▽FUS遺伝子変異はALSの病因の1つとして報告されています。同時にFUS遺伝子変異は好塩基性細胞質内封入体を有する孤発性ALS患者においても報告されています。
▽孤発性ALS患者の脊髄運動神経の多くにおいて、GluA2のグルタミン/アルギニン(Q/R)部位でのRNA編集を触媒するADAR2活性の低下が報告されています。
▽今回、研究者らは、GluA2のグルタミン/アルギニン(Q/R)部位でのRNA編集活性と、FUS遺伝子変異患者のFUS陽性封入体との関連性を調べました。
▽その結果、24歳の好塩基性細胞質内封入体を有するALS患者において、脊髄運動神経細胞におけるGluA2のQ/R部位でのRNA編集活性の有意な低下と、ADAR2 mRNAの顕著な低下がみられました
▽リン酸化TDP-43陽性封入体は観察されず、ADAR2活性低下とTDP-43蓄積との強い関連はないことが示唆されました。またFUS陽性細胞質封入体とADAR2免疫活性との関連性も明らかではありませんでした。
▽以上の結果はFUS変異を有するALS患者においてもADAR2活性低下が生じることを示唆しており、このことはFUS陽性封入体の存在とは無関係に生じることを示唆しています。FUS変異ALSは孤発性ALSと共通した病態を有する可能性があります。
(この研究は、東京医科大学のAizawaらにより報告され、平成28年6月21日付のJournal of Clinical Neuroscience誌に掲載されました)
・東大の郭先生らの研究グループより、最近日本での発売が認可された抗てんかん薬のペランパネルがALSモデルマウスにおいて治療的効果を発揮したとの報告です
引用元
http://www.eisai.co.jp/news/news201616pdf.pdf
http://www.nature.com/articles/srep28649
・今後臨床試験での有効性確認が期待されます
・かきのたねさん、かなくんさんありがとうございました
▽今回、研究者らは、神経細胞のミトコンドリアへのTDP-43の蓄積がALSないし前頭側頭型認知症患者にみられることをみいだしました。疾患に関連したTDP-43変異はミトコンドリア局在化を増加させました。
▽ミトコンドリアにおいては、正常TDP-43および変異TDP-43蛋白質は主として、呼吸鎖複合体IのサブユニットであるND3およびND6をコードする、ミトコンドリアで転写されたメッセンジャーRNAに結合し、その発現を阻害することがわかりました。
▽TDP-43のミトコンドリアへの局在化を阻害したところ、ミトコンドリアの機能異常が改善し、運送神経細胞喪失が軽減し、モデルマウスにおいて症状改善がみられました。
▽以上の結果は、TDP-43のミトコンドリアへの直接的な毒性を明らかにするものであり、TDP-43のミトコンドリアへの局在化をターゲットにすることが有望な治療法となりうる可能性を示唆しています
(この研究は、アメリカ、Case Western Reserve UniversityのWangらにより報告され、平成28年6月27日付のNature Medicine誌に掲載されました)
・18名のALSおよび脊髄損傷患者を対象に、頸髄領域および正中神経領域の体表からの磁気刺激療法の有効性についての第1相臨床試験が募集中です
・残された神経系を刺激することにより、残存機能を強化し、神経系の機能的回復を促進しようというアイデアによるもののようです
・来年10月に終了予定となっています
引用元
http://www.als.net/als-clinical-trials/232/
・千葉大学の研究グループが蛋白質凝集体形成を防ぐ新たな機構を発見したとのニュースです。
引用元
http://www.jiji.com/sp/article?k=000000093.000015177&g=prt&utm_expid=105781272-3.m1cwNtp9SzOxLi_295odLw.0&utm_referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.co.jp%2F
・病態解明と今後の治療法開発につながることが期待されます
・かきのたねさん、かなくんさん、ありがとうございました
▽蛋白質の折り畳み異常に起因する神経変性疾患に対する治療薬を開発中のYumanitiy社が、創薬のためNY Stem Cell Foundation(NYSCF)と協定を結ぶことを公表しました
▽このことにより、Yumanity社は、NYSCFの幹細胞技術を用いて、iPS細胞を大規模に作成し、それらを用いて薬剤開発のスクリーニングを効率的に進めることができることになります。創薬過程の迅速化が期待されます
