▽細胞内銅イオン代謝の異常がALSの病態として重要と考えられています。研究者らは近年、メタロチオネインがSOD1変異モデルマウスにおける銅イオン代謝異常の是正に有用であることを示しました。
▽今回、研究者らは、内因性メタロチオネイン濃度を上昇させる治療的戦略について報告しました。
▽SOD1変異モデルマウスにおいて、合成グルココルチコイドであるデキサメサゾンを投与することで、内因性メタロチオネインの転写活性化が起こり、病態改善効果が観察されました
▽内因性メタロチオネインの転写活性化は、体重が10%減少した時点から起こりました。神経保護作用は、銅イオン代謝の正常化と関連し、SOD1蛋白質の凝集減少が観察されました。
▽内因性メタロチオネインを阻害したところ、神経保護効果が確認されなかったことから、病態改善効果がデキサメサゾンによるものではなく、メタロチオネインによるものであることがわかりました
▽内因性メタロチオネインの発現増加は、SOD1変異に起因したALSにおいて、有望な治療的戦略となる可能性があります。
(この研究は、日本大学のTokudaらにより報告され、平成27年3月12日付のNeurotherapeutics誌に掲載されました)
引用元
http://link.springer.com/article/10.1007/s13311-015-0346-x
▽今回は生体内でのシステイン残基の意義を示すため、H46R SOD1変異(H46R:SOD1蛋白質の46番目のヒスチジンがアルギニンへ置換した変異体)モデルマウスと、H46RおよびC111R SOD1変異(111番目のシステインがアルギニンに置換した変異)の両者を有するモデルマウスとで、病状経過が比較されました。
▽その結果、C111R変異を有するモデルマウスでは、発症と病状進行との遅延が観察されました。このことはシステイン残基が運動神経毒性の発揮に重要であることを示唆しています
▽さらに、研究者らは、変異SOD1蛋白質におけるシステイン残基の過酸化が、不溶性凝集体の形成に重要であることをみいだしました。
▽以上の結果は、変異SOD1蛋白質の神経毒性発揮に際して、111番目のシステイン残基が重要であり、システイン残基の過酸化を防ぐことにより、治療的効果が期待できる可能性を示唆しています。
(この研究は、国立精神・神経医療研究センターのNaganoらにより報告され、平成27年3月11日付のHuman Molecular Genetics誌に掲載されました)
引用元
http://hmg.oxfordjournals.org/content/early/2015/03/11/hmg.ddv093.abstract