・世界中で行われているALSに関する臨床試験について最新の情報となるようにしたいと思います(2022年11月30日現在)
(更新情報)
2022年11月30日 RNS60の第2相試験終了
血漿交換療法の第2相試験終了
自家造血幹細胞移植第1/2相試験終了
超高用量メチルコバラミン第3相試験終了
ILBの第2相試験終了
Triumeqの第3相試験追加
ABBV-CLS-7262の第3相試験追加
Tideglusibの第2相試験追加
LAM-002Aの第2相試験追加
baricitinibの第2相試験追加
SAR443820の第2相試験追加
芍薬甘草湯の第2相試験追加
PTC857の第2相試験追加
AL001の第2相試験追加
イストラデフィリンの第2相試験追加
PrimeCの第2相試験追加
IFB-088の第2相試験追加
2021年10月31日 tofersenの第3相試験終了
2021年7月31日 remdesemtivの第3相試験を追加
CK-2127107の第2相試験を削除(remdesemtivとして第3相試験開始のため)
2021年4月30日 自家骨髄単核球細胞移植の第2相試験追加
BIIB067(tofersen)の第3相試験追加
2021年3月31日 β-ヒドロキシ酪酸の第2相試験追加
2021年2月28日 ION363の第3相試験追加
RT001の第2相試験追加
NeuroNata-Rの第3相試験追加
2020年12月31日 ポリフェノール+デュタステリドの第2相試験追加
Engensisの第2相試験追加
ペランパネルの第2相試験終了
2020年11月30日 NurOwnの第3相試験終了
2020年10月31日 APL-2の第2相試験を追加
ANX005の第2相試験を追加
2020年8月31日 PU-ADの第2相試験を追加
セラクルミンの第2相試験を追加
レボシメンダンの第3相試験が中止
2020年4月30日 AT-1501の第2相試験を追加
2020年3月31日 HEALEY Platformの第2相試験を追加
2020年1月31日 ultomirisの第3相試験を追加
clenbuterolの第2相試験を追加
MICABO-ALSの第2相試験を追加
メトフォルミンの第2相試験を追加
2019年12月31日 経口エダラボン製剤の第3相試験を追加
Ciprofloxacin/Celecoxibの第2相試験を追加
BLZ945の第2相試験を追加
トコトリエノール含有ビタミンE製剤の第2相試験を追加
2019年8月31日 制御性T細胞の第2相試験を追加
2019年7月31日 第2相試験実施中のH.P. Acthar Gelが有害事象(肺炎)により中止
2019年5月31日 tofersen(IONIS-SOD1Rx)を第3相に追加
(詳細情報は”続きを読む”から御覧ください)
▽FDAの諮問委員会はSOD1遺伝子変異ALSにおいてニューロフィラメント軽鎖の変化がtofersenによる治療効果を予測する可能性が高いと判断しました
▽ただし、実際の臨床効果については僅差で否定的な見解が上回りました。FDAはこの結果を受けて4月25日までにtofersenの承認の是非について判断する予定です
▽tofersenはアンチセンス・オリゴヌクレオチド製剤であり、有害なSOD1タンパク質の生成を阻害します。
▽既に終了した第3相試験ではtofersenはSOD1タンパク質濃度を減少させることが示されました。ただし、ALSFRS-R得点の変化率については有意な効果を確認することができませんでした。ただしその後の延長試験においては初期の段階でtofersenを投与された患者の方が、進行がより遅いことを示唆する結果が得られました
▽またtofersenはニューロフィラメント軽鎖を減少させることがしられており、この減少の程度がより顕著であった患者群においては進行遅延効果がより高いことを示唆する結果が得られています
▽諮問委員会では迅速承認について5名が反対、3名が賛成、1名が棄権の結果でした
▽現在Biogen社はtofersenの新たな第3相試験を実施しています。
引用元
https://alsnewstoday.com/news/panel-favors-tofersen-biomarker-data-mixed-on-efficacy-sod1-als/
・ALS NEWS TODAYの3月22日付記事からです
▽ALS治療薬候補であるCOYA302の小規模臨床試験の結果によると4名の患者が顕著な病態進行遅延効果を示したとのことです。
▽COYA302は免疫系のシグナル分子であるIL-2とabataceptとよばれる融合タンパク質を組み合わせた製剤であり、皮下注で投与されます。制御性T細胞の活性を増加させ、炎症反応を減少させることによる治療効果が期待されています。
▽この小規模試験では4名の患者が対象となり48週間投与されました。安全性は良好でした。参加者は試験参加前は毎月平均1.1点の割合でALSFRS-R得点が減少していましたが、治療開始後1年間では平均1.5点の減少にとどまりました。
▽今後さらに大規模な臨床試験で有効性を検証したいとしています
引用元
https://alsnewstoday.com/news/mda-2023-coya-302-therapy-slows-als-progression-early-trial/
