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ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
全世界から最新の治療情報を見つけ出し、ここで紹介します。完治するまで戦い続けましょう!
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PPAR gammaの活性化はTDP-43変異ショウジョウバエALSモデルにおいて神経保護作用を有する
▽アリゾナ大の研究グループは、TDP-43変異ショウジョウバエモデルを用いて、FDAにより承認されている1200種類の薬剤の有効性をスクリーニングしました。

▽その結果、PPARγアゴニストである、pioglitazoneがショウジョウバエモデルにおいて神経保護作用を有することがわかりました。

▽研究者らは、pioglitazoneが、TDP-43依存性の運動障害を、筋肉ではなく、運動神経とグリアのレベルにおいて軽減することを示しました。

▽その他のモデル動物を用いることにより、pioglitazoneはFUS変異モデル動物において運動神経保護作用を有し、SOD1変異モデル動物では、保護作用がみられないことがわかりました

▽しかしながら、TDP-43変異モデル動物と、FUS変異モデル動物において、生存期間の延長効果はみられませんでした。

▽細胞内での代謝物の解析により、TDP-43により障害された運動神経細胞において、pioglitazoneが発現量を回復させることができる代謝物のいくつかが同定されました

▽生存期間の延長にはつながりませんでしたが、TDP-43およびFUS変異モデル動物において、運動障害の軽減効果がみられたことから、今後の治療薬の開発につながることが期待されます。

(この研究はアメリカ  University of ArizonaのJoardarらにより報告され、平成26年11月28日付のHuman Molecular Genetics誌に掲載されました)
引用元
http://hmg.oxfordjournals.org/content/early/2014/11/20/hmg.ddu587.abstract
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Futsch/MAP1B mRNAはTDP-43の翻訳ターゲットであり、ALSモデルショウジョウバエにおいて神経保護作用を有する
▽TDP-43はALSと関連したRNA結合蛋白質です。TDP-43は、スプライシングや輸送を制御したり、特定のmRNAを、ストレス状況下において形成される、ストレス顆粒に貯蔵する役割を有することが知られています

▽TDP-43は、翻訳因子と相互作用をすることは知られていましたが、蛋白質合成に関与する機能についてはわかっておらず、生体内でどのようなmRNAの蛋白質への翻訳をターゲットにしているかはわかっていませんでした。

▽今回、研究者らは、TDP-43がfutch mRNAと複合体を形成し、ショウジョウバエの神経筋接合部におけるfutch遺伝子発現を制御していることを明らかにしました。

▽TDP-43誘発性蛋白質症(TDP-43蛋白質症についてはこちらのリンクをご参照ください)では、モデル動物の神経筋接合部において、futsch mRNA発現量が、運動神経細胞体内と比較して有意に減少しており、一方運動神経細胞体内では、健常モデルと比較して、futsch遺伝子の翻訳が増加していることがわかりました。

▽TDP-43は、神経筋接合部におけるFutsch蛋白質発現量の有意な減少をもたらすことがわかりました。ポリソーム(mRNAを蛋白質に翻訳するリボソームが1本mRNA上で連なったもの)分画法に定量的PCR法を組み合わせた解析により、TDP-43は、futsch mRNAを、翻訳活性化状態のポリソームから、翻訳不活性状態のリボ核蛋白質粒子に変化させる働きを有することがわかりました。このことは、TDP-43は、futsch mRNAを局在化させるだけではなく、futsch mRNAの翻訳活性も制御することを意味しています。

▽さらに研究者らは、futsch蛋白質の過剰発現は、TDP-43蛋白質の凝集を抑制し、微小管とシナプスの安定化作用により、神経筋接合部の異常と、ALS様の運動異常を改善し、神経保護作用を有することを示しました。

▽Futsch蛋白質の、哺乳類における類似体である、MAP1B蛋白質の、ALS患者の脊髄における局在化の様式は、ショウジョウバエALSモデルの運動神経細胞において観察されたものと同様でした。

▽これらの結果は、微小管依存のメカニズムが、TDP-43により引き起こされる運動神経疾患の病態に関与していることを示唆するものと思われます。

(この研究はアメリカ University of ArizonaのCoyneらにより、平成26年11月26日付のJournal of Neuroscience誌に掲載されました)
引用元
http://www.jneurosci.org/content/34/48/15962.abstract
メキシレチン Webinar
・ALSに対するメキシレチンの第2相臨床試験結果の速報はこちらの記事でご紹介しましたが、平成26年11月21日にNEALSのサイトで開催されたWebinarの録画が昨日より視聴できるようになりました。
以下に要約を記載します

▽メキシレチンはNaチャネル遮断薬であり、FDAによりクラスIb抗不整脈薬に分類されます

▽リドカインの類似物質であり、糖尿病性多発神経障害の神経因性疼痛治療薬としても用いられます

▽最近、先天性筋緊張症や筋緊張性ジストロフィーに伴う筋緊張症状に対する有効性が臨床試験で示されています。

▽SOD1変異ALSモデルマウスの運動神経細胞において、持続的なNa電流の亢進が観察されています。また、SOD1変異ALSモデルマウスの皮質運動神経細胞においても、過剰興奮性が観察されています。

