詳しくは、ライフサイエンスで!
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6723#more-6723

正常なハエ(左)とhnRNPA2変異を持つハエ(右)。
量子物理学の難しい記事などを読むと頭が痛くなる、と文句を言う人は多いかもしれない。
そうした表現は象徴的なものだろうが、しかし、もしかしたら難しい内容は、実際に脳の細胞へ物理的な損傷を与えている可能性があるという研究結果が発表された。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームが「Nature Neuroscience」に発表した論文によると、研究チームは人間の早発性アルツハイマー型認知症に関連づけられるいくつかの突然変異を遺伝子操作によって模倣したマウスを使って研究していた。実験の一環として、チームはマウスの脳にDNA損傷の兆候を探した。その結果、概してマウスの脳が活動状態にあるとき、具体的にはマウスに新しい環境を探索させた後に、損傷の兆候が増加することがわかった。
この結果だけでも興味深いが、本当に驚くのはアルツハイマーを発症しやすくせず、脳障害リスクが上昇した状態になかった対照群のマウスの調査結果だ。この対照群にも、同環境でのDNA損傷の兆候がみられたのだ(ただし、アルツハイマーを発症しやすくしたマウスに比べてレベルはやや低かった)。
このとき生じたDNA損傷は、「二重鎖切断(double-strand break)」という種類のもので、DNAの二重らせんが両方とも切れ、1個のDNA分子が2つに分かれてしまう損傷だ。
研究チームはDNAそのものをマウスの脳から分離してみた。その結果、刺激の多い環境におかれたマウスには、DNA損傷がより多くみられることが確認された。そのようなマウスでは、40%もの細胞に損傷の兆候を示すDNAが見つかった。
こうした損傷は神経活動のみによっても起きるのかを調べるため、研究チームは麻酔をかけたマウスの目に光を照射した。 これでも損傷が生じた。脳そのものの神経活動を活性化させても結果は同様だった。また、さまざまな抑制因子を使って、原因をグルタミン酸という1つの神経伝達分子にまで絞り込むことに成功した。
神経活動は、そもそも多くのエネルギーを消費するものだ。また高い代謝活性は、DNAに損傷を与えうる酸素ラジカルを生成する傾向にある。ところが、抗酸化物質を用いてもDNAの損傷は防げず、この結果は原因をどこか別のところに求める必要があることを示しているとみられる。研究チームは、神経発火に続く遺伝子活性の変化が原因である可能性を示唆している。
この現象は長期的な損傷を与えるのだろうか。研究チームが明らかにした限りでは、この損傷は1日以内に修復されるため、問題は一時的なものに終わるはずだと考えられている。
また他の複数の研究から、知的に活発であり続けると、老化に伴って生じる一般的な種類の認知機能低下を防ぐのに効果があることが明らかになっている。それでも今回の研究は、病態、この研究の場合は アルツハイマーの病態に関連づけられる損傷が増えると、修復システムによる修復が追いつかなくなり、病気の進行に寄与する可能性を示唆している。
多発性硬化症の患者の方には良いニュースですね。でもALS経口治療薬はまだかな~!
ミクログリアは、病気などで障害を受けた脳組織を修復する免疫細胞と考えられていますが、発達段階の脳においての役割は不明のままでした。
本研究グループは、今回、脳の発達期におけるミクログリアの機能を解明するために、阻害薬や遺伝子改変マウスを用いてミクログリアの機能を抑制し、脳内を観察しました。その結果、運動機能をつかさどる神経細胞に選択的に細胞死が誘導されることを発見しました。これにより、ミクログリアが特定の神経細胞を保護する機能を持っていることが初めて示されました。また、ミクログリアが放出するインスリンに似たIGF1注2)という成長因子がその保護機能に関与していることも明らかになりました。
本研究から、ほ乳類における発達期の神経回路・細胞が維持される新たなメカニズムが明らかになりました。このミクログリアによる神経回路の保護作用を誘導することで、運動機能が障害を受ける筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの脳神経疾患に対する新たな治療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2013年3月24日(英国時間)に英国科学誌「Nature Neuroscience」のオンライン速報版で公開されます。
大阪大学プレスリリース
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20130325/index.html
http://www.miguchi.net/archives/4670
○免疫を抑制するT細胞が作られる共通のメカニズムは不明であった。
○STIM分子を介したカルシウム流入が抑制機能を持つT細胞の成熟に必須。
○新たな自己免疫疾患のマーカーや治療への応用に期待。
JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京医科歯科大学 歯と骨のグローバルCOEプログラムの大洞 将嗣 特任准教授らは、
免疫細胞の中でも、過剰な免疫反応を抑えるさまざまなT細胞注1)(抑制性T細胞)が作られる共通のメカニズムを発見しました。
