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ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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細胞内エネルギーとストレス顆粒形成機構
▽エネルギー代謝とストレス顆粒などの細胞内小器官はALSなどの病態に関与していると言われています。しかしながらエネルギー欠乏がストレス顆粒などのリボ核タンパク質をどのように制御しているのかはよくわかっていません

▽今回、研究者らは生理的なエネルギー欠乏条件下において誘導されるストレス顆粒を同定し、様々なストレス誘導顆粒の動態が制御されるメカニズムを明らかにしました

▽重度のエネルギー欠乏下においては、elF2αのリン酸化とは独立してエネルギー欠乏ストレス顆粒が速やかに形成されるのに対して、ある程度のエネルギー欠乏では、従来のストレス顆粒のクリアランスが遅れることがわかりました

▽エネルギー欠乏ストレス顆粒の形成やストレス顆粒のクリアランスはmTOR-4EBP1-elF4E経路やelF4A1によって制御され、elF4F複合体やRNA凝集体の形成を伴うことがわかりました

▽C9orf72遺伝子変異ALS患者の神経細胞や脳組織においては、エネルギー欠乏ストレス顆粒の形成が亢進しており、ストレス顆粒のクリアランスが障害されていることがわかりました

▽以上の結果は、ストレス顆粒における細胞内エネルギーの関与を明らかにするものであり、今後の病態解明や治療法開発の手がかりとなりうるものです

(この研究は、アメリカ、Johns Hopkins UniversityのWangらにより報告され、2022年9月23日付のNature Communications誌に掲載されました)
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C9orf72遺伝子変異由来poly-PR毒性の修飾因子としてNEK6を同定

▽C9orf72遺伝子変異の6塩基繰り返し配列により生じるジペプチド繰り返し配列タンパク質のうち、poly-PRが最も毒性が高いことがわかっています

▽今回、研究者らはヒト患者iPS細胞由来神経細胞を用いて、CRISPR/Cas9ノックアウトスクリーニングを行い疾患修飾因子を探索しました。

▽その結果、NIMA関連キナーゼ6(NEK6)のノックダウンにより、poly-PRによる神経細胞毒性が抑制されることがわかりました。NEK6のノックダウンはゼブラフィッシュモデルにおけるpoly-PR毒性を緩和しました

▽またC9orf72遺伝子変異ALS患者においうてはNEK6が発現亢進していることがわかりました。C9orf72遺伝子変異患者iPS細胞由来神経細胞においてNEK6発現抑制および活性阻害は、p53関連DNA損傷を回復させることにより、軸索輸送障害を回復させることがわかりました。

▽以上の結果は、NEK6がC9orf72遺伝子変異ALSにおける新規治療ターゲットになりうる可能性を示唆するものです

(この研究は、ベルギー、KU LeuvenのGuoらにより報告され、2022年8月22日付のAlzheimers Dement誌に掲載されました)
シナプス病態としてのカルシウム爆弾とマグネシウムによる緩和
▽ALSにおいては運動神経細胞の変性に先立って神経筋接合部に異常が現れることが報告されています

▽今回、研究者らは有機リン化合物を用いて神経筋接合部の興奮毒性モデルを作成し、カルシウム動態やマグネシウムの影響を調べました

▽その結果、神経刺激に応答してカルシウムイオンの爆発的な増加(カルシウム爆弾)と運動終板の長時間の収縮が誘発されました。このようなカルシウムの爆発的増加は、マグネシウム濃度を増加させると緩和しました

▽殺虫剤成分中に神経筋標本を曝露すると神経筋接合部の変性が誘発されましたが、マグネシウム濃度の増加により変性が緩和されました

▽細胞外マグネシウム濃度の増加はシナプス後膜でのカルシウムの増加と神経筋接合部変性を共に緩和しました。

▽以上の結果は、マグネシウム濃度の調整が興奮毒性などの病態の治療において有効な介入となる可能性を示唆するものです

(この研究はイギリス、 The University of EdinburghのDissanayakeらにより報告され、2022年7月26日付のFront Mol Neurosci誌に掲載されました)
クローン増殖したCD8 T細胞はALS-4の特徴である
▽ALS-4とよばれるALSのサブタイプは若年発症で進行が遅いことが特徴です。ALS-4患者は30歳代までに運動障害を呈し、50歳代までにほとんどの患者において歩行補助具が必要となります。

