▽今回、研究者らは2002年と2006年に実施された2つの間葉系幹細胞移植の第1相試験の結果を事後解析し長期的有効性について検討しました
▽19名の患者の長期予後追跡結果が解析に用いられました。各患者について、診断時の期待される生存期間を逆算するために、ENCALSの生存予測モデルが用いられました
▽その結果、全体の予測生存期間と観察された生存期間の差は有意で、平均予測生存期間と比べて実際の平均生存期間は50カ月近く長いものでした。
▽以上の結果は、間葉系幹細胞移植が長期予後を改善する可能性を示唆するものであり、今後さらに大規模なデータによる検証が期待されます
(この研究はイタリア、University of Eastern PiedmontのDe Marchiらにより報告され、2023年3月15日付のCytotherapy誌に掲載されました)
・制御性T細胞は静脈により投与され最初1か月間は7日毎に4回投与後、28日毎に5回投与されます。1年間で安全性や有効性などが検証される予定です
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05695521
▽BrainStorm社は同社のALS治療薬候補であるNurOwnについて承認申請をFDAに提出予定です
▽これはこれまでの臨床試験結果の解析に修正が必要であることが判明し、訂正したデータを公表したことに伴うものです
▽訂正後のデータでは、NurOwnが複数の患者サブグループの副次評価項目において有意な効果を示したことがわかりました
▽NurOwn細胞は自家骨髄幹細胞移植であり、患者由来の間葉系幹細胞を神経栄養因子を分泌するように分化誘導し、患者に投与するものです
▽既に行われた第3相試験では患者はNurOwn細胞を隔月で3回、くも膜下腔投与され、プラセボ群と比較されました。28週間で評価されたALSFRS-Rの変化率は全体としては有意差がないものでした。
▽追加解析において試験開始時のALSFRS-Rの得点が高く、あまり病勢が進行していない患者群においては有意な進行遅延効果があることがわかりました
▽BrainStorm社はこれらの結果について現在FDAと協議を行い、どのような患者群について承認を求めるかを模索しているとのことです
引用元
https://alsnewstoday.com/news/brainstorm-plans-filing-nurown-approval-us-corrected-data/
▽この試験では移植後12か月間症状や安全性などが評価されました。評価された患者は8名で、1名は移植4か月後、1名は移植10か月後に死亡、1名は3か月後に気管切開を受けましたが、その後人工呼吸は導入せずに経過しました
▽その他の症例では、すべての機能指標とQOLに治療前後の有意差はありませんでしたが、ALSFRS-Rと坐位%肺活量は移植後に一過性の変化量の減少を認めました。さらに、CD4+ T細胞の減少およびCD8+ T細胞の増加の傾向が認められました。
▽造血幹細胞移植は全体的に良好な忍容性を示しましたが、その後の疾患進行に有意な変化は認められませんでした。今後投与レジメンなどにさらなる工夫を要する可能性があります。
(この研究はイタリア、NEMO Clinical Center MilanoのLunettaらにより報告され、2022年5月21日付のJ Neurol.誌に掲載されました)
▽ALSの病態において神経炎症が重要な役割を果たしていると考えられています。ミクログリアには細胞傷害性と神経保護性の2つの表現型があり、神経保護性のミクログリアを誘導することは、ALSの治療戦略として有望な可能性があります
▽今回研究者らは、骨髄から神経保護性のミクログリア様細胞を誘導し、モデルマウスでの治療的効果を検証しました。マウスから骨髄由来単核細胞を分離し、GM-CSFおよびIL-4によるサイトカイン処理を行い培養されました。増殖能とミクログリアへの分化能が高い細胞が評価され、in vitroでの神経保護作用も評価されました。
▽このように誘導された細胞は、骨髄由来誘導性ミクログリア様細胞(BM-iMG)と命名され、モデルマウスの脊髄に移植されました
▽その結果、移植後のALSモデルマウスでは、運動機能の改善、生存期間の延長、神経細胞死の抑制、ミクログリオーシスの抑制効果などがみられました。
▽以上の結果はBM-iMGがALSにおいて治療的に有効な可能性を示唆するものです
(この研究は滋賀大学のKobayashiらにより報告され、2022年4月4日付のCytotherapy誌に掲載されました)
▽続いてSOD1変異ALSモデルマウス由来アストロサイトと運動神経細胞の共培養系を用いて、マウス脂肪組織由来幹細胞の神経保護作用が調べられました。その結果、脂肪組織由来幹細胞はALSモデルマウス由来アストロサイトの細胞毒性から運動神経細胞を保護する作用を発揮することがわかりました。
