▽Mallinckrodt社は同社のALS治療薬候補であるH.P.Acthar Gelの第2b相臨床試験の患者募集を開始しました。
▽H.P. Acthar GelはFDAがALS治療薬候補としてfast track指定と、orphan drug指定を与えています
▽この薬剤は高度に精製された副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を含有します。ACTHは副腎皮質ホルモンであるコルチゾールやコルチコステロン、アルドステロンを分泌を促進し、免疫系細胞に影響を与えます
▽この試験では、発症2年以内の195名のALS患者を対象に、プラセボ対照で行われ、H.P. Acthar Gel 16単位皮下注連日投与ないしプラセボに割付られ、36週間経過観察されます
▽H.P. Acthar Gelは既に多発性硬化症やサルコイドーシスなどの疾患に対する適応が承認されている薬剤です
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/06/20/phase-2b-clinical-trial-h-p-acthar-gel-als/
▽ALS当事者からの寄稿です。
▽診断当初は不安でいっぱいでしたが、ポジティブ心理学の専門家からいくつかの考え方のコツを教わり、役に立ちました。それらのうちいくつかを紹介します
▽疾患について可能な限り多くの情報を学ぶ:正しい知識を身につけることにより、不合理な恐怖を払拭することができます。どのような選択枝があるのか、どのようなことに備えるべきかを知り、いくつかのもしもの場合のプランを考え、誰に相談すべきかを知っておくことは、偶発的な出来事に対処する際に役立ちます
▽マインドフルネスと感謝の練習をする:マインドフルであることを学ぶことは、あなたの考えを今にとどめることを意味します。このことにより過去やもしものシナリオの中でさまようことを防ぎます。感謝の気持ちは、自然におこりうる良い出来事への注意を高めます。
▽楽観的な人々に囲まれる:介助者や家族、友人たちは皆あなたの気分に影響します。ポジティブな影響のある人のそばですごしましょう
▽自分がどう感じているかをみつめる:3つの質問を自分に投げかける習慣をつけましょう。「何を感じているか」「何が必要か」「誰が助けになるか」です。例えば、「のどが渇いている」「飲み物がほしい」「介助者に伝えよう」という具合です。このことにより思考を現在にとどめ、自身の健康に関する重要なサインを見落とすことを防ぐことができます
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/06/20/how-to-have-a-positive-mindset-while-living-with-als/
▽幹細胞によるALS治療を開発中のBrainStorm社はIsrael Innovation Authorityより210万ドルの基金を獲得したことを公表しました
▽同社は自家骨髄幹細胞を、神経栄養因子を分泌するNurOwn細胞に分化させ、移植することにより治療的効果が期待する幹細胞移植を開発中です
▽既にアメリカで行われた第2相試験において、希望の持てる結果が得られており、現在第3相試験の実施に向けて準備が進められています
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/06/23/als-therapy-developer-brainstorm-receives-grant-to-support-stem-cell-therapy-nurown/
▽ハーバード医科大学の研究者らは、C9orf72遺伝子変異ALSにおいて、変異産物がいかにエネルギー産生や神経細胞機能に影響をあたえるかを解明しました
▽最新号のCell Reports誌に掲載された報告です。家族性ALSはALS全体の約10%を占めるといわれており、さらにそのうち30-40%がC9orf72遺伝子変異に起因するといわれています(前頭側頭型認知症のうちの25%)
▽C9orf72遺伝子変異の過剰伸張した6塩基繰り返し配列からは、ジペプチド反復配列蛋白質が生成しますが、このうちGR反復蛋白質とPR反復蛋白質とが細胞毒性を発揮するといわれています
▽これらの蛋白質がRNAのスプライシングを行うスプライソソームに影響を与えることが知られていました。今回の研究により、異常蛋白質が、スプライソソームに関連したU2 snRNPとよばれる蛋白質の異常をもたらすことがわかりました
▽スプライソソームは本来核内で生成されるべきですが、これら異常蛋白質の影響により、U2 snRNPが細胞質内に異常局在化し凝集することがわかりました
▽このため細胞機能の維持に重要なRNAのスプライシングが正常に行われず、神経細胞死をもたらすことが推定されます。多くの神経変性疾患において同様の病態機序が存在する可能性があり、splicing modulator compoundなどによりスプライシングの異常を是正できれば、治療的に有望である可能性があるとのことです
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/06/27/study-says-mutation-that-disrupts-genetic-instructions-may-be-cause-of-inherited-als/
▽ベルギーの研究者らが最新号のNeurology誌に公表した研究結果によると、髄液中のニューロフィラメントマーカーがALS診断の補助になる可能性があるとのことです
▽ALSを早期に診断することは困難ですが、ALS患者の髄液中においては、機能不全を起こした運動神経細胞から漏出したニューロフィラメント量の増加がみられるとのことです
▽研究者らは、2種類のニューロフィラメントであるpNfHおよびNfLの量に注目しました。