・ALS NEWS TODAYの3月28日付記事からです
▽ALSの大半のケースにおいてTDP-43の機能不全はstathmin-2とよばれるタンパク質の濃度低下をもたらします。それにより神経細胞の機能異常が生じることが報告されています
▽この低下したstathmin-2タンパク質濃度を回復させるDNA治療法がマウスの実験で良好な結果を示しました
▽TDP-43はmRNAのスプライシングにおいて重要な役割を果たしています。TDP-43濃度が減少すると、STMN2遺伝子のスプライシングが変化し、cryptic exonとよばれる配列が除去されずに残るようになります。TDP-43は正常な状態においてはこのcryptic exonに結合し、成熟したmRNAにこの配列が含まれない役割を果たしていることがわかりました
▽しかしTDP-43の機能が障害されると、異常なmRNAが生成し、正常なstathmin-2タンパク質が作られなくなります
▽stathmin-2タンパク質が欠乏すると、神経細胞が損傷後に回復できなくなることがわかりました。研究者らはTDP-43の機能を模倣するアンチセンス・オリゴヌクレオチドを作成し、正常なstathmin-2タンパク質の生成を回復させることにより、モデルマウスの病態が回復することを示しました。今後の実用化が期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/news/mda-2023-designer-dna-drug-als-shows-promise-early-studies/
▽Anew Medical社のALS治療薬候補であるANEW-202がマウスでの実験で良好な結果を示しました
▽ANEW-202はsecreted-Klotho(s-KL)と呼ばれるタンパク質を生成する遺伝子治療薬です。このs-KLは筋肉や神経細胞の生存を補助する機能を発揮することが期待されています
▽SOD1変異ALSモデルマウスにおいて、s-KLをウイルスベクターで筋肉や神経細胞に導入し過剰発現させたところ、酸化的ストレスの減少効果、発症遅延効果や生存期間の延長効果が確認されました。
▽現在、孤発性ALS類似の病態を示すProfilin 1モデルマウスにおける有効性の検証が予定されています。
引用元
https://alsnewstoday.com/news/anews-als-gene-therapy-shows-promise-mice/
▽Ractigen Therapeutics社のALS治療薬候補であるRAG-17がFDAよりorphan drug指定を受けました
▽RAG-17はSOD1タンパク質の発現を抑制するように作成されたsiRNA製剤です。
▽siRNAはSOD1遺伝子のmRNAに結合し、有害なタンパク質の生成を阻害します。RAG-17はsiRNAにオリゴヌクレオチドで修飾し、中枢神経に届けることを可能とするSmart Chemistry-Aided Deliveryと呼ばれる薬剤運搬プラット―フォームを利用しています
▽モデルマウスでは有望な結果が得られており、早期に臨床試験を行いたいとしています
引用元
https://alsnewstoday.com/news/fda-names-rag-17-targeting-als-gene-mutations-orphan-drug/
▽Clene Nanomedicine社のALS治療薬候補であるCNM-Au8ですが、残念な結果となったHEALEY ALSプラットフォームによる第3相試験とは別に、長期投与試験において有益性を示唆する結果が報告されました。
▽この報告は第2相試験の長期延長試験の結果によるものです。CNM-Au8は金ナノ結晶を含む経口懸濁液であり、神経細胞のエネルギー供給をサポートし、酸化的ストレスから神経細胞を保護することにより治療的効果が期待されています。
▽第2相試験において9カ月投与が速い群は9か月後に投与が開始された群と比較して死亡リスクが70%低く、また進行も緩やかであることが示されました。
▽長期投与による安全性は良好でした。今後長期的投与による有益性についてはさらに大規模なデータにより検証される必要があります
引用元
https://alsnewstoday.com/news/slower-progression-experimental-als-treatment-cnm-au8/
▽pridopidineの第2相試験結果が報告され、主要評価項目は達成できませんでした。しかしながら発症早期の患者については呼吸機能や発語機能がより良好である可能性を示唆する結果が得られました
▽pridopidineはシグマ1受容体のアゴニストであり、神経細胞を損傷から保護する効果が期待されています。24週間で行われた第2相試験では、ALSFRS-Rの変化率はプラセボ群と有意差を認めませんでした。
▽しかし最近診断された急速に進行する患者群においてはpiridopidineはプラセボ群と比較してALSFRS-R得点変化量を約5点減少させることがわかりました。
▽ニューロフィラメント軽鎖濃度はプラセボ群と比較して24週間で約40%減少がみられました。