引用元
http://www.alsresearchforum.org/yumanity-and-ny-stem-cell-foundation-announce-discovery-collaboration/
▽Genervon社が開発中のALS治療薬候補であるGM604が欧州においてOrphan Drug指定を受けました
▽GM604は胎生期におけるシグナル伝達の制御物質の類似物質であり、インスリン受容体のチロシンキナーゼのβサブユニットへの結合性を有します。そこから様々なシグナル伝達経路の活性を調節し、神経系の発達や、神経保護的に作用する遺伝子発現を活性化すると考えられています
・今後の具体的なプランなどについては、記載がありませんでした。GM604はFDAにおいては既にOrphan Drug指定を受けています。Orphan Drug指定は税制上の優遇措置や優先的な審査などが受けられる制度であり、承認の是非とは直接的な関係のないものである点に注意が必要です。
引用元
http://www.genervon.com/genervon/PR20160606.php
▽産業医大の研究者らが、植物由来物質を用いた自食作用の賦活についての総説を報告しました。自食作用はALSを含む多くの神経変性疾患の病態に関与していると考えられています
▽自食作用は、正常な細胞において、老廃物や異常蛋白質などを排除する機構として備わっています。神経変性疾患においては蛋白質の凝集が病態に重要な役割を果たしており、これら凝集蛋白質の排泄に自食作用が関与しています。
▽自食作用の障害が、蛋白質凝集体の蓄積につながり、神経変性をもたらします。そのため、自食作用を制御する物質を同定することは、神経変性疾患の治療法開発につながると考えられています
▽近年、植物由来の天然物質が、自食作用を制御しており、治療薬候補となりうる可能性が報告されました
▽アルツハイマー病におけるアミロイド斑の構成物質である過剰リン酸化タウ蛋白質が、キク科の植物由来のarctigeninにより、蓄積が阻害されうることがモデルマウスでの実験により報告されました。
▽またブドウに含まれるresveratrolは自食作用を活性化し、アミロイド沈着を減少させることが報告されました。ターメリックの成分であるクルクミンも自食作用を亢進させることが報告されています。
▽パーキンソン病の病態をなす、αーシヌクレインの蓄積はドパミン神経の変性をもたらします。動物実験では、アカネ科植物由来のisorhynchophyllineやresveratrolが自食作用を誘導し、神経細胞死を減少させることが報告されています
▽ハンチントン病ではHuntingtin蛋白質の蓄積が特徴ですが、ヒマワリの種やイワヒバ科の植物などに含まれるOnjisaponin Bやお茶由来のカテキンの一種などが自食作用を誘導し、毒性を緩和することが報告されています
▽現段階では基礎研究段階ですが、これらの研究が治療薬の発見につながることが期待されます。
引用元
https://alsnewstoday.com/2016/06/20/20160617neurodegenerative-diseases-may-be-prevented-with-natural-compounds-extracted-from-plants/
・日本では既に保険承認されているエダラボンですが、今回、田辺三菱製薬がエダラボンの承認申請(NDA)をFDAに提出したとのことです
https://www.mt-pharma-america.com/mitsubishi-tanabe-pharma-submits-new-drug-application-for-edaravone-to-treat-als-in-the-united-states/
・ALS TDIの掲示板でも話題になっており、早期承認が期待されます
・かなくんさん、ありがとうございました。
日本ALS協会のHPでも以下の告知がありました
http://www.alsjapan.org/-article-1141.html
・藤田ヒロさんもイベントを企画されたようです
http://www.mt-pharma.co.jp/shared/show.php?url=../release/nr/2016/MTPC160615.html
・こうした活動でALSそのものがより多くの人に認知されるのみならず、ALS協会や当事者団体の活動資金が乏しい現状を知っていただき、支援の和がもっと拡大してほしいと思います。
、
