■硫化水素が神経伝達を増強
脳内の情報伝達は、神経細胞同士のシナプスと呼ばれる結合での信号のやりとりにより行われ、この信号の伝達が上手くいかないとパーキンソン病やアルツハイマー病、統合失調症、うつ病などの神経・精神疾患を起こすと考えられます。
情報は神経細胞内を電気的信号で伝搬しますが、次の神経細胞との間にはシナプス間隙と呼ばれるすき間があります。そのすき間を電気的信号は越えることができません。そこで、情報が運ばれるとシナプスでは神経伝達物質が放出され、電気信号を化学物質の信号に変えて次の神経細胞へ情報を伝えていきます。神経伝達物質にはグルタミン酸、ATP、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどがあり、現在までに数十種類が発見されています。
また、神経伝達物質はシナプスから放出されるだけでなく、シナプスを取り囲むグリア細胞の一つであるアストロサイト(脳神経細胞の一つ)からも放出されることが明らかになっています。
木村らの研究グループはこれまでに、脳内で生成された硫化水素(H2S)がアストロサイトに働きかけることでシナプス間の神経伝達が増強されることを明らかにしてきました。しかしながら、脳内にはシナプス伝達を増強するに十分なH2Sが存在せず、さらにはH2Sに反応するアストロサイトのイオンチャネルも不明でした。
詳しくは、独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release130311.html