抗原を認識して免疫反応を開始するリンパ球の一種のT細胞は胸腺で作られます。
その成熟過程では一部、自分の体の成分(自己抗原)に反応する(自己反応性)ものが現れますが、危険であるためにその多くは選択的に排除されます。
一方で、過剰な免疫反応を抑制し、生体の恒常性を維持する抑制性T細胞は、自己反応性を持っています。
抑制性T細胞が自己反応性を持っていながら排除されずに作られてくる分子的なメカニズムについて、これまでにさまざまな研究が行われていますが、詳細は不明のままでした。
大洞特任准教授は今回、STIM1、2注2)というカルシウムの量を調整するたんぱく質を欠損したマウスが、抑制機能を持つT細胞を全く持たなかったことを発見しました。
さらに、STIM1、2が働いて細胞内へのカルシウム流入が起きることが、抑制性T細胞の増加や成熟に必須であり、知られている抑制的なT細胞全てに共通した分化メカニズムであることを明らかにしました。
今後、抑制機能を持つT細胞を人工的に作製・誘導する場合にSTIM分子が必須因子として役立つものと考えられます。
また、STIM分子の人為的制御による過剰な免疫応答を抑制する治療法開発につながる可能性があり、シェーグレン症候群注3)や運動麻痺を起こす多発性硬化症などの自己免疫疾患の治療に役立つことが期待されます。
詳しくは、科学技術振興機構(JST)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20130315/index.html
[NurOwnは安全性を確認し、更なる治験を続行中]
ALS患者に対するNurOwn成人幹細胞療法の小規模な第1-2相治験の最終結果から安全性に問題はなく、深刻な副作用はない事が報告された。
加えて、主席調査員のDimitrios Karussisによる「治療効果に対する最初の兆候」の報告が行われた。(ただし、幹細胞開発者のBrainStormによると更なる治験においての確認が必要とのことである)
治験は6名の初期患者と6名の病状が進行した患者の12名の患者が参加し、エルサレムのハダッサ医療センターにおいて行われた。間葉系幹細胞が各患者の骨髄から採取され、神経栄養素(神経細胞を補助する分子)を配達できる健康な細胞に培養し、採取された本人に処方される。治験は幹細胞治療の機能的効果を確認するためではなく安全性を確認するためにデザインされたものではあるが、研究者は、ALS機能評価等級を用いて運動機能の情報とForced Vital Capacity (FVC)スコアを用いた呼吸機能の情報も集めている。
Karussis氏は、6人の治験参加者はクモ膜下の骨髄周辺の液へ細胞の注入を受け、治験参加前の3ヶ月に比較し、治験中の6ヶ月間は臨床機能と呼吸機能の病状進行に有意な鈍化がみられたと報告した。
MDAの研究部門副社長のJane Larkindale は「ALSは個人差の激しい病気で、患者によって進行は違う速度で進行する。したがって、確かに驚くべきことではあるが、たった6名の症状改善で、治療が有効であると言う事の証明にはならない。このような結果は偶然発生する事もあり、この療法が本当に進行を遅くする事ができるかは更なる治験が必要である。」と忠告した。
Brainstormは現在NurOwn幹細胞治療の第2a相投与量増量治験をハダッサで行っている。
同社はNurOwnのALSへの治験をアメリカ合衆国の複数地にて行う予定である。
http://alsn.mda.org/news/als-research-briefs-rasagiline-nurown
rBC2LCNを用いると、良質なiPS細胞を簡便に見分けることが可能となり、iPS細胞の品質管理と培養の効率化が期待される。iPS細胞を用いた再生医療の課題の1つに、移植用に作製された細胞に残存するiPS細胞が腫瘍形成の要因となることがある。このプローブを用いて、残存iPS細胞を可視化し、除去することで、腫瘍形成の回避への貢献が期待される。
なお、この技術の詳細は2013年3月22日に神奈川県横浜市で開催される第12回日本再生医療学会総会で発表される。また、米国の論文誌STEM CELLS Translational Medicineにオンライン掲載される。
詳しくは、産総研プレスリリースを見てください。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2013/pr20130319/pr20130319.html
PS:山中教授が天皇皇后とお会いされてから、iPS細胞の研究がものすごい勢いで進展し、ノーベル賞受賞され、そして再生医療推進法案が可決されれば、難病で苦しむ患者の治療への道筋が一気に進むと思います。僕は、その日が楽しみです。
22日の衆院本会議で可決されて参院に送られ、今国会での成立は確実な情勢だ。
同法案を巡っては、自民、民主、公明3党が昨年10月に合意していた。昨年の衆院選のあおりで国会提出に至らなかったが、3党が今年に入って各党に呼びかけて賛同を得て、松本純衆院厚労委員長による提案として提出された。
同推進法案は、政府の成長戦略の柱の一つとして期待される再生医療を進める「基本法」と位置づけられている。国の責務として、迅速で安全な研究開発と促進に関する基本方針の策定のほか、「必要な法制上、財政上、税制上の措置」などを義務づけた。
ようやく滞っていた問題が解決しました。これで思い通り研究者・医者の皆さんの力が十分に発揮されますね。