▽さらに脂肪組織由来幹細胞は、炎症系サイトカインの放出を抑制し、神経保護因子の分泌を促進することによろALSモデルマウス由来アストロサイトの有害性を軽減することがわかりました。またヒトALS患者由来アストロサイトの神経毒性についても、脂肪組織由来幹細胞が保護的な作用を発揮することがわかりました。
▽以上の結果は脂肪組織由来幹細胞が傍分泌の機序を介して運動神経細胞の生存を補助し、ALSの病態に通じる有害な微小環境を調節することがっできることを示唆するものです。
(この研究はイギリス、The University of SheffieldのCiervoらにより報告され、2021年3月27日付のMol Ther Methods Clin Dev.誌に掲載されました)
・100名の患者を対象にプラセボ対照で行われ、骨髄単核球細胞は下肢筋肉に筋注投与されます。治療後48か月間で安全性などが検証される予定です
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04849065
▽現在韓国で第3相試験が行われている幹細胞移植のALS治療薬候補 NeuroNata-R(lenzumestrocel)ですが、Corestem社によるとアメリカでもエントリーが開始されるとのことです
▽FDAの承認を得て、Expanded Access Program(アメリカ版の患者申出療養制度)によりマサチューセッツ総合病院にて2020年11月に1名の患者がNeuroNata-Rの投与を受けました
▽NeuroNata-Rは患者自身の間葉系幹細胞を採取し、培養後に自家移植をする幹細胞移植治療であり、くも膜下腔内に投与されます。間葉系幹細胞採取1か月後に1回目の投与がされ、その後さらに1か月後に2回目の投与が行われます
▽基礎実験ではNeuroNata-Rは抗炎症作用や神経保護作用などが確認されており、ALSの病態進行遅延効果が期待されています
▽第1/2相試験では32名のALS患者が対象となり、病態進行遅延効果を示唆する結果が得られました。その結果により韓国ではNeuroNata-RのALS患者への投与が条件付きで承認されています。Corestem社によるとこれまでに300名以上のALS患者がNeuroNata-Rによる治療を受け、うち49名は国外からの治療希望者であったとのことです。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/03/26/phase-3-trial-neuronata-r-stem-cell-therapy-likely-open-us-sites-corestem-says/
▽その結果、髄腔内では、間葉系幹細胞は静止状態にあるものの、その形態を維持していることが明らかになりました。間葉系幹細胞の大規模なトランスクリプトーム解析により、人工髄液で培養した細胞には異なる遺伝子発現プロファイルが見られました。
▽人工髄液の培養環境では、血管新生や免疫調整に関連する遺伝子の発現が誘導され、栄養因子をコードする遺伝子も、発現亢進がみられました。
▽さらに自家間葉系幹細胞を髄腔内に投与したALS患者の髄液では、成長因子や免疫調節サイトカインが用量依存的に増加することが確認されました。
▽以上の結果は、現在進行中の臨床試験において、髄腔内に注入された間葉系幹細胞は生存しており、患者に治療的効果をもたらす可能性があることを示唆するものです
(この研究はアメリカ、Mayo ClinicのKrullらにより報告され、2021年3月18日付のStem Cell Res Ther.誌に掲載されました)
・NEURONATA-Rは自家間葉系幹細胞移植であり、抗炎症作用や神経保護作用などにより治療的効果が期待されています。基礎実験では制御性T細胞の誘導作用などが確認されています
・115名の患者を対象にプラセボ対照で行われ、26日間隔で2回髄腔内投与される群と、2回の髄腔内投与を3セット施行される群などにわけられ、12か月間で有効性や安全性などが検証される予定です
引用元
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04745299
▽今回、研究者らはSOD1変異ALSモデルラットを用いて、間葉系幹細胞を静注投与し、神経栄養因子の発現増加と、血液脳関門の機能保持を介して病態進行遅延効果がみられるかどうかを検証しました
▽その結果、間葉系幹細胞を移植した群では、運動機能の有意な保持効果がみられました。また運動神経細胞と微小血管構造の保持が観察されました。また神経栄養因子であるneurturinも幹細胞移植群で有意な増加がみられました
▽以上の結果は、間葉系幹細胞静注が、血液脳関門機能の保持などを介してモデルラットの病態進行遅延効果をもたらした可能性を示唆するものです
(この研究は札幌医科大学のMagotaらにより報告され、2021年4月15日付のBrain Research誌に掲載されます)