▽ALS-4はセナタキシン遺伝子の変異によって引き起こされます。今回、研究者らは、ALS-4の原因となるセナタキシン遺伝子変異を有する変異セナタキシンノックインマウスを用いて、その病態を観察しました

▽その結果、ノックインマウスの中枢神経系と血液中にクローナル増殖をした最終分化型エフェクターメモリーCD8 T細胞が観察され、自己抗原に反応したT細胞の増殖が起きていることがわかりました。

▽ノックインマウスにおける抗原特異的CD8 T細胞の増加は、運動神経変性の進行を反映しており、抗グリオーマ免疫応答と相関していました。

▽ALS-4患者では、クローン増殖した最終分化型エフェクターメモリー CD8T細胞が末梢血中に増加していることがわかりました。

▽以上の結果は、ALS-4の病態における抗原特異的CD8 T細胞応答の関与を示唆しており、病態解明や治療法開発に利用できる可能性があります。

(この研究は、アメリカ、Icahn School of Medicine at Mount SinaiのCampisiらにより報告され、2022年6月22日付のNature誌に掲載されました)
NUP62は異常凝集体の形成とTDP-43の不溶化に寄与する
▽C9orf72遺伝子における6塩基繰り返し配列の過剰伸長は、細胞質TDP-43凝集体を伴う遺伝性ALSの最も頻度の高い病因です。

▽繰り返し配列RNAとジペプチド繰り返しタンパク質の凝集はC9orf72遺伝子変異ALSにおける主要な細胞毒性メカニズムと考えられています。さらにこれらは核細胞質輸送の障害とも関連するといわれています

▽ 核細胞質輸送は、核膜孔複合体(NPC)の透過性バリアを構成するフェニルアラニン-グリシンヌクレオポリン(FG nups)によって制御されています。しかし、TDP-43蛋白症の病態とFG nupsとの関連はよくわかっていませんでした。

▽今回、研究者らは、C9orf72遺伝子変異ALS患者iPS細胞由来神経細胞において、FG nupの1つであるNUP62の核内枯渇と細胞質への異常局在化がTDP-43の異常局在化と関連することを明らかにしました。

▽ジペプチド繰り返しタンパク質の1つであるpoly-GRの蓄積により、細胞質RNA凝集体が形成され、NUP62とTDP-43が動員された結果、NUP62とTDP-43が細胞質で相互作用をし、不溶化が促進されます。

▽C9orf72遺伝子変異ALS患者および孤発性ALS患者においてNUP62とTDP-43の細胞質内封入体はしばしば観察されます。

▽以上の結果は、NUP62の細胞質内における異常局在化がTDP-43蛋白症を促進される要因であることを示唆するものです

(この研究は、アメリカ、University of Pittsburgh School of MedicineのGleixnerらにより報告され、2022年6月13日付のNature Communications誌に掲載されました)
coronin-1aの過剰発現とALSの病態への関与
▽今回研究者らは、ALS患者および健常対照者の血漿からエクソソームを抽出し、発現量の異なるエクソソームタンパク質を比較検討しました。

▽その結果、エクソソームのcoronin-1aの発現量が、ALS患者において対照群に比べ5.3倍高いことがわかりました。coronin-1aは、ALS患者の血漿やALSモデルマウスの脊髄において、病気の進行とともに増加していました。

▽また、NSC-34細胞でcoronin-1aを過剰発現させたところ、アポトーシスと酸化ストレスが増加し、自食作用の過剰活性化と、オートリソゾームの形成が阻害されました。さらに、coronin-1aはカルシウム依存性リン酸化酵素のカルシニューリンを活性化し、オートファゴソームとライソソームの融合を阻害しました。

▽シクロスポリンAによるカルシニューリン活性化の阻害は、オートリソソームの障害を回復させました。

▽以上の結果は、coronin-1aがALSの病態において重要な役割を果たしている可能性を示唆するものであり、今後の治療法開発のターゲットとなりうる可能性があります

(この研究は中国、Shanghai Jiao Tong University School of MedicineのZhouらにより報告され、2022年6月1日付のFront Med.誌に掲載されました)
P2X7受容体活性化は運動神経細胞からのSOD1放出を誘導する
▽今回、研究者らは変異SOD1蛋白質の運動神経細胞からの放出にP2X7受容体が関与しており、放出された変異SOD1蛋白質が周囲の運動神経細胞やミクログリアに伝播することを見出しました。

▽変異SOD1遺伝子を導入したマウスNSC-34運動神経細胞より放出された変異SOD1蛋白質は、正常NSC-34細胞やマウスミクログリアに伝播し、それぞれ小胞体ストレスおよびTNF-α放出を誘導しました。