▽ALS患者220名と健常対照者316名、さらにその他の神経変性疾患患者を比較した結果、髄液中pNfH量は運動神経病を予測する良好な因子であり、同時にpNfHはALSとその他の類似疾患を鑑別する良好な因子であったとのことです
▽また、進行がゆるやかなALS患者においてはpNfHおよびNfL量は低値であったとのことです。pNfH量は、運動神経変性の程度とよく相関していたとのことです
▽これらがALS診断や病態のマーカーとなることが期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/06/26/study-suggests-neurofilament-levels-in-cerebrospinal-fluid-can-confirm-als-diagnosis/
▽この原因は部分的にはこれら蛋白質固有の性質であり、同時に蛋白質品質管理システムの破綻によるものです。
▽C9orf72遺伝子変異ALSにおいては、開始コドン非介在性リピート関連翻訳により5種類のジペプチド繰り返し配列蛋白質が生成します。
▽これらの一部が細胞障害性を発揮すると考えられており、異常蛋白質はp62/SQSTM1およびユビキチン陽性封入体に蓄積します
▽ジペプチド繰り返し蛋白質は自食作用によって主に代謝されますが、自食作用のみでは排泄に不十分です。
▽小分子の熱ショック蛋白質であるHSPB8の過剰発現は、自食作用を介した折り畳み異常蛋白質の排泄を促進します。
▽HSPB8の過剰発現は、細胞モデルにおいて、有意にジペプチド繰り返し配列蛋白質を減少させました。HSPB8を用いた異常蛋白質減少が治療戦略として有望な可能性があります
(この研究はイタリア、Università degli Studi di MilanoのCristofaniらにより報告され、平成29年6月12日付のCell Stress Chaperones誌に掲載されました)
▽マラリア治療薬が家族性ALSにおけるバイオマーカーの濃度を減少させることがわかりました
▽SOD1変異ALSに対してpyrimethamineを投与したところ、用量依存性に患者の髄液中のSOD1濃度を減少させることがわかりました
▽32名のSOD1変異ALS患者を対象として行われた臨床試験において、うち24名が18週間以上にわたって追跡された結果、pyrimethamineの安全性が確認され、症例数が少なく結論がだせないものの、病態進行の遅延を示唆する結果も得られたとのことです。
▽pyrimethamineが病態進行遅延効果を有するかどうかを確認するためにはさらに大規模な試験が必要です
引用元
https://www.sciencedaily.com/releases/2017/06/170612115342.htm
▽EphA4はALSなどの神経変性疾患において、軸索の再生を阻害する因子として注目されています
▽しかしながら、EphA4を介したシグナル経路を阻害することは簡単なことではありませんでした
▽KYLなどのペプチド抗体は短時間のうちに分解され、作用発揮することが困難でした。そこで小分子による阻害法が探索されてきました
▽近年、ベルギーの研究者らが、EphA4を阻害しうる選択性の高い単一ドメイン抗体をみいだしました
▽この単一ドメイン抗体は、アルパカやリャマの体内で生成されるもので、組織移行性に優れ、免疫原性も少なく、中枢神経への移行性も確認されています
▽この小分子はNb39およびNb53であり、EphA4受容体に結合し、軸索成長を促進します。
▽一方でカリフォルニア大学の研究者らも、EphA4受容体をターゲットにした治療法を開発中です。彼らはEphA4受容体の選択的アゴニストを開発し、受容体を介した取り込みを促進することにより、障害を受けた運動神経細胞の表面からEphA4を除去します。前臨床段階の試験が進行中です
引用元
http://www.alsresearchforum.org/emerging-epha4-nanobodies-aim-to-facilitate-axon-regrowth-in-als/
▽最新号のNature誌に掲載された報告によると、ALS患者においては運動中において酸素代謝機能の減弱が存在することが明らかになりました
▽今回、Milano-Bicocca大学の研究者らは肺から取り込まれた酸素が、骨格筋における代謝に利用される効率を調べました。
▽酸素代謝機能とは、ミトコンドリアによる酸素利用のことを表します。骨格筋は運動の際に利用される主要な筋肉であり、骨格筋が正常に機能するためには適切な酸素代謝が必要です
▽17名のALS患者が研究に参加し、13名の健常者と比較されました。
▽運動耐性は、心肺運動負荷試験を行った際の最大酸素摂取量により測定されました。この最大酸素摂取量は骨格筋の近赤外スペクトロスコピー(NIRS)により測定されました
▽測定の結果、ALS患者では、最大酸素摂取量が健常者と比較して44%低く、骨格筋における酸素代謝も43%少ないことがわかりました。また呼吸機能障害に伴い、運動中の肺の換気量も46%少ないことがわかりました
▽以上の結果は、ALSにおいては骨格筋での酸素代謝機能の障害が生じていることを示唆しており、同時にNIRSによるALS患者の骨格筋の酸素代謝機能の測定が、ALSの病態の指標となりうる可能性があります
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/06/15/als-patients-experience-inefficient-skeletal-muscle-oxidative-function-during-exercise-study-finds/
▽AveXis社とREGENXBIO社がALSとRett症候群の治療法開発に向けて提携することを公表しました。両社は既に脊髄性筋萎縮症の治療法開発において提携関係にあります