▽ヒトにおいては、経頭蓋磁気刺激法を用いて、皮質運動野を刺激し、誘発される運動神経誘発電位を観察したところ、孤発性ALS、家族性ALS両群において、健常対照群よりも有意に誘発電位の振幅が高いことも観察されています。

▽以上のことから、Na電流を遮断し、興奮性を抑制することが期待されるメキシレチンが、ALSに対して治療的効果を有することが期待されました。

▽実際にSOD1変異ALSモデルマウスでは、生存期間の延長が観察されました

▽メキシレチンは、Machado-Joseph病において、筋痙攣頻度を減少させることが示されています

▽第2相臨床試験は12週間の投薬期間で行われました。

▽参加者の平均年齢は58歳、発症からの経過期間は平均19ヶ月、診断からの経過期間は平均8.3ヶ月でした。ALSFRS-Rの平均得点は35点、24時間での筋痙攣頻度は平均1.9回、過去30日間の筋痙攣頻度は平均42.8回でした。

▽リルゾールは全体の69.5%が内服していました

▽臨床試験は、プラセボ投与群20名、メキシレチン300mg投与群20名、メキシレチン900mg投与群19名の3群で比較されました

▽副作用としては、900mg投与群で40%以上が嘔気を認め、25%程度に振戦がみられました

▽副作用のため合計8名が投薬中断となり、うち6名は900mg投与群でした。

▽ALSFRS-RとSVC(静的肺活量)については、12週後にメキシレチン投与群とプラセボ投与群とで有意差がありませんでした。

▽一方で、筋痙攣頻度については、メキシレチン300mg投与群では平均69%減少、900mg投与群では平均84%減少しました。

▽また筋痙攣の頻度が1週間に10回以上の高頻度群に限定して解析すると、メキシレチン300mg投与群では平均78%減少、900mg投与群では93%減少しました。これらの減少度はいずれも統計的に有意な減少でした

▽メキシレチンは、ALSに伴う筋痙攣に対して、特に筋痙攣が高頻度に起こる群において、かなりの改善効果が期待できそうです。

・日本では、メキシレチンは頻脈性不整脈(心室性)ないし糖尿病性神経障害に対して保険適応があります。最大用量は300mgで、不整脈については効果不十分であれば450mgまでの増量が容認されています。

引用元
http://vimeo.com/112947127
強制笑い、強制泣きなどの仮性球情動に対するDextromethorphan/Quinidine
・多発性硬化症やALSで時にみられることのある、強制笑いや強制泣きなどの、仮性球情動に対する治療薬としてFDAから承認されているNuedexta(dextromethorphan/quinidine カプセル)のレビューです

▽Nuedextaは、dextromethorphanの代謝を抑制するためにquinidineを配合した薬剤です。quinidineを用いることで、高用量のdextromethorphanを用いなくても、高い血中濃度を維持することができます

▽おかしくもないのに笑ってしまったり(強制笑い)、悲しくもないのに泣いてしまう(強制泣き)などの症状は、ALSや多発性硬化症、脳梗塞、パーキンソン病などの疾患でしばしばみられる病態です。

▽ALSおよび多発性硬化症を対象にした、12週間のプラセボ対照無作為割付比較試験により、Dextromethorphan/quinidineの20mg/10mgないし30mg/10mg配合剤を1日2回投与することで、仮球球情動が、投薬群でプラセボ群より有意に改善することが示されています。

▽臨床試験では安全性も高いことが示されました。長期間の臨床試験はありませんが、現段階でNuedextaは仮性球情動に対する有用な選択肢になります

(この総説は、Yangらにより2014年11月25日付のDrugs誌に公表されました)
引用元
http://link.springer.com/article/10.1007/s40265-014-0328-z

・Nuedextaは2010年10月に仮性球情動治療薬としてFDAに承認されています
tocopherol-omega alkanol chain誘導体によるNotch3-Hes1経路の制御と筋萎縮防御作用
▽ALSや癌性悪液質などにおける筋萎縮過程には、活性酸素が関与していると考えられています。

▽Notch経路は、物理的損傷の際の筋組織の再生と、発達とに関与しています。

▽今回、研究者らは癌性悪液質やALSにおける、活性酸素に関連した筋萎縮において、Notch経路が関与している可能性について調べました。

▽さらに、研究者らは、抗酸化作用関連物質であるtocopherol化合物複合体と、細胞保護作用に関与しているomega-alkanol chainとが、筋萎縮を防ぎ、Notch経路に影響を及ぼすかどうかについても調べました。

▽研究者らは、細胞傷害性物質から筋芽細胞を保護する作用を有する、AGT251とよばれる、tocopherol-omega alkanol chain誘導体に注目しました。

▽AGT251は、細胞傷害性ストレスによるNotch経路の活性化に拮抗し、Notch1とNotch3の発現を減少させ、抗酸化作用を有することが明らかになりました

▽機能的には、このような制御機構は、Notch蛋白質の標的遺伝子である、Hes1遺伝子と、筋萎縮と再生に関連したMuRF1遺伝子の転写を抑制することと関連しています。

