▽多くの遺伝子編集技術ではDNAが標的となっていましたが、遺伝子情報が永続的に改変されるため、予期せぬ危険が生じるリスクがありました。今回RNAを標的にした遺伝子編集技術により、異常mRNA濃度を低下させることができるかどうかが検証されました
▽研究者らは変異SOD1遺伝子由来のmRNAを標的とするCas13というCas酵素(RfxCas13d)を用い、SOD1 mRNAを標的とするガイドRNAと共に、CRISPR-Cas13システムを、アデノ随伴ウイルスベクターによりアストロサイトに注入しました。
▽その結果、投与したモデルマウスでは、発病後の生存期間が33%延長し、病態進行の緩和効果が観察されました。また運動機能も保持され、筋萎縮についても遅延効果がみられました。
▽今後ヒトに対する安全性などを評価することが課題となっています。
引用元
https://alsnewstoday.com/news-posts/2022/04/06/rna-targeting-crispr-system-shows-promise-preclinical-models/
▽今回、研究者らは 2種類の異なるSOD1変異ALSモデルマウスにおいて、CRISPR/Cas9によるゲノム編集を行うことで、発症を防ぐことができることを示しました。
▽疾患に関連した遺伝子のゲノム編集は効率よく行われ、まれにオフターゲットの編集イベントが発生しました。また、数百から数千塩基対の大きなDNA欠失が頻繁に観察されました。これらの大きな欠失は、Alu要素の近接した同一の配列によって生じていることがわかりました。
▽ゲノム編集マウスでは、2歳を過ぎてもその他の疾患の兆候は観察されませんでした。
▽以上の結果は、CRISPR/Cas9によるゲノム編集の治療的有効性と長期的な安全性の可能性を示唆するものです。
(この研究は、アメリカ、Northwestern UniversityのDengらにより報告され、2021年3月25日付のCommun Biol.誌に掲載されました)
▽CRISPRを用いた遺伝子編集技術がSOD1変異ALSモデルマウスの病態改善に有効である可能性が報告されました。Molecular Therapy誌に掲載された報告によるものです。
▽家族性ALSの1/5、孤発性ALSの1-2%がSOD1遺伝子変異と関連すると言われています。動物モデルでは変異SOD1蛋白質の発現量を低下させることが治療的であることが報告されています。しかしこれまでの実験的治療法は侵襲性が高く、髄液中への直接注入などを伴うものでした。
▽今回、研究者らは変異SOD1遺伝子の発現を停止させるため、CBEs(cytidine base editors)と呼ばれる遺伝子編集技術を使用しました。CBEsはCRISPR一塩基編集法であり、従来のCRISPR遺伝子編集法が、DNAの両鎖の切断を伴い、変異SOD1遺伝子の除去にとっては有用であっても、その他の予期しない遺伝子変化を生じるリスクがあるため、実用性には乏しいものでした。
▽一方でCBEsは単一塩基を変化させるものであり、具体的にはシトシン(C)をチミン(T)に変化させるものです。研究者らは、SOD1遺伝子の上流部位を停止シグナルに変化させるようCBEに基づくシステムを構築しました。細胞モデルにおいてはこの試みは成功しましたが、生体における有効性は未知でした。CBEを細胞内で行うためには、CBEをコードする遺伝子を細胞に注入する必要がありました。動物モデルでは、この役割は、安全性の高いアデノ随伴ウイルスベクターを使用することで行われました。
▽SOD1変異ALSモデルマウスに対して、CBE系をコードしたアデノ随伴ウイルスベクターを投与したところ、生存期間が非投与の対象群と比較して11%延長しました。発症からの生存期間は39%延長しました。運動機能においても投与群は有意に優れており体重減少速度も低下しました。
▽アデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子編集技術は家族性ALS治療法開発の新たな希望となる可能性があります
引用元
https://alsnewstoday.com/2020/03/06/sod1-gene-editing-slows-als-progression-in-mice-study-reports/
▽今回研究者らはSOD1変異ALSモデルマウスにおいて、SaCas9-sgRNAをエンコードするアデノ随伴ウイルスベクターを注入し、治療的効果を検証しました。
▽その結果、モデルマウスの生存期間は54.6%延長し、運動機能の改善効果がみられました。変異SOD1蛋白質の発現量の低下も観察されました。
▽以上の結果はアデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子編集技術がSOD1変異ALSに対する治療法として有望な可能性を示唆するものです
(この研究は中国、The Second Hospital of Hebei Medical UniversityのDuanらにより報告され、2019年12月9日付のGene Therapy誌に掲載されました)
▽スタンフォード大学の研究者らがNature Genetics誌に公表した研究結果によると、遺伝子編集技術(CRISPR-Cas9)により家族性ALSにおける治療ターゲットがみつかりました
