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ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
全世界から最新の治療情報を見つけ出し、ここで紹介します。完治するまで戦い続けましょう!
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今年も一年ありがとうございました。
・本年も当ブログをご訪問いただき、また多くのコメントをいただきありがとうございました。

・今年はBrainStorm社のNurOwn細胞の第3相試験の開始など再生医療領域での着実な進展がみられました。ALS NEWS TODAYで1年間のまとめ記事が例年でていますので、こちらが掲載されたら(昨年は年明けでした)また翻訳予定です。

・来年はALSの根治につながる良い情報をお伝えできることを念願します。今年は更新頻度が低下してしまいましたが、今後とも当ブログをよろしくお願いいたします。皆様が良い新年をお迎えになることをお祈りいたします。

管理人 HIDE
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保存的鉄キレート剤はALSで神経保護作用を有するか
▽孤発性および家族性ALS患者ならびにALSモデルマウスにおいて鉄蓄積が報告されています。鉄キレート剤は鉄の蓄積やそれに関連した酸化的ストレスの増加を減少させることが期待されます。

▽しかしながら、従来の鉄キレート剤では、全身的な鉄減少が生じ、有害となりえます。今回研究者らは、全身的な影響の少ない保存的な鉄キレート剤の安全性と有効性を検証しました

▽deferiproneをALSモデルマウスに投与したところ、生存期間の延長効果がみられました。また23名のALS患者を対象とした臨床試験においては、鉄欠乏性貧血を引き起こすことはありませんでした。

▽ALSFRS-R尺度およびBMIの変化量は、治療前3ヶ月間の平均変化量と比較して、deferipirone投与開始3ヶ月間において有意な減少効果を認めました

▽MRIにて検査した脊髄中や運動皮質における鉄濃度および、髄液中の酸化的ストレスの程度などは治療開始後に減少がみられました

▽以上の結果は、保存的な鉄キレート剤がALSにおいて治療的に有効な可能性を示唆するものであり、今後の検証が期待されます

(この研究は、フランス、University of Lille Nord de FranceのMoreauらにより報告され、平成29年12月29日付のAntioxidants and redox signaling誌に掲載されました)
Neuregulinを介したミクログリア活性化阻害によりALSモデルマウスに治療的効果
▽これまでに、ALS患者やSOD1変異モデルマウスのミクログリアにおいてはneuregulin受容体が活性化していることが報告されていました。

▽このneuregulin受容体活性化は、症状発現前から観察されています。今回、研究者らはミクログリアのneuregulinシグナル経路を阻害することが治療的効果を有するかどうかをSOD1変異モデルマウスで検証しました

▽neuregulin受容体阻害のためHBD-S-H4が用いられ、モデルマウスの脳室内に直接HBD-S-H4が注入されました。その結果、モデルマウスにおいて発症遅延と病態進行遅延効果が観察されました

▽以上の結果は、ミクログリアのneuregulin受容体阻害がALSに対する治療戦略として有望な可能性を示唆するものです

(この研究は、アメリカ、イリノイ大学のLiuらにより報告され、平成29年12月24日付のNeurobiology of Disease誌に掲載されました)
シスタチンCの脳室内投与がSOD1変異ALSモデルマウスの病態を改善
・名古屋大学などの研究グループの報告です

▽シスタチンCはALS患者の残存運動神経細胞において観察されるBunina小体の主要な構成蛋白質です。これまでSOD1変異に起因した病態においてシスタチンCが神経保護作用を有することが実験的に確認されていました

▽今回、研究者らはSOD1変異モデルマウスを用いて、シスタチンCの治療的効果を検討しました。発症後早期のSOD1変異モデルマウスに対してシスタチンCが脳室内投与されました

▽その結果、モデルマウスの生存期間延長効果が確認されました。またAMPKを介した自食作用の活性化が観察され、不溶性変異SOD1蛋白質の減少が観察されました

▽以上の結果は、シスタチンCがALSに対して治療的に有効な可能性を示唆するもので、今後のさらなる検証が期待されます

(この研究は、名古屋大学のWatanabeらにより報告され、平成29年12月28日付のJournal of Neurochemistry誌に掲載されました)
遺伝子編集技術により家族性ALSモデルマウスにおいて治療的効果
・ALS NEWS TODAYの12月22日付の記事からです

