▽xaliprodenは神経栄養因子として作用する薬剤です。1つ目の臨床試験では発症5年未満でALS患者867名がエントリーされ、xaliproden 1mgないし2mgないしプラセボの3群に割り付けられ比較されました。
▽2つ目の試験では、1210名の患者が、リルゾール100mg併用下において、xaliproden 1mgないし2mgないしプラセボに割り付けられました。
▽1つ目の試験では、死亡ないし気切ないし持続的人工換気を要するまでの時間は、投薬群とプラセボ群とで有意差はありませんでした。しかし2mg投与群については、肺活量が50%未満となるまでの時間について、投薬群においてプラセボ郡と比較して30%の相対リスク減少(RRR)がみられ、統計的有意差がありました。
▽2つ目の試験では、いずれの尺度もプラセボと比較して有意差を認めませんでした。1mg投与群においては肺活量が50%未満となるまでの時間について、プラセボ群との比較で相対リスク減少が15%であり、有意差はないものの良好な傾向がみられました。
▽安全性は良好でした。以上よりはっきりとした有効性を支持する結果は得られませんでしたが、肺活量においてはわずかな効果がある可能性があります
▽TCH346はglyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase (GAPDH) に結合し、アポトーシス経路を阻害することで、抗アポトーシス作用を有することが基礎実験で報告されています
▽合計591名のALS患者が参加し、ランダムに5群(TCH346 1mg群、2.5mg群、7.5mg群、15mg/day群)ないしプラセボ、に割付られ、24週間以上経過観察されました
▽結果的に、試験終了時点でのALSFRS-Rの変化量、肺活量の変化、筋力の変化は投薬群とプラセボ群とで有意差はなく、TCH346の有効性は確認できませんでした
引用元
http://www.neurology.org/content/69/8/776.short?sid=2f6b954e-4a67-487d-873e-58a20e78b2b9
▽合計204名のALS患者が無作為にガバペンチン3600mg/dayないしプラセボ群に割付られ、9ヶ月間経過観察されました。
▽9ヵ月後において、上腕筋力低下の程度やALSFRS-Rの変化量、肺活量などの尺度において、投薬群とプラセボ群とで統計的な有意差はなく、ガバペンチンの有効性は確認できませんでした。
・現在第2相臨床試験が行われていますが、この試験は有効性を検証するものではなく、安全性を検証するもののようです。30名のALS患者を対象に8週間で行われます。そろそろ結果はでてもよさそうです。
・現在40名のSOD1変異家族性ALS患者に対して36週間の第2相臨床試験が行われており、2016年4月終了予定となっています。良好な結果が期待されます。
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01083667
▽孤発性ALSにおいてanaplastic lymphoma kinase (ALK)遺伝子の一塩基多型が報告されています。ALKのリガンドであるMidkine(MK)も孤発性ALSにおいて減少が報告されています。
▽MKの発現は、レチノイン酸経路によって賦活されます。MKは神経突起成長や血管新生を促進します。
▽一方で神経炎症の観点から、proliferator-activated receptor gamma(PPRA gamma)の神経保護作用が報告されています。PPAR gammaのアゴニストは抗炎症作用が期待でき、病態改善に寄与する可能性があります。
▽そこで、PPAR gammaアゴニストであるpioglitazoneと、レチノイドであるtretinoinの合剤がALSに対して有効である可能性があり、臨床試験が行われました
▽リルゾール投与中の27名の患者が対象となり、pioglitazone 30mg+tretioin 20mg/dayもしくはプラセボに割付られ、6ヶ月間経過観察されました
▽6ヶ月間の経過において、pioglitazone+tretioin投与群のALSFRS-Rの変化量の平均は-1.02点/月、プラセボ群では平均 -0.86点/月であり有意差はありませんでした。
▽一方で髄液中tau濃度は、投薬群で減少し、プラセボ群では増加を認めました。この臨床試験では、pioglitazoneとtretioinの有効性を支持する結果は得られませんでした。
引用元
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3395264/
・SB-509は血管内皮細胞成長因子A(VEGF-A)転写活性化因子の遺伝子を挿入するプラスミド製剤です。Sangamo BioSciences社により第2相臨床試験が行われました
▽非球症状発症型のALS患者45名が2群に無作為に分けられ、120日以上経過観察されました。1群目では39名を対象にSB-509 60mgが下肢、上肢、頚部の筋肉に両側性に筋注(開始0日目と90日目の2回)され、別の1群では、6名に対して下肢のみに筋注されました。
