・FDAのcompassionate use(FDA版の患者申出療養制度)とは異なり、FDAの関与なしに、製薬会社の同意と医師の推薦状で未承認薬剤の使用を認める法案で、2014年5月にコロラド州議会で最初に承認され、その後2018年4月までに全米40州で承認されました。さらに2018年に連邦議会でも承認され、2018年5月30日にトランプ大統領がこの法律に署名したということです。
・この法案の適応となる薬剤は、重大な疾患に対するものとして開発中であり、少なくとも第1相試験を終了したものでよく、各種の実験的薬剤が含まれます。
・この法案の適応を考慮する患者は、まずは主治医と話合い、主治医の同意があれば、主治医が製薬会社のcompassionate use担当者と協議を開始し、製薬会社が同意すれば、投薬可能となるようです。
・制定されたばかりの法律であり、実際の運用状況は不明で、賛否両論あるようですが、今後の動向が注目されます。
引用元
http://righttotry.org/faq/
▽Brainstorm社はRight to try法(こちらの記事参照)によるNurOwn細胞の提供を行わないことを公表しました
▽NurOwn細胞については、right to try法の適応条件となる、主な4つの条件のうち、(1)臨床試験が行われた施設での限定的かつ安全な提供、(2)患者がNurOwn細胞の利益と有害性について十分に理解していること、(3)第3相試験のエントリー基準に不適合となった患者への限定的な提供、の3つの条件は満たしたものの、(4)資金力の不十分な患者に対してアクセス可能とする方略があること、の条件について解決することができないため、この法案による提供ができないということです。
▽現在同社はNurOwn細胞の第3相試験を実施中です。
▽アメリカALS協会も、ALS患者がFDA未承認であっても新規治療法に迅速にアクセスすることを可能にする方向性を支持しつつ、一方で新規治療法開発と承認がさらに加速して、実際に患者が治療を受けることができるようになることが必要であると述べています
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/06/29/als-therapy-nurown-not-available-under-new-policy-brainstorm-decides/
▽ProMIS社は異常TDP-43蛋白質を対象とした抗体治療を開発中です。折り畳み異常TDP-43蛋白質の細胞質内での凝集体形成はALS患者の95%で観察されており、これが運動神経細胞死をもたらす、ALSの主要な病態と考えられています。
▽同社は正常なTDP-43蛋白質には作用せず、折り畳み異常TDP-43蛋白質のみに反応する抗体を開発しています。現在基礎実験段階ですが、ターゲットとなる作用部位の同定を行っており、ある程度候補が絞り込めているとのことです
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/06/28/promis-neurosciences-moving-into-advanced-phase-of-antibody-treatment-for-als-discovery/
▽Aquinnah社は同社のALS治療薬開発に対してアメリカ国立衛生研究所から3億7千万円の資金供与を得たことを公表しました
▽同社はストレス顆粒を対象とした治療法を開発中です。ALS患者ではストレス顆粒中にTDP-43蛋白質の凝集がみられます
▽Aquinnah社はこの凝集体を分解する小分子の開発を行っています。基礎実験段階ですが、資金供与により実用化に向けて進展が期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/06/22/ninds-gives-aquinnah-3-4-million-grant-to-advance-stress-granule-based-therapies-for-als/
▽今回ALS患者に対するrasagiline 1mgのリルゾール併用の有効性、安全性についてのプラセボ対照第2相試験が行われました
▽ドイツで行われたこの試験は、252名の患者を対象に、最長18ヶ月間で行われました
▽その結果、rasagilineに有意な生存期間延長作用は確認されませんでしたが、事後解析によりエントリー時点での病態進行速度の速い(ALSFRS-Rで0.5点/月以上)群については、rasagiline投与により病態進行遅延効果がある可能性を示唆する結果が得られました。今後の臨床試験での検証が期待されます
(この研究は、ドイツ、University of UlmのLudolphらにより報告され、平成30年6月18日付のLancet Neurology誌に掲載されました)
▽ALSにおいては非細胞自律性の病態機序が推定されています。ALS患者の脊髄や中枢神経ではアストロサイトーシスやミクログリオーシスが観察され、アストロサイトの持続的な活性化が報告されています。
▽アストロサイトがどのように傷害をもたらすかについてはよくわかっていません。今回研究者らはアストロサイトの活性化をもたらす骨形成蛋白質(BMP)に注目しました。
▽SOD1変異ALSモデルラットにおいて、脊髄では活性化アストロサイトにおいてBMP4の発現亢進がみられました。一方でBMP阻害作用を有するnogginは減少がみられました
▽nogginをクモ膜下腔に持続投与したところ、病態進行の遅延、生存期間の延長効果がみられました。これらはアストロサイトの活性化を抑制することによりもたらされていました。
▽同時にBMP4をターゲットとしたアンチセンス・オリゴヌクレオチド投与によりBMP4の発現を阻害することによっても同様の治療的効果が認められました。
▽以上の結果は、BMP4阻害がALS治療法として有望な可能性があることを示唆するものです
(この研究は、東北大学のShijoらにより報告され、平成30年6月19日付のExperimental neurology誌に掲載されました)
・発症1年以内の発症初期で、進行が比較的緩やか(12週間のALSFRS-Rの変化量が1点か2点)な方が対象となるようです。
・多施設試験であり、国内では、名古屋大学、三次神経内科クリニック、札幌医科大学、北里大学病院、滋賀医大病院、千葉大学病院、岡山大学病院、徳島大学病院、順天堂大学病院、和歌山医科大学病院、帝京大学病院、東邦大学病院など国内16箇所の施設で行われるようです。