▽この治療法では、患者から制御性T細胞を採取し、それを神経保護的な機能を有する細胞に誘導し、再び患者自身に静注で戻す方法がとられます。現在第2相試験が行われています
▽Coya社は制御性T細胞の凍結保存プラットフォームを使用して、細胞を効果を失うことなく凍結させる方法を開発しました。これにより、1回の製造工程で1年間の治療に十分な量の制御性T細胞を生成し、凍結させた後、必要に応じて細胞を解凍して、定期的に、あるいは毎月の移植に使用することができるようになりました。
▽第1相試験では、ALS001の安全性と忍容性が確認され、3名のALS患者において病初期および後期の病態進行を低下させることが確認されました
▽現在進行中の第2a相試験では、12人のALS患者を対象に、プラセボと比較して6ヶ月間、毎月の移植により制御性T細胞が投与され、制御性T細胞機能の経時変化や病態進行への効果などが検証される予定です
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2021/02/05/coya-therapeutics-als001-treg-off-shelf-therapy-als-progression-phase-2-trial/
引用元
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ282XU0Y1A120C2000000/
・岡山大学でMuse細胞の臨床試験が開始予定となっています。まだUMIN-CTRには登録されていないようで詳細は不明です。2022年12月に完了予定とのことです。良好な結果が期待されます
▽SOD1変異ALSマウスに対して5万個のMuse細胞を静注することにより、腰髄へのヒトMuse細胞の遊走に成功し、グリア細胞様の形態への分化とGFAP発現がみられました。一方で、ヒト間葉系幹細胞では、このような遊走や分化は認められず、肺に分布しました。
▽Muse細胞移植モデルマウスでは対照群と比較して運動機能の改善効果がみられました。このことは運動神経細胞の保護作用を有することを示唆しています。Muse細胞移植は今後ALSの治療法として有望な可能性があります
(この研究は岡山大学のYamashitaらにより報告され、2020年10月13日付のScientific Reports誌に掲載されました)
▽移植1か月後にモデルマウスの腰椎におけるBDNF発現などは対照群と比較して有意な増加を示しました。発症遅延効果はみられませんでしたが、運動機能の改善と生存期間の延長効果がみられました
▽以上の結果は、BDNF過剰発現ヒト臍帯間葉系幹細胞由来運動神経移植がALSの治療法として有用な可能性を示唆するものです
(この研究は中国、Nanjing Medical UniversityのWangらにより報告され2020年10月19日付のNeurol Res.誌に掲載されました)
▽Kadimastem社のALS治療薬候補のAstroRxの第1/2相試験の一部結果が報告されました。それによると、投与3か月目の時点において、臨床試験で使用されたすべての用量において、有意な進行遅延効果を示唆する結果が得られたとのことです
▽AstroRxについては既に低用量治療群において有効性を示唆する結果を報告していましたが、さらに最近の結果では、最高用量投与群の結果も報告され、両群ともに病態進行を50%以上遅延させる効果がみられ、特に進行が速い群において有効性がより大きかったということです
▽AstroRxはヒト胎児幹細胞由来の成熟アストロサイトを髄液中に移植するものです。
▽最初の5名の患者に対しては1億個の細胞が移植されました。移植前3か月間のALSFRS-Rの得点変化率は0.87点/月の増悪でしたが、投与後3か月間は0.26点/月の改善がみられました。運動機能が改善したことを意味しています。しかしその後は効果の減弱がみられ、反復投与が治療の有効性を増強する可能性が示唆されました。
▽別の5名の患者については、投与前3か月間のALSFRS-Rの変化率は1.43点/月でしたが、2億5千万個の細胞が移植され、移植後3か月間のALSFRS-Rの変化率は0.78点/月の悪化と悪化率が45%減弱しました。特に投与後1カ月間はALSFRS-Rの変化量は0.41点であり、71%の改善がみられました
▽全体の結果をまとめると、治療前のALSFRS-Rの変化率が平均1.15点であったのが、治療後は平均0.54点と53%の改善がみられました。また少なくとも25%以上の進行度の改善がみられた群を反応群とすると70%の患者が反応群となりました。
▽有効性については今後さらに臨床試験で検証する必要がありますが、COVID-19の影響でさらに追加の10名のエントリー(繰り返し投与群)は見送られることとなりました。
▽さらなる臨床試験の実施に向けて準備が進んでいます
