▽イリノイ大学の研究者らが最新号のClinical Therapeutics誌に公表した報告によると、酪酸塩投与により腸内細菌叢を調整したALSモデルマウスにおいて生存期間の延長効果が確認されたとのことです
▽ALSにおいては、腸管壁浸漏にともなう炎症により、腸内細菌叢の乱れが報告されています。
▽研究者らは、35-42日齢のALSモデルマウスに対して酪酸塩を投与し、非投与群と比較しました。酪酸塩投与マウスでは、腸内細菌叢が回復し、非投与群と比較して平均40日の発症遅延効果が観察されました(投与群150日齢、非投与群110日齢)。また生存期間も平均38日間長かったとのことです
▽以上の結果は腸脳相関を通じて、腸内環境がALSの病態に影響を及ぼす可能性を示唆しており、今後ヒトでの検証が期待されます
引用元
https://www.sciencedaily.com/releases/2017/01/170129084234.htm
▽今回研究者らはC5aR1の拮抗薬であるPMX205を、発症前および発症後のモデルマウスに経口投与し効果を検証しました
▽その結果、発症前に投与した群では、発症遅延効果と、有意な筋力改善効果、進展遅延効果などが観察されました。
▽この効果は、炎症促進性の単球や顆粒球の減少や、ヘルパーT細胞の増加などを伴うものでした。発症3週後に投与開始した群においても、病態緩和作用や生存期間延長効果がみられました
▽以上の結果は補体系C5aR1シグナル経路を阻害することが、ALSにおいて治療的に作用する可能性を示唆するものです
(この研究はオーストラリア the University of QueenslandのLeeらにより報告され、平成29年1月27日付のBritish journal of Phamacology誌に掲載されました)
▽TDP-43蛋白症モデルマウスに対して驚異的な治療効果を発揮する化合物が同定されました
▽TDP-43蛋白質のミトコンドリアへの侵入を阻害する物質がALSに対して治療的効果を発揮する可能性が指摘されていました
▽これまで、そのような物質が存在しても、モデルマウスに対しては有効でも、ヒトへの応用は困難なものでした。今回研究者らはヒトへの適応も考慮しうる物質を同定しました。
▽最新号のMolecular Therapy誌に掲載された報告によると、今回同定されたPM1とよばれる実験的化合物を用いると、病態進行期にある重度の運動機能障害を呈しているモデルマウスの病態が劇的に改善したとのことです
▽この物質を用いた全てのモデルマウスにおいて、PM1投与により症状の急速な改善がみられたとのことです。
▽これまでに、この研究グループは昨年のNature Medicine誌での報告により、TDP-43蛋白質がミトコンドリアに蓄積することが障害をもたらすことを報告していました。
▽今回、ミトコンドリアへのTDP-43の侵入を防ぐことで、モデルマウスの病態を防ぎうることが証明されました
▽今回の知見は前頭側頭型認知症に対しても治療薬候補として応用できると考えられています。
▽今後ヒトに対する臨床応用を進めたいとしています
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/01/25/astonishing-effects-of-compound-on-als-in-mice-intensifies-search-for-human-drug/
▽Flex Pharma社は、ALS、多発性硬化症、Charcot-Marie-Tooth病などの神経変性疾患に対する治療薬開発を重点的に行うことを公表しました
▽現在、アメリカで今年中に同社の治療薬候補であり、FLX-787(一過性受容器電位チャネル(TRP)活性化剤)の第2相試験開始が予定されています
▽FLX-787は、疼痛や神経炎症に関与するTRPV1およびTRPA1受容体に作用し、治療的効果を発揮することが期待されています。
▽この第2相試験は、ALSの下肢の筋痙性やけいれんに対する効果の検証が目的とされています。
▽筋痙性は、突然の運動や、気温の変化、感染やしめつけのきつい衣類などが原因で生じる、筋肉の不随意な痙攣であり、こわばりや疼痛などを伴います
▽これら不快な症状がFLX-787により改善することが期待されています
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/01/26/flex-pharma-to-focus-on-clinical-programs-in-neurological-diseases-including-amyotrophic-lateral-sclerosis-als/
▽BenevolentBio社はロンドンのバイオ企業ですが、今回、シェフィールド大学と共同で、深層学習アルゴリズムを用いたスーパーコンピュータによるALS治療薬候補探索を開始することを公表しました
▽このようなスーパーコンピュータを用いたALS治療薬探索の方向性はすでに、アリゾナ大学や、Barrow Neurological InstituteでのIBM Watsonを用いた研究などで開始されており、いくつかの成果が出始めています
▽今後新たな発見の報告が加速することが期待されます
引用元
