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ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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自食作用増強がALSの蛋白毒性から神経細胞を保護する
・7月10日付、ALS FORUMのResearch Newsからです(当ブログで既に6月19日付で紹介済の論文でした。こちらの方がやや詳しいので、そのまま掲載します)

▽研究者らは試験管内および線虫モデルにおいて、折り畳み異常を呈したSOD1蛋白質の自食作用を賦活することにより、SOD1蛋白質の毒性から運動神経細胞を保護することをみいだしました

▽SecinH3と呼ばれる小分子が、ライソゾームによる有害蛋白質の除去を促進すること報告した論文が、6月17日付のJournal of Neuroscience誌に掲載されました。

▽この結果は、有害蛋白質の蓄積に起因する様々な神経変性疾患の治療戦略として有望なものになるかもしれません

▽研究者らは、膜輸送動態がALSの病態にどのように関与しているかを研究してきました。小胞体とライソゾームの両者がALSの病態に関与することが推定されています。

▽膜代謝過程に関与する、ARFs(ADP-ribosylation factors)の性質が調べられました。ARFsはGTPをGDPに加水分解します。さらにグアニンヌクレオチド交換因子であるサイトヘシンはGDPを除去します。このことによりARFsは速やかに再活性化することができます。

▽哺乳類は少なくとも6種類のARFsと4種類のサイトヘシンを有することが知られています。研究者らは、サイトヘシンを阻害する物質を発見し、この物質をSOD1変異モデル動物に用いることを思い立ちました。

▽研究者らはまず、ラットの脊髄運動神経を変異SOD1遺伝子を有するウイルスベクターと共に培養しました。通常この条件下では、1週間以内に半数の神経細胞が死滅します。しかしSecinH3を投与すると神経細胞は生存しました。また優性阻害のサイトヘシンを導入した場合や、サイトヘシンのRNAを阻害した場合においても、神経保護作用が観察されました。

▽ついで、研究者らは、SOD1変異モデル線虫を用いてサイトヘシンの阻害作用を調べました。サイトヘシンのRNAを阻害した結果、線虫の運動機能は保持されました。

▽研究者らは、サイトヘシンの阻害が、折り畳み異常を起こした変異SOD1蛋白質の除去を促進するのではないかと考えました。変異SOD1蛋白質に対する抗体を用いることにより、SecinH3は、神経細胞において折り畳み異常SOD1蛋白質濃度を減少させることがわかりました。

▽以上の結果を基に、研究者らはSecinH3投与が自食作用を賦活するかどうかを調べました。オードファゴソームの構成要素であるLC3を定量化することにより自食作用の賦活の程度がわかります。SecinH3を投与した細胞ではLC3が増加しており、自食作用が亢進していることが示唆されました

▽さらに残された課題として、各種サイトヘシンやARFsのうちどれが、自食過程において決定的な役割を果たしているのかを明らかにすることがあります。また、サイトヘシンを阻害することにより、どのようなメカニズムで蛋白質除去が促進するのかについても明らかにする必要があります。

▽しかし、これらの課題は、ALSの病態に関与すると考えられている遺伝子が多く、凝集する蛋白質の種類も複数あり、いずれもサイトヘシンの不活性化により除去されうることから、現段階では未解決です。

▽孤発性ALSにおいても、非変異型のSOD1蛋白質の折り畳み異常が報告されていることから、今回の研究結果は、家族性ALSのみならず、孤発性ALSにおいても適応しうることが期待されています。

▽現段階ではSecinH3を治療的に用いることが現実的ではありません。なぜならSecinH3は脂質への親和性に乏しく、細胞内に到達することが困難であるからです。治療的応用のためには、この点を改良する必要があります。サイトヘシンを阻害することがALSに対して治療的効果が期待できることが判明したことから、今後の研究の進展が期待されます。

引用元
http://www.researchals.org/page/news/14801
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