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/08/05/astrorx-slows-als-progression-at-all-doses-tested-trial-shows/
▽ヒトホウォートンゼリー由来間葉系幹細胞が投与された67名のALS患者について、年齢や性別、人種、発症時の症状などをマッチさせた対照群が比較対象となりました。患者は3回の移植を2か月間隔で受けました。
▽その結果、生存期間の中央値は対照群と比較して2倍になりました。ALSFRS-Rの変化率については、改善群(31.3%)、不変群(49.3%)、増悪群(19.4%)に分類されました。
▽重大な副作用はありませんでした。女性であることと、初回投与時の治療反応性が良好であることが、その後の治療反応性が良好であることの予測因子でした。以上の結果は、ヒトホウォートンゼリー由来間葉系幹細胞移植が、一部の患者群にとって治療的に有用である可能性を示唆するものであり、今後の臨床試験での検証が期待されます。
(この研究は、ポーランド、University of Warmia and MazuryのBarczewskaらにより報告され、2020年7月28日付のStem Cell Rev Rep. 誌に掲載されました)
▽今回、幹細胞の局所移植によりALSの運動機能喪失が緩和できるのではないかとの仮説の下、自家骨髄単核球移植の第I、II相試験が行われ、安全性が検証されました。
▽22名のALS患者がエントリーされ、プラセボ対照で行われました。前脛骨筋に自家骨髄単核球細胞の単回移植が行なわれ、移植後30、90、180、360日後に評価されました。
▽その結果、単回移植は安全であり、プラセボと比較した場合、移植後の前脛骨筋においては、1つのみの指標(複合筋活動電位:CMAPを定量化する指標であるD50 index)において有意差を認めました。
▽そのほかの指標では有意な差を認めませんでしたが、患者数が少ないことやD50 indexが変化に鋭敏な指標であったためかもしれません。今後さらに大規模な臨床試験での検証が期待されます
(この研究は、スペイン、Universidad Miguel Hernández-CSICのGeijo-Barrientosらにより報告され、2020年3月24日付のFront Neurosci誌に掲載されました)
▽動物実験での結果により、幹細胞の新たな投与経路が安全であり、今後に期待の持てる投与法であることがわかりました。この研究はStem Cell Translational Medicine誌に公表されたものです
▽神経前駆細胞は、何種類かの成熟した神経細胞に分化しうる細胞であり、損傷を受けた神経を修復しうる能力を有していると考えられています。ALSにおいても神経前駆細胞を用いた幹細胞移植は、今後の治療法として期待されています。
▽しかしながら、現時点での神経幹細胞移植は、脊髄実質に直接注入するものであり、侵襲性が高く、様々な合併症などの危険性を有しています。今回研究者らは、より安全でさらに有効性も期待できる新たな投与法を開発しました。
▽この方法は、幹細胞を脊髄軟膜下に注入する方法です。この方法は神経組織に対する侵襲性はほとんどないため、安全性は高いものです。モデルラットでの実験では、注入されたヒト(グリア系)神経前駆細胞は脊髄、脳幹など広い範囲に生着したことが確認されました。また、オリゴデンドロサイトやアストロサイトなどのグリア系細胞に分化していることも確認されました
▽幹細胞の軟膜下投与は安全性が高く、有効性も期待できることがわかりました。高用量の細胞を注入可能なことも特徴です。今後はヒト臨床試験での実用化が期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/02/10/new-spinal-delivery-method-renders-stem-cell-therapy-safer-more-effective-als-other-diseases-early-study/
▽筋注された間葉系幹細胞は1週間以上は生存していることが確認されました。移植後には骨格筋萎縮が減少し、神経筋接合部の変性が抑制されました。同時に細胞内活性酸素種の減少が観察されました。
▽骨格筋萎縮のマーカーであるMAFbxとMuRF1の発現減少も観察されましたが、その減少量は有意なものではありませんでした。ヒト臍帯血由来間葉系幹細胞移植はタンパク質合成を改善し、AMPK活性化によりiNOS/NOシグナル経路を抑制することで骨格筋保護作用を発揮することがわかりました。以上の結果は、ヒト臍帯血間葉系幹細胞の繰り返し筋肉内投与が治療的に有用な可能性を示唆するものです
(この研究は韓国、Seoul National UniversityのKookらにより報告され、2020年1月31日付のScientific Reports誌に掲載されました)