▽今回研究者らは、発症後のモデルマウスの末梢筋組織に局所的にメチレンブルーを投与することにより、治療的効果があるかどうかを検証しました。
▽メチレンブルーはミトコンドリア保護作用を有すると考えられており、発症後のモデルマウスの後肢の前部筋区画に対して注入されました。病態進行期まで注入継続され、進行期における筋力などが検査されました。
▽その結果、注入側の筋肉においては、収縮力が非注入側と比較して100%程度、増加していました。筋終板の神経支配率も注入側で約65%であり、非注入側の35%より多い結果でした。
▽以上の結果は、メチレンブルーの末梢への注入が神経筋構造および機能の保持に有効である可能性を示唆するものです。
(この研究はアメリカ、University of Miami Miller School of MedicineのTalbotらにより報告され、平成28年12月のExperimental Neurology誌に公表予定です)
▽ALSに対する自家脂肪組織由来間葉系幹細胞のクモ膜下腔内投与の安全性についての臨床試験が実施されました
▽27名の患者がエントリーし、1度ないし2度の移植を受けました。副作用としては一過性の腰痛や下肢痛などでした。これらの臨床所見は髄液中蛋白上昇と有核細胞の増加、およびMRIでの腰仙髄領域の神経根肥厚と関連していました。
▽ALSFRS-R得点については、進行性の経過をとりましたが、この第1相臨床試験の主たる評価尺度ではなく、今後の有効性を評価する第2相臨床試験で評価される予定です。
▽自家脂肪組織由来間葉系幹細胞移植の安全性が確認されました。
(この研究は、アメリカ、 Mayo ClinicのStaffらにより報告され、平成28年10月26日付のNeurology誌に掲載されました)
・ALSに対する脂質サプリメントの有効性、安全性についての第1相試験がドイツにて進行中となっています。
・この試験はプラセボ対照試験であり、200名を対象に行われます。投薬群については、4.5 kcal/mlの効果カロリーの100%脂質サプリメントを90ml(405kcal)摂取し、18ヶ月間の経過で効果判定されます。
・ALSに対して高カロリー摂取療法の小規模な第2相試験の結果はこちら(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-986.html)でご紹介したとおりですが、この試験では高炭水化物による高カロリーが良いのではないかという結論になっています。今回は高脂質であり、どうなるのかわかりませんが、大規模な試験ですので、結果が注目されます
引用元
https://clinicaltrials.gov/show/NCT02306590
▽現在デューク大学などが主導で第2相臨床試験実施中のルナシン レジメンですが、この臨床試験の独自性について紹介されていました
▽この臨床試験はペプチド・サプリメントであるルナシンのALSに対する有効性などを評価するものです。もともとはある一人ALS患者がこの方法を試し、症状改善がみられたことから臨床試験実施に至ったものです
▽この臨床試験は、試験のプロトコルが公表(http://alsreversals.com/documents/LunasinProtocolV11.pdf)されており、試験参加者以外でも、その効果を報告できる形式になっているとのことです。
引用元
http://www.alsresearchforum.org/lunasin-trial-introduces-new-paradigm-for-als-clinical-trials/
▽Cedars-Sinai医療センターの再生医療研究班は、ALSの進行停止を目指した幹細胞治療の臨床試験の開始について、FDAから承認を得ました。
▽この承認により、18名のALS患者が、数ヶ月以内に新規治療法の試験にエントリーされ治療開始となる見込みです。
▽この治療法は、グリア細胞栄養因子(GDNF)を分泌するように遺伝子的に操作した幹細胞を移植するものです。今年中の開始が予定されています。良好な結果が期待されます
引用元
http://www.news-medical.net/news/20161021/Cedars-Sinai-receives-FDA-approval-to-examine-safety-of-combination-stem-cell-gene-therapy-in-ALS-patients.aspx
▽食事摂取内容については、修正されたBlock Food Frequency Questionnaire(FFQ)で評価され、機能尺度はALSFRS-Rなどで評価されました