■硫化水素が神経伝達を増強
脳内の情報伝達は、神経細胞同士のシナプスと呼ばれる結合での信号のやりとりにより行われ、この信号の伝達が上手くいかないとパーキンソン病やアルツハイマー病、統合失調症、うつ病などの神経・精神疾患を起こすと考えられます。
情報は神経細胞内を電気的信号で伝搬しますが、次の神経細胞との間にはシナプス間隙と呼ばれるすき間があります。そのすき間を電気的信号は越えることができません。そこで、情報が運ばれるとシナプスでは神経伝達物質が放出され、電気信号を化学物質の信号に変えて次の神経細胞へ情報を伝えていきます。神経伝達物質にはグルタミン酸、ATP、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどがあり、現在までに数十種類が発見されています。
また、神経伝達物質はシナプスから放出されるだけでなく、シナプスを取り囲むグリア細胞の一つであるアストロサイト(脳神経細胞の一つ)からも放出されることが明らかになっています。
木村らの研究グループはこれまでに、脳内で生成された硫化水素(H2S)がアストロサイトに働きかけることでシナプス間の神経伝達が増強されることを明らかにしてきました。しかしながら、脳内にはシナプス伝達を増強するに十分なH2Sが存在せず、さらにはH2Sに反応するアストロサイトのイオンチャネルも不明でした。
詳しくは、独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release130311.html
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6559#more-6559
同成果は、同大大学院 薬学研究院 薬効安全性学分野の黒瀬等 教授、同・仲矢道雄 准教授、同・薬学研究院 薬理学分野の井上和秀 主幹教授、東京医科大 分子病理学講座の黒田雅彦 主任教授、徳島大 疾患酵素学センター疾患プロテオミクス研究部門の小迫英尊 准教授らによるもの。詳細な内容は、英国時間2月26日付けで英国科学雑誌 「Nature Communications」オンライン版に掲載された。
細胞がアポトーシスを起こして死ぬと、その細胞表面に自分自身を貪食するように促す分子群「Eat-meシグナル」が提示され、それを貪食細胞が細胞表面の受容体を介して認識し、死んだ細胞を取り込むために形を変化させていくが、どうして形状変化が引き起こすのかという分子メカニズムには不明な点が多く残されていた。
今回、研究グループは、従来、活性化したGタンパク質共役型受容体をリン酸化し、受容体の活性を低下させるタンパク質として知られていたものの、生体内における役割に関してはほとんどわかっていなかったGRK6に着目して研究を実施。その結果、GRK6が生体内のさまざまなマクロファージに発現しており、貪食時に細胞の形状の変化を促進することで、アポトーシス細胞の貪食を促進する作用を持つことを発見したという。
また、GRK6がこれまで報告されていた形状変化を促進する経路とは異なる、新規の経路を介していることも発見。実際に、マウスの種々の組織におけるGRK6の発現を調べたところ、脾臓に存在するマクロファージにおいて多く発現が認められたとする。具体的には、脾臓は大きく分けて白脾臓と赤脾髄の2つの領域に分けられ、白脾髄はアポトーシスを起こしたB細胞という抗体産生細胞の除去の場、赤脾髄は死んだ赤血球の除去の場として機能しているが、GRK6がそのどちらの領域のマクロファージにも発現していたことから、GRK6欠損マウスを用いて解析を進めた結果、同マウスの白脾髄において、貪食されていないアポトーシスを起こしたB細胞が多く認められたが、赤脾髄では死んだ赤血球の除去がうまくいかないために、中に含まれている鉄がマクロファージに取り込まれずに過剰に蓄積していることが確認されたという。
また同マウスは、アポトーシス細胞の貪食を促進する受容体を欠損したマウスのいくつかの種類と同様、貪食されずに残ったアポトーシス細胞が原因となり、ヒトの自己免疫疾患の1つである全身性エリテマトーデス様の症状を呈することも判明したことから、これら病気の発症にアポトーシス細胞の貪食を通じてGRK6が関与している可能性が示されたと研究グループでは説明している。
そのため、今後は、GRK6を活性化するタンパク質およびGRK6が活性化するタンパク質を探索していくことで、GRK6の機能を制御するための方法を見つけ、それによりアポトーシス細胞の貪食能を調節することを可能とすることで、これらの疾患に対する治療法や治療薬開発へとつなげたいとしている。
C9orf72について、2013年 2月 20日の Neuron誌に興味深い論文が掲載されました。その論文は同誌の “Previews” で注目の論文として紹介されています。まずは紹介記事を示します。
詳しくは、日々不穏にて!!
http://www.miguchi.net/archives/4539
米国ALS協会から資金援助を受けた研究グループが、数人のALS患者から予想外の細胞プロセスを発見した。この発見はこの形態の病気の進行を追跡するより適した手法に繋がる可能性があり、また新しい治療ターゲットの開発にもつながる。
詳しくは、たまとまさんのブログを見てください。
http://blogs.yahoo.co.jp/tamatoma8versionup/45341273.html