▽カリフォルニア大学の研究者らがScience Advances誌に公表した研究結果によると、SOD1変異ALS変異モデルマウスにおいて、遺伝子編集技術を用いた治療的介入が生存期間の延長効果をもたらしたとのことです

▽これまで、SOD1遺伝子変異に対して、RNAを用いて発現を阻害する手段は、動物実験では有効であっても、ヒトにおいては有効性が認められていませんでした

▽CRISPR-Cas9システムを用いた遺伝子編集技術は、最も正確性が高い遺伝子編集技術であり、RNAを用いた核酸医薬にとってかわりうる可能性があります

▽研究者らはウイルスベクターを用いて、CRISPR-Cas9システムをモデルマウスに注入し、運動神経における変異SOD1遺伝子の発現を阻害するようにしました。その結果、変異SOD1蛋白質の発現量が減少し、33日間の発症遅延効果がみられました。しかし病態進行速度については変化がなかったとのことです。研究者らはこの結果については、アス

トロサイトなどのグリア細胞に対する遺伝子編集を行わなかったためではないかと考えています

▽今後はより多種類の細胞において変異遺伝子発現を阻害する技術や、特異的に異常な酵素のみを除外する技術を開発したいとしています。またC9orf72遺伝子変異など、その他の遺伝子変異についても治療対象となりうると考えられています。

引用元
https://alsnewstoday.com/2017/12/22/gene-editing-shows-promise-treating-familial-als/
Q therapeutics社とREPROCELL社がALSに対する幹細胞治療開発のために提携
・ALS NEWS TODAYの12月21日付記事からです

▽REPROCELL社はiPS細胞を用いた再生医療の開発を行っており、Q Cell Therapeutics社はヒトグリア前駆細胞の作成において先進的な技術を有しています

▽REPROCELL社は、幹細胞をRNAをベースにした技術で操作し、大規模かつ迅速に各種細胞へ分化させる技術を開発しました。

▽両社の技術によりALSなど神経変性疾患に対する幹細胞治療が進展することが期待されます。REPROCELL社は日本企業のため、日本での臨床試験の迅速な実施も期待されます

引用元
https://alsnewstoday.com/2017/12/21/q-therapeutics-and-reprocell-collaborating-on-stem-cell-based-therapies-for-als/
新規臨床試験情報(ペランパネル)
・レバノンでの新規臨床試験情報です

・ペランパネルの安全性、忍容性に関する第2相試験(オープン試験)が患者募集中となっています。

・2mg/日より開始され、最大8mgまで4週間かけて増量され、その後12週間観察されます。合計20名が参加予定となっています

引用元
https://clinicaltrials.gov/show/NCT03377309
田辺三菱製薬らがALSなどに対する抗体医薬の共同研究契約
・はまじさん、麦酒王さんよりご提供いただいた話題です

・田辺三菱製薬株式会社、株式会社オーダーメードメディカルリサーチ、株式会社Trans Chromosomicsは12月13日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む神経変性疾患での抗体医薬研究に関する共同研究契約を締結したことを公表しました

・抗体を用いた治療法開発は今後の進展が期待されている分野であり、有望な治療薬候補の開発が期待されます。

引用元
https://www.mt-pharma.co.jp/shared/show.php?url=../release/nr/2017/MTPC171213.html
http://www.qlifepro.com/news/20171215/antibody-medicine-for-neurodegenerative-disease.html

・はまじさん、麦酒王さん、ありがとうございました。
NurOwn細胞移植は進行の速いALS患者への有効性が期待できる可能性
・ALS NEWS TODAYの12月12日付記事からです

▽BrainStorm社のCOOであるRalph氏がALS NEWS TODAYのインタビューに答え、第2相試験の事後解析の結果などについて述べました

▽その結果、NurOwn細胞移植は、事前に進行の速い群(急速進行群)とされたサブグループにおいて良好な結果が示すことがわかったとのことです。

▽このグループにはALS全体の約半分が属するとのことです。良好な反応性を示した急速進行群においては、球症状や、巧緻性運動などにおいて良好な反応がみられました。

▽呼吸機能については全体としてプラセボ群との差を示すことはできませんでした。これはサンプルサイズが小さいなどの原因が指摘されています。

▽現在200名を対象とした第3相試験が進行中であり、良好な結果が期待されます

引用元
https://alsnewstoday.com/2017/12/12/brainstorm-cmo-talks-in-interview-about-nurown-and-potential-as-therapy-for-als-with-rapid-progression/
MediciNova社のMN-166が第2相試験で有望な結果
・ALS NEWS TODAYの12月8日付記事からです。