▽今回研究者らは、HIPK2(homeodomain interacting protein kinase 2)がIRE1α-ASK1-JNK経路を通じて、小胞体ストレス誘発性の細胞死促進に重要な関与をしていることをみいだしました。
▽SOD1変異モデルマウスにtunicamycinを投与することにより、小胞体ストレスを誘発したところ、HIPK2のリン酸化による活性化が観察されました。一方でHIPK2を除去すると、病態進展遅延効果と生存期間延長が観察され、脊髄運動神経細胞変性の減弱が観察されました。
▽また、TDP-43変異ALSモデルマウスにおいては、HIPK2活性化は、TDP-43蛋白症の病態進展に関与していることがわかりました。同時にHIPK2のリン酸化活性を阻害することにより、TDP-43の細胞毒性から運動神経細胞が保護されました。
▽以上の結果は、HIPK2活性化と小胞体ストレス誘発性の運動神経変性との関連性を初めて明らかにしたものであり、今後ALSの治療対象となりうる可能性があります。
(この研究は、アメリカ、University of CaliforniaのLeeらにより報告され、平成28年6月15日付のNeuron誌に掲載されました)
・ラジカットの臨床試験を主導され、保険承認を実現された吉野内科・神経内科医院のHPにてALSに対するDF-521の臨床試験の情報が掲載されています。
詳細は以下となります
http://www.yoshino-clinic.jp/chiken_01.html
・また、日本医薬情報センターのHPにて臨床試験情報が掲載されています
http://www.clinicaltrials.jp/user/search/directCteDetail.jsp?clinicalTrialId=14290
・らららんさん、ありがとうございました
▽近年患者由来iPS細胞を用いて、実験室で運動神経細胞に分化させ、病態を研究する試みが報告されています。今回研究者らは、新規MyoD発現系を用いて、ALS患者由来iPS細胞から、機能的な骨格筋細胞を分化させることに成功しました。
▽このことにより、ALSにおける複雑な運動神経細胞とその周辺の微小環境における病態経路を、個別に明らかにしていく手段が得られたことになり、病態解明にむけての進展が期待されます。
(この研究は、イタリア、Sapienza University of RomeのLenziらにより報告され、平成28年6月8日付のStem Cell Research誌に掲載されました)
▽多くの神経変性疾患の病態には、病的蛋白質の凝集体蓄積が関与しており、蛋白質の折り畳み異常と凝集に関与するメカニズムを解明することが、病態解明と治療法開発の糸口となると考えられています
▽今回PloS Biology誌に掲載された論文において、インディアナ大学の研究者らはNMNAT2蛋白質のシャペロン(他の蛋白質が正常な折り畳み構造をとることを補助する蛋白質)としての機能を有することを報告しました
▽NMNAT2はNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の合成に関与しており、興奮性のストレスから細胞を保護する機能を有すると考えられています
▽NMNAT2は熱ショック蛋白質90(HSP90)と複合体を形成し、折り畳み異常蛋白質と結合し、正常な折り畳み構造をとることを補助することがわかりました。
▽NMNAT2はALSなどの神経変性疾患においても、熱ショック反応を促進することにより治療的効果を有する可能性があり、今後の研究の進展が期待されます
引用元
http://www.alsresearchforum.org/nmnat2-functions-as-chaperone-protein-in-complex-with-hsp90/
・新潟大学の研究グループより、TDP-43について、ALSにおける病態機序についての報告がありました
http://www.niigata-u.ac.jp/wp-content/uploads/2016/06/280607.pdf
・Yahoo!ニュースでは、デューク大学でのALSの症状が改善するケースについての研究が紹介されています
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160615-00010999-wsj-int
・是非日本国内の研究グループからALSの病態解明と、治療法開発を成し遂げてほしいと思います。
・いのべたさん、ありがとうございました。
▽カルフォルニア大学の研究者らは、トキソプラズマ感染と中枢神経におけるグルタミン酸伝達系の異常との関連性を示す証拠を初めてみいだしました。