▽120日目において、SB-509投与群の40%において、踵およびつま先の筋力の増悪遅延作用(historical placebo群と比較して有意差はないが、傾向あり)を認める傾向がありました。SB-509投与された一群において、筋活動電位の振幅増大を認めました
▽これら筋活動電位の増大作用を認めた群においては、ALSFRS-Sの進行遅延を認める傾向(有意差には至らず)を認めました。
▽今後はさらに長期かつ大規模な臨床試験での検証が期待されます
▽sodium phenylbutyrateはHADC阻害作用を有し、モデルマウスにおいて運動神経細胞生存期間延長効果が報告されています
▽安全性を確認するためのオープン試験が行われ、40名がエントリーされました。用量は9-21 g/dayに設定され、20週間経過観察されました
▽26名が完遂し、重篤な副作用はみられませんでした。ヒストンのアセチル化は約50%減少を認め、その効果は用量が少ない9g/dayで最もよくみられました。
▽この試験によりphenylbutyrateの安全性は確認されました。今後のさらに大規模な臨床試験での効果検証が期待されます。
▽40名の患者が無作為にG-CSF皮下注群(5ug/kg/12h)ないしプラセボに割付られ、5日間投与されました。その後3ヶ月間経過観察され、症状変化が比較されました。
▽その結果、ALSFRS-Rの変化や筋力変化などについては両群間で統計的有意差を認めませんでした。女性に関しては、G-CSF投与群の方が、ALSFRS-Rの変化量がプラセボ群よりも大きい結果となりました
▽以上の結果により、G-CSF投与の有効性は支持されず、女性においてはむしろ悪化させる可能性を示唆するものとなりました。
引用元
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4387482/
▽今回、研究者らは、FUS遺伝子のミスセンス変異(H517D)のヘテロ接合体を有するiPS細胞と、ゲノム編集技術を用いて作成したミスセンス変異(H517D)のホモ接合体を有するiPS細胞とを、家族性ALS患者より作成しました。
▽これらの細胞由来の運動神経細胞は、FUS蛋白質の細胞質への異常局在化やストレス負荷下におけるストレス顆粒生成などの神経変性疾患にみられる特徴を再現しました。
▽さらに、運動神経前駆細胞をCLIP-seq datasetsを併用して、エクソンアレイ解析を行うことにより、家族性ALSの運動神経前駆細胞における遺伝子発現やスプライシングパターンの異常が明らかになりました。
▽以上の結果は、iPS細胞由来運動神経細胞が、ヒト運動神経病の病態解明のために有用なツールであることを示唆しています。
(この研究は、慶應義塾大学、Ichiyanagiらにより報告され、平成28年3月16日付Stem Cell Reports誌に掲載されました)
引用元
http://www.cell.com/stem-cell-reports/abstract/S2213-6711(16)00062-X?_returnURL=http%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS221367111600062X%3Fshowall%3Dtrue
・この臨床試験では合計40名の患者(ステージ1の第2相段階と思われます)が、オランザピン10mg+リルゾール100mgないし、プラセボ+リルゾール100mgに無作為割付され、52週間追跡されるものです。オランザピンの体重増加作用により、ALSに対して治療的に作用することが期待されるものです。
・オランザピンは非定型抗精神病薬に分類される薬剤で、主として統合失調症、双極性障害などに用いられます。抗精神病薬といえばピモジドなどTDP-43蛋白症に対する有効性が期待される薬剤ですが、この臨床試験では、ALSにおいては低体重が予後不良因子として報告されていることから、オランザピンの副作用としてしばしば報告される体重増加を利用して、予後改善効果がみられないかどうか検証するもののようです。
・2014年段階で募集中になり、その後更新がない状況です。結果がでればなんらかの情報が得られるものと思われます
▽静的肺活量が70%以上の512名のALS患者を対象に、18ヶ月間プラセボ対照比較試験が行われました。患者は全員リルゾール100mg内服中でした。
▽330mg/dayのolesoxime内服群ないしプラセボ群とに無作為に割付されました。
▽18ヶ月時点では生存率はolesoxime投与群とプラセボ群とで有意差はありませんでした(69.4%対67.5% p=0.71)。その他のALSFRS-Rなどの機能的尺度についても有意差はなくolesoximeの有効性は確認できませんでした。