▽重要なことに、研究者らは、doxorubicin誘発性の悪液質動物モデルと、SOD1変異ALSモデルマウスにおいて、Notch3Hes1の転写活性化がおきていることをみいだしました。

▽両動物モデルにおいて、Notch3遺伝子とHes1遺伝子の転写活性化は、部分的にAGT251により抑制され、筋肉量の改善と、筋萎縮マーカーの減少と、生存期間の延長につながりました

▽トコフェロール誘導体は、各種筋萎縮動物モデルにおいて、おそらくはNotch経路の制御を通じて、筋萎縮抑制効果を有すると考えられます。

(この研究は、フランス Strasbourg Universityのvon Grabowieckiらにより報告され、平成27年1月号のThe Journal of pharmacology and experimental therapeutics誌に掲載予定です)
引用元
http://jpet.aspetjournals.org/content/352/1/23.abstract
ウサギに対する自己脂肪組織由来間葉系間質細胞の髄腔内投与の安全性確認:ヒト第1相臨床試験に向けて
・Mayoクリニックの研究グループからの報告です

▽自己脂肪組織由来間葉系間質細胞は、髄液内に直接投与が可能で、移植細胞の長期生存が期待できます。

▽今回研究者らは、ウサギを用いて自己脂肪組織由来間葉系間質細胞の髄腔内移植を行い、安全性評価を行いました

▽脂肪組織由来の間葉系間質細胞がウサギの大後頭孔より髄腔内に注入され、4-12週間、安全性が評価されました

▽移植された自己脂肪組織由来間葉系間質細胞に起因した副作用は明らかではありませんでした。組織学的検索によっても発がん性などの異常はみられませんでした。

▽髄液中のIL-6などの炎症促進サイトカインも明らかな増加はありませんでした。

▽以上の結果は、ウサギモデルにおける、自己脂肪組織由来間葉系間質細胞の安全性を示唆するものであり、この結果をもって、ALSおよび多系統萎縮症に対する第1相臨床試験の実施に向けて、FDAへの新薬臨床試験開始届としたいとのことです。

・新たな治療選択肢の開発につながることが期待されます
(この研究はアメリカ Mayo ClinicのChenらによって報告され、平成26年11月21日付のTransfusion誌に掲載されました)
引用元
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/trf.12938/abstract
ALSにおけるコレステロール、オキシステロール、中性脂肪とCoenzyme Q
・コレステロールの合成過程に関与する酵素などと、生命予後との関連性などを検討した論文ですが、これらの指標を生命予後の予測因子として用いることは限界がありそうだとの報告です。
・小規模の観察研究ですので、はっきりとした結論が出せない報告になりますが、このような研究の積み重ねでより正しい知見につながるものと思われます。

▽これまでALS関連遺伝子として現在までに27種類の遺伝子が同定されていますが、病態発現機序は不明です。

▽ALSでは、代謝亢進、脂質異常症などの代謝機能の変化が報告されています。

▽ALSにおいては、高脂血症が予後良好因子であるとする報告と、そうではないとする報告が混在しており、結論はでていません。

▽ALSモデル動物においては、脂質分の多い食餌を与えることで、生存期間の延長が報告されています。一方で、カロリー制限は症状悪化因子として報告されています

▽いくつかの報告は、コレステロール値を低下させるスタチン投薬は、ALS患者の機能的悪化を促進する可能性があることを報告していますが、最近行われたメタ解析では、発症年齢はBMIなどの交絡因子を調整すると、スタチンによる機能悪化の影響は有意ではないとの結果が報告されています。

▽以上より、スタチン使用がALSに与える影響については、結論がでていません。

▽スタチンがALSの病態に影響を与えるとすれば、スタチンはコレステロール合成過程を抑制することで機能発現することから、ALSの病態とコレステロール合成過程との間に何らかの関連性がある可能性があります。

▽コレステロール合成は、コレステロールの胆汁酸中への排泄と、コレステロールの胆汁酸への変換効率との間で調整されています。

▽スタチンとALSの病態との関連性があるとすれば、coenzyme Q10を介して、病態に影響を与えている可能性があります。coenzyme Q10は強力な抗酸化物質であり、ミトコンドリア機能に関与しており、スタチン投与でcoenzyme Q10が減少することが知られています。

▽孤発性ALSの原因遺伝子を探索する過程において、最近、CYP27A1がALS原因遺伝子候補として抽出されました。

▽CYP27A1はコレステロールを主要な基質とする酵素であり、27-hydroxycholesterolを生成し、この物質は神経変性をもたらす可能性が報告されています。

▽今回、研究者らは、コレステロール代謝がALS患者において、異常をきたしているかどうか、予後に影響を与えているかどうかを症例対照研究により調べました。

▽52名のALS患者と、比較対照群としては、患者群と年齢や性別をマッチさせた患者の配偶者など40名が選択されました。

▽52名中、11名はC9ORF72遺伝子の繰り返し配列の過剰な伸長を有し、7名はSOD1遺伝子変異を有し、1名はVAPB遺伝子変異を、2名はFUS遺伝子変異を有していました