http://www.alsresearchforum.org/als-targeting-supercomputing-firm-adds-cmo/
▽これまでに、反復配列を有するRNAが凝集体を形成し、RNA結合蛋白質の結合が阻害される結果、運動神経細胞でのRNA代謝が変化し、細胞傷害が生じるメカニズムが提唱されてきました
▽今回、研究者らは、GGGGCC反復配列RNAに特異的に結合するRNA結合蛋白質であるZfp106を同定しました。
▽Zfp106は、多くのRNA結合蛋白質と相互作用をし、その中にはTDP-43とFUSも含まれます。
▽Zfp106 ノックアウトマウスは重度の運動神経変性を示しました。Zfp106はC9orf72遺伝子変異ショウジョウバエALSモデルにおいて、神経毒性を抑制することが示されました。
▽Zfp106はALSの治療戦略において、有望な研究対象となる可能性があります
(この研究は、アメリカ、University of CaliforniaのCelonaらにより報告され、平成29年1月10日付のElife誌に掲載されました)
▽60名のALS患者を対象にクロスオーバー試験が行われました。患者は2群にわけられ、約1ヶ月間、Nuedextaないしプラセボを投与され、10-15日間のwashout期間をはさんで、投与群が交替され、約1ヶ月間Nuedextaないしプラセボが投与され、嚥下機能や唾液分泌、構音機能などが検査されました
▽その結果、投与期間においては、1ヶ月間でCNS-BFS(球機能に関する尺度)の有意な改善を認めました。この効果は唾液分泌、会話、嚥下いずれの下位尺度においても有意でした。
▽運動機能、呼吸機能については有意な効果はみられませんでした。
▽Nuedextaは短期的に球症状に有効である可能性があります
(この研究は、アメリカ、Center for Neurologic StudyのSmithらにより報告され、平成29年1月9日付のNeurotherapeutics誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは、活性化アストロサイトのサブタイプであるA1 アストロサイトが、神経炎症に関与する活性化ミクログリアにより誘導されることをみいだしました。
▽活性化ミクログリアは、IL-1α、TNF、C1qを分泌することによりA1 アストロサイトを誘導します。これらのサイトカインはA1 アストロサイトの誘導に必要かつ十分な物質となります
▽A1 アストロサイトは神経成長やシナプス形成、神経生存を支持する機能を喪失し、神経細胞とオリゴデンドロサイトの細胞死をもたらします
▽A1 アストロサイトの生成を阻害したところ、生体内での軸索切断した中枢神経細胞の細胞死が妨げられました。
▽さらに、ALSを含む様々な神経変性疾患において、A1 アストロサイトが多く誘導されていることがわかりました
▽以上の結果は、神経変性疾患においてA1 アストロサイトが神経細胞死に寄与していることを示唆するものであり、今後の治療法開発において新たな視点を提供するものです
(この研究はアメリカ、Stanford UniversityのLiddelowらにより報告され、平成29年1月18日付のNature誌に掲載されました)
▽今回、研究者らはヒトIGF-1をエンコードしたAAV9を、TDP-25モデル細胞に注入し、分子機構について調べました
▽その結果、IGF-1はAkt経路を介して神経保護作用を発揮することがわかりました。またIGF-1の細胞保護作用はVEGF( vascular endothelial growth factor)と関連していることが示唆されました
▽AAV9-IGF1を用いた臨床試験の実施が期待されます
(この研究は、中国、The Second Hospital of Hebei Medical UniversityのLiらにより報告され、平成29年1月17日付のNeuroscience Letter誌に掲載されました)
・現在既に募集中となっており、合計60名のALS患者を対象に、プラセボ対照二重盲検試験で行われます
・投薬群では、2mgを2週間、4mgを2週間、6mgを2週間、8mgを30週間投与され、合計9ヶ月間投薬されます
・エントリー基準は、ALSの診断をうけ、発症3年以内であること。%静的肺活量が60%以上などとなっており、呼吸器使用患者などは除外となっていますが、日本のエントリー基準よりやや緩やかとなっています
・良好な結果が期待されます
引用元
https://clinicaltrials.gov/show/NCT03020797
・プラセボ対照で行われる第2相試験であり、60名のALS患者を対象に、メキシレチン300mgないしメキシレチン600mgないしプラセボの3群にわけられて、4週間投薬後さらに4週間の非投薬期間後に臨床的指標が検査されます。
・主尺度として、経頭蓋磁気刺激による興奮閾値の変化が用いられることがこの試験の新しい点です
引用元
https://clinicaltrials.gov/show/NCT02781454
▽Duke大学のALSクリニックとFreelon財団はALS研究の推進のため協定を結ぶことを公表しました
▽今後の活動として、Design a Worldと呼ばれるキャンペーンを開催し、今年4月20日までに25万ドルの資金を集めることを目標としています。