▽その結果、野菜からのカロチンと抗酸化物摂取が多いほど、ベースラインの機能尺度や%FVCが良好であることがわかりました。
▽適切な果物や野菜の摂取がALSにおいて望ましい可能性があります
(この研究は、アメリカ、Columbia UniversityのNievesらにより報告され、平成28年10月24日付のJAMA Neurology誌に掲載されました)
▽現在第3相臨床試験が実施中のCytokinetics社のALS治療薬候補のtirasemtivですが、48週間の初期治療期間を終了した患者に対して、さらに長期継続療法の効果を調べるための試験が開始となりました
▽既に最初の患者がエントリーされたとのことです。tirasemtivの第3相試験は743名を対象とした大規模試験であり、2017年7月に全てのデータが出揃う予定となっています
▽良好な結果が期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2016/10/20/first-patient-enrolled-extension-trial-als-therapy-tirasemtiv
▽遺伝性ALSはALS全体のわずか10%を占めるのみですが、それらの多くがRNAに結合する蛋白質の変異に起因するものです。カリフォルニア大学の研究者らは、今回RNA結合蛋白質であるhnRNP A2/B1の変異に起因したALSの病態について調べました
▽10月20日付のNeuron誌に公表された結果です。研究者らは、まずALS患者の皮膚検体を採取し、hnRNP A2/B1変異の有無について調べました。その結果4名中3名においてこの蛋白質の遺伝子変異がみられました。
▽さらに、研究者らは、採取した細胞からiPS細胞を作成し、そこから運動神経細胞を分化誘導しました。この細胞における変異hnRNP A2/B1蛋白質の影響を調べるために、数千種類の遺伝子の活性が調べられ、健常者と比較されました。
▽その結果、ALSに関連したhnRNP A2/B1変異は、核内の不溶性hnRNP A2/B1蛋白質の増加によると思われる、RNAの広範なスプライシングの異常をもたらし、運動神経細胞死をもたらすことが明らかになりました
▽また、ALS患者由来の運動神経細胞をストレス下に暴露すると、健常者由来細胞と比較して、hnRNP A2/B1蛋白質がストレス顆粒中に凝集しやすいことが明らかになりました。
▽ストレス起因性の過剰反応を弱めるような治療戦略や、これらRNAをターゲットにした治療法開発が、異常蛋白質の発生を防ぎ、治療戦略として有望な可能性があります
引用元
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161020120832.htm
▽シカゴで約40年前から活動している、ALSのための財団であるLes Turner ALS Foundationが主催するイベント”ALS Walk for Life ”において、募金額が80万ドル(約8300万円)を突破しました
▽このイベントで集まった資金は、研究や当事者支援、教育などのために用いられます
▽ALS Walk for Lifeは趣旨に賛同する人たちがシカゴの湖岸を約2マイル歩くもので、今年で15回目になります。tirasemtivの第3相臨床試験を実施中のcytokinetics社などが協賛しています
・日本でも藤田ヒロさんが今年6月から7月までEND ALS RUNを主催されました。このようなイベントがさらに盛り上がることが期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2016/10/19/les-turner-als-walk-for-life-on-track-raise-1-million-research-patient-services
以下まっしゃーさんのコメントを引用させていただきます
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ALS協会が、慶応大学の岡野先生など、アイスバケツチャレンジの助成を受けた先生方による研究報告会を11月6日(日)に企画しています。
最新の研究成果を聞くとともに、患者や患者会として新薬開発を早めるために何ができるか聞いてみようと思っています。
ご関心のある方は一緒にぜひ。
詳しくはこちら。
http://alsjapan.org/2016/09/09/post-578/
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・まっしゃーさん、ありがとうございました