▽脂質代謝は男女で異なるため、性別ごとにわけて検討されました

▽女性においては、対照群との比較により、調整前のデータでは、どの要因も対照群と有意差がありませんでしたが、年齢で調節後は、LDL分画中の中性脂肪、HDL分画中の中性脂肪、lathosterol、LDLコレステロール、24S-hydroxtcholesterolが有意にALS群で上昇がみられました。

▽男性においては、VLDLコレステロール、中性脂肪が対照群より有意に低いことがわかりました。BMIで調整後もこれらの差は有意でした。さらに27-hydroxycholesterolも有意に男性ALS患者では対照群より低値でした。

▽生存期間との関連性の検討では、女性においては、HDL分画中の中性脂肪量と生存期間との相関が有意でしたが、年齢で調整後は有意ではなくなりました。、lathosterol値の高さと予後との有意な相関がみられました。

▽男性においては、LDLコレステロール、coenzyme Qの高さと予後との有意な相関がみられましたが、1名の長期生存者のデータの影響が大きく、この患者を除外すると有意ではなくなりました。

▽配偶者のデータを用いて食事内容での調整を行い、解析手法を変更すると、VLDLコレステロール、LDLコレステロール、総コレステロール、coenzyme Qと生存期間との相関が有意に検出されました。

▽観察研究ですので、交絡因子をどのように調整するかで結果が変化し、確定的な結果を引き出すことは困難です。

▽研究者らは、コレステロール値よりも、コレステロール合成過程に関与する要因が、生存期間に影響をあたえるのではないかと推測しましたが、コレステロール合成に関係したマーカーであるlathosterolと予後との関連性を見出すことはできませんでした。

▽同様に、コレステロールの胆汁中への排泄のマーカーである、7α-hydroxy-4-cholesten-3-oneも生存期間との有意な相関はみられませんでした。

▽27-hydroxycholesterolが病態関連因子ではないかとの仮説もあり、検討しましたが、27-hydroxycholesterol量は男性では対照群よりむしろ低く、女性では有意差がなく、仮説を支持する結果は得られませんでした。

▽今回の研究では、脂質代謝に関与する要因とALSの生命予後との間に明らかな関連性を見出すことはできませんでした。

▽コレステロールなどの脂質系マーカーは同一被検者内でも日によって変動が大きく、これらを予後の指標として用いることには限界があるようです。

(この研究は、スウェーデン  Umeå UniversityのWuolikainenらにより報告され、平成26年11月21日付のPlos One誌に掲載されました)

引用元
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0113619
大脳皮質運動野神経細胞の変異SOD1蛋白質の抑制によりモデルマウスの発症遅延と生存期間を延長
▽SOD1変異ALSモデルマウスにおける病態の最初の解剖学的変化は、神経筋接合部と、下位運動神経に出現し、これらの部位のSOD1蛋白質を選択的に減少させることが治療的に働くことがわかっています

▽そのため、これまでの研究の多くが、脊髄運動神経細胞と神経筋接合部における病理的側面に集中していました。

▽今回、研究グループは、SOD1変異ALSモデルマウスにおいて、脊髄前根運動神経軸索の変性と、神経筋接合部の脱神経に先立って、症状発現前に脊髄運動神経細胞の喪失が起きていることをみいだしました

▽大脳皮質運動神経細胞の細胞死は、病態の最終段階まで明らかにはなりませんが、研究者らは、大脳皮質運動神経細胞の病態進展に果たす役割について調べました。

▽驚いたことに、症状発現前に、アデノ随伴ウイルスベクターでSOD1遺伝子を導入する方法により、変異SOD1遺伝子を大脳皮質の運動野のみでノックダウンしたSOD1変異モデルラットにおいては、病態発症の有意な遅延と、生存期間の延長、脊髄運動神経細胞の生存期間の延長、神経筋接合部機能の保持が確認されました。

▽これらの結果は、ALSモデル動物においては、上位運動神経細胞の、早期からの機能異常と、病態進展への重要な関与を示唆しており、ヒトにおいても同様の病態が起きている可能性を示唆するものです。

▽上位運動神経細胞を対象とした、新たな治療戦略の拡大につながりうる報告といえます。

(この研究はアメリカ、Board of Governors Regenerative Medicine InstituteのThomsenらにより報告され、平成26年11月19日付のJournal of Neuroscience誌に掲載されました)
引用元
http://www.jneurosci.org/content/34/47/15587.short
ALS治療の新たなアプローチ:古い薬剤の再評価か
▽これまで初期の研究では有効性が期待された多くの薬剤が、結果的には有効性が確認できず、臨床応用にいたっていません。

▽11月20日付のAnnals of Clinical and Translational Neurologyに掲載された論文によると、研究者らは、ALSにおいて、脳内の毒性物質を排泄するプロセスが徐々に活性化し、同時に薬剤の排泄も促進されることを示しました。