▽今後さらに有効性に関する検証を続けたいとしています
引用元
https://alsnewstoday.com/news/pridopidine-shows-some-potential-in-healey-trial-but-misses-main-goal/
▽12名の患者の解析結果によると、平均血清ペランパネル濃度が400ng/ml以上の患者は、対照群と比較して嚥下サブスコアが有意に悪い結果となりました。全体の進行度については有意差はありませんでした。
▽以上の結果は、高濃度ペランパネルが嚥下機能に悪影響を与える可能性を示唆するものです
(この研究は東京医科大学のkatoらにより報告され、2023年3月13日付のJ Clin Neurol誌に掲載されました)
▽CDNFを脳室内投与すると、SOD1変異ALSモデルマウスおよびTDP-43タンパク症モデルマウスにおける病態進行が顕著に遅延しました
▽CDNFは小胞体ストレス関連細胞死を防ぎ、小胞体ストレス応答を緩和することがわかりました
▽以上の結果はCDNFがALS治療薬候補として有望な可能性を示唆するものです
(この研究はフィンランド、University of HelsinkiのDe Lorenzoらにより報告され、2023年3月16日付のBrain誌に掲載されました)
▽セロトニン3受容体阻害薬であるgranisetron投与により、モデルマウスの体重が減少しました。一方でセロトニン4受容体阻害薬のpiboserodおよびセロトニン5阻害薬のritanserin投与はマウスの運動機能の増悪をもたらしました
▽これらのセロトニン受容体阻害薬投与により、SOD1タンパク質の発現増加がみられました。またTDP-43凝集体も増加することがわかりました
▽以上の結果はセロトニン欠乏がALSの病態に関与しており、セロトニンが治療法開発のターゲットとなりうる可能性を示唆するものです
(この研究は、中国、Clinical College of Nanchang Medical CollegeのJiangらにより報告され、2023年9月号の Neural Regen Res誌に掲載予定です)
▽今回、研究者らはオリゴデンドロサイト前駆細胞を用いた単鎖可変領域フラグメントの送達システムを開発し、その有効性を検討しました
▽ウイルスベクターを用いてオリゴデンドロサイト前駆細胞に折り畳み異常SOD1タンパク質に対する新規モノクローナル抗体である単鎖可変領域フラグメントを分泌させることに成功しました
▽このオリゴデンドロサイト前駆細胞を単回髄腔内投与することにより、モデルラットにおいて病態改善効果がみられました。
▽以上の結果はオリゴデンドロサイト前駆細胞を用いた抗体送達が新規治療法となりうる可能性を示唆するものです
(この研究は滋賀医科大学のMinamiyamaらにより報告され、2023年2月4日付のMol Ther Methods Clin Dev.誌に掲載されました)
▽今回、研究者らはhonokiolのALSモデルマウスおよび細胞モデルにおける治療的効果を検討しました
▽honokiolは、変異SOD1タンパク質を発現するNSC-34運動神経様細胞の生存率を向上させました。honokiolは、グルタチオン合成を促進し,NRF2-ARE経路を活性化することにより、細胞の酸化ストレスを緩和することがわかりました。
▽またhonokiolはSOD1変異ALSモデルマウスの生存期間を延長し、運動機能の改善効果を示しました
▽以上の結果は、honokiolがALS治療薬候補として有望な可能性を示唆するものです
(この研究は中国、Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical CollegeのZhouらにより報告され、2023年2月号のActa Pharm Sin B.誌に掲載されました)
▽モデルショウジョウバエを用いたpoly-GR毒性のRNA-seq解析では、Mtkなどの抗菌ペプチド遺伝子やHsp遺伝子の活性化が起きていることがわかりました
▽モデルショウジョウバエにおいてMtk遺伝子をノックダウンするとpoly-GR毒性が緩和しました。またHsp90のノックダウンも同様にpoly-GR毒性を緩和することがわかりました
▽以上の結果は、MtkやHsp90がC9orf72遺伝子変異ALSにおいて治療ターゲットとなりうる可能性を示唆するものです
(この研究はアメリカ、 UMass Chan Medical SchoolのLeeらにより報告され、2023年3月10日付のNeuron誌に掲載されました)
▽既にFDAに承認されたRelyvrio(AMX0035)の安全性と有効性を検証するための大規模第3相試験において患者登録が完了しました
▽この試験は664名の患者を対象に行われ、2024年には結果が判明する予定です。第2相試験の結果によりカナダでは条件付き承認となりましたが、通常の承認のためにさらなる臨床試験が必要でした。
▽今回の第3相試験(PHOENIX試験)は第2相試験の結果を確認するためにさらに大きな規模で行われるものです。この試験は欧州での通常承認のためにも必要と考えられています。
引用元