▽NSC-34細胞においてはP2X7受容体が発現していることが免疫染色で明らかになりました。細胞外ATPはNSC-34細胞へのカチオン色素取り込みを誘導し、これはP2X7受容体阻害剤のAZ10606120により阻害されました

▽さらにATPは変異SOD1遺伝子を導入したNSC-34細胞からのSOD1蛋白質の急速な放出を誘導しました。この作用もAZ10606120により阻害されました

▽以上の結果は、ALSにおけるSOD1のプリオン様伝播におけるP2XZ7受容体の役割を明らかにするものであり、P2X7受容体阻害剤のALS治療薬としての可能性を示唆するものである。

(この研究は、オーストラリア、Illawarra Health and Medical Research InstituteのBartlettらにより報告され、2022年4月28日付のPurinergic Signal.誌に掲載されました)
小胞体ミトコンドリア間相互作用とシグマ1受容体
▽小胞体-ミトコンドリア接触部位(MAMs)は脂質とカルシウムイオンの移動により、小胞体ストレス応答、ミトコンドリアでのエネルギー産生、開裂/融合イベント、自食作用、炎症など様々な生体機能に関与する動的な部位です。

▽さらにMAMsに存在するいくつかの蛋白質は、活性酸素の生成に関与し、この活性酸素は細胞内シグナル伝達の媒介作用として機能する場合もあれば、有害分子として作用する場合もある

▽近年、MAMsの構造的、機能的変化が神経変性疾患の病態に関与していることが報告されています。ALSなどの神経変性疾患では、高濃度の活性酸素の蓄積による酸化還元状態の乱れなどが影響していると考えられています。またミトコンドリアのカルシウムイオンの過剰負荷はエネルギー不足や有害な活性酸素の増加につながり、アポトーシス経路の活性化につながります。

▽シグマ1受容体は、小胞体のシャペロンであり、MAMsの高濃度に存在していており、小胞体からミトコンドリアへのカルシウムイオンの流入、酸化的ストレス応答、小胞体ストレス応答などの制御に関与していると言われています。

▽そのためシグマ1受容体の機能を制御することにより、ALSなどの病態に治療的な効果を与えることができる可能性があります

(この研究は、ポルトガル、Universidade de Coimbra CentroのResendeらにより報告され、2022年4月4日付のAntioxid Redox Signal.誌に掲載されました)
GSTO活性の調節はFUS変異モデルの病態を緩和する

▽FUS蛋白質はDNA/RNA結合蛋白質であり、DNA修復とRNA処理に関与しています。特定のFUS変異はALSの病因となることが知られていますが、FUSによる神経変性のメカニズムはほとんどわかっていません。

▽今回、研究者らはFUS変異ショウジョウバエモデルを用いて、グルタチオントランスフェラーゼ オメガ2(GSTO2)の過剰発現が病態に与える影響を評価しました

▽その結果、GSTO2の過剰発現は、細胞質内のFUS凝集体を減少させ、神経毒性やミトコンドリア機能障害を緩和しました。

▽FUSのグルタチオニル化は、相分離を促進することによりFUSの凝集を誘導することが知られていますが、GSTO2は、脱グルタチオニル化により細胞質FUSの凝集を抑制することがわかりました。

▽さらに、ヒトGSTO1をマウス神経細胞で過剰発現させると、FUSによる神経毒性および細胞質内FUSの凝集が減弱することがわかりました

▽以上の結果はFUSのグルタチオニル化の調節が、FUS関連神経変性疾患の治療戦略として有望な可能性を示唆するものです

(この研究は、韓国、Soonchunhyang UniversityのChaらにより報告され、2022年3月28日付のDev Cell誌に掲載されました)

ミトコンドリア機能障害はALS発症早期から生じる
▽ALSの主要な病態であるTDP-43蛋白症において、ミトコンドリアの機能障害が上位運動神経細胞においてみられることが報告されています。

▽研究者らはALS患者と健常者とで、各種分析技法を用いて大脳皮質運動野のメタボローム解析を行い、代謝物プロファイルに変化があるかどうかを検討しました

▽その結果、NAD+の減少が主要な問題の1つであることがわかりました。ニコチンアミドモノヌクレオチドはNAD+濃度を回復させることが知られています。TDP-43蛋白症モデルマウスの上位運動神経細胞に対してin vitroでニコチンアミドモノヌクレオチドを投与すると病態改善効果が観察されました。