▽このメカニズムのため、治療目的で投与された薬剤が、脳内で十分な治療効果を発揮できないのではないかと述べています。

▽ALSモデルマウスにおいて、この排泄メカニズムをブロックしたところ、治療効果がより顕著となり、病態進行が抑制されたとのことです

▽このメカニズムは、本来は脳を保護するためのものですが、治療薬も有害物質と認識され、排泄されてしまうようだということです。

▽このような排泄メカニズムを介した、薬効の喪失は新しい発見ではないと研究者は述べています。

▽製薬会社は、このような薬剤排泄の相互作用を常にチェックしていますが、通常は健常なマウスで確認されるということです。研究者らは、ALS罹患モデルマウスでは、病態進展とともに、排泄作用もより活性化することをみいだしました

▽ALSの脳と脊髄は、病態進展を、有害物質を排泄するポンプをより活性化することで補償しようとしているようです。

▽研究者らは、リルゾールをALSモデルマウスに投与し、このことを検証しました。リルゾールは初期の研究では、病態進展とともに有効性が減弱することが示されています。

▽リルゾールは、P糖蛋白質やBCRPなどの排泄機構と相互作用をすることがわかっています。そこで、この2つの排泄ポンプを実験的化合物のelacridarにより選択的にブロックしました。

▽その結果、排泄ポンプをブロックし、リルゾールを投与したモデルマウスでは、リルゾール単独投与したマウスと比較して生存期間が延長し、筋力などのその他の指標も改善したとのことです。

▽ALSモデルマウスを用いる大半の実験(ALS症状出現前から投薬を開始する)と異なり、研究者らは、実際の患者と同様に、症状出現後に投薬を開始しました。

▽その結果、リルゾール単独では、乏しい効果しかみられなかったのに比較して、elacridarと併用すると顕著な改善効果がみられたとのことです

▽研究者らは、今後臨床試験を行い、すでに承認されている薬剤や、これまで効果が確認されなかった薬剤の有効性を、再評価したいとしています。

▽今回の報告は、これまで多くの薬剤の臨床試験が失敗してきた理由を説明しうるかもしれません。これら薬剤の選択的な排泄ポンプ阻害薬との併用による再評価の可能性を開くものといえます。

引用元
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141120081750.htm


オーダーメード治療に向けて
・ALSの推定される病態機序に対する治療薬候補をまとめた表が、この論文に掲載されていました。以下に改変した表を示します。
病態毎の治療薬候補

・表中の物質については、臨床試験で有効性が確認できなかったものも含まれます。しかし、有効性が期待できるサブグループがあるのではないかと、著者らは述べています。
・著者らは将来的には、臨床試験を行う場合にも、遺伝子レベルで患者を分類し、有効性を検証すべきではないかと述べています。
・conclusionに記載されている”the future is bright”の一文が心強いですね

(この総説は、アメリカ Northwestern UniversityのOzdinlerらによって、2014年10月8日付のACS medicinal chemistry letters 誌に掲載されました)

引用元
http://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/ml500404b
非人工換気中のALSにおける呼吸器感染症の際の非侵襲的人工換気導入の予測因子
・スペインより観察研究の結果が報告されています
・急性下気道感染症の際に、もともとは医療的ケアを必要とせず、人工換気も受けていないALSの方が、一時的に非侵襲的人工換気が必要となる場合があります。
・この報告では、急性下気道感染症の際に、どのようなリスク因子が非侵襲的人工換気が必要となることを予測するかを調べたものです

▽この報告の対象となったのは、在宅生活中で、人工換気を必要としないALS患者で、急性下気道感染症のため入院となった方です

▽エントリーされた患者のプロフィールは、平均年齢60.7歳、%FVCの平均56.2%、咳嗽時の最大呼気流量平均3.4L/秒、ALSFRS-Rの平均得点 22.8点などでした。

▽米国胸部医学会では、非侵襲的人工換気の導入に際して、以下のいずれか1つが存在する場合の導入開始を推奨しています。
1.昼間覚醒時低換気(PaCO2が 45 mmHg以上)
2.夜間睡眠時低換気(室内気吸入下の睡眠でSpO2 < 90%が5 分間以上継続)
3.%努力性肺活量(%FVC)が50%以下、
4.最大吸気圧(MIP)が60cmH2O以下
(管理人注:ALSについては、この基準とは異なり、もっと早期から導入すべきとの報告や、低換気や高CO2血症、FVCの急速な低下などの徴候があればいつでも人工換気を導入すべきとのガイドラインもあります。詳細は日本神経学会のガイドラインをご参照ください:http://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/als2013_07.pdf

▽入院患者に対して咳嗽時の最大呼気流量が4.25L/秒以下のケースについては、器械的排痰補助(Mechanically assisted coughing:MAC)が導入されました。

▽入院中、非侵襲的人工換気を導入する基準としては、以下のうち、1つ以上が認められた場合とされました
1.重度の呼吸困難
2.傾眠
3.呼吸補助筋の使用
4.PaCO2 45mmHg以上
5.PaO2 60mmHg以下
6.pH 7.35以下