▽C9orf72遺伝子の6塩基繰り返し配列の過剰伸長は家族性ALSの主要な病因としてしられています。正常では繰り返し配列数は10-20ですが、ALSでは数百から数千といわれています。この繰り返し配列から有毒な蛋白質が生成します
▽研究者らはどの遺伝子がこれらの毒性蛋白質から神経細胞の保護作用を有するか、およびどの遺伝子が毒性を悪化させる作用があるかを調べました
▽研究者らはCRISPR-Cas9技術を用いて、ヒト遺伝子の全ゲノムの20500の遺伝子の中から、一つずつノックアウトし、ゲノムワイドスクリーニングにより病態への影響を調べました。
▽その結果、200の遺伝子が病態を改善ないし悪化させる遺伝子として同定されました。これらの遺伝子の中から特に影響が強かったものとしてTmx2遺伝子が注目されています。
▽Tmx2遺伝子をノックアウトしたところ、神経細胞の生存期間が100%延長しました。Tmx2遺伝子が今後の創薬にあたり重要なターゲットとなる可能性があります
▽この研究はCRISPR-Cas9技術による遺伝子ノックアウトを用いたゲノムワイドスクリーニングとして初めての報告であり、今後の研究にとって重要な進展となります
引用元
https://alsnewstoday.com/2018/03/08/crispr-cas9-gene-editing-reveals-potential-therapeutic-targets-als/
▽カリフォルニア大学の研究者らがScience Advances誌に公表した研究結果によると、SOD1変異ALS変異モデルマウスにおいて、遺伝子編集技術を用いた治療的介入が生存期間の延長効果をもたらしたとのことです
▽これまで、SOD1遺伝子変異に対して、RNAを用いて発現を阻害する手段は、動物実験では有効であっても、ヒトにおいては有効性が認められていませんでした
▽CRISPR-Cas9システムを用いた遺伝子編集技術は、最も正確性が高い遺伝子編集技術であり、RNAを用いた核酸医薬にとってかわりうる可能性があります
▽研究者らはウイルスベクターを用いて、CRISPR-Cas9システムをモデルマウスに注入し、運動神経における変異SOD1遺伝子の発現を阻害するようにしました。その結果、変異SOD1蛋白質の発現量が減少し、33日間の発症遅延効果がみられました。しかし病態進行速度については変化がなかったとのことです。研究者らはこの結果については、アス
トロサイトなどのグリア細胞に対する遺伝子編集を行わなかったためではないかと考えています
▽今後はより多種類の細胞において変異遺伝子発現を阻害する技術や、特異的に異常な酵素のみを除外する技術を開発したいとしています。またC9orf72遺伝子変異など、その他の遺伝子変異についても治療対象となりうると考えられています。
引用元
https://alsnewstoday.com/2017/12/22/gene-editing-shows-promise-treating-familial-als/
▽CRISPR-Cas9遺伝子編集システムは、ヒト遺伝子をこれまで以上に迅速かつ正確に恒久的に変化させることを可能にしました。
▽DNAの代わりにRNAをターゲットとして、一時的に遺伝子情報を変化させることについてはどうでしょうか?
▽今回、10月25日付のScience誌に公表されたMITとハーバードの研究者らの研究結果により、CRISPRシステムに改変を加えることで、このことが可能になりました。
▽REPAIRと名づけられた技術により、選択的なRNA配列のアデノシンをイノシンに置換することが可能となりました。
▽研究者らはこの技術を用いて、家族性ALSの細胞モデルを用いて、RNAの修復を行うことができることを示しました。DNAに恒久的な変化をもたらす手法においては、選択性が完全ではない場合に、ターゲットではない部分の遺伝子編集が行われ、危険が生じる可能性がありますが、RNAをターゲットとすることで、効果が可逆性となることから、安全性が高いことが期待されています。現在、修復の効率や選択性を高める工夫がなされています。
引用元
http://www.alsresearchforum.org/scientists-unleash-crispr-on-rna/
▽CRISPR/Cas9システムを用いて、患者由来iPS細胞の遺伝子変異を修正し、さらにゲノムワイドRNAシークエンシングにより、遺伝子編集前のSOD1変異運動神経細胞および、遺伝子編集後のiPS細胞の転写産物を調べました
▽その結果、899種類の異常転写産物が確認されました。このような技法により、疾患の治療マーカーの探索や、病態機序の解明が進展し、新規治療法開発につながることが期待されます
(この研究は、中国、National Laboratory of BiomacromoleculesのWangらにより報告され、平成29年4月11日付のProtein and cell誌に掲載されました)
・iPS細胞とゲノム編集技術を用いて、患者自身の遺伝子異常を修復し、再び体内に戻すことで治療的効果を期待する技術が進展しています
引用元
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/CO020891/20161212-OYTAT50014.html
・将来的にはALSにおいても、precision medicineの実現に寄与することが期待されます
・かなくんさんありがとうございました