▽以上の結果はTDP-43蛋白症に対してNAD+バランスを回復させることが治療的に有効な可能性があることを示唆するものです

(この研究は、アメリカ、Northwestern UniversityのGautamらにより報告され、2022年3月11日付のSci Rep.誌に掲載されました)

C9orf72遺伝子変異ALSにおいてポリジペプチドは運動神経細胞の過剰興奮を引き起こす
▽C9orf72遺伝子変異ALSは家族性ALSの最も頻度の高い病因です。C9orf72遺伝子の反復配列の過剰伸長部位より生成されるポリジペプチドは神経細胞に有害であることが報告されていますが、その機序はよくわかっていませんでした

▽今回研究者らはプロリン-アルギニンポリジペプチドが、運動野に高発現しているNav1.2/β4ナトリウムチャネル複合体を介する持続的ナトリウム電流を増加させることによって、皮質運動神経細胞の過剰興奮を引き起こすことを明らかにしました。

▽これらの知見は、C9orf72遺伝子変異がどのようにして運動神経細胞の過剰興奮を引き起こし、運動神経細胞死につながるのかを理解するための基礎となるものです。

(この研究は韓国、Sungkyunkwan University School of MedicineのJoらにより報告され、2022年3月15日付のPNAS誌に掲載されました)
TDP-43喪失はUNC13Aのスプライシング異常と機能喪失をもたらす
▽シナプス機能に重要な遺伝子であるUNC13Aの変異はTDP-43の異常局在化と関連するALSのリスクを増加させます。

▽今回、研究者らは、TDP-43の欠失が、UNC13Aへの隠れエクソンの強固な組み込みをもたらし、その結果、ナンセンス変異依存mRNA分解をもたらし、UNC13A蛋白質の喪失につながることをみいだしました。

▽ALSと関連したUNC13Aのイントロン多型はTDP-43の結合部位と重複しています。

▽今回の知見は、核内TDP-43の機能喪失と疾患との遺伝的関連性を明らかにしたものであり、UNC13A変異がTDP-43機能低下の影響を悪化させるメカニズムを明らかにするものです。またTDP-43蛋白症の有望な治療ターゲットとなることが期待されます。

(この研究はイギリス、Queen Square Institute of NeurologyのBrownらにより報告され、2022年2月23日付のNature誌に掲載されました)

TDP-43の過剰リン酸化は、TDP-43の凝縮と凝集を抑制する

▽ 翻訳後修飾は蛋白質の相分離の重要な調節因子であり、神経変性疾患における蛋白質凝集との関連が指摘されています。ALSにおける主要な凝集蛋白質であるTDP-43は、ALSにおいてはC末端のいくつかのセリン残基で過剰リン酸化されており、この過程は一般にTDP-43の凝集を促進すると信じられてきました。

▽今回、研究者らは、カゼインキナーゼ1δを介したTDP-43の過剰リン酸化やC末端のリン酸化修飾は、TDP-43の相分離や凝集を抑制し、代わりにTDP-43の凝縮体をより液体的で動的な状態にすることを見いだしました。

▽細胞実験では、リン酸化残基への置換はTDP-43の核内移行やRNA制御機能には影響しませんが、膜をもたない小器官への蓄積を抑制し、溶解性を促進することが示されました。

▽以上の結果は、TDP-43の過剰リン酸化はTDP-43の凝集に対抗するための細胞保護反応であると推測することも可能です

(この研究は、ドイツ、Johannes Gutenberg-UniversitätのGruijsらにより報告され、2022年2月3日付のEMBO J誌に掲載されました)
TDP-43凝集体の立体構造を同定
▽神経細胞やグリア細胞におけるTDP-43蛋白質の異常凝集はALSの病態の特徴です。このような病態はアルツハイマー病やパーキンソン病でもみられます

▽病的TDP-43凝集体の立体構造はわかっていません。今回、研究者らは低温電子顕微鏡を用いて、ALS患者の前頭葉と運動野、および別の患者の前頭葉皮質から、TDP-43凝集体の立体構造を同定しました。その結果、TDP-43凝集体の特徴的な構造や、リガンド結合部位の可能性のある部位が同定されるなど、新たな発見がありました。