▽MediciNova社は、同社のALS治療薬候補であるMN-166の第2相試験について、予備的な結果を公表しました。

▽第2相試験では60mgのMN-166投与群がプラセボ投与群と比較されました。両群ともリルゾールが併用されています

▽主尺度である安全性と忍容性については問題がない結果でした。ALSFRS-Rの変化量により治療反応群が定義されました。ALSFRS-Rが変化なし、ないし改善、ないし-1点の場合が治療反応群と定義され、ALSFRS-Rの変化量が-2点以上の場合が非反応群とされました。

▽その結果、最初の6ヶ月間において、MN-166投与群の29.4%が治療反応群であり、プラセボ群の17.6%が反応群でした。6ヶ月間の治療期間後にオープン試験期間においてプラセボ群からMN-166に置換された群では、35.3%が治療反応群となりました。

▽また、ALSAQ-5の変化量で定義された反応群(ALSAQ-5得点が改善ないし変化なしで治療反応、悪化で非反応)の比較では、MN-166投与群の約50%が反応群となり、プラセボ群では23.5%が反応群でした。

▽予備的な結果ではありますが、MN-166の治療的有効性を示唆する結果として、今後の第3相試験の実施などが期待されます

引用元
https://alsnewstoday.com/2017/12/18/medicinova-mn-166-for-als-safe-shows-early-signs-efficacy-phase-2-trial/
Wave社の新規治療がモデル動物で有効性を示唆する結果
・ALS NEWS TODAYの12月19日付記事からです

▽Wave Life Science社の新たなアンチセンス・オリゴヌクレオチド製剤であるWVE-3972-01が、C9orf72遺伝子変異ALSモデル動物において、有効性を示唆する結果が得られました。

▽WVE-3972-01は変異C9orf72遺伝子より生じる異常なmRNAをブロックすることにより治療的効果を発揮します

▽WVE-3972-01をモデル動物に投与したところ、異常なmRNAは70%減少し、中枢神経での異常蛋白質の量も、脊髄において76%、大脳皮質において87%減少がみられました。この効果は8週間持続しました。

▽Wave社はヒトでの臨床試験を2018年中にも開始したいとしています。

引用元
https://alsnewstoday.com/2017/12/19/animal-studies-show-wave-life-sciences-therapy-reduces-markers-of-inherited-als/
新規臨床試験情報(非侵襲的脳刺激)
・アメリカでの新規臨床試験情報です

・経頭蓋磁気刺激により、ALS患者の精神症状の改善効果をみる臨床試験です

・15名の患者を対象に週に1回、4週間経頭蓋磁気刺激を施行することによりうつ症状などが変化するかどうかが観察されます

引用元
https://clinicaltrials.gov/show/NCT03373981
治療研究講演会(ショウジョウバエモデル)
・まっしゃーさんよりご提供いただいた話題です

・日本ALS協会主催で、ALSの前臨床試験段階での動物実験でしばしば使用される、ショウジョウバエモデルにおけるALS研究の現状と展望並びにその有用性について、講演があります
詳細は以下です

■日時:平成30年1月14日(日)
    午後2時~3時30分終了予定
   (1時30分開場・受付開始)
■会場:京都アカデミアフォーラムin丸の内 大会議室D
(東京都千代田区丸の内1-5-1新丸の内ビルディング10階)
■講師:京都工芸繊維大学教授 山口 政光
■主催:国立大学法人京都工芸繊維大学
■参加費:無料
■参加申込 《氏名・種別(患者・家族・専門職・一般)・車椅子使用の有無・同行者がいる場合はその人数》をご明記の上、下記アドレス宛てメールにてお申し込み下さい。
e-mail:shoujoubae0114@gmail.com

詳しくはこちら。
http://alsjapan.org/2017/11/24/post-1444/

・まっしゃーさん、ありがとうございます。
ALSに対する自家制御性T細胞移植療法
・平成29年12月8日から10日までアメリカ、ボストンにて開催される第28回MND/ALS国際シンポジウムの抄録集からです