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03548311
▽研究者らは遺伝子をターゲットとするアンチセンス・オリゴヌクレオチドの作用機序についての一部を解明しました
▽最新号のPNAS誌に掲載された結果によると、細胞質内のアンチセンス・オリゴヌクレオチドなどの小核酸分子は細胞核にストレス誘発性のメカニズムにより搬送されることがわかりました。この搬送を担うものはSIRC(stress-induced response complex)とよばれ、FUSやAtgonaute、TNRC6などの分子を含む複合体です。
▽中でもFUSはALSの原因遺伝子としても知られており、この機能の病態への関与が示唆されています。
▽今後、このようなメカニズムの解明が、アンチセンス・オリゴヌクレオチドを用いた治療の改良に役立つことが期待されています
引用元
http://www.alsresearchforum.org/new-insights-may-help-scientists-improve-aso-therapies-for-als/
▽すでに記事(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-1494.html)でご紹介したとおり、欧州医薬品庁から承認について否定的な見解がだされたAB Science社のALS治療薬候補であるMasitinibですが、今年秋にも、アメリカとカナダで第3相試験の開始が予定されているようです。
▽欧州では臨床試験の質が問題になっただけに、今年開始予定の新たな臨床試験では良好な結果が得られることが期待されます
引用元
http://www.alsresearchforum.org/masitinib-drug-maker-ab-science-withdraws-its-appeal-to-ema/
▽こちらの記事(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-1517.html)にてご紹介した、基礎実験における胎児幹細胞由来アストロサイト(AstroRx)移植の有効性ですが、ヒトを対象とした第1/2a試験が募集中であることが記事になっていました。
▽同社は質の高いアストロサイトを大量に生産する技術を開発しており、分化誘導した健常なアストロサイトが神経保護作用を有することを確認しました。
▽イスラエルにおいて行われている第1/2a相試験では21名を対象に11ヶ月間で評価される予定となっています
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/06/11/als-trial-recruiting-test-astrorx-potential-stem-cell-therapy/
▽有痛性の筋痙攣に対するFlex Pharma社の治療薬候補であるFLX-787ですが、30mgを用いた第2相試験では、忍容性に関する問題が生じたため、同社の判断により、試験が中断されることとなりました
▽今後、試験規模を縮小し、嚥下障害に対する有効性についての臨床試験を行いたいとしています。
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/06/15/flex-pharma-stops-phase-2-trial-of-flx-787-to-ease-muscle-cramps-in-als-patients/
・10名を対象に行われる予定です
引用元
https://www.als.net/als-research/clinical-trials/376/
・滋賀医科大学などの研究グループがTDP-43の異常凝集体を除去する新たな治療抗体の開発に成功したとのことです。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2018/5/31/180531-1.pdf
・細胞内の異常凝集体にアプローチする手法として革新的であり、今後の実用化への進展が期待されます。
・ちーずさんありがとうございました
▽その結果、炎症促進性物質の発現の減少、グリア活性の減少、運動神経細胞異常の改善などが認められました。またグルタミン酸トランスポーターのGLT1やGLASTの発現亢進を認めました。
▽以上の結果は、CORT 113176による糖質コルチコイド受容体阻害はモデルマウスにおける神経炎症抑制や、グルタミン酸系の抑制などにより病態緩和作用を有する可能性を示唆するものです
(この研究は、アルゼンチン、Instituto de Biología y Medicina ExperimentalのMeyerらにより報告され、平成30年6月8日付のNeuroscience誌に掲載されました)
▽モノクローナル抗体であるFG-3019によるCTGF/CCN2の抑制は、いくつかの変性疾患での線維化の抑制をもたらします。
▽今回、研究者らはSOD1変異モデルマウスの骨格筋および脊髄においてCTGF/CCN2発現の亢進がみられることをみいだしました。
▽FG-3019によりCTGF/CCN2を抑制すると、モデルマウスにおいて運動機能の改善と筋変性の減少が観察されました。また神経筋接合部の機能保持も観察されました
▽以上の結果は、CTGF/CCN2がALSにおけるQOL改善のための治療ターゲットとなりうる可能性を示唆するものです
(この研究は、チリ、Pontificia Universidad Católica de ChileのGonzalezらにより報告され、平成30年5月30日付のHuman Molecular Genetics誌に掲載されました)
▽研究者らは、ヒト胎児幹細胞からアストロサイトを分化誘導し、モデルマウスのクモ膜下腔に移植しました。
▽アストロサイトは試験内においては、様々な神経栄養因子を分泌することが確認されました。アストロサイトを移植されたSOD1変異ALSモデルマウスおよびラットにおいては発症遅延効果と運動機能の改善がみられました。移植されたアストロサイトは安全に長期間生着することが確認されました。
▽以上の結果は、幹細胞由来アストロサイトの移植がALSの治療戦略として有望な可能性を示唆するものです
(この研究は、イスラエル、Weizmann Science ParkのIzraelらにより報告され、平成30年6月6日付のStem cell research and therapy誌に掲載されました)