▽2004年から2012年までの観察期間中、合計32名の非人工換気中のALS患者が急性下気道感染症により入院となりました。

▽7名(21.2%)は入院前から器械的排痰補助を使用していました

▽入院の理由となった疾患は、72.7%が急性気管支炎、24.2%が市中肺炎、3%が誤嚥性肺炎でした

▽急性期治療期間中に、32名中26名(81.25%)が器械的排痰補助を必要としました

▽また、32名中、15名(45.5%)が治療期間中、非侵襲的人工換気を必要としました。

▽非侵襲的人工換気を必要とした15名中、11名(73.3%)は非侵襲的換気のままで人工換気を離脱することができました。2名は気管内挿管による人工換気を必要とし、残り2名は人工換気ではなく、症状緩和のための薬物治療を選択しました。

▽平均入院期間については、非侵襲的人工換気を必要とした群で7.58日、必要としなかった群で8.36日と有意差はありませんでした

▽回帰分析の結果、非侵襲的人工換気が必要となるリスク因子として、%努力性肺活量、咳嗽時の最大呼気流量が統計的に有意な因子として抽出されました。

▽入院前の%努力性肺活量が55%以下(感度0.72、特異度0.78)、咳嗽時の最大呼気流量が2.9L/秒(感度0.77、特異度0.71)をカットオフ値とすると、急性下気道感染症の際、非侵襲的人工換気の導入リスクを最も良く予測できることがわかりました

▽在宅療養中、%FVCが55%以下の場合、在宅生活では人工換気を必要としなくても、急性呼吸器感染症(急性呼吸器感染症中は、%FVCが7%程度減少するとの報告があります)により、一時的にでも人工換気が必要となるリスクがあるため注意が必要です。

▽筆者らは、在宅療養中のALS患者で%FVCが55%以下の場合、症状がなくても、いざというときのために、非侵襲的陽圧換気に慣れておくことが望ましい可能性があると述べています

▽小規模の観察研究であり、正しい結論を出すためには、さらに大規模な研究が必要です。

(この研究は、スペイン Institute of Health ResearchのSanchoらにより報告され、2014年11月18日付のRespiratory Care誌に掲載されました)
引用元
http://rc.rcjournal.com/content/early/2014/11/18/respcare.03553.abstract
訂正記事:田辺三菱製薬がラジカットのALSに対する適応追加の申請
当ブログにて11月15日に掲載した「田辺三菱製薬がラジカットのALSに対する適応追加の申請」の記事内に誤りを指摘いただきました。

【誤】▽投薬期間の24週間でのALSFRS-R(ALSの機能尺度)は、エダラボン群では平均-6.35点でしたが、プラセボ群では-5.70点でした。
【正】▽投薬期間の24週間でのALSFRS-R(ALSの機能尺度)の変化量は、エダラボン群では平均-5.70点でしたが、プラセボ群では-6.35点でした。

【誤】結果は残念ながら、統計的有意差をもって、エダラボンが有効であったとはいえなかったということで、果たして実際に承認されるかどうか、わかりません。
【正】論文公表後、さらに追加試験が行われた結果、良好な結果が得られたため、今回の承認申請に至ったとのことです

・エダラボンの臨床試験は、掲載した論文の発表以降も継続されており、追加試験にて良好な結果が得られたため、今回
の申請に至ったとのことです。全体の平均値で有意差がなくても、個別にみると、著効するサブグループがあるかもしれません。
ラジカットのALSへの保険適応承認が期待されます。
元記事についても当該箇所を訂正しお詫び申し上げます。
教えて下さったかむかむさん、ありがとうございました。
東京農工大、ALS発症の一端解明 遺伝子に異常
かなくん さんよりご提供いただいた話題です。
平成26年11月17日付の日本経済新聞電子版に東京農工大 高橋研究室の研究成果が掲載されていました。
元記事
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG2500G_X11C14A1TJM000/

ALSの病態仮説としてミトコンドリアの機能障害に着目した研究です。
日本の研究グループの成果はうれしいものです。
今後の研究の進展が期待されます。
かなくん さんありがとうございました。
米SCI社から幹細胞関連分野の資産を買収-タカラバイオ
麦酒王さんからご提供いただいた話題です。
元記事
http://www.qlifepro.com/news/20141117/takara-bio-inc-acquires-assets-of-stem-cell-related-areas-from-sci-inc.html

米国SCI(StemCells, Inc.) 社から幹細胞関連研究用製品の資産買収契約が締結され、日本のタカラバイオ株式会社が2015年1月から再生医療ビジネスを拡大するとのことです。
再生医療ビジネス分野では、SCI社はNeuralstem社、Brainstorm社と比肩するとのことで、日本における再生医療の早期進展が期待されます。

麦酒王さん、ありがとうございます。
ALSモデルマウスにおいてWithaferinによる早期治療は折り畳み異常SOD1蛋白質を減少し、生存期間を延長する
Withaferinは血管新生抑制作用を有し、NF-κBなどの炎症促進蛋白を抑制する効果を有しますが、今回SOD1モデルマウスにおいて治療的効果がみられたとの報告です