▽同時にALSクリニックでは、これまで十分な資金が供与されてこなかった代替医療についても研究対象としたいとしています
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/01/16/duke-university-partners-with-freelon-foundation-on-als-research-support/
▽ALS治療薬候補のGM6を開発中のGenervon社が1月9日から12日までサンフランシスコで開催された会議で、GM6の基礎研究結果を公表しました
▽GM6は複数の遺伝子に作用するとされており、特異的にIGF1およびIGF2に結合し、神経保護的な作用を発揮するといわれています。
▽基礎研究においては、GM6はALSと関連することがこれまでに報告されている89の遺伝子の働きに影響を及ぼし、神経成長や神経細胞死、酸化的ストレス応答などに関連した経路に作用することが実験的に示されています。
▽同時に、GM6はSOD1発現を低下させることも示されました。
▽Genervon社によれば、今年中にALSに対する第3相試験を開始する予定とのことです
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/01/13/bioinformatics-reports-gm6s-role-as-regulator-of-disease-relevant-pathways/
▽ALSにおいてはビタミンD濃度の低下が報告されています。これまでALSとビタミンDとの関連性については、様々な報告がなされており、ビタミンD濃度は長期的予後とは関連しないことや、ビタミンD摂取が病状悪化を促進させるとの報告などがみられています
▽今回Muscle and Nerve誌に掲載された報告によると、ALSにおけるビタミンD濃度の低下は、病状悪化の原因ではなく、病態の結果ではないかと推測されるとのことです。
▽研究者らは106名のALS患者について、ビタミンD濃度や運動機能などを追跡しました。その結果、69%の患者でビタミンD濃度の低下を認め、19%は明らかな欠乏状態であったとのことです。
▽ビタミンD濃度は、ALSFRS-R尺度中の運動機能の数値と関連していましたが、総得点との関連はみられませんでした。
▽一方で、ビタミンDサプリメントを摂取している患者では、ALSFRS-Rの悪化率が高かったとのことです。エントリー時点でのビタミンD血中濃度が高い患者で疾患の進行が緩やかであるということはありませんでした。
▽高濃度のビタミンD摂取が予後にどのような影響を与えるかの結論はでていませんが、今後の検証を要する課題となります
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/01/17/low-vitamin-d-levels-linked-worse-movement-loss-dont-predict-disease-course/
▽ペンシルベニア大学において、ALSに対する遺伝子編集技術を用いた遺伝子治療プログラムが立ち上げられました
▽この治療戦略は、脊髄性筋萎縮症に対する治療戦略に基づいており、ベクターを用いて中枢神経に遺伝子を注入する技法をもちいるものです
▽これまでに脊髄性筋萎縮症に対する治療として、臨床試験において、非変異型のSMA遺伝子を注入することにより、3歳以上の幼児も含めて、全員が運動神経機能の回復に成功しています。
▽ALSとSMAの原因遺伝子は異なりますが、同様の技術がALS治療に対しても有望ではないかと期待されています
▽まずはC9orf72遺伝子変異家族性ALSが対象となり、同時に、遺伝子編集技術を用いて神経栄養因子を発現させる治療戦略も導入し、さらに多くのタイプのALSに対しても治療法を開発したいとしています。
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/01/11/university-of-pennsylvania-launches-program-to-study-gene-therapies-genome-editing-for-als/
・プラセボ対照二重盲検試験で行われ、合計60名を対象に48週間施行される予定です。
・投薬群は2群に分けられ、1群は4mg/dayを目標に2-4mgで調整され、もう1群は8mg/dayを目標に、2-8mgで用量調整される予定です
・投薬開始前3ヶ月間、ALSFRS-Rの変化率が観察される予定です。
・エントリー基準は以下です
(1)40-78歳の男女ALS患者で同意能力のある方(筆記できなくても、代理人による署名が可能であれば可)
(2)臨床的にdefinite ALSもしくはprobable ALSもしくはprobable-laboratory supported ALS(El Escorial改訂Airlie House診断基準による)
(3)ALSFRS-Rの3つの呼吸機能に関する尺度の合計点が12点以上
(4)同意取得時点で発症から2年以内であること
(5)臨床試験実施施設に外来通院可能なこと
・除外基準は以下です
(1)気切後の方
(2)NIPPVを受けている方
(3)%FVCが80%以下の方
(4)進行性の球麻痺型の方
(5)過去ないし現在ペランパネル投与歴のある方