▽立体構造の同定により、ALSの分子病態の理解や、TDP-43凝集体を標的とした治療薬開発につながることが期待されます

(この研究はイギリス、MRC Laboratory of Molecular BiologyのAeseniや、東京都医学総合研究所の研究グループにより報告され、2021年12月8日付のNature誌に掲載されました)
TREM2はTDP-43と相互作用し、TDP-43蛋白症におけるミクログリアの神経保護を媒介する
▽TREM2(Triggering receptor expressed on myeloid cell 2)は神経変性疾患のリスクと関連しています。しかし神経変性疾患におけるTREM2の機能はよくわかっていません

▽今回、研究者らは、TDP-43蛋白症モデルマウスを用いて、ミクログリアにおけるTREM2の役割を調べました。

▽その結果、TREM2の欠損は、ミクログリアによる病的TDP-43の貪食クリアランスを障害し、神経細胞の損傷と運動障害を増悪させることを見いだしました

▽質量サイトメトリー分析の結果、ヒトTDP-43蛋白質は、TREM2依存性に高CD11c発現かつ高貪食能を有するミクログリアを誘発することがわかりました。

▽さらに、質量分析および表面プラズモン共鳴解析により、ALS患者においてTDP-43とTREM2が相互作用していることがわかりました。ヒトTDP-43とTREM2の相互作用部位が計算機により同定されました。

▽以上の結果は、TDP-43がミクログリアのTREM2のリガンドとして作用し、TDP-43蛋白症において、ミクログリアを神経保護的な形態に変化させる機能を有することを示唆するものです

(この研究は、アメリカ、 Mayo ClinicのXieらにより報告され、2021年12月16日付のNature Neuroscience誌に掲載されました)
ALSにおける脂質代謝異常
▽ALSにおいて脊髄運動神経細胞が選択的に変性しやすく、眼球運動ニューロンが変性しにくい理由は、まだ解明されていません。

▽今回、研究者らは、ヒトALS患者iPS細胞由来の運動神経細胞と眼球運動神経細胞の比較マルチオミクス解析を行い、家族性および孤発性ALSの脊髄運動神経細胞に共通する代謝異常を特定し、脂質代謝とその関連遺伝子の制御異常を明らかにしました。

▽メタボローム解析の結果、17名のALS(SOD1変異、C9ORF72変異、TDP-43変異、孤発性)患者のiPS細胞由来脊髄運動神経細胞において、アラキドン酸の濃度が上昇していることが確認されました。アラキドン酸濃度を薬理学的に低下させることで、ヒト脊髄運動神経細胞、in vivoではショウジョウバエモデルやSOD1変異ALSモデルマウスの両方で、ALSに関連する病態の回復がみられました。

▽以上の結果は脂質代謝異常がALSの治療ターゲットとして有望であることを示唆するものです

(この研究は、アメリカ、Johns Hopkins University School of MedicineのLeeらにより報告され、2021年11月15日付のNature Neuroscience誌に掲載されました)
軸索のTDP-43凝集体は神経筋接合部障害をもたらす
▽ALSの95%以上の運動神経細胞ではTDP-43の異常局在化が見られます。しかし軸索のTDP-43が神経変性にどのように寄与しているかは不明でした。

▽今回研究者らは、ALS患者の筋内神経(intramuscular nerve)、ALS患者iPS細胞由来の運動神経の軸索、およびTDP-43蛋白症モデルマウスの運動神経と神経筋接合部などにTDP-43が蓄積していることを明らかにしました。

▽軸索では、TDP-43が過剰リン酸化され、G3BP1陽性のリボ核蛋白質凝集体の形成を促進し、その結果、遠位軸索や神経筋接合部での局所的な蛋白質合成が阻害されることがわかりました。

▽特に、核内にコードされたミトコンドリア蛋白質の軸索およびシナプス濃度が低下していました。軸索のTDP-43を除去したり、G3BP1陽性凝集体を除去したりすると、局所的な蛋白質合成が回復し、軸索と神経筋接合部の両方でTDP-43由来の毒性が軽減しました。

▽以上の結果は、ALSにおけるTDP-43の軸索における有害性を示唆するものであり、治療法開発の手掛かりになりうるものです

(この研究は、イスラエル、Tel-Aviv UniversityのAltmanらにより報告され、2021年11月25日付のNature Communications誌に掲載されました)
RNA制御因子HuR阻害剤のSRI-42127はグリア細胞の活性化を抑制する
▽炎症促進性物質の産生を伴うグリア細胞の活性化はALSなどの病態で観察されます。炎症促進性因子をコードする多くのmRNAの3’非翻訳領域にはその発現を制御するアデニンおよびウリジンリッチ領域(ARE)が存在し、転写後の発現制御は、グリア活性化の制御因子となります。