▽Withaferin A(WA)はNF-κBを抑制しますが、TDP-43変異ALSモデルマウスにおいて、病態進行抑制効果を有することが示されています

▽今回研究グループはALS発症に関連したSOD1蛋白質の2つの変異型であるSOD1G93A変異とSOD1G37R変異モデルマウスにおいて、WAの効果を検証しました

▽SOD1G93A変異モデルマウスに対しては生後40日目から、SOD1G37R変異モデルマウスに対しては生後9ヶ月目から、4mg/kgのWAを腹腔内投与しました。

▽SOD1G93A変異マウスにおいては、神経炎症反応の減弱、折り畳み異常SOD1蛋白質の脊髄での減少、運動神経細胞脱落の減少が観察され、結果的に生存期間が延長しました。

▽WAによる治療は、熱ショック蛋白質25の発現を誘導しました。このことは脊髄中の折り畳み異常SOD1G93A蛋白質の減少と関連し、蛍光プローブを用いたリアルタイムイメージング法により、神経損傷反応の減少が観察されました。

▽以上の結果はWAがALSに対する新たな治療法開発の候補となることを示唆しています

(この結果は、カナダ Laval UniversityのPatelらによって報告され、2014年11月18日付のNeurotherapeutics誌に掲載されました)
http://link.springer.com/article/10.1007/s13311-014-0311-0
トランスグルタミナーゼ 2(TG2)と神経炎症反応
▽神経組織の炎症反応は、様々な慢性神経変性疾患において中心的な役割を果たしており、特定の蛋白質の病的な凝集により特徴付けられます

▽このような蛋白質のうちのいくつかは、トランスグルタミナーゼの基質であることが示されています。トランスグルタミナーゼは、カルシウム依存性酵素で、蛋白質の合成反応に関わっています

▽近年、トランスグルタミナーゼ 2(TG2)が炎症反応の一部に関与していることを示唆する研究結果が報告されています。

▽中枢神経系では、主としてアストロサイト(星状膠細胞)とミクログリアが炎症反応に関与する細胞になります

▽炎症反応刺激に反応して、TG2蛋白質量と酵素活性が、アストロサイト、ミクログリア、単球内において増加します。

▽炎症反応の主要な調節因子と考えられている、転写因子のNF-κBが、炎症性サイトカインや、酸化ストレス、カルシウム流入などの様々な刺激により活性化します。

▽このような状況下においては、TG2の過剰発現が、持続的なNF-κBの活性化をもたらします。このようなTG2/NF-κBの活性化経路が、ALS、多発性硬化症、パーキンソン病など様々な神経変性疾患に関与していることが報告されています。

▽TG2とNF-κBは細胞内で同時に局在化していることが示されており、詳細な役割はまだわかっていませんが、神経炎症において重要な役割を果たしていると考えられています。

(この総説はイタリア、University of MessinaのIentileらにより、2014年11月15日のAmino Acids誌に掲載予定です)
元記事
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00726-014-1864-2

・トランスグルタミナーゼ 2が変異SOD1モデルマウスにおける神経炎症反応に関与していることを示す論文が滋賀医科大学のグループにより今年2月に報告されました

------トランスグルタミナーゼ 2はSOD1変異ALSモデルマウスにおいて、折り畳み異常SOD1蛋白質との相互作用により神経炎症反応を促進する-----

▽家族性ALSにおいては変異SOD1蛋白質の異常集積が、発症機序であると考えられていますが、凝集機序は不明でした。

▽研究グループはTG2と変異SOD1蛋白質との相互作用を調べました。

▽細胞内へのTG2注入により、TG2は主として変異SOD1蛋白質と相互作用を行い、変異SOD1蛋白質の凝集を促進することがわかりました。精製TG2蛋白質は遺伝子組換え変異SOD1蛋白質およびアポ型(銅イオンを含まない)の非変異SOD1蛋白質をカルシウム依存性に凝集させました。このことは折り畳み異常SOD1蛋白質がTG2の基質であることを示唆しています。

▽さらに、細胞外のTG2は、細胞非自律的(別の細胞からの影響が関与する状況)に神経炎症反応に影響を与えることがわかりました。すなわち、TG2により凝集した変異SOD1蛋白質は、TNF-α、IL-1β、NOなどの産生をミクログリアにおいて増加させ、神経炎症反応を引き起こします。

▽TG2は、SOD1変異モデルマウスの脊髄や神経結紮マウスの舌下神経核などにおいて過剰に発現していることが観察されました。

▽さらに、脊髄のTG2をシスタミンにより抑制したところ、病態進行の遅延と、SOD1凝集の減少、ミクログリア活性化の減少が観察されました。

▽これらの結果は、SOD1を凝集を介した神経炎症反応および、細胞内の折り畳み異常SOD1蛋白質の凝集において、TG2が役割を果たしていることを示唆するものです。

(この結果は、滋賀医科大学のOonoらにより報告され、2014年2月号のJournal of Neurochemistry誌に掲載されました)
引用元
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jnc.12441/abstract
C9ORF72遺伝子変異FTD/ALSの病態にジペプチド反復蛋白質が関与
慶応大学のグループからの報告です。