https://alsnewstoday.com/news/phoenix-trial-approved-als-therapy-relyvrio-amx0035-enrolled/
▽uniQure社はApic Bio社が開発中のSOD1変異ALS治療薬候補であるAPB-102の全ての権利を取得しました。
▽今後第1/2相試験の開始が予定されています。uniQure社はC9orf72遺伝子変異ALSに対する遺伝子治療薬も開発中です。
▽APB-102は開発ネームがAMT-162に変更となります。AMT-162はmicroRNAであり、ウイルスベクターにより運搬され、変異SOD1遺伝子由来のmRNAに結合し、異常タンパク質の生成を防ぎます。
▽AMT-162はくも膜下腔内に単回投与されます。モデルマウスでの前臨床試験では生存期間の延長効果などがみられました。さらに2名のALS患者を対象とした投与試験でもSOD1タンパク質の発現を低下させる効果がみられました。
▽AMT-162はFDAよりorphan drug指定を受けています
引用元
https://alsnewstoday.com/news/uniqure-acquires-rights-develop-gene-therapy-sod1-als/
▽日本でALS治療薬候補であるEPI-589の探索的な第2相試験が進行中です。今年10月には終了予定となっています。
▽EPI-589はR-troloxamide quinoneと呼ばれる小分子であり、経口投与され、酸化的ストレスを軽減することによる病態改善効果が期待されています
▽基礎実験では、エダラボンを上回る抗酸化作用が確認されています。またALSモデルマウスにおいて病態進行遅延効果が確認されました。
▽健常者を対象とした第1相試験では安全性が確認されました。19名のALS患者を対象とした第2相試験で500㎎を2回投与され、安全性が確認され、髄液中のバイオマーカーにおいて改善がみられました
▽現在進行中の探索的第2相試験では500㎎を1日3回投与され、安全性、忍容性が確認される予定です。副次的評価項目では有効性についても評価される予定ですが、今後さらに大規模なプラセボ対照試験が行われることが期待されます
引用元
https://alsnewstoday.com/news/exploratory-phase-2-clinical-trial-epi-589-als-is-ongoing-i/
▽研究者らは生理的なTDP-43タンパク質の機能を保持し神経細胞への影響を軽減するため、Fcγ受容体を介した異常TDP-43タンパク質除去メカニズムを利用したTDP-43特異的免疫療法を開発しています
▽TDP-43タンパク質のC末端ドメインを標的とすることにより、TDP-43蛋白症の病態を軽減し、神経細胞の喪失を防ぐことができることがわかりました
▽この作用はミクログリアによるFc受容体を介した免疫複合体の取り込みによるものであることが示されました。さらにモノクローナル抗体投与によりALS患者由来ミクログリアの貪食能が向上することがわかりました
▽これらの作用は生理的なTDP-43活性を維持したままで発揮されました。
▽以上の結果はTDP-43をターゲットにした免疫療法が治療選択肢として有望なことを示唆するものです
(この研究はスイス、AC Immune SAのAfrozらにより報告され、2023年2月20日付のNeurobiol Dis.誌に掲載されました)
▽45名の患者が対象となり、呼吸筋トレーニング群23名(30%負荷)、sham群22名に無作為割付され比較されました。主要評価項目は最大呼気・吸気圧でした。
▽12週間の呼吸筋トレーニングは最大呼気圧の有意な増加をもたらしましたが、最大吸気圧の増加にはつながりませんでした。12か月間のALSFRS-Rのbulbar subscaleに変化率においては、sham群ではトレーニング群よりも低下速度が約2倍速い結果となりました
▽ALSFRS-R総得点の変化率や人工換気導入までの期間、摂食機能などにおいては有意な差がみられませんでした。
▽以上の結果は呼吸筋トレーニングが一部機能において生理的機能を高めることができる可能性を示唆するものであり、今後さらに最適なトレーニング強度などを定める研究が行われることが期待されます
(この研究はアメリカ、University of FloridaのPlowmanらにより報告され、2023年2月20日付のNeurology誌に掲載されました)
▽その結果、スプライソソーム関連因子であるSYF2を抑制することによりTDP-43凝集体形成と局在化異常が緩和され、病態改善効果がみられることがわかりました
▽このようなTDP-43蛋白症の病態緩和効果はC9orf72遺伝子変異ALS、孤発性ALSなどのモデルにおいて観察されました。
▽またTDP-43蛋白症モデルマウスにおいてSYF2を抑制すると、神経変性、神経筋接合部の喪失、運動機能障害などが改善しました
▽以上の結果は、SYF2が様々なALSサブタイプにおいて治療対象になりうる可能性を示唆するものです
(この研究は、アメリカ、University of Southern CaliforniaのLinaresらにより報告され、2023年2月2日付のCell Stem Cell誌に掲載されました)