▽進行の速いALS患者においては、制御性T細胞数の減少と、反応性T細胞の増加を抑制する能力が低下していることが報告されています

▽今回、ALS患者に対して、自家制御性T細胞移植の第1相試験が行われました

▽自家制御性T細胞は、インターロイキンー2(IL-2)皮下注と併用で移植されました。移植は4回行われ、発症早期の3名のALS患者に行われました

▽その結果、移植は安全であり、制御性T細胞の末梢血中での増加が観察されました。また、移植の間において、病態進行の遅延効果が観察されました

▽炎症促進性サイトカインのmRNA発現の減少も観察されました。移植期間中、筋線維束収縮の頻度の増加が報告されました

▽以上の結果は、自家制御性T細胞移植が安全であり、有効である可能性を示唆するものであり、今後さらに大規模な試験による検証が期待されます

(この研究は、アメリカ、Houston Methodist Neurological InstituteのJ Thonhoffらにより報告されました)
新規臨床試験情報(ラパマイシン)
・イタリアでALSに対するラパマイシンの安全性、有効性に関する第2相試験が開始され患者募集中となっています

・ラパマイシンは蛋白質の分解を促進するといわれており、またT細胞に起因した免疫原性の神経毒性作用を緩和するといわれており、ALSに対する治療的有効性が期待されています

・プラセボ対照二重盲検試験で行われ、合計63名の患者がエントリー予定です。

引用元
https://clinicaltrials.gov/show/NCT03359538
武田製薬がMontreal Neurological InstituteとALS治療薬開発のために提携
・武田製薬の12月4日付Press Releaseからです

▽武田製薬はALS治療薬開発のためMontreal Neurological Instituteと提携を結ぶことを公表しました

▽武田製薬とはMontreal Neurological Instituteは今後3年間にわたって、ALS患者由来の細胞モデルなどを用いて、共同で治療薬の探索を行う予定とのことです

引用元
http://www.takedacanada.com/media/news-releases/2017/takeda-announces-research-collaboration-in-als-with-montreal-neurological-institute/
Bexaroteneが神経変性疾患に対して神経保護作用を有する可能性
▽カリフォルニア大学の研究者らがScience Translational Medicine誌に公表した報告によれば、抗癌剤であるBexaroteneが蛋白質の恒常性保持機構に作用することにより神経保護作用を有する可能性があるとのことです

▽研究者らはハンチントン舞踏病モデルマウスに対してbexaroteneを投与したところ、生存期間の延長効果、神経変性の阻害作用が確認されました

▽bexaroteneの神経保護作用はミトコンドリア保護作用や、神経細胞が異常蛋白質を除去する作用を高めることによるものであり、ALSなどの神経変性疾患に対しても有効性を発揮することが期待されています。

引用元
https://www.genengnews.com/gen-news-highlights/cancer-drug-provides-neuroprotection-for-huntingtons-disease/81255248
鉄キレート剤のALSにおける神経保護作用
・平成29年12月8日から10日までアメリカ、ボストンにて開催される第28回MND/ALS国際シンポジウムの抄録集からです

▽鉄代謝の異常が孤発性ALSやSOD1変異、C9orf72遺伝子変異ALSにおいて報告されています。脳内鉄が高濃度であることは、エネルギー需要が高くなることと関連し、神経細胞がエネルギー欠乏と酸化的ストレスに脆弱な状態になります。ALS患者のMRIなどで中枢運動経路における鉄過剰、血清フェリチン高濃度などが報告されています

▽今回、研究者らは鉄キレート剤であるdeferiproneの効果をモデルマウスおよびヒトに対して検証しました

▽SOD1変異モデルマウスにdeferiproneを投与したところ、生存期間の延長効果が確認されました。また19名のALS患者を対象に投与したところ、12ヶ月間のALSFRS-Rの変化量は-0.96点/月であり、投与開始前の-1.64点/月よりも有意に改善がみられました。また体重減少も12ヶ月間で2.5kgと少ないものでした

▽以上の結果は、ALSにおいて鉄代謝異常を治療ターゲットとすることの有望性を示唆するものです

(この研究は、フランス、University of LilleのV Danelらにより報告されました)

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