated Managers Groupはマサチューセッツ総合病院にALS治療法開発のセンター(Healey Center)を設立するために2000万ドルを寄贈することを公表しました
▽今回の寄贈により、Healey Centerのためこれまでに総額4000万ドルが集まりました。
▽同センターはもともとthe Sean M. Healey and AMG Centerと呼ばれており、これまでもALS治療法開発のため研究を続けてきました。
▽今後更にALS治療法開発が促進することが期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/12/06/als-research-center-funded-20-million-affiliated-managers-group/
▽ALSに対するPotiga(ezogabine)の第2相試験において、potigaはALS患者の運動神経細胞の異常興奮を抑制することがわかりました
▽Potigaはグラクソスミスクライン社とValeant製薬が開発し、部分発作の併用療法薬として承認されましたが、2017年に販売上の理由により発売停止となりました。現在ヨーロッパではTrobalt(retigabine)の商品名で販売されています
▽potigaは電位依存性カリウムチャネルファミリーであるKv7を活性化し異常活性化を抑制することが期待されています
▽Potigaについては最近65名を対象とした臨床試験が終了したばかりであり、この臨床試験では神経細胞の興奮性のマーカーとして経頭蓋磁気刺激が用いられました。その結果、運動神経細胞の過 剰興奮性が減弱することが確認できたとこのことです。
▽今回の臨床試験では神経細胞の興奮特性が調べられることが主な目的でしたが、今後有効性について検証されることが期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/12/13/potiga-lowers-motor-neuron-excitability-als-patients-phase-2-trial/
▽ある種の果物や野菜に含まれる天然物質であるresveratrolがALS患者由来の間葉系幹細胞の機能を高めることができる可能性があるとの研究結果がJournal of Tissue Engineering and Regenerative Medicine誌において報告されました
▽resveratrolはイチゴやブルーベリー、ピーナッツなどに含まれています。しかしながらサプリメントなどでの大量摂取の安全性については確認されていません。
▽研究者らはALS患者由来の間葉系幹細胞において細胞の生存に関与するSIRT1遺伝子発現が低下していることをみいだしました。同時に細胞のエネルギー産生に関与するAMPK蛋白質の活性化も乏しいことがわかりました。
▽resveratrolはSIRT1およびAMPK経路を活性化させることがしられており、研究者らがALS患者由来の間葉系幹細胞にresveratrolを暴露させたところ、これら蛋白質の濃度が上昇しました。
▽以上の結果は間葉系幹細胞の治療的有効性を高める可能性を示唆するものであり、今後の応用が 期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/12/04/resveratrol-fruit-compound-strenghtens-neuronal-abilities-of-als-derived-stem-cells-study-finds/
▽Anelixis Therapueutics社のALS治療薬候補であるAT-1501が第1相試験において投与開始となりました。
▽この臨床試験では、健常者と8名のALS患者にAT-1501が投与され、安全性と忍容性、薬物動態などが検証されます。
▽AT-1501はCD40リガンド(CD40L)をターゲットとする抗体であり、CD40Lの過剰産生が神経変性に関与すると考えられています
▽第1相試験の結果が良好であれば、さらに第2a相試験に進みたいとしています
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/12/03/first-human-trial-als-treatment-candidate-at-1501-begins-dosing/