(この研究はフランスHôpital de la SalpêtrièreのLengletらにより報告され、平成26年3月21日付European Journal of Neurology誌に掲載されました)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ene.12344/abstract;jsessionid=6FC414F20CD4697BB69B1A719CA8F432.f04t01
・2014年1月のPhamocology & Therapeutics誌の論文からです
▽arimoclomolはヒドロキシルアミン誘導体であり、細胞ストレス下における、熱ショック蛋白質発現の共誘導物質(co-inducer)です。
▽arimoclomolはSOD1変異ALSなどの動物モデルにおいて、神経保護作用を有する事が報告されています。
▽熱ショック蛋白質発現亢進は、蛋白質凝集に対して直接的な影響を与えるのみならず、小胞体ストレス応答による凝集蛋白質排除促進にも関与します。
▽arimoclomolは蛋白質の凝集などへの影響のみならず、酸化的ストレス経路などにも影響を与えると考えられます。
▽ALSの病態は多様であることが想定されており、複数のシグナル経路に影響を与えるarimoclomolのような化合物の効果が期待されます。
▽第2相臨床試験においては、dexpramipexoleは9ヶ月までの投与で忍容性良好で、高用量において有意な治療効果が報告されました。そこでさらに大規模な第3相臨床試験を実施しました
▽発症から24ヶ月以内の合計943名の患者が対象となりました。無作為にdexpramipexole 300mg投与群とプラセボ群に割付され、12-18ヶ月間、経過観察されました。
▽結果として、12ヵ月後に機能尺度であるCAFSスコアやALSFRS-Rの変化量、生存率について、投薬群とプラセボ群とで有意差はありませんでした。
▽dexpramipexole投与群の8%、プラセボ群の2%が好中球減少症を発症しましたが、その他の副作用についてはほぼ両群で同等でした。
▽以上より、ALSに対するdexpramipexoleの有効性は確認できませんでした
(この研究は、Massachusetts General HospitalのCudkowiczらにより報告され、平成25年12月のLancet Neurology誌に掲載されました)
引用元
http://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(13)70221-7/abstract
▽合計330名のALS患者に対してヒト遺伝子組換えIGF-1皮下注(0.05mg/kg)ないしプラセボ投与が1日2回2年間施行されました。
▽2年後において主尺度の筋力、二次尺度の気管挿管なしの生存期間、ALSFRS-Rの変化量のいずれについてもIGF-1投与群とプラセボ群とで有意差はなく、IGF-1投与の有効性は確認できませんでした
引用元
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2617770/
▽ミノサイクリンは抗アポトーシス作用、抗炎症作用などが試験管中において確認されています。ALS患者に対して多施設プラセボ対照の第3相臨床試験が行われました
▽4ヶ月間の観察期間を経て、412名の患者がプラセボないしミノサイクリン群に無作為に割付されました。
▽ミノサイクリンは最大400mgまで使用され、9ヶ月間経過観察されました。
▽その結果、ミノサイクリン群において、ALSFRS-Rの変化率は、プラセボ群よりも有意に悪い結果となりました(-1.30点/月 対 -1.04点/月:p=0.005)
▽努力性肺活量においても、有意差はありませんでしたがミノサイクリン郡で変化率が悪い傾向がありました 。QOL尺度は有意差がありませんでした
▽以上の結果は、ミノサイクリン400mgはALS患者にとって有害である可能性を示唆するものです
(この研究は、アメリカ、 Columbia UniversityのGordonらにより報告され、平成19年12月6日付Lancet Neurology誌に掲載されました)
*訳注
この報告については、別記事でもとりあげますが、後日基礎研究において、ミノサイクリン、メマンチン、リチウムについては、リルゾール併用下において、神経保護作用が阻害されたとの報告があります。
http://www.karger.com/Article/Abstract/357281
Lancet Neurologyの元論文をあたっていないので、リルゾール併用率が不明(近日あたってみます)ですが、単剤だと異なる結果が得られた可能性もあり、今後の検証が必要です(事後解析でも検証できそうですが)
▽バルプロ酸はヒストン脱アセチル化酵素阻害作用を有し、抗酸化作用、抗アポトーシス作用、グルタミン酸毒性減弱作用などが基礎研究では報告されています。
▽ALSに対する有効性を検証するため、2005年から2007年にかけて第3相臨床試験が実施されました。163名のALS患者に対して、リルゾール100mg併用下においてバルプロ酸1500mgないしプラセボが投与されました。