(6)肝疾患のある方
以下略、などとなっています
引用元
https://clinicaltrials.gov/show/NCT03019419
・グルタミン酸AMPA受容体のカルシウム透過性異常が孤発性ALSの病態に関与することを報告してきた東大などの研究グループが、さらに病態の詳細なメカニズムについて明らかにしました。
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/press.html#20170104
・今後病態の全容が明らかになり、治療に結びつくことが期待されます
・かきのたねさん、ありがとうございました
▽FDAは、MonoSol Rx社が開発中のリルゾール口腔内溶解シートのALSに対する有効性について、新規臨床試験実施申請を受理しました
▽現在錠剤、液剤の種類の剤型が存在するリルゾールですが、口腔内溶解シートが承認されれば、嚥下困難を有する患者についても、投与可能となることが期待されています
▽今後臨床試験が実施予定となっています
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/01/06/riluzole-oral-soluble-film-wins-fda-investigational-drug-status-to-treat-als/
▽発達段階においてFGFBP1発現は増加しますが、加齢やALSモデルマウスにおいては神経筋接合部変性に先駆けて、FGFBP1の発現が減少することがわかりました
▽FGFBP1を除去すると、神経筋接合部の構造異常が発達段階のマウスにおいてみられました。またSOD1変異ALSモデルマウスにおいてFGFBP1を除去すると、神経筋接合部変性が促進しました
▽さらに、FGFBP1発現は、骨格筋と神経筋接合部におけるTGF-β1の蓄積により阻害されることがわかりました
▽以上の結果は、FGFBP1および、TGF-β1が神経変性疾患において神経筋接合部変性を遅延させる治療的ターゲットとして有望である可能性を示唆するものです
(この研究は、アメリカ、Virginia Tech Carilion Research InstituteのTaetzschらにより報告され、平成29年1月4日付のJournal of Neuroscience誌に掲載されました)
▽第1位:NEK-1遺伝子の発見:アイスバケツチャレンジの支援を得た大規模なMinEプロジェクトの成果としてランキングされていました。当ブログでも以下の記事にてご紹介しています(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-1065.html)
▽第2位:PETによるALS患者の脳内炎症の可視化:ALSの画像的バイオマーカーの手がかりとして上位にランキングされていました。
▽第3位:FDAによりエダラボンの新薬承認申請の受理:現在審査中ですが、順調に行けば2017年中にもFDAより承認される可能性があるようです(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-1095.html)
▽第4位:C9orf72遺伝子変異ALSにおける新たな治療ターゲットの可能性:8月のScience誌に掲載された発見が第4位となりました。当ブログでも以下の記事にてご紹介しています(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-1079.html)
▽第5位:Cedars-Sinaiの新たな幹細胞治療の開始がFDA認可:ゲノム編集と幹細胞移植を組み合わせた新規治療法の臨床試験開始が認可されました(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-1134.html)
▽第6位:Brainstorm社のNurOwn細胞の第2相臨床試験結果が良好:2017年にもより大規模な第3相試験の開始が予定されています(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-1061.html)
▽第7位:IBMのスーパーコンピュータWatsonの人工知能が5つの新規ALS関連遺伝子を同定(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-1172.html)
▽第8位:最大のPrecision medicine programが登録開始:アメリカの9つのALSセンターなどでiPS細胞の作成などを目的としたALSの個別医療プログラムがアイスバケツチャレンジの資金などをもとに動き始めました
▽第9位:SOD1変異ALSに対するarimoclomolの第2相試験が終了:12月9日に第27回国際ALS/MNDシンポジウムで公表されたようです。当ブログでは未紹介でしたので、後日記事にします
▽第10位:ALS ONEなど国際的な共同プロジェクトがALS協会の資金援助にて開始:ALS協会より3億円近い資金供与を得て5ヵ年計画で治療法開発などの研究が進展予定です
引用元
https://alsadotorg.wordpress.com/2017/01/01/top-10-significant-als-research-advances-of-2016/