C9ORF72遺伝子の非翻訳領域にある6塩基配列(GGGGCC)の反復数の増加は、前頭側頭型認知症を伴うALSの主要な病因として知られています

▽近年、この反復配列から開始コドンの非存在下において開始する非定型的なリピート関連翻訳が行われ、そこからジペプチドリピート蛋白質である、ポリGA、ポリGPなどの蛋白質が産生され、封入体を形成することがわかりました。

▽しかし、これらジペプチドリピート蛋白質の病的意義についてはわかっていませんでした。

▽そこで、研究グループは6塩基反復配列を有さない、100リピート分のジペプチドリピート蛋白質をコードする人工核酸を合成し、ここから産生される蛋白質の影響を、培養細胞と実験動物中の皮質神経細胞において調べました。

▽その結果、ポリGA蛋白質がユビキチン/p62陽性の凝集封入体を、神経細胞内において形成することがわかりました。一方、ポリGR、ポリPR蛋白質は、RNA粒子(RNA granule)と共にユビキチン/p62陰性の細胞質内封入体を形成することがわかりました。

▽細胞毒性について評価したところ、過剰発現したポリGA、ポリGP、ポリGR蛋白質が、ユビキチン-プロテアソームシステム(不要蛋白質に活性化したユビキチンが結合し、プロテアソームにより分解されるまでのシステム)の基質(TDP-43を含む)を増加させ、プロテアソーム阻害薬への感受性亢進をもたらしていることが判明しました。

▽ポリGA、ポリGP,ポリGRなどのジペプチドリピート蛋白質は、おそらくユビキチンープロテアソームシステムの機能不全を介して、細胞傷害性に働くことがわかりました。このようなジペプチドリピート蛋白質が有害性を獲得することが、c9ORF72変異FTD/ALSの病態に寄与しており、ジペプチドリピート蛋白質を治療ターゲットとした新たな治療法の開発が期待されます。

(この結果は、慶応大学のYamakawaらによって報告され、2014年11月14日付のHuman Molecular Genetics誌に掲載予定です)
引用元
http://hmg.oxfordjournals.org/content/early/2014/11/14/hmg.ddu576.abstract

Tirasemtivの第2b相臨床試験の続報
既にこの記事にて既報の通り、Cytokinetics社の第2b相臨床試験が終了しています。

先日Cytokinetics社のPress Releaseにて静的肺活量(SVC)についての詳細なデータが公表されました。

▽静的肺活量(SVC:slow vital capacity)は呼吸に関与する骨格筋の機能の尺度となります。SVCはALSの病態進行の重要な指標の1つで、生命予後の指標ともなりうるものです。

▽%SVCは年齢、身長、性別などから予測される予測肺活量の何%かを表す指標です

▽第2b相臨床試験では12週間、プラセボないしTirasemtivが投与され、SVCの経過が比較されました

▽プラセボ群にエントリーされた210名のベースラインでの%SVCの平均は89.7%でした。一方Tirasemtiv投与群にエントリーされた178名のベースラインでの%SVCの平均は85.7%でした

▽12週後の%SVCは、プラセボ群の平均はベースラインと比較して8.66%の減少、Tirasemtiv投与群では3.12%の減少で、プラセボ群と比較して、統計的に有意に、Tirasemtiv投与群では、%SVCの減少がゆるやかであることがわかりました

▽2015年にはTirasemtivの第3相臨床試験が予定されており、ALS治療薬としてFDAの新薬承認を得たいとしています

元記事
http://www.cytokinetics.com/press_releases/release/pr_1413577867
SIRT蛋白質に神経細胞保護効果
名古屋大学の山中先生の研究グループの報告が記事になっていました
以下のリンクからです。

http://www.natureasia.com/ja-jp/jobs/tokushu/detail/340

国内の様々な研究グループが精力的にALSの基礎から臨床まで幅広い研究を行っています。
ALSの病態解明が日本の研究グループによって行われることを期待します
難病新法へのパブリックコメント
まっしゃーさんよりお寄せいただいた情報です。

・平成26年5月30日に「難病の患者に対する医療費等に関する法律」が公布され、平成 27年1月1日から新しい医療費助成制度が始まります

・この法律の施行にあたり、法律施行令を定める必要があるということで、厚労省より平成26年8月に施行令案についてのパブリックコメント募集がありました。

・まっしゃーさんが意見を提出され、それに対する国の返答が以下のpdfの26番目にあります
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495140142&Mode=2
(「意見募集結果」のPDFを開いて、26番目の項目)

・アメリカのように、民間団体から数億円規模の研究助成を受けることができる環境ではなく、国からの補助金が、大学などでの研究予算のほとんどを占める日本では、様々な手段で積極的に国にアピールを行い、行政を動かす活動も重要と思われます。

 まっしゃーさん、情報提供ありがとうございました。
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