▽12ヵ月後において、バルプロ酸群の生存率は72%、プラセボ群は88%であり、バルプロ酸による生存期間の延長効果は確認されず、ALSFRS-Rの変化率もプラセボ群と有意差がありませんでした。
▽以上より、てんかんに使用される用量 においては、バルプロ酸はALSに対して明らかな利益がみられない結果となりました。
(この研究は、オランダ、University Medical Centre UtrechtのPiepersらにより報告され、平成21年8月付けのAnnals of Neurology誌に掲載されました)
引用元
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ana.21620/abstract;jsessionid=BE7143E49287C30EE635F1236E5740B0.f02t01
▽グルタミン酸の興奮毒性がALSの病態に関与しているといわれています。動物モデルにおいては、EAAT2(excitatory aminoacid transporter 2)の過剰発現が、病態進行遅延効果を有することが報告されています。
▽セフトリアキソンは基礎実験では、EAAT2活性を増加させる作用が確認されており、ALSに対する有効性が期待されました
▽2006年から2012年までアメリカとカナダの複数の施設で試験が行われました。患者は発症3年未満で、%VCが60%以上などの参加条件を満たしたものでした。
▽患者はセフトリアキソン2g/dayないし4g/dayないしプラセボの3群に無作為に割付られました。また胆道系の副作用を避けるため、セフトリアキソン投与群については、ウルソデオキシコール酸600mg/dayが併用されました。
▽試験は3つのステージにわけられ、ステージ1では、66名の参加者が3群にわけられ、7日間観察され、実薬群において、セ フトリアキソンが中枢神経に十分な濃度で到達するかが観察されました。その結果、80%以上の患者で 1uM以上の濃度に到達していました。
▽ステージ2では、ステージ1参加者がさらに20週間、安全性を確認されました。さらにステージ3では、新たな参加者も加え、合計514名が最大で4年半経過観察されました。
▽その結果、ステージ2までの結果では、セフトリアキソン4g投与群がプラセボ群と比較して有意にALSFRS-Rの変化量が少ない結果(p=0.042)でしたが、ステージ3では、ALSFRS-Rの変化率に有意差はみられませんでした。
▽また生存率についても、セフトリアキソン投与群とプラセボ群とで有意な差を認めませんでした。副作用はセフトリアキソン投与群で消化器系副作用や肝胆道系副作用が多くみられました。
▽セフトリアキソンの有効性は確認されませんでした。
(この研究 は、アメリカ、Massachusetts General HospitalのCudkowiczらにより報告され、平成26年11月13日付のLancet Neurology誌に掲載されました)
引用元
http://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(14)70222-4/abstract
▽発症5年未満のALS患者107名が参加しました。無作為にクレアチン一水和物5g/日ないしプラセボ投与群に割付されました。
▽9ヶ月間経過が観察されました。その結果、クレアチンは運動機能、呼吸機能においてプラセボと比較して有意な効果はみられませんでした。
▽生存期間については有意差はありませんでしたが、クレアチン投与群で良好な傾向がみられました。
▽結論として、クレアチン5g/dayは、9ヶ月間で明らかな効果を認めませんでしたが、生存期間については良好な傾向がみられ、さらなる検証が必要です。
→2012年のメタ解析(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD005225.pub3/abstract)により、クレアチンの生存期間延長効果は支持されない結果となっています。
▽外来ALS患者で発症から5年以内、気管切開を受けていないもの、努力性肺活量が期待値の60%以上あるものなどのエントリー基準を満たすものが対象となりました。
▽機能尺度や筋力などについては12ヶ月までのデータが採取され、生存率については、1992年3月12日の試験終了までの期間経過観察されました。
▽リルゾール 100mg/dayが77名(62名が四肢発症型、15名が球麻痺発症型)に投与され、プラセボは78名(61名が四肢発症型、17名が球麻痺発症型)に投与されました。
▽試験終了時点での生存率は、リルゾール群では49%、プラセボ群では37%であり、統計的有意差を認めました(p=0.046)、生存率に関しては、リルゾールは12ヶ月時点で38.6%、21ヶ月時点で19.4%増加させました。
▽副作用ですが、77名中20名で筋脱力感の増悪(プラセボでは78名中11名)、77名中8名で筋痙直の増悪(プラセボでは78名中3名)、77名中4名で血圧上昇(プラセボでは0名)、77名中13名でAST,ALTなど逸脱酵素上昇(プラセボでは78名中6名)がみられたとのことです