▽FDAはMediciNova社のALS治療薬候補であるIbudilast(MN-166)をorphan drug指定しました
▽ibudilastはホスホジエステラーゼ4および10、MIF(macrophage migration inhibitory factor)阻害により炎症促進性サイトカインを抑制し、また神経栄養因子分泌を促進し、神経保護作用が期待されています
▽ibudilastは日本、および韓国では脳梗塞後遺症および気管支喘息に対して保険適応を取得している薬剤であり、現在第2相臨床試験が進行中となっています。
引用元
https://alsnewstoday.com/2016/10/18/ibudilast-mn-166-named-orphan-drug-for-amyotrophic-lateral-sclerosis-by-fda
・Q cellは、グリア細胞に分化誘導された幹細胞であり、移植方法はneuralstem社のNSI-566と同様に、脊髄内に注入される方式です。Brainstorm社のNurOwn(クモ膜下腔内投与)と比較して、侵襲性の高い移植方法となりますが、有効性が期待されます。
・30名が対象となり、来年5月に開始予定となっています。
引用元
https://clinicaltrials.gov/show/NCT02478450
▽先日Biogen社の脊髄性筋萎縮症治療薬候補であるnusinersenの第3相臨床試験の、良好な中間結果が公表されたばかりですが、遺伝子治療薬の開発を行っているAveXis社の治療薬候補であるAVXS-101の第1相臨床試験の中間結果が公表されました
▽nusinersenがSMN蛋白質欠乏を補うために、SMN2遺伝子の発現を亢進させる機能を有することと比較して、AVXS-101は変異したSMN1遺伝子の機能的なコピーを注入し、治療的効果が期待されている薬剤です。
▽今月開催された会議において、中間結果が報告され、高用量が投与された12名中11名において、頭部の安定の保持と、支持なしで座位を維持することが可能となったとのことです。さらに2名の患児では、単独で歩行機能の習得が可能であったとのことです。
▽今後さらに臨床試験の進展と、良好な結果が期待されます
引用元
http://www.alsresearchforum.org/avexis-reports-promising-interim-phase-i-results-of-avxs-101-in-sma/
▽MeraGTx社はアメリカの複数の大学と共同でALSを対象とした遺伝子治療開発に着手することを公表しました。
▽同社の遺伝子治療は、UPF1(upframeshift protein 1)をターゲットとするものです。UPF1はナンセンス変異依存 mRNA分解機構の中心的な制御因子です。
▽TDP-43蛋白症のモデルマウスにおいて、UPF1の過剰発現は、病態改善効果をもたらしました
▽UPF1は同時にFUSに起因した細胞毒性に対しても治療的に作用する可能性が示唆されています
▽前臨床試験を行うための共同計画を策定中とのことです。
引用元
http://www.alsresearchforum.org/meiragtx-targeting-tdp-43-toxicity-in-gene-therapy-program/
・国立精神・神経医療研究センターがALS対象の新しい呼吸理学療法機器「LIC TRAINER」を開発、提供開始されました。
・この機器を用いることにより、深吸気を得るという呼吸リハビリテーションを、安全に、かつ主体性をもって行えるようになるとのことです。
元記事
http://www.ncnp.go.jp/press/release.html?no=122
http://carter-tech.jp/portfolio/
・かなくんさんありがとうございました。
▽研究者らは、変異SOD1蛋白質のVDAC1への結合がミトコンドリア機能異常をもたらす一方で、HK1が変異SOD1蛋白質と競合し、VDAC1への結合を阻害することをみいだしました
▽HK1蛋白質のN末端由来のペプチド(NHK1)を用い、ALSの細胞モデルであるNSC34細胞に投与したところ、NHK1投与は、変異SOD1蛋白質のVDAC1への結合を阻害し、細胞の機能回復をもたらしました
▽以上の結果は、NHK1がSOD1変異ALSにおいて治療的に有用である可能性を示唆しており、その他の蛋白症に起因した病態においても有用な治療戦略となりうる可能性を示唆するものです