▽これまでに研究者らは、AREに結合するRNA制御因子であるHuRがグリア細胞の炎症促進性サイトカイン産生の制御に重要な役割を果たすことを明らかにしてきました

▽HuRは主に核内に局在していますが、細胞質に移動しRNAの安定性や翻訳効率を制御しています。翻訳のためにはHuRのホモ二量体化が必要であり、今回、研究者らはこの二量体化を阻害する物質であるSRI-42127を開発しました

▽SRI-42127はin vitroおよびin vivoにおいて、リポポリサッカライド投与により活性化したグリア細胞からのIL-6、IL-1β、TNFーα、CCL2などの炎症促進性サイトカインの産生を抑制しました。抗炎症性サイトカインの発現はほとんど影響を受けませんでした

▽以上の結果は、HuRがグリア細胞の活性化に重要な役割を果たしており、SRI-422127などのHuR阻害剤はグリア細胞の活性化による病態を抑制し、治療的に有用な可能性を示唆するものです。

(この研究はアメリカ、The University of Alabama at Birmingham School of MedicineのChellappanらにより報告され、2021年9月17日付のGlia誌に掲載されました)
ポルフィリンTMPyP4は、C9orf72遺伝子変異ALS関連6塩基繰り返し配列の非正規翻訳の際に伸長を阻害する
▽C9orf72遺伝子変異ALSにおける6塩基繰り返し配列の過剰伸長においては、リピート関連開始コドン(AUG)非依存性翻訳(RAN翻訳)により生じる異常転写産物が神経細胞死をもたらすと考えられています。そこでこのRAN翻訳を選択的に阻害することが治療的に作用する可能性があります

▽これまでポルフィリンであるTMPyP4がG4C2繰り返し配列由来RNAと結合することは知られていました。しかしこの相互作用の影響はよくわかっていませんでした

▽今回、研究者らはTMPyP4がG4C2繰り返し配列由来RNAの翻訳を阻害することを、細胞モデルなどで確認しました

▽AUGコドンを人工的に挿入しても翻訳の阻害が抑制されなかったことから、TMPyP4の翻訳阻害作用は、開始コドン非依存性翻訳の下流で生じていることが示唆されました

▽ポリソームプロファイリングの分析結果により、G4C2繰り返し配列由来RNA上にポリソームが保持された状態のままで翻訳が阻害されていることがわかりました。このことは、リボソームがRNA上で機能停止していることを示唆するものです

▽以上の結果は、TMPyP4がG4C2繰り返し配列由来RNA上のリボソームの機能停止をもたらし、翻訳を選択的に阻害することを示唆しており、今後の治療法開発において新たな視点を提供するものです

(この研究は大阪大学のMoriらにより報告され、2021年8月25日付のJ Biol Chem誌に掲載されました)
孤発性および家族性ALSにおいてCHMP7の核内蓄積が核膜孔複合体機能不全を起こしTDP-43蛋白症の病態を引き起こす
▽核膜孔複合体の構成要素であるヌクレオポリンの機能の変化は、C9orf72遺伝子変異ALSなどの発症に寄与すると考えられています。

▽今回研究者らはヌクレオポリンの機能変化とそれに伴う核膜孔複合体の機能喪失が、TDP-43蛋白症の病態の上流にあるのではないかと考えました。

▽研究者らは、核膜孔複合体の品質管理に重要な役割を果たすCHMP7が、C9orf72遺伝子変異ALSおよび孤発性ALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した脊髄神経細胞や、患者死後脳運動野の神経細胞の核において、ヌクレオポリンの変化が現れる前に増加していることを明らかにしました。

▽CHMP7の核外輸送を阻害すると、ヒトの神経細胞においてヌクレオポリンの減少とTDP-43の機能障害および病理学的変化が引き起こされました。

▽CHMP7をノックダウンすると、ヌクレオポリンの変化、Ran GTPaseの異常局在化、TDP-43蛋白症でみられるmRNAの発現の障害、グルタミン酸による神経細胞死が緩和されました

▽以上の結果は、家族性および孤発性ALSの発症メカニズムとして、CHMP7を介したヌクレオポリンの恒常性維持機構の変化が重要な役割を果たしていることを示唆するものであり、CHMP7が治療ターゲットとなる可能性があります。

(この研究はアメリカ、Johns Hopkins UniversityのCoyneらにより報告され、2021年7月28日付のSci Transl Med.誌に掲載されました)
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