▽AveXis社は、REGENXBIO社の有する遺伝子運搬技術(アデノ随伴ウイルスを改変したNAV AAV9)を用い、遺伝性神経変性疾患の治療法開発を目指しています
▽前臨床試験段階の実験においてNAV AAV9を用いたALSモデル動物に対する治療法が有効であることを示唆する結果が得られており、今後臨床試験実施が期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/06/14/regenxbio-and-avexis-sign-licensing-deal-to-develop-therapies-for-als-and-rett-syndrome/
▽Insilico社は、ALS治療薬を探索するALS.AIを立ち上げました。ALS.AIでは、深層学習のアルゴリズムを用いて人工知能によりALS治療薬を探索する試みです
▽Insilico社はALS研究の支援組織であるAbove and Beyond(A&B)の支援を得て、Johns Hopkins大学内の施設を拠点に研究を促進します。
▽A&BはALS患者の遺伝子発現情報などを提供します。これらの情報を元に人工知能による薬剤探索が行われる予定です
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/06/07/als-ai-artificial-intelligence-platform-discover-new-therapies-launched-insilio/
▽Flex Pharma社はALSにおける筋痙攣や痙縮に対する治療薬候補であるFLX-787を開発中です。
▽先月開催されたアメリカ神経学会年会において、FLX-787は患者の有痛性の筋痙攣の頻度を減少させることが報告されました
▽FLX-787はTRPA1/TRPV1イオンチャネルを活性化し、脊髄運動神経の過剰興奮性を抑制することで筋痙攣を抑制すると考えられています
▽今後FLex社はアメリカで第2相臨床試験を実施予定としています
引用元
http://www.flex-pharma.com/docs/2017/05/AAN_Poster_2017_FINAL.pdf
▽AveXis社はSOD1変異ALSに対する遺伝子治療の実現に一歩近づきました
▽同社は、アデノ随伴ウイルス(AAV9)を改変した運搬体を遺伝子ベクターとした遺伝子治療を開発中です
▽中枢神経と筋肉において変異SOD1遺伝子の発現を抑制することにより、治療的な有効性が期待されています。AAV9は血液脳関門の透過性が良好であり、中枢神経疾患の遺伝子治療に有用なベクターとなりえます
▽現在研究グループはC9orf72遺伝子変異ALSに対する遺伝子治療法も開発中です
・引用元
http://www.alsresearchforum.org/gene-therapy-biotech-avexis-targets-als/
・AMX0035はフェニル酪酸とタウロウルソデオキシコール酸の合剤であり、合計132名の患者を対象に、プラセボ対照で、24週間、機能的尺度の変化などが調べられる予定です
引用元
https://clinicaltrials.gov/show/NCT03127514
・30名を対象に、プラセボ対照で施行され、20週間、イノシン投与群ではイノシンを500-3000mg/日投与され、血中尿酸値を7-8mg/dlに維持することが目標とされます
引用元
https://clinicaltrials.gov/show/NCT03168711
・遺伝子編集技術を用いた新たな技法による臨床試験であり、結果が期待されます
引用元
https://clinicaltrials.gov/show/NCT02943850
▽研究者らは、ALSにおける運動神経細胞死の初期の分子過程を解明しました。Cell Reports誌に掲載されたロンドン大学の研究者らの報告によるものです
▽研究者らは、家族性ALSの2%を占めるVCP遺伝子変異ALS患者由来のiPS細胞と健常者由来のiPS細胞を用いて実験を行いました
▽iPS細胞から運動神経細胞やアストロサイトを分化させ、運動神経細胞死における分子機序を調べました
▽その結果、患者由来運動神経細胞においては、核内に存在すべきTDP-43蛋白質が、細胞質内に漏出し、それが運動神経細胞死の引き金となっていることがわかりました。
▽これまでもTDP-43の細胞質内への局在化異常と凝集がALS患者の95%にみられ、病態の中心をなすことはわかっていました。しかし、細胞死につながる最初期のイベントはよくわかっていませんでした。
▽今回の報告により細胞内へのTDP-43の漏出が、ミトコンドリアなどの機能不全をもたらし、細胞死につながる流れが判明しました。
▽また、健常者由来のアストロサイトは運動神経細胞に対して保護的な機能を発揮しましたが、患者由来アストロサイトは、この機能を失っていることもわかりました
▽研究者らは、今回の知見を元に、TDP-43の細胞内動態を正常化する治療法開発についても研究したいとしています
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/06/05/als-discovery-of-molecular-trigger-of-motor-neuron-death-could-aid-in-treatment-research/
・千葉大学でALSに対する新規臨床試験が開始予定です
・オープン試験で行われ30名ほどのALS患者を対象にラコサミドの安全性が確認される予定です
・ラコサミドはNaチャネル阻害作用を有する抗てんかん薬です
詳細情報
https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000031479