(この研究は、イタリア、University of CataniaのMagriらにより報告され、平成28年10月10日付のScientific Reports誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは、運動神経細胞におけるC9orf72のインタラクトーム解析を行い、C9orf72蛋白質がコフィリンやその他のアクチン結合蛋白質との複合体中に存在することを見出しました
▽C9orf72遺伝子除去運動神経や、ALS患者由来リンパ芽球、患者iPS細胞由来運動神経細胞においては、コフィリンのリン酸化が亢進していました。C9orf72蛋白質は低分子GTP結合蛋白質であるArf6とRac1の活性を調節し、LIMK1/2(LIM-kinases 1および2)の活性亢進をもたらしました。このため、C9orf72遺伝子を除去すると、運動神経における軸索のアクチン活性が減弱することがわかりました。
▽C9orf72蛋白質は、正常機能として、軸索のアクチン動態を制御している低分子GTP結合蛋白質の機能を調整していることがわかりました。
(この研究は、ドイツ、University Hospital of WuerzburgのSivadasanらにより報告され、平成28年10月10日付のNature Neuroscience誌に掲載されました)
▽今回、研究者らは、新規薬剤候補であるMicroNeurotrophins(MNTs)の有効性を基礎実験で検証しました。MNTsは、血液脳関門を透過しうる内因性神経ステロイドで、チロシンキナーゼ受容体に結合する、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の誘導体です。
▽その結果、ヒトSOD1変異ALS患者由来のアストロサイトと共培養した神経細胞において、MNTsであるBNN27の10uM投与は、運動神経細胞死を抑制しました。
▽一方でALSモデルマウスに対する10mg/kgないし50mg/kgのBNN27投与は生存期間の延長効果はもたらしませんでした。剖検により、ラットの中枢神経においてBNN27は検出されませんでした。
▽以上の結果は、末梢からのBNN27投与は、生体中では肝細胞により迅速に代謝されるために、中枢神経作用を発揮できない可能性を示唆しており、今後の治療戦略開発において重要な視点を提供するものと思われます。
(この研究は、アメリカ、Massachusetts General HospitalのGlajchらにより報告され、平成28年10月7日付のPLoS One誌に掲載されました)
▽sulfoglucuronosyl paragloboside (SGPG) と呼ばれる糖脂質に対する抗体の一群は神経疾患と関連があることが指摘されてきました。
▽SGPGは運動神経細胞膜に発現し、免疫系の異常により抗SGPG抗体が産生され、運動神経を攻撃する可能性があります
▽これまでALS患者の一部において、抗SGPG抗体の存在が指摘されてきました。今回、研究者らは113名のALS患者と50名の健常者を対象に抗SGPG抗体の存在の有無などを比較しました。
▽その結果、ALS患者の13%において抗SGPG抗体が検出されました。またALS患者において、高齢であるほど、また疾患の重症度が高いほど、抗SGPG抗体の存在率が高まりました。抗SGPG抗体の存在は、ALSのバイオマーカーになりうるのみならず、新たな治療戦略の開発においても有用である可能性があります。
引用元
https://alsnewstoday.com/2016/10/06/antibodies-may-serve-as-biomarkers-diagnosing-als-and-disease-severity
▽デュシャンヌ型筋ジストロフィーの特定の変異(エクソン51変異)に対するエクソン・スキッピング誘導治療薬であるsarepta社のeteplirsenが平成28年9月19日にFDAによって早期承認を得ました
▽これまで有効性の高い治療法のなかったこの疾患に対する初の病態改善治療薬であり、大きな話題となっています
▽エクソン51変異は、デュシャンヌ型筋ジストロフィー全体の約13%を占めるのみですが、今後sarepta社は、さらに多くの遺伝子変異に対するエクソン・スキッピング製剤を開発予定としています。
▽今後多くの遺伝子疾患に対してこの治療技術が応用されることが期待されます。
引用元
https://strongly.mda.org/eteplirsen-granted-accelerated-approval-to-treat-dmd/