▽トキソプラズマは、トキソプラズマ感染症の原因寄生虫であり、世界中の1/3の人々が感染していると考えられています。感染時には一部でインフルエンザ様症状などを呈し、その後宿主の脳内への慢性感染につながることがありますが、潜伏感染の場合には無症状といわれており、どのような影響があるかについては明らかではありませんでした。
▽今回、研究者らは、トキソプラズマの感染により、神経細胞のグルタミン酸代謝に与える影響を明らかにしました。シナプス間隙に放出されたグルタミン酸は、アストロサイトなどのグリア細胞のグルタミン酸トランスポータ(GLT-1)により取り込まれ、代謝されます。
▽ALSにおいては、グルタミン酸過剰が病態に関与していると考えられています。トキソプラズマに感染したマウスでは、グルタミン酸濃度の上昇と、アストロサイトの機能異常がみられました。
▽重要なことに、GLT-1の発現低下がみられ、その結果としてグルタミン酸増加がもたらされている可能性が示唆されました。セフトリアキソン投与によりGLT-1発現を増加させたところ、グルタミン酸濃度の正常化と神経細胞機能の正常化がみられました。
▽以上の結果は、トキソプラズマ感染はほとんどの場合において、危険性がないものの、神経変性疾患の潜在的なリスク因子となりうる可能性があることを示唆しており、今後の研究の進展が期待されます。
引用元
https://alsnewstoday.com/2016/06/13/toxoplasma-infection-neurodegenerative-disease/
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000127069.html
・厚生労働省の患者申出療養評価会議(座長:福井次矢・聖路加国際病院院長)の第2回会議が6月13日に開催され、制度開始から2カ月あまりの患者申出療養の現状が報告されたほか、患者から申出があった場合の審議の進め方などについて議論されました。
・なお現段階では、まだ厚労省への患者申出療養の申出はないとのことです(申請自体は行われていると思われますが、臨床研究中核病院での検討段階と思われます)
▽miRagen Therapeutics社は、ALSに対するマイクロRNA阻害薬(MRG-107)を用いた治療法を開発している企業です。
▽MRG-107は人工のマイクロRNA阻害薬であり、miR-155をターゲットにしています。このmiR-155は家族性ないし孤発性ALSにおいて発現増加しており、炎症促進作用を有すると考えられています。
▽動物実験ではmiR-155の除去は、ミクログリア機能の回復と生存期間の延長効果が確認されています。
▽今回、miRagen社はアメリカALS協会からの42万ドル以上の資金供与を得ました。このことによりFDAに対するMRG-107のIND申請(治験許可申請)に向けて、開発促進が期待されています
引用元
http://www.alsresearchforum.org/miragen-advances-anti-mir-155-therapy-with-alsa-grant/
▽ALS治療薬候補であるIMS-088を開発中のImstar Therapeutics社が、複数の企業より総額180万ドルの資金供与を受けることとなりました
▽IMS-088はwithferin Aの誘導体であり、TDP-43およびSOD1変異動物モデルにおいて治療的効果が報告されており、TDP-43蛋白症とNF-κB活性化に作用し、免疫抑制作用により治療的効果を発揮すると考えられています。
▽今後の治療薬開発が促進することが期待されます
引用元
http://www.alsresearchforum.org/imstar-therapeutics-secures-funding-to-advance-ims-088-for-als/
▽この神経幹細胞を、ヒトALS患者由来神経細胞と、患者由来アストロサイトを共に培養した試験管内に注入し、神経細胞の生存期間や軸索伸長などの様子を観察したところ、生存期間の延長と、軸索伸長の増大効果が観察されました。
▽また、この神経幹細胞をSOD1変異ALSモデルマウスに移植したところ、運動神経細胞の保持と、神経筋接合部機能の保持、ミクログリオーシスとマクログリオーシスの減少などが観察されました
▽以上の結果は、iPS細胞由来の神経幹細胞が、多様な機序により神経細胞と神経筋接合部の保護機能を発揮し、ALSに対して治療的効果を有する可能性を示唆するものです
(この研究はイタリア、University of MilanのNizzardoらにより報告され、平成28年6月6日付のHuman Molecular